ランスクエスト

 PC18禁ゲームなので紹介リンク省略


その分野筋では有名なアリスソフト製『ランス』シリーズの8作目。
同じくPCがホームグラウンドだったファルコム製『イース』と同じく
主人公が全作品で一緒という特徴ある、主にRPGのシリーズ。
ゼルダ』のリンクが同一人物でないように
イース』主人公アドルも、『3』以降は別のひとで構わない気がしますが
この『ランス』は舞台も基本的に共通していて、
1989年発売の1作目から登場しているキャラクタもたくさんいるらしい。
ちなみに「ドラクエ3」が1988年。
マンガと同じくゲームのシリーズも長期展開があたりまえのこのごろですが
ひとに歴史ありPC18禁業界にも当然歴史あり、というところか無駄に凄い。



本作の感想、印象は2つ。
ふつうに良く出来たRPG、ということと
PC18禁という場におけるRPGであることそのもの。


PCだから18禁だからという目を除いてみて、無難に良く出来た作品です。
そのての描写を極力削ってZ指定程度に抑え、PSPあたりで発売すれば
名作扱いは難しくともそこそこ良作な程度。
前作の同シリーズ7作目『戦国ランス』は、
メーカー言うところの「地域制圧型SLG」という仕組がとても面白く、
同種のゲーム、戦国時代とか三国志とか第二次大戦時とかを題材にした
国取りSLGとかのどれと比べても出色。
PC18禁分野であるのがもったいない作品なのですが
シリーズ6作目同様、SLGでなくRPGである本作は、まあふつう。


ダンジョン移動場面や戦闘場面など、みため的に
最近標準からすると少し残念な部類。
キャラクター魅力が売りの作品であろうに
戦闘で描写されるのは敵の姿だけという足りていない感。
例えばこのごろの『テイルズ』シリーズなどとかあのあたりのように、
戦場に敵味方入り乱れた状況を描写したいのが本来のところでしょうが
技術的に、というよりPC18禁市場における顧客層がそれを許さないか。
遊んでいれば気にならないけれど、そういう点での魅力は弱め。


みため的には『世界樹の迷宮』とかあんな感じですが
遊んでみての印象では、PS2版『ドラクエ5』のような具合。
仲間が途中でどんどん沢山使い切れないほど加入してき、
ダンジョンに潜ったらば2軍メンバーでできるだけ奥まで進んで
1軍メンバーの魔法使用回数とかを温存、というような趣きのRPG


細かいところは良く出来ています。
かばうや敵行動キャンセル専門などの、仲間のスキルによる個性表現。
戦闘時の行動順、残ターン表示、残体力表示による適度な選択提示。
ダンジョンの宝箱回収制限や、2度目からの表示視点変更機能。
レベルアップや装備による成長程度とお話進行状況との兼ね合い。
どれも丁寧な仕事。
何十時間も遊ぶRPGにおいて、
一度みれば終わりとはいえハレのご褒美としてイベント周りも重要ですが
もっとも遊んでいる時間の長いところ、
キャラクタ成長と戦闘でのその成果確認と成長のための手間と、
その一番大事なところをしっかりわきまえたつくり。
ダメージの限界突破制限がややあやふやになってしまったのは残念ですが
こつこつ手間かけただけ強くなる仲間全体戦力を増強していく楽しみがあり
そしてそのための戦闘をこなすことに無駄を感じない、
まともなつくりのRPGです。


ただしかしけれども、
「地域制圧型SLG」が他の「国取り戦争SLG」と比べ
キャラクターゲームとしての長所を上手く活かした独特のものであるに対し
本作のRPGとしての細かなつくりは、どれもどこかでみたことのあるもの。


どこかでみたことあるそれらをどこかでみたゲームそのままでなく、
それらと比較してもなんら遜色なく仕上げていて、
また、前々作『6』である程度出来上がっていたものへ固執することもなく
改めて整えられていることに、文句のつけようはありません。
その前に、どこかで見たことがない仕組みだから偉い、というのは
遊んでいる私次第。あまりに一方的な見方。
例えば本作が私にとって初めて遊ぶRPGなら
どれもが目新しく独自独特斬新要素満載に素晴らしいのである。
どこかで見たことあるからあまり面白がれないは不当きわまりなし。


だがしかしけれども。
本作『ランスクエスト』は、そこいらの家庭用ゲーム機向けRPGと比べ
まったく劣るところのない出来のRPGではあるけれど
特にこれといってここが凄いというところもないゲームである、
というのが私の感想であることには違いないのであります。
どこかでみたようなものの組み合わせではあるけれど
その組み合わせの取捨選択調整は充分に良く出来ている。
特に大きな欠点は思い浮かばない。
しかしけれどもとがった長所もとくになかった。
なんというか、「オフラインRPGの現在汎用標準」みたいなつくり。


PC18禁という狭く限られた場において、そうでない広く全体のRPGと比べて
汎用標準と思えるような仕組みであることは凄いのかもしれませんが
ゲームとしてみるなら、みて、否PC18禁と比べているのだから、
「ふつう」と言える。
ふつうなのが凄いというのはPC18禁なのにすごいというに同じであり、
けれど、『戦国ランス』や『ランスクエスト』は
そうでないところとゲーム部分をくらべても遜色ない、と思うのです。
推測で6作目との変え様から、今作のつくりかた指向を
そのようにしたのかとも思いますが
そう狙って狙ったとおりに作れているのだとしたら
本当に凄い。普通でない。『ドラクエ』に並ぶ凄さだと思います。




もうひとつ、PC18禁のおけるRPGという点。
PC18禁分野について詳しくないですが
詳しくなく知らず慣れていないからこそ
この作品のお話展開、キャラクタの突飛さはすごい。
特に20年超に渡りシリーズの主人公を務める「ランス」は印象的。


数ヶ月前だか、『大悪司』という同メーカーの作品について書きましたが
同じひとが作っているらしくあるだけあり
この作品主人公も同じようなキャラクタ。
活力旺盛な男性。英雄ではなく自身と身内の利益が優先。
主人公であることを根拠とする悪運という強運の持ち主であり
強者であって法倫理道徳常識慣習宗教に囚われることなく
時にそれを利用し嘲笑しながらも、操られ利用され一面を叩いて逃げる。
悪知恵は回るけれども憎めない魅力を持つお調子者の乱暴者。
西遊記孫悟空のような種の主人公。


主人公でありながらその力は魔王を倒して世界を救うほどでない。
主人公ではあっても勇者ではない。孫悟空であっても釈迦の掌中。
物語を動かすのはその周囲のキャラクタたちであり
読者観客の立場にも立って快不快を共有する種の主人公。
主人公ランスは、常は怠惰そうにしているけれども
冒険の場においては誰よりも精力的、誰よりも長く動き働き続けます。
政治的金銭的栄光や名誉に興味はなく、戦闘で敵を斬ることが目的でもなく
ただ世界を冒険してまわることで活きる冒険者


こういう視点主人公を、
PC18禁で、RPGをしている作品に持ってくるということが面白い。
他にもあるのかもしれませんが、否18禁ではなかなかみられない、
お行儀の悪い主人公です。
また、RPGとして用意しなければならない物語という方向からも面白い。
「魔王を勇者が倒して世界を救う」
「旅の冒険者がヒロインを助けて悪を討つ」
「戦乱の中に正義を求めて騎士が征く」
われわれ物語を楽しみにする観客が、冒険の成功を目的とするからには
主人公がいかに自己中心にその場快楽優先で悪逆非道を行いたくとも、
白昼堂々民家に押し入りツボ割りタンス漁り
宝箱を盗賊の鍵で開けて奪うくらいは許されても、
最後までそれだけでは許されない。
また、PC18禁としては、それだけでも許されない。
いかに破天荒なようであるキャラクタであっても
魔王からと同じくして
RPGの主人公という羨まれるものであることからは逃れられないのだ。
ましてそれがPC18禁ならば、なおそこに懸かる期待はいや増すこと、
なのかどうかはともかくとして。