3Dアクションを表現する

・『Shinobi』『Kunoichi』のインパクトはその3Dアクションにあります。
 立体世界を駆け回る大活劇。
 けれどそこがまた粗でもあります。


・3D(dimension、次元)で表現される世界。
 2D、つまり平面のテレビ画面に3D、奥行きのある世界を描写するのは難しい。

・そもそも、錯視(例;http://www.michaelbach.de/ot/)や
 騙し絵(例;http://gprime.net/images/sidewalkchalkguy/)のように
 2つの目で立体を正確に捉えることからしても一筋縄でない。

・その上、ゲームでの視点は多くが常に運動しているのでさらに複雑です。


・主観視点、目で見たそのままを画面に映せばまるで距離感がわからない。
 FPS(ファーストパーソンシュートあるいはシューター、シューティング)、
 一人称視点でのシューティングゲームでは
 だから距離が適当でも良い銃を撃つしかありません。

FPSで剣を振り回すのは無理がありすぎる。
 アトラスの『魔剣エックス』『シャオ』が良い例。
 間合の見切りが命。日本人が大好きなチャンバラは
 やはりTPS、三人称視点でなければ成り立ちがたい。


・その意味では2Dを横から見たもの、
 つまり『マリオ』『スト2』、以後の系譜が
 もっとも間合いを2Dのテレビ画面でつかみ易く活用できるものと言えます。

・けれどそこには嘘がある。
 縦一文字に振り下ろした剣は、横に、
 横から見て奥か手前にかわせるようにならなければ
 やはりそれ以上の発展はないのでしょう。
 
・アクションをいかに表現するか。
 2Dより3D、チャンバラならFPSよりTPS。それが現在の答え。
 けれどTPSで、2Dアクションほどに距離の駆引きに答えられるのかといえば
 現在でそうとは言い得ません。



・もうひとつ問題がカメラ位置。
 3Dで作られたゲームフィールドをキャラクターが動くとき
 それをどこから見るのか。どこから撮影すればより効果的か。


・この世界では撮影カメラはとても高性能。
 大きさゼロ、移動制限一切なし。どこからでもどのようなアングルでも撮影可能。
 わざわざ俳優にワイヤーで浮いてもらう必要はありません。
 違いのわかる映画監督としては大喜びで芸術的カメラ目線を多用したくなるところ。

・映画ならそれで良い。
 けれどことはゲーム。
 そのカメラに映っている俳優は、脚本通りには動いてくれはしないのです。

・気まぐれ勝手に3D世界を動き回るキャラクター。
 それを2Dのアングルでいかに見やすく捉えるか。
 それが3Dゲームのカメラ問題。


・これには絶対の解決はおそらくなさそうです。
 4以前の『バイオ』の様にカメラを固定してしまう。
 プレイヤーにもカメラを動かすことができるようにする。
 『64ゼルダ』Z注目のような手段を持たせる。
 
・けれどやはり、アクションゲームにおいて、その問題の多くは
 開発者が動きを想定して手付けで補正を掛けておくしかないでしょう。 
 個人のセンスと知識の蓄積が現在の解法。



・多くの3Dアクションは新しい世界を見せてくれています。
 縦に横に、そして奥へと広がる世界。
 『Shinobi』『Kunoichi』でもニンジャらしく縦横無尽に駆け回ります。

・2Dが3Dになることで、よりリアルになる。より選択肢がひろがる。 
 けれどリアルは嘘である。
 けれど操作はより難しくなる。


・なぜ、何十メートルのビルにも駆け上がる忍が
 走行中とは言え数メートルの高さのトラックから転落してゲームオーバーになるのか。
 リアル現実の世界と、仮想のゲームとして求められる現実との二律背反。
 見た目に引きずられるゲーム世界のきまり。 

・そして3D世界のキャラクターを操作する最適解とはどのようなものか。
 まだ想像もつきません。



・3Dの中にゲームはあっても、それを2Dでしか表現し得ない。
 FPSドライブゲームスポーツゲームとは違う、
 現実ではできないことができる、ということを、表現する難しさ。
 まだ発展途上なのが3Dアクション。

 
・だからこそこれからが期待できる。


・そしてそう、現実にはできないことを表現できる。仮想して楽しめる。
 それがゲームの素晴らしさなのです。
 





・ちなみにF(ファースト)PS、T(サード)PSがあるなら
 S(セカンド)PSはないのでしょうか。
 うーむ、二人称視点シューティング。


・……ふふ。思いつきましたよ。
 プリント倶楽部http://www.atlus.co.jp/am/printclub.html)。
 これこそまさに「SPS」。
 私に対するあなたからの視点。客観でなくあくまで私だけを捉える視点。
 そしてシュートでなくショット。
 セカンドパーソンショット。略してSPS。

・そのゲーム性は4次元世界に広がっているので
 下手なFPS、TPSは太刀打ちできません。
 さてはて、このゲームに果たして勝てますかな各々諸兄。