「ゲーム批評 Vol.59」

kodamatsukimi2004-11-14


 マイクロマガジン社 10月3日発売 ¥780

 公式サイト http://www.microgroup.co.jp/game/

・今回の特集は「ゲームソフト再批評」、
 「ゲームが消える!?〜古いソフトはどうなるのか〜」。
 どちらも面白かったです。


・巻頭に「ゲーム業界トピックス」と題して
 毎回ゲームに関する話題について解説しているのですが
 今回はここにも注目。

・「アーケード復調の兆し」。
 希望的観測でまとめられていますが
 「箱もの」であるだけに家庭用機のように海外に市場を求めるわけにもいかず
 拡大もせず消滅もせずの相も変らぬプライズ中心。
 カードゲームはお金と時間の多寡に寄ってしまいますし
 ゲーマーにとっては格闘ゲームと、
 アーケードでしか成り立ち得ないシューティング発表の場、
 といったところではないかと思われます。

・「好調のコーエー」。
 「無双」がいつまで売れるか、「決戦3」は新基軸となりえるか。
 「決戦3」は未発売ですのでなんともいえませんが
 「無双」がいつまで続くかは確かに怪しいところです。
 「バイオハザード」のように飽きられてしまうのか
 それとも「ウイニングイレブン」のように定番として定着、
 ハード性能に合わせて進化を続けるのか。
 「信長」「三国志」はまったく別のゲームだと思うのですが。

・「D3パブリッシャーのESP買収」。
 これは知りませんでした。
 久しぶりにESPのサイト(http://www.esp-web.co.jp/)に行ってみると
 確かに「はじめの一歩」の会社になっています。

・ESP(エンターテイメントソフトウェアパブリッシング)は
 ゲームアーツが中心となり、角川書店が資金的バックについて
 トレジャー、ネバーランドカンパニー、スティングなどが参加していたパブリッシャー。
 ゲーマーには有名なところ。
 ゲームアーツhttp://www.gamearts.co.jp/)は
 なんと2年以上前からサイトの更新をしていません。
 XBOXで年末にでる「ガングリフォン・アライドストライク」(http://www.tecmo.co.jp/product/gungriffon/index.htm
 はどうなっているのか。すっかりテクモの下請けか。
 PC、MD、SS時代のゲームアーツからすれば実に無常観漂います。

・「はじめの一歩」、GBA版はトレジャー開発ですが
 これがまた下請け仕事、トレジャーらしからぬ駄目なゲーム。
 PS版などの開発は「ボクサーズロード」で知られるグランプリ。
 実質現在のESP、すなわちグランプリなのか。
 D3はCD、DVDのレンタルでお馴染み「TSUTAYA」を経営する
 カルチュア・コンビニエンス・クラブhttp://www.ccc.co.jp/)の一部門。
 ゲームを作ることしかできない開発メーカーと
 販売のプロフェッショナルとの違いというところでしょうか。

・どうなるのかゲームアーツ
 もはや携帯アプリのG−mode(http://www.g-mode.co.jp/)が本業状態。
 勿論そうなのでしょうが悲しいです。


・前振りだけでえらく長い。
 どれも面白いテーマなので今後も注目であります。


・さて特集「ゲームソフト再批評」。
 ゲーム批評も今号でめでたく10周年ということで
 過去にソフト批評を行ったものを
 現在の視点から改めて見直すのが今回のテーマ。
 担当ライターがそのソフトを取り上げた理由、
 そのジャンルについての今後への提言をしている点が面白い。
 これは一般のソフト批評で行っても面白いかもしれません。

・いくつか見ていきましょう。


・まずは「Doom」。
 現在日本以外では一大ジャンルとなっているFPS全ての土台となった作品。
 発売は’93年12月。PC。ウインドウズ95より前、PS、SSの一年前。
 ゲームが平面の2Dから立体の3Dへ大きく視覚的変化して
 素人目にも革新的なゲームが次々に誕生していった頃。

・FPSはそのようなハードの技術的進化に合わせて生まれたジャンルで
 他の3Dアクション、3D格闘ゲーム
 そして現在ほとんどのゲームに3D表現が使われているように
 ゲームにとって大きな転換点となった時期の作品です。

・FPSは日本では受け入れられませんでしたが
 その代わりを果たしたのが「バーチャファイター」、
 あるいは「リッジレーサー」だったのでしょう。
 なぜFPSが日本では受け入れられないか、これがテーマといえます。


・次は「バイオハザード」。
 発売は’96年3月。PS初期を代表する3Dアドベンチャーゲーム
 「アローンインザダーク」の模倣、いや「スウィートホーム」が元となっている、
 いろいろいわくがありますが
 PSを買った人にとってわかりやすいゲームだったのが一番。

・新しいゲーム機のいままでにないゲーム。
 それが決して初心者向けでない操作性を乗り越えて
 多くの人に受け入れられた理由です。

・3Dゲームという分かりやすい変化から10年、
 明確に新しいゲームは生まれているのか。
 あまりゲームをしない層にも訴求する次なる「バイオハザード」は何か。


・そして「バイオハザード2」。
 ’98年1月。
 「1」は恐怖を演出するホラーアクションアドベンチャーであったのに対し
 「2」はヒロイック(英雄的)アクションアドベンチャーであり
 本質を失った別物。
 「デビルメイクライ」こそが「2」の続編である、という内容。

・ディレクター神谷英樹さんによる「デビルメイクライ」と
 「ビューティフルジョー」に感じるのは
 なぜ舞台となる建物に、いかにも不自然な仕掛けが施されているのか、という点。
 ゲームだから、そういうものだから、そこがアドベンチャー要素だから。

・「ゼルダ」にしたいのか「ロックマン」にしたいのか。
 3Dアクションゲームとはどうあるべきか。
 「時間の砂」も「どろろ」も面白かったし
 「時のオカリナ」は間違いなく名作ですが
 「デビルメイクライ」「ビューティフルジョー」は
 関係ないところで詰まるのがなんとも不自然です。
 「風のクロノア」も同じです。


・「ビートマニア」。
 ACでの初登場は’97年。
 その後の「ダンスダンスレボリューション」などに続く
 「音ゲー」という新ジャンルを作り出した作品。
 しかし内容の高度化、難易度の上昇が
 初心者お断りの雰囲気を作り出し、一過性のブームに終わってしまった。

・これはシューティングにも対戦格闘にも言えることです。
 そもそもゲームセンターのプレイヤーとは
 1回の料金に見合うゲームの経験か、お金がある人。初心者ではありません。
 そして「音ゲー」は初心者向けである家庭用機向けではなかった、
 それゆえにアーケードの固定層にのみ支持されるジャンルとなった、
 ということ。

・「音ゲー」はやがて廃れる流行ではなく
 ゲームセンターに根付いた新しいジャンルであり
 「EyeToy:Play」が受け入れられないように
 家庭用には向いていないのではないでしょうか。
 難易度の問題ではなく、「太鼓の達人」のような解りやすさこそが大切だと思います。
 画面の1/3しか使わない「ビートマニア」は解りにくい。
 

・「巨人のドシン
 N64DD(ディスクドライブ)での発売は’99年12月。GC版もあり。
 本作の特徴は目的がないこと。
 用意されているのは遊び場であって、そこでプレイヤーが何かを作りだす遊び、
 砂遊びのような自由な作る喜びを楽しむゲーム。
 そしてそれこそ、ゲーム世界をプレイヤーが作りだすというゲームの本質である。

・ゲームの本質という大きなテーマです。

・テレビゲームは砂場遊びなのか。
 違います。ゲームには目的はなくともルールがある。
 それは砂場遊びのように、一人だけでも自分の自由に世界を作り出せる、とは違い
 コンピューターが審判であるきまりごとのある世界での、遊びだからです。

・究極に自由なゲーム。それは各人の頭の中にしかない。
 誰かの作ったルールに縛られるあらゆる現実世界の諸々に影響されれば
 それは自由ではありません。
 すなわちゲームとはルールというきまりごと、制限がある世界。

・ゲームの本質は目的のないこと、だれかのルールを消費する遊びではなく
 自分の自由な世界を生産する遊びなのか否か。

・きまりごとのなかでつくりだす世界。それがテレビゲームだと思います。


・「スターホース
 アーケードのメダルゲーム、競走馬育成ゲーム。稼動は’00年。
 従来のどの馬が勝つか予想してメダルを賭ける、
 という現実の競馬の代替でしかなかったものに
 育成の要素を持たせることで
 積極的にメダルを消費して育てることに転換させた革新性。

・家庭用機では「ダービースタリオン」が’91年に発売されており
 その時点で馬券の勝ち負けでなく育成が目的となる内容が作られていました。
 また「ダービーオーナーズクラブ」が前年の’99年に出ており
 このメダルゲーム版である、という見方もできます。

メダルゲーム。ゲーマーと呼ばれる積極的にゲームを楽しむ層からすれば
 なぜあのようなものにお金をつぎ込むのか理解しがたいところ。
 暇つぶしなら対価があるパチンコの方が良いのではないかと傍目には思います。
 しかし大人にとっては、パチンコはギャンブルであって遊びであって
 暇つぶしではなく
 メダルゲームプライズゲーム(UFOキャッチャーの類)もそしてビデオゲーム
 遊びではなく暇つぶしなのです。
 価値観の違いです。

メダルゲームはゲームなのか。ゲームとメダルゲームはどう違うのか。
 興味のないひとからすれば、どちらも暇つぶし、時間の無駄でしかないものです。


・「Air」
 んー、PCで発売された18禁のアドベンチャーゲーム
 そのゲーム性とは読み進める自由がプレイヤーにあるから。
 ということのようですが、これは難しい。

・何よりそれはこの作品に限ったことなのか。
 例えば「月姫」「Fate」だとか「ToHeart」などの
 類似のノベルゲームとどう違うのか。
 そして小説を読むのとどう違うのか。

・ノベルゲームがゲームであるのはどこがゲームなのか。
 これは難しいです。


・さて「ゲームソフト再批評」という枠でくくれるのはこれくらいでしょうか。
 その意義は例によって多根清史さんが解説しています。ので略。

・ゲームの市場価値が定まったものを改めて見直す、意義のあることで
 そして面白いです。
 「ユーゲー」の持っているスタンスでもありますね。


・さて第二特集は、と行きたいところですが
 そろそろお時間また次回。