『機甲装兵アーモダイン』

kodamatsukimi2007-07-21


 公式 http://www.jp.playstation.com/scej/title/armodyne/ ASIN:B000K9ACMC

・重装機兵、ではなくて機甲装兵。
 『カルドセプト』の大宮ソフトhttp://www.omiyasoft.com/)が
 ロボットを操作する戦争シミュレーションを、というあたりの期待感は
 ARTIFACT@ハテナ系/大宮ソフト開発の『機甲装兵アーモダイン』http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070207/armodyne
 とかで感じていただけると良いのではないでしょうか。

・ないでしょうが、となげやりに言うのは
 「ロボット」属性にあまり興味ないからなのでありまして
 だからガンダムもターンエーが世界名作劇場みたいで1番好きとのたまったり
 よって『スパロボ』も『ヴァルケン』も遊んでいないのであり
 けれど工画堂の『パワードール』は遊んでいたのであって
 つまり、戦争シミュレーションゲームの駒がどうだろうとどうでも良く
 外観がロボでも女性キャラクターだろうと『サクラ大戦』だろうが
 ゲームとして遊んで面白ければ良い、という
 「ゲーム性至上主義者」を気取る者のそれなのである。
 『パワードール』は当時持っていたPCでは遅すぎ辛すぎでしたけれども。
 『サクラ大戦』は、えーと『4』までは遊んでいるのでそれなり、に違いない。



・それで『アーモダイン』が面白かったのか、というとそれなりに、とお答えしたい。
 量が少ないです。

・セオリー通りに遊べば苦労なく20時間程度で遊べてしまう。
 兵種、駒の種類は、近接戦のアタッカー、離れて銃撃のガンナー、
 より遠距離のスナイパー、範囲攻撃のボマー、回復のリペアの5種とその組み合わせ。
 けれどガンナー、スナイパー、ボマーは同じようなもの。少ない。
 これらで出撃、まずたまに出てくるボマーを潰し、ガンナーはアタッカーでなぐり
 アタッカーは離れてガンナーが撃って、ダメージ受けたら引いてリペアで回復。
 ボマーの範囲攻撃さえ注意すれば戦力集中しての各個撃破を繰り返すだけ。
 お約束の、勝手に操作できないユニットが敵陣に突っ込む救出マップや
 敵基地潜入マップなどの一部を除けば、大方苦労なくクリア出来てしまえます。

・つまり戦争シミュレーションゲームとして幅がとても狭い。
 様々な兵種の特性を組み合わせて活かして高機能な軍性能を叩出す、
 という感じではないのです。
 マップや敵の戦略なども幅がない。状況がほとんどいつも同じ。


・しかしけれど、これは育成要素があるから、とも言えましょう。

 『戦闘部隊をつくろう!』みたいな、運営の部分と、
 ウォーシミュレーションの部分とが相互に関係しあって進んでいくゲームです。
   大宮ソフト開発陣が語る! 『機甲装兵アーモダイン』 / ファミ通.com http://www.famitsu.com/interview/article/2006/11/08/668,1162996280,62868,0,0.htmlより

 つまり『サカつく』のように
 個々の性能を育成してチーム全体の戦力を高めていく要素、
 育成シミュレーションと、戦争シミュレーションの両面を持つゲームであるつくり。
 チームとしての戦力が常に変化するから
 敵の強さにあまり幅を持たせすぎると適応が難しいし
 何より多数の兵種をバランスとって育成するのは規模が大きくなりすぎ、
 複雑すぎて遊ぶひとを選んでしまう。
 だから『カルチョビット』はあの程度に、取れる手段が簡易化されているし
 『俺屍』は実用的な職業の数が少なく敵がいつも同じ強さなのであり
 試しに好きなように作ってみると、『サガ』のようになるのである。



・この組み合わせが成功したのかは、この辺りをご覧いただきたく。
 遊戯電線/機甲装兵アーモダイン http://d.hatena.ne.jp/NTZ/20070226
 ABAの日誌/カルチョビットっぽいガンパレを作ろうとしたらサクラ大戦のガワをかぶった大戦略III'90になったのか「機甲装兵アーモダイン」 http://d.hatena.ne.jp/ABA/20070305#p2

・このゲームのもうひとつある特徴は、RTS風である、というところ。

 ユニットそれぞれが意思というか、自我を持っていて、
 ある程度指揮官であるプレイヤーが指示をしなくても
 自分の意思で動いてくれるというものです。
 これは戦場……、というかシミュレーションとしての"人を扱う"という部分での
 リアリティーを出せないかと思って考えたシステムです。

 と上記開発インタビューにある点。
 オート戦闘、目標敵ユニットを指示するだけで近づき攻撃してくれ
 毎ターンいちいち移動先指定をしなくて良い。
 「速攻」指示なら途中の敵は無視、
 「迎撃待機」は1ターンで攻撃できる範囲に敵がいれば攻撃、
 「防御待機」ならば移動先で動かずに攻撃できない限り待機する、というような
 作戦指示も同時に出せる、という仕組み。

・けれど「めいれいさせろ」も常に働いていて
 基本、敵味方素早いユニット順に連携以外連続や追い抜きがないターン制なのですが
 いつでもターン送りを止めて直接指示をすることが出来ます。
 けれど育成時に忠誠度合いを上げておかないと指示を無視して単身敵陣突っ込み蜂の巣、
 ということもあったりする。


・これがRTSリアルタイムストラテジー、ではなくてシミュレーション、のような、
 というところは
 「ずっと俺のターン」こと連続コンボやタッグブレイクとかで
 一方的に攻撃されるのは、たとえ自分の指示ミスだろうとも嫌である、
 というわりと当たり前に立ち返った点であります。

・『エムブレム』を思い起こしていただきたい。
 あれは、自軍のターンが回ってきたら、全ユニットが原則的に1度ずつ行動できる、
 という決まりですが、それはつまり
 なぜか戦場の片側は、攻撃された時かわすか反撃できる以外で時間が止まっている、
 という摩訶不思議空間であるということでもあるのです。

・だからウェイトターン、素早い順に攻撃順番が回ってくる仕組みのが「リアル」、
 その応用で次に攻撃してくる手が不味そうならため中にキャンセル、
 というように工夫されたりする。
 本当に「リアル」が良いなら、リアルタイム、すなわち実時間制、
 つまりこちらもあちらも同時にいつでも動かせるようにすれば良いのだけれど
 そうすると操作の上手い下手が、ゲームの面白さにある要素をかなり消してしまう。
 リアルタイムで囲碁将棋麻雀をするならそれはまったく違うゲームで
 たとえ相手が動かしている間こちらは何もできなくとも
 その方が、そうでなければ面白くならないゲームもあるのだ、と言える。
 ということなのであります。


・しかしけれども「リアルタイム」シミュレーションゲームが駄目であるわけではない。
 という話はとりあえず後述することに致しまして『アーモダイン』ですが
 結果としてみて中途半端なのではないか、と思います。

・確かに1ターンごと移動指示をしなくて良いのは便利である。
 けれどオート移動に任せて見ていられるほど彼らの頭は良ろしくない。
 いわば、コンピューターがこちらに勝る戦力を持っているのに
 なぜか勝てるゲームの楽しさ、の場合で発揮させるに都合良い頭の良さが
 逆に働いている。両方側がそうなのだから『カルチョビット』のように
 本当に見ていることだけしかできないようであれば割り切れるけれど
 いちいち操作することも出来るのである。
 折角きちんと育成してもそれが発揮できるのに発揮させないことはない。

・したがってすることは今までとほとんど変わらない。
 むしろ指示してるのに言うこと聞かないことがある仕組みは
 『エンブレム』の敵必殺発動よりも、いやよりもというほどではないにせよですが
 「人を扱う」より言うとおりにする駒を操る方がゲームとしては良いのではないか、
 と思ったりするのです。
 それこそRTSのように、複数部隊を同時にまとめて指示できるようにすべき。
 中途半端です。



・まとめてみると『アーモダイン』は面白いか、といえばそれなり、であります。
 見た目も地味。キャラクターデザインもパッケージ絵と随分違う。
 部隊育成戦争シミュレーションゲームとしても
 『サカつく』で試合操作ができる、ということであり
 サクセスモードで育成して『パワプロ』で使えるということではなく
 育成して『ウイニングイレブン』ができるということではない。


・ただ部隊戦闘アニメーションは、最初の1回だけみてカットするものなのですけれど
 このゲームの場合それができない。にもかかわらずテンポが良い。
 というくらいに全体の進行に無駄がないように気が配られている。
 敵ターンを眺めてじっと待つ間が、嫌になる暇がないほど軽快。
 そういう地のところは良く出来ているのだけれど
 全体のつくりが擁護し難く小さめなのであります。


・同じことを何十時間と繰り返して『スパロボ』が飽きないのは
 そこに既に知っているキャラクターがいるからなのでありましょう。
 『ファミコンウォーズ』に飽きが来ないのは、パズルゲームと同じく
 答えがあって、そこに自分が近づけるか次第が全てであるからです。
 『サカつく』が終わらないのは、いつまででも戦力の数字が上昇するからであり
 『エムブレム』を任天堂が認めるのは、工夫しなくとも操作が上手くなくとも
 遊べる時間という量のみが価値を持って良いゲームもあると知っているから。

・ゲームはまず良く出来ている必要がある。しかしそれだけでは十分ではない。
 それを楽しめる遊び手がいないことには。
 『アーモダイン』は良く出来ているけれど中途半端である。
 『サガ』が大作でありながら誰にでもできるゲームではないのに認められているのにも
 理由はあるのです。