グラビティデイズ

GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動 - PSVita

正式名称は
GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動』。
「眩暈」と書いて「めまい」と読むのって面白いなあ。
「眩」は「くらむ、くるめく」、くらっとする感じで
「暈」は「halo」。FPSで光背。ぼやっとした感じも言うらしい。


横文字「GRAVITY DAZE」のグラビティは
FFシリーズはグラビデ系のおかげでか重力な感じなそれとわかるのですが
「DAZE」が問題。ぐらびてぃダゼ。グラビティなんとか。


今調べたら「DAZE」は眩暈のことらしい。
うん、さよか。
なるほど。せやね最初から横に書いてあったのね。
ちなみに摂動は律動に衝動を加えて生じるゆらぎみたいな感じのことなんである。
感じというのは便利なことばだ。




さてゲームの内容。
題名通り、主人公は重力を自在に操る存在。
女性だが高貴でも騎士でもないが、操るのはライトニング(自称)さんと違い本当。
重力を操って、空中都市の空から地下から飛びかつ跳び回り、
重力加速度叩きつけるイナヅマキックで敵粉砕するアクションゲーム。
これまで遊んだゲームのみたいなでいうと
飛び回れる立体『ライオットアクト』みたいな感じ。
街を普通行けない場所から眺めるのが楽しく、敵を一直線に蹴り飛ばすのが楽しい。


そしてとにかく、「重力を操って飛び回る」ことが
簡潔な操作で、明快なアクションゲームとして表現されているのが素晴らしい。
セガがたまに生み出してその存在意義を思い出させる傑作のひとつ。
出来上がったものだけをみれば他でも作れただろうけれど
思いついたものを最初にゲームの形に完成させ
そしてきちんと楽しく遊べるものに出来上がらせたところが偉い。
Vitaは本作以外に遊びたいものがなく、ながらく後回しになっていたのですが
このゲームのためだけでもゲーム機ごと買って良かったと思わせるに足ります。




あらためて、この作品の価値は「これまでに無かった」ところ。
具体的には「重力を操ることで」街中を自在に飛び、かつ跳びまわれるところ。
飛ぶことができ、また、壁やロープ上を駆けることができるものは多数ある。
けれど、主人公周囲の重力を操るという操作で、
飛び回ることもできてかつ、上下逆転、壁や天井を駆け回ったりもを
区別なく両方同時に表現しているゲームは無かった。


具体的には、主人公は自身の視点方向、
画面中心カメラが向いている照準無限遠へ向かって自身周囲に重力を発生させ、
周囲の街や自身と人々を律する通常重力を無視して
そこへ向かい落ちていくことで移動できる。
空を見上げ、上に向かって落ちていけば、
通常の地面から見上げて空へ昇っていくよう動く。
空中を落ちて移動している状態から、また別のあらゆる方向、左右上下斜め上斜め下、
見渡せる方向すなわちどこへでも、そちらを向き落ちていくことで、
地面から見ても自身の視点からでも、自由に飛ぶことができる。


また、建物の壁面に向かって落ちると、壁面を地面として、そこへ降り立てる。
そのまま歩き走り回りジャンプしても、
自身の主観視点が強制する地平面を維持したまま障害を越え建物の間を跳び渡れる。
地面と垂直の平面だけでなく
斜め屋根でも円柱の側面も地面として降り立て、地面として移動の足場にできる。
つまり作品舞台に存在する建造物のほとんどは、
着地平面があえて多様多方向へ用意されている。
空中都市の底面を天井に向かって落ちて貼り付き、世界の底を天に眺められる。
例えばメビウスの輪が浮いていれば、そこをゆっくり歩いて、周囲を望める。




同じ重力を題材にした3D舞台のアクションゲームとして
スーパーマリオギャラクシー』が良い対照となりましょう。
こちらは重力を自身に対して操ることができるのでなく
ジャンプしてダッシュしての動きを多彩に展開し表現するためのもの。
比べてみると、どちらも優劣なく同じ程度に
アクションゲームとしての正しさを感じます。
マリオギャラクシー』は、『グラビティデイズ』のように
重力を自在に操って跳び回ることはできない。
飛行機で、あるいは舞空術とかの超能力で空を飛んだり、
慣性を有意に敷衍して壁面を走ったり、
謎空間の謎天井に謎ワイヤーとか蜘蛛の糸を支点支持してターザンしたり、
空中ジャンプと空中ダッシュと空中連続ダッシュ切りという
だからこそ許される楽しい論理で重力をあるいは裏切ることができたとしても、
自在に操ることはできない。
2Dアクションゲームが3Dになって『マリオ64』になってから
マリオギャラクシー』へ進むのと、分かれて『グラビティデイズ』もある。


先の「舞空術」例のように
キャラクタが地面から離れ空を飛べるゲームは意外に多数あります。
わかりやすいのが『グラディウス』系の横スクロールSTG
ソルディバイド』も『ガンスタ』もこの系列。
通常飛べない昔のマリオであっても、水中ステージをみれば
バルーンファイト』が飛んでいるのだからやはり演出次第で飛べるのである。
これが3D、立体舞台を動き回るとなると誤魔かし効きづらい。
ある一時期、映る画面が所詮平面であること活かし
自機は見えないレール上強制スクロールして、視点カメラを誘導することで
立体で出来ていなくとも、上諸群と同様、見做しで奥行を表現する形式がありました。
自在に動き回れると操作が煩雑になって楽しみづらくなるし
またゲーム機の性能が追いついていないゆえ、というのも嘘ではなかった。
作る手間も膨大。
ゲームの場合、景色として立体に見栄え良ければ良いというものではない。
操作してそこへ向かって、あたり判定が見た目通りになければ、
上で言っている2Dの似非立体と何も変わらない。
現在の3Dアクションゲームでも、良く巨大な敵が出てきて
多彩な当たり判定を持ってはいるが
その敵の上に操作している対象が登ってみたりすることができることの稀さが
3D、立体舞台で遊べるということの無駄な大変さの一面を表しておりましょう。


グラビティデイズ』の舞台は、オープンワールドとかではない。
見えない壁はあるし、ステージ切り替えの読み込みは長い。
マリオギャラクシー』に比べて舞台仕掛けの豊富さを競えば勝負は明らか。
それでも、現在のゲーム機が表現できるようになった立体造形の程度へ、
昔からある、画面内を自在に動き回る要素に、
「重力操作」という古くて新しい糸で織り込んだ様式が見事である。
充分無駄がなく、必要十分美しい。
重力操作の切り替え時に、空中で必ず静止しなければならない不自由さも、
本来重力方向への自然落下によるカメラ位置リセット操作も、
あらゆる方向へ視点が向けれらることによるアナログのぐにゃぐにゃ感を
バンゲリングベイ』『エクセリオン』『ボンジャック』、
あるいは『ガングリフォン』のようなデジタル操作が整理してくれる。




重力操りゲーとしての発想だけでなく、アクションゲームとしても楽しい出来栄え。
攻撃はキックなのですが、もちろん敵の対面真向構えてだけでなく
空中浮かび上がってからの重力加速慣性を効かせた蹴りが主兵装。
どんな高さから落下してもリンクの前転受け身ばりに無傷な主人公ですが
いや重力操れるのだからリンクさんと違って当然ではあるのですが
イナヅマキックは反作用が来るはず。敵に攻撃打として機能するのだから
高い建物から地面に飛び降りたのと同じ衝撃あるはずですが
まあこまけえこたあいいんだよノリよそもそも重力操れるわけないだろ。
とにかく、空中キックを決めたあとは再び適度な高さに滞空するので
また視点中心に敵を捕らえて連続蹴りを繰り出すのである。
次々湧く敵をひとたびたりとも地に足つくことなくばきばき粉砕。楽しい。


もうひとつ独自の挙動がスライドダッシュ
重力を適度に効かせ、地面上からわずかに浮き上がっての高速移動。
F-ZERO』のあれな。こちとら重力操作やからね無敵やね。
操作はVitaのタッチパネルを利用。画面左右を同時タッチするとダッシュ開始。
レール形状地形とかループ形状コースもアイテムを誘導状配置して完備。
左右移動は傾きセンサーで感知。つまりWiiのリモコンコントローラのあれ。
スライドダッシュ中に片手側外すとドリフトで急カーブできる。
Vitaの機能をこれでもかと駆使である。おかげでVitaTVには非対応。
正直傾きセンサーもタッチパネルでなくとも良いような気がするというか
画面内の動きを操作することにそれでなければならない感がないのですが
XBOX360コントローラに対して自身の陳腐を認めない頑迷さだからねしょうがないね。


先のように遊びの広さでは『マリオギャラクシー』に敵いませんが
高くジャンプできる、高速で走れる、遠距離に攻撃できる、などでは表現できない
自身の特性を活かした動きはきちんと楽しめます。
上の2つの他にも、
周囲の物を浮かび上がらせ落として対空砲撃といったことも可能。
同一操作体系でアクションSTGにも展開できる。
物でなく街の住人を重力巻き込めば『クレイジータクシー』にもなり
続編があるなら、これの面でさらに大きな広がりも期待できるでしょう。




舞台は空中に浮かぶ都市。街の端からジャンプしてあっさりと奈落に飛び降りて
でもいつでも落ちることを無視して、見渡す限りのどこへも向かうことができる。
実際は機能の限界、見えない壁に囲まれていて見た目ほど自由はないのですが
端に行き過ぎて弾かれることはあっても
着地をしくじって落下ミスすることはない。


STGでいってみれば画面端から向こうには行けないが
地上地形に重なってもミスにはならないようなものでしょうか。
あたりまえのようにみえます。けれど『レイディアントシルバーガン』や『斑鳩』で
地形にぶつかって初めてそこにぶつかることに驚くひとと
同じ転回がそこにはある。


地上地形には当たり判定あってもなくてもそれぞれである。
巨大敵の上に這い登って振り回されずにへばりついて
急所をちくちくつついて倒すアクションゲームもあって良いのだ。
水中は見掛軽重力状態であり、横スクロールSTGは縦にも後ろにも移動できて良くて
重力を操ることができるのは地形仕掛けの専売特許でなくとも
主人公が自在に操って光速の異名を自称してもしなくても良いのである。
いろいろあって良い。今まで無かったもしくは作れなかった。
けれど新しく新しいものができた。知った。
知って広く利用し大きく拡がって、そこにまた新しいゲームが期待できるのである。