「ゲーム批評 Vol.59」続き

・昨日の続きです。


・ところで前回の「ユーゲー」冒頭に書きましたように
 「ゲーム批評」「ユーゲー」は同じ会社の雑誌。
 編集部員もライターもかなり重複しています。

・埋もれたゲーム、知られていないゲームを取り上げるのが「ユーゲー」、
 それに対し「ゲーム批評」は何がテーマなのでしょうか。
 方針としては「批評」となっているのだから、ゲームの批評をする雑誌でしょう。
 ゲームの批評とは何か。
 「良いものを良い、悪いものを悪い」と公正に判断すること。
 それがゲーム批評の編集方針。


・ゲームの良し悪しはあるのでしょうか。
 良いゲームとはどういうものか。
 悪いゲームとはどういうものか。

・映画や小説にも批評はあります。その内容はどういうものか、
 お分かりかと思いますが、マニア向けのもの。
 どの映画を見に行くか迷うとき、映画批評雑誌を取り出す人はマニアです。
 大多数の見に行く人は良い映画を見に行くのではなく
 面白い映画を見に行くのです。

・ゲームも同じ。
 エンターテイメント、嗜好品はみなそうです。
 面白いかどうか。自分にとって面白いかどうか。
 それが絶対的な価値基準。
 そしてそれは各個人の価値観で異なる相対的なものなのです。

・良いゲームとは利益になるゲーム。
 製作者にとって、消費者にとって、その業界にとって発展に役すのが良いゲーム。

・物事には様々な物差しがあります。
 ゲームという商品にも、良し悪し、面白さ、品質、市場価値、
 様々な価値基準があります。

・そしてプレイヤー、ゲームマニアにとっての価値基準は面白いかどうか。
 批評誌のそれとは違うのです。
 「ユーゲー」は面白いかどうかに焦点が当てられている否批評誌。
 「ゲーム批評」は業界にとっての価値を判断する批評誌。


・もっとも「ゲーム批評」がそれに値する内容かはまた別ですが。
 以上前置き終わり。



・第二特集「ゲームが消える!?〜古いソフトはどうなるのか〜」。
 今年のヒット商品「ファミコンミニ」。
 ファミコンで発売された当時のヒット作をそのままにGBAで発売したもの。

 任天堂ファミコンミニ公式サイト http://www.nintendo.co.jp/n08/fmk/index.html

 「スーパーマリオ1」は50万本、同「2」は30万本、
 「ゼルダの伝説」20万本、「アイスクライマー」15万本など
 新作に劣らない売り上げを記録しています。

・当時のプレイヤー、新規プレイヤー双方に訴求することができた、
 10本ごとセット、パッケージを極力再現というコンセプト、
 これらの理由が他のレトロゲーム移植とは違う結果を作ったと言えます。

・そしてまた言えるのは、FCソフトのままでは商品価値を持たないと言うこと。
 GBAに移植しなければ売れない。
 なぜならFC本体がないからです。


・ゲーム機は工業製品。
 過剰な耐久性を持たせることは買い替え需要を阻害することもあり
 また市場競争力を持つ価格でなければならないこともあるので
 わりと容易に壊れます。
 電機製品の保障期間は通常1年。
 ファミコン発売は20年前の’83年。壊れているのが当然で
 修理しようにも部品がなくとも当然です。

・ソフトなければただの箱、ゲームハードはそういわれますが
 ハードなければソフトは何か。何の役にも立ちません。

・ソフトを大事にしまっていても本体は置いておくだけでもやがて壊れます。
 もちろんソフト、ファミコンカートリッジやCD−ROMも
 いずれ読み取れなくなるでしょう。
 大事なゲームコレクションもゴミの山。ベータのビデオと同じ末路、
 VHSビデオもいずれは同じ運命か。

・20年前のファミコンはもちろん、6年前のDCも既に生産されていません。
 ハード本体が壊れたら、たくさんのゲームが遊べなくなるのです。
 工業製品としての宿命です。


・昔のゲームを遊びたい。もったいない。昔のゲームの方が面白い。
 そうした時にどうすればよいのか。

・まっとうな方法としては、中古屋で中古ハードとソフトを買うこと。
 当然、中古でも稼動するかどうかは確認されているので
 確実に懐かしのゲームが遊べます。
 しかし、それなりの出費と、目的のソフトを探しに行く手間がかかります。
 人気作品、品薄作品はプレミアム価格。オークションでも同様です。


・グレーゾーンがエミュレーターを使用すること。
 エミュレーターとは本来の機器とは別のハード、あるいはプログラムで
 機能を再現(エミュレート)するもの。
 ハード上で再現するのがハードエミュレート、
 プログラムでハード処理を再現するものがソフトエミュレート。
 PCにファミコン本体がしている作業を変わりにプログラム処理として行わせて
 PCでファミコンのゲームを遊べるようにすることです。

・ソフトエミュレートでは
 専用ハードが行っている作業をプログラムで再現するのですから
 エミュレートするハードの性能は圧倒的に高くなければ実行できません。
 しかしPCの性能向上はかなりのもので
 現在ではPS2ですら可能になるかという段階。

・コピー可能、経年変化で壊れることのない
 プログラムであるエミュレーターを使えば
 ハードが壊れても昔のソフトをいつまでも遊ぶことができます。
 ソフトの内容もデジタルデータですから同じこと。壊れません。


・しかしエミュレーターがグレーゾーンであるのは著作権を侵害する、
 ハードメーカーの権利を侵害するものである、という面があるからです。

エミュレーター自体は違法ではありません。
 たとえばゲーム開発では、当然PS2の上でプログラムを書くわけではなく
 PS2のハードエミュレーターを使用しPCを通して製作するわけです。
 もちろんそれはハードメーカーによるお墨付きエミュレーター、公式開発機材ですが
 個人がエミュレーターを所持するのも
 それがハードのプログラムをコピーしたものでなければ一応合法です。
 ハードに入っているプログラムも当然ハードメーカーの著作物ですから。
 (ただ、この点についても国内でははっきりした司法判断はなくグレーゾーンともいえます。)


・問題は、ハードからコピーしたわけではないエミュレーター、ではなく
 そこで実行するソフトプログラムをどこから持ってきたか、ということです。

・当然自作プログラムではそもそもエミュレーターではないので
 市販のゲームソフトから持ってくることになるでしょう。
 コピーだ。違法だ。となるかというと必ずしもそうではなく、
 自分が所有しているソフトのデータであれば
 自分が楽しむ分(私的複製)には合法である、という考え方があるからです。
 音楽ではあたりまえにレンタルCDからMDなどにコピーしています。
 ゲームでも同様に考えられるのかどうか。
 ここはハードのエミュレーター以上にグレーゾーンといえるでしょう。
 著作権というゲームが登場する以前に作られた法律の解釈次第です。

・もちろん他人からソフトデータをもらうのは違法。買うのも違法。
 ネットからダウンロードするのも違法。
 借りるのも違法。
 でもゲームソフト自体の貸し借りは合法。
 まったく同じものを誰でも容易に複製可能な著作物の扱いは、なんとも微妙です。


・結局、昔のゲームを遊ぶにはどうするか。
 生産が中止されていおり
 そしていつかは必ず壊れる機器であるゲームハード、ソフトは
 いずれ無くなってしまいます。
 著作権法を現在のデジタルデータを勘案したものに改正し
 さらにエミュレーター市場が権利者であるハード、ソフトメーカーにとって
 利益あるものになることで
 エミュレートを管理合法化することが、ゲームを守ること、
 いつまでも遊べるようにするための方法です。

・開発メーカーからオリジナルソフトデータが失われることは
 あたりまえのように起きていると思われます。
 けれども権利者は利益を追求する企業ですから義務責務では動きません。
 ファミコンミニの成功がレトロゲーム市場価値の確立につながればよいのですが。

・そして消費者にできることは何か。
 それはやはり義務ではなく貢献でもお布施でもなく
 ただ自分が面白いと思うゲームを買うことしかありません。
 それがゲーム業界発展につながり
 そして面白いゲームを遊び続けるための方法です。



・また長くなりましたがまだ続きます。
 でも寝る時間、また明日。