『女神異聞録 デビルサバイバー』

kodamatsukimi2009-02-10


 公式サイト http://ds.atlusnet.jp/ ASIN:B001KC050C

・つまり「メガテンDS」。DSはデビルサマナーならぬサバイバー。
 GBAのころ(ASIN:B00005V8E2)と比べると
 携帯ゲーム機用市場も大きくなりました。育ちました。

・『ペルソナ3』あたりから個人的主観で絶好調のアトラスですが
 本作もかなり良くできております。素敵です。
 『世界樹の迷宮』とはまた違う形で
 1人用携帯ゲーム版RPGのあるべき方向を示している。
 以前、もっとちまちま時間つぶしに遊ぶ携帯用のSLGとかSRPGみたいなものが欲しい、
 と書きましたが
 今後、他のメーカーはこれを真似せよ、と書きたい。のでいま書きました。


・いろいろ数あるメガテンシリーズの中でも本作は
 どれかといえば「デビルサマナー」系を意識。
 仲魔をデジタルプログラムで召喚し、並んで一緒に戦う系。
 仲魔はある程度成長しますが、使えなくなったら合体させて特技継承。
 デジタルデビルサマナーのサバイバーなメガテンが本作です。女神全然関係ない。

・プログラムで人間が悪魔を召喚し、こき使って材料扱いするのですが
 人間の仲間たち皆が悪魔召喚可能で、1人が同時に最大2体召喚できます。
 仲間は最大4人なので計12の人と体。
 この12体が一緒に敵と戦い1ターン12回行動指示するのではなくオートでもなく
 人間1人と悪魔2体が1チームで、敵3体と3対3で1ターンだけ戦います。


・戦場はSRPGみたいな、つまり『ファイアーエムブレム』とかああいう感じの地形で
 そこに配置された敵達と、仲間の人間率いる4チームが
 SRPGみたいに行動と戦闘を繰り返して戦っていく形式。
 ただし戦闘は自動でなく1ターンのみのコマンド入力方式。つまりいわゆるRPG風。

・戦闘は原則1ターンなのですが、プレスターンバトルみたいなあれで
 敵の弱点をつく攻撃をしたりすると、エクストラターンとして
 その1体はもう1度だけ行動可能。敵も味方も最大1戦6回行動指示。

・それを繰り返して、戦闘のあいまに行動力、
 つまり次に行動順がまわってくるウェイトタイムを消費して
 回復したり仲魔を帰還させて別のを召喚したりして、順番まわってきたら繰り返す。
 敵を全部潰せば勝利。
 ちなみに仲魔によっては、攻撃範囲が隣接より広いのなんかもいたりして
 そういうのが自チームにいて敵方にいないと一方的に攻撃できたりして面白い。
 逆にやられると面白くない。
 サイドアタックやバックアタックはなく戦場地形もそれほど複雑ではないですが
 回復行動の範囲都合だとか、お約束の救出イベントなどには、
 やはりこういうのあると楽しい。


・そういう戦闘方式であるので1戦闘にある程度時間かかります。
 場合によりますが10分くらい。
 この時間刻みが適当でよろしい。携帯ゲーム機用RPGに合っております。

RPGですが、ダンジョンにもぐって探索して戦闘してという形ではなく
 AVGのように、どこかへ行って誰かと合う、とかの行動をするごとに
 ゲーム内の時間が30分すすみ、ある時間になると起こるイベントなどがあって
 お話が進行していく仕組み。

・主人公たちは封鎖された428、ではなく東京山手線封鎖内に閉じ込められておりまして
 なぜか自分や他人の余命が見えて、それが封鎖監視の自衛隊員以外全員一週間以下。
 すると7日後に山手線内は『真女神転生』のように壊滅するのではあるまいか、
 それを自衛隊が封鎖して山手線外が放置するとは某雛見沢大災害以上に無理がある、
 とか思って戸惑っていると、なぜか悪魔が各地で発生、なぜか謎のマシンで使役可能。
 果たしてこの事件の真相やいかに。
 主人公含む山手線内のみなさんは7日後を超えて生き残れるのか。
 というような感じのお話なのですが
 つまり行動回数制限つきの構成なわけでございます。
 『真女神3』と違って、行動によってそれなりにお話も分岐する仕様の模様。

・1イベントごと30分経過。重要イベントでは当然悪魔とかとの戦闘あり。
 というように進行していくゲーム。
 これだと『暴れん坊プリンセス』ように成長要素なくさなければゲームにならない。
 もちろんそれだとメガテンでなくRPGでなくなるので
 時間経過がないフリーバトルというもので調整しております。
 やりこむひとたちてきにはフリーバトルなしでもクリアできるかもではありますが。


・悪魔を仲魔にするのには戦闘中にあれこれどうこうする必要はなく
 イベント合間の、行動を実行していない自由静止時間に
 ネットオークションで、戦闘勝利で得られる点だか数字を使って競り落とす仕組み。
 所詮プログラム。これぞ良く原理が解らない現代魔法。

・その代わり、主人公たち人間の仲間は、スキルを覚えるために
 戦闘開始前に敵を指定して、その敵を指定したチームで倒せばスキルを獲得できる、
 という仕様がついております。便利です。
 いやそもそも、武器防具とかも使用していないで素手で戦い
 悪魔の力をなぜか学習し、短時間で悪魔以上に無茶苦茶強くなる人間のみなさん。
 どちらが神で悪魔かわかりません。それは悪魔も従うわけだ。

・それでこの学習能力は、敵が持ってさえいればおおかた何でも覚えられるわけですが
 貴重スキルは当然時間の経過するイベントバトルの敵が持っている。
 そしてスキル使用には規定能力を満たさなければならない。
 いつものように主人公は力だけ上げておけば良いとはならない。
 細かいところですがゲームとして良くできています。


・街を巡って情報を集めて現状把握しつつ時間経過、
 フリーバトルで仲間と仲魔を育てておき、イベントバトルで強敵を倒してお話進行。
 こういうつくり。

・一戦闘ごとに、たとえ主人公たちのレベルは上がらなくとも
 スキルを得たり仲魔のレベルは上がったり新しく強い仲魔を得るための金額は増えて
 確実着実に強くなる。
 イベント戦闘も、スキルを狙って獲得しようと思うと倒す順序も重要になる。
 敵は、3体中の中央にいる一体だけ倒せば片づけられるのですが
 経験値やスキルやどのチームで倒すかなどまで計画して、手加減したりもできる。
 今までにあるSRPGRPGの簡単な組み合わせですが
 SRPGほど経験値配分や2軍育成まで管理する手間がなく
 RPGのようにスキルを含めた戦力育成の楽しさもあって、敵を倒すのが面白い。
 良くできた仕組みです。


・そして何より、お話進行の仕組みと戦闘に掛かる分量の割合が
 携帯ゲーム機用の、短時間で少しづつ遊んで少しづつ進めていくという遊び方に
 とても合っているところが素晴らしい。

・イベントで必ずゲーム内時間が進行し、後戻りやり直しが効かないため
 一手ごとにセーブして区切りを付けて、と遊ぶようになるお話部分。
 RPGの戦闘よりは長く、SRPGほどには広くないマップでの戦闘は
 育成目的のお気楽過程と、ボス敵相手の本気勝負の区切りがきっちりついて
 しかもすぐ簡単に切り替えられる。

・戦闘中以外、いつでも区切りを付けられる。
 ダンジョンを探索したり、長いイベントがあったりすることはない。
 区切り良く、ひとつひとつちまちまこなしていく遊び方が
 ゲームの進行上自然にできる。
 集中して何時間と続けて遊ぶには、イベント進行の選択肢でそのたび止まるのが
 セーブを複数取れないこともあって合わない。
 全て携帯ゲーム機専用に、良くできている。



・『世界樹の迷宮』は、昔のRPGが持っていた大きさが時間の経過で
 今の携帯ゲーム機画面にちょうど良くなった時宜を捉えた作品でありました。
 『デビルサバイバー』は、RPGを携帯ゲーム機用に作るならば
 どの部分を家庭用ゲーム機版、テレビの大画面で何時間連続で遊ぶものから削り
 どのように遊ばれるか、から作り出したものと言えましょう。


・『ウィザードリィ』は小説にしても面白く読めます。
 それは目標を含めた設定はあっても、登場人物も筋書きもそこにはないからこそ。
 それでいてテーブルトークRPGにはない、RPGという形式の数字のやり取り勝負という
 共通共遊共有の体験が、そこにはあるからです。

RPGという仕組みは英雄ものがたりを載せるのに合ったゲームという形である。
 だからRPGには、お姫さまを救って仲間と共に悪い魔物を倒すお話が載っており
 すると次第、登場人物や背景の舞台も自然、個性づけられて
 ゲームでなくとも描かれうるお話もそこに載せられるようにきたわけですが
 そのゲーム部分、敵との戦いでの数字のやり取りに勝てるかどうかという所が
 上に載せるものであったお話に対して
 もはや必要ではないのではなかろうか、というところに来ているのがRPGの現状です。
 オンラインRPGに戦闘はあまり必要ではない。
 会話話題の種でしかなく目標達成の過程ではない。

・そこで、オフライン1人用の、従来形式RPGは今後どうすべきか。
 海外物のようにオンライン風であるけれど1人用であることに価値を置くか。
 『FF』のようにバランス悪かろうがともかく豪勢に盛り付けることに価値を置くか。
 『ドラクエ』とその流れの下にあるもののように昔ながらの味を求め続けるか。
 そんな中『ペルソナ3』は、いつもの日常を保つためだけに目先の魔物を倒すという
 お話主導で連れ回される展開に対して、新しい表現手段を示したわけです。

・オフライン携帯ゲーム機用RPGはどうあるか。
 お話が豪勢に載らないだけに今まで通りで良いのか。
 携帯ゆえの持ち運びできる用を活かした対人対戦の素材としてあるのか。
 今まで通りに対して、昔の味をそのまま今にの新しさが『世界樹の迷宮』。
 『女神異聞録 デビルサバイバー』は『ペルソナ3』同様
 『ウィザードリィ』以来の、お話を載せるRPGである必要のところから見直し
 短時間、空いた時間に遊ぶ用に、作られているRPGです。


・新しく、それでいて『メガテン』の味を損なわない出来。
 さらに戦闘を作り込んで
 仲間と仲魔の能力管理を深くかつ手軽に楽しめるようにして頂くとなお良いです。
 大変美味しゅうございました。面白かった。