『王様物語』

 王様物語 - Wii
 公式サイト http://www.mmv.co.jp/special/game/wii/project_o/

・製作している会社のうち、『アナザーコード』とかを出していたCING
 このゲームを出したあとで破産申請手続き、いわゆる倒産状態にあるそうな。
 ここ数年というもの、社会人としてお客様に商品対価にお金を頂く身としては
 中古市場の理屈でないところでの認めがたさはわかるので、
 本でもゲームでも新品で買っているのですが
 このゲームを買ったのはソフマップのワゴンで\1,000だったからであり。
 ああ無常。
 

・パッケージや画面をみても一見どういうゲームがわかりづらいですが
 『ピクミン』のようなゲームである。
 王様になって、国民を引き連れて敵に突撃させて国土を広げ
 落ちているものを拾い集めて国庫に溜めて新たに施設を増設
 国民を兵士とか魔法使いとか建築士とかにできるようになり
 それで倒せなかった敵も倒せるようになる、以下繰り返し、という進行。

・『ピクミン』と同じく、自分は何もできず、部下をいかに使いこなせるか。
 この敵を倒すにはどうするか、この先へ進むにはどうするか、
 あのアイテムを取るには、国民をどの職業に付かせて
 それを国庫予算と王様活動計画に照らして
 どのくらいの割合用意すると効率良いか。


・『ゼルダ』とかと同じく、
 当面するパズルを現状できる手段の組み合わせで解く、
 それに舞台を冒険するRPGてきなふんいきを持たせたもの。
 加えて、
 『ゼルダ』がリンクになって剣を振り回すアクションが楽しさであるのに対し
 『ピクミン』は「リアルタイムストラテジー」とか呼ばれるジャンルで使われる
 集団の一部はあそこへ突撃、おまえらはあっちの敵を牽制、
 残りはおれの周りでまもれ、というような指示をする
 アクションゲーム的な違いを持たせたもの。

・『王様物語』の『ピクミン』との違いは
 国土を増やして国民を増やして、国民はピクミンと違って使い捨てでなく
 侵攻して得てきた領地も使い捨てでない蓄積てきなふんいき。
 その「ステージ」をクリアしたら
 「次の面」ではまた部下資産がゼロから始まるという、
 いかにもパズルゲームふうの方式でなく
 全部つながって、稼いだレベルは下がらず時間をかけただけなんとかなる方式。



・『ゼルダ』は変わらず新作が出ているのに
 『ピクミン』は『2』がでてから続編のおとさたがなかなかないのはどうしてか。
 どうしてかしらないですが、
 個人的には『ピクミン』は『2』までの感じ、それほど面白くなりそうもない。
 リアルタイムストラテジーで対人対戦するほうが面白いし
 わらわら輸送パズルゲームとしては『レミングス』のほうが面白い。
 この両者の枠内、どちら共の以下、が『ピクミン』であると思うのです。
 『2』まで遊んだ感想としては。

・『王様物語』は一応、『ピクミン』を踏まえて
 もうすこしひねって新しい面白さが出せないか、としたゲーム。
 であるかどうかはしらないのですが、遊んだほうとしてはそうである。
 実際ステージクリアパズルゲームから領土拡大王様RPG風にしたのは
 それほど間違っているわけではないと思うところであります。


・しかし『王様物語』は決してできの良いゲームではない。
 なぜ作っているひとはわからないのか、はたからあとからみると不思議だが
 世の常人の常、岡目八目有象無象の後出し意見。


・『エルビッツ』とかもそうだったのですが
 Wiiという場から予想したと思われる想定対象年齢向けに仕立てた
 絵本のような画作りは丁寧で良い仕事。
 であるけれど、ゲームとしては国土を歩き回るのにいろいろ無駄が多い。

・何より主人公の背景がうすい。
 物語を推進させていく力が設定にまったくない。
 なぜ王様となった主人公の子供は世界を侵略していくのか
 上から見ていてさっぱりわからず同意できない。
 囚われのお姫様を助け出すという理由も後付けの上に以後も希薄だし
 国民が王様のために働く理由、国民とは何かも説明なし。
 子供のみた夢でもよいのだけれど
 ゲームとして、RPGのような「王様の物語」を提示しようというなら
 子供の夢だけでは駄目なのではなかろうか。


・部下を使うアクションゲームとしても面白さがない。
 RPGで、蓄積だから、部下の数さえ増やせばアクションが上手くなくとも
 なんとかなるようにしたかったのは察せられるが
 リアルタイムストラテジーと比べてどうか、と思わなかったのだろうか。
 『ピクミン』があんなものだからこんなもので良いか、と思ったのだろうか。
 それとも部下を引き連れての戦いは物語の山場ではなく過程のひとつか。

・具体的にいうと、拳や剣を振り回したり銃で撃ったりして敵にあて
 敵の攻撃を防いだり避けたりするアクションの楽しさは
 部下人数があるていど少なくないといけないのに
 リアルタイムストラテジー風、人数いればなんとかなる、のため
 人数職業揃えないと手間がかかるばかり、に仕上げてしまったところが駄目。
 人数や新職種を揃えなくとも解ける。でもそれは時間をかければ、ではなく
 アクションゲーム操作が上手ければであるべき。 



・話は『王様物語』から離れて大きくなるのですが
 ゲームは、テレビゲームは
 アクションゲーム、操作する楽しさ、操作が上手いほど上手くいく楽しさと
 パズルゲーム、用意された問いを知識で知っているかでなくて解く行為と
 舞台背景とか登場人物とか画とか音とか物語を読み観味わい感ずる楽しさ、
 主としてこの3種の楽しさを組み合わせたものであります。
 それぞれ主として、ACG、SLGAVG。という名前が付いている。

・アクションゲームにも
 登場人物や舞台設定があって、感動の物語があるものもあり
 たとえば音ゲーリズムゲームのように、そこが希薄なものもある。
 パズルゲームもアクション要素と不可分なもの、
 歴史SLGとして背景世界あって、そこに物語を想像してこそのものがある一方、
 『数独』や『上海』のような純記号論理もテレビゲームとして楽しくになりうる。
 アドベンチャーゲームと呼ばれるものは
 アクションゲーム、パズルゲームのゲーム的なそれを除くと
 ゲームではないもの、小説や映画や舞台を観るのと違いが残らないが
 アクションゲームやパズルゲームの要素を次第に加えていって
 結果それがRPGと呼ばれる何でもありのものになるまでいたらなくとも
 わずかな、Aボタンを押すだけという行為にも、
 テレビゲーム機で楽しむ必要と理由はありうる。

・ACGもSLGAVGも、RPGも、そのゲームルールを遊ぶとき
 どの部分が楽しいのかは明らかになっているが
 それを組み合わせて従来との違いを持たせて新しさを作るのは
 作ったことがないので知らないのですが
 なぜか難しい、失敗しているゲーム作品は少なくない。
 
・試しに遊んでみれば、アクションゲームとして、パズルゲームとして、
 その組み合わせの結果として
 従来のそれらと比べてどうか、わかるようだが
 それらと並び超えていなければ
 ならないわけではないところがまた難しいのか。

・例えば、ゲームはひとりで遊ぶより
 複数人で遊ぶほうが楽しいものになりやすい。
 アクションゲームでもパズルゲームでも、RPGでも、
 ゲームでなくともそうである。
 しかしそれを知っていても
 つねに気づいていることは人間にとって難しい。


・また一方で、別の見方もある。
 芸術作品と呼ばれる、音曲や演奏や演劇や絵画や詩歌を眺めても
 その良さはさっぱりわからない。
 何もないところから、その作品へ至る高さをみてとる、あるいは
 従来作られてきたさまざまな作品を知り、それとの差や変化を捉えて
 流れの中に位置づけることで価値を見出す、
 そういった行いが必要のようである。
 教養である。造詣である社交である品位である。

・テレビゲームも、
 アクションゲームやパズルゲームを遊んでいて楽しいというほかに
 それらとそのほかを組み合わせてできた作品として
 そういう捉えかたを、作るほうも評価したいほうもしたいされたいところもある。
 思い入れを込めたいものが
 より誰からみても優れてあるほうが喜ばしい人情である。



・個人にとっては、何々であればよくとも
 誰かにとっては、何々でなければならない。
 評価はそういうようについてまわる。
 私にとって、ゲームの面白さはどうこうと評価することは、
 つまり面白かったものに後付けで思い入れを込める理由である。
 良くできていて何か目新しいこと。しかしそれ以前に遊んで楽しめたかどうか。
 面白いとは何か。楽しいのはどうしてか。
 良くできているとはどこか。新しいのはなぜか。どうやったらより良いか。
 そういうように問うのは、
 ゲームに比べれば楽しいくないことはあっても楽しく
 より楽しくゲームを遊ぶために
 記録して、積み上げて、効率を上げるためにある。