立体チャンバラ大活劇『Kunoichi』

 PS2 セガ '03年12月4日発売 ASIN:B0000CE7IB
 公式サイト http://kunoichi.jp/index.html
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft/act/kunoichi/index.html


・昨年は新撰組、今年は源義経NHK大河ドラマに合わせたゲームが
 最近多数発売されています。


・そのこころは、売れるからとか古典が元で版権がないからなどはもちろん
 ゲームにしやすいから。


・日本人なら時代劇のあの様式美、お約束の世界がやはり好きだからです。
 お忍びの将軍様や水戸のご老公、刀を返して峰打ちばっさりばっさり。

・一方的に名も無き悪人AとBを
 返り血一つ、汗一滴かかずに歯をキラリと光らせてさわやかに倒す。
 チャンバラの爽快感には老若男女変わりなし。


・そしてその楽しさは、とてもゲーム向き。
 圧倒的強さを持つプレイヤーキャラクター、すなわちお話の主人公様と
 切られ役プロフェショナルの敵キャラクター皆様。
 その力の差は圧倒的で許されるし
 笑えるほど明確であるのがゲームとして正しいのです。



・チャンバラをゲームで楽しむために、様々な手法がとられています。
 その代表が前回も挙げた『無双』シリーズ。
 敵は圧倒的に弱い。大将格の敵も碌に防御もしないあっけなさ。
 雲霞の如く群がる雑魚は、主人公ただ一人になぎ払われるためだけの存在。


・一方で元気(http://www.genki.co.jp/games/index.html)の
 『剣豪』シリーズ、『風雲』シリーズなどは、また別のやりかた。

・これら、なかなか複雑なシステムですが
 端的に結うならカードゲームのデッキ式。

・修行などで習得した技(アビリティ)を
 コマンドとしてあらかじめセットしておく。
 対戦時は攻撃、崩し、待ちの3すくみを相手と読み合って選択し
 間合いを見切って、セットしておいた技を出す。

・3すくみの勝ち負け、間合いのタイミング、技の特性、
 その3要素がからむ複雑ジャンケン。


・『用心棒』(ASIN:B000075AVO)『椿三十郎』(ASIN:B000075AVP)の
 三船敏郎仲代達矢の血飛沫舞う一騎打ち。実に燃えます。必見です。

・この一騎打ちの素晴らしさをゲームで表現すべく努力しているのが
 これらのやりかた。
 見た目いまいち地味ですが、目に見えない駆引き飛び交う静かなる戦い、
 一瞬の決着。そこが燃えです。

・ただもうひとついろいろな面で完成度が低いのが残念なところ。


・対戦格闘にも、もちろんチャンバラの楽しさがあります。
 『ソウルエッジ、キャリバー』『侍魂』。
 基本的に一撃では勝負が決まらない、
 武器は手足の延長であり、その違いは間合いの広さだけ、
 等々の嘘をつくことで成立するゲーム的チャンバラ世界。
 『剣豪』の地味さ、操作の縛りをなくして、高速自在に駆引きを味わうもの。


・『無双』、対戦格闘との、ゲームとして見て大きな違いは防御性能。
 敵の攻撃を読んでさえいれば完全に防御でき
 たいがいカウンター、逆転の機会となる。
 相手は切られ役、木偶の棒ではない。
 高い体力と攻撃力で力任せ、パターンに沿って襲ってくる敵ではない。


・チャンバラとして成立するのはどちらか。
 もちろん両方。ただその向かう方向は異なります。
 爽快感か、駆引きなのか。

・『無双』はこの先、どのようにチャンバラの爽快感を表現するのか。
 対戦格闘は駆引きの楽しさをどのように表現していくのか。



・そして『Kunoichi』は、これらとはまた違った方法で
 チャンバラの楽しさを表現している作品です。



メガドライブ時代から続くセガの『忍』シリーズ。
 よくある2D アクションでした。
 『忍者くん』『影の伝説』『ローリングサンダー』。
 UPL『阿修羅』が本物、ジャレコ『じゃじゃ丸』は真似。
 といいたくなるのがマニア。まあ、面白ければどうでも良いです。

・それが『Kunoichi』の前作『Shinobi』(ASIN:B0000AFZK0)において
 久しぶりに本格3Dアクションとして復活。
 『Shinobi』公式サイト http://www.segawow.com/shinobi/

・どんなゲームかは、こちらのムービーをどうぞ。
 http://www.sega.com/gamesite/nightshade/content.html
 (音が出るので注意;GALLERY→MOVIEをクリック)
 かなりカメラ操作に気を入れて補正していますが理想的にはこのような感じ。
 実際のプレイ画面はこちらで。
 http://kunoichi.jp/timeattack.html
 実にステキなゲームです。実際に自分ができるかどうかはともかく。


・『Shinobi』はともかく『Kunoichi』がかなり逝かれたデザインとなられたのは
 やはり海外市場を意識したからなのでございましょう。
 『Shinobi』が20万本と出来過ぎの当たりだったこともあるでしょうけれど
 『Kunoichi』はワゴン\1,000で山積みです。

・両者の違いは操作体系まわり。どちらが劣っているともいえない違いで
 他の完成度、ロード周り、操作レスポンスやマップ構成の出来栄えは充分なので
 どちらもお勧めです。

・見た目は慣れます。
 難しさは好み次第。
 イージーでもクリアできないほど理不尽に難しいところは有りません。


・忍者ではなく『Shinobi』。とてもセガらしいゲーム。
 間違った格好良さ、天然と評される難易度。
 良くできているのに方向がどこかずれている。

セガのゲームは作っているひとが
 ゲームが好きだから作っている、ということが伝わってきます。
 けれど難しさや動かしたときの楽しさを優先して見た目を後回しにする不器用さ
 売り方の下手さ、商品としての完成度。これでは売れない。
 そこが見ていて愛せるところでございます。あたりはずれも大きいですが。



・『Shinobi』『Kunoichi』は見た目こそ奇天烈ですが
 内実は伝統的なアクションゲーム。
 自キャラクターが一方的、圧倒的に強いアクション。

・例えば『スーパーマリオブラザーズ』。
 移動速度、攻撃力。
 こちらがクッパ、敵としてマリオが立ちはだかったならば相当に苦戦するでしょう。

セガの対抗馬『ソニック』。
 奈落への落下以外基本的に無敵の性能は『Shinobi』につながるところ。


・もちろん『魔界村』『悪魔城』のように
 こちらの弱さが際立つゲームも多数あります。

・アクションゲームの楽しさは繰り返すほどに上手くなること。
 速く早く正確無駄なく華麗にクリアできるようになる。それが楽しい。

・自機と敵、あるいは様々な障害との性能差、強さの差は
 如何に自在闊達コントロールを成し得ているかの違いではなく
 そこに工夫が必要か否か。
 立ち止まって、決まりきった動きをすることで教えてくれる型を、
 パターンを構築する必要が有る無しかの違い。

・パターン学習、積み重ねの楽しさか、アドリブ、爽快感の楽しさか。



・『Kunoichi』の敵は弱い。一撃で切り倒せる。
 防御してくる敵も後ろに回るかガード崩しのアクションを派生させて
 より派手に立ち回らせるための補助台でしかない。
 高速で敵から敵へと飛び回り、道至ればボス敵も全て一撃。


・処理落ち、バレットタイムのように全てが遅く動くのではなく
 ソニックのように自機だけが速く動けるゲーム。  
 敵の配置、パターンを学習し、完璧にパターンを構築して
 瞬間に敵を殲滅する。


・そう、自分だけが圧倒的に強い。
 忍者ではなく閃光の剣使、『Shinobi』『Kunoichi』となって
 『ガントレット』のように泥臭く叩き潰すのではなく
 『無双』のように群がる敵を掻き分けるのではなく
 高速にひとりづつを華麗に仕留める。
 それが殺陣(たて)。和の様式美。
 それがこのゲーム。甘美なるチャンバラアクションゲームです。