完成されたゲーム「不思議のダンジョン」

kodamatsukimi2004-09-17



・前回書きました「チュンソフトはどうなるのか」。
 今回はそれについてさらに書いてみたいと思います。 

 チュンソフトサイト http://www.chunsoft.co.jp/
 ゲームリスト http://www.chunsoft.co.jp/game/gamelist.html


チュンソフトは「ドアドア」「ニュートロン」を開発した中村光一さんが設立。
 「ドラゴンクエスト」シリーズをエニックスのもと製作。
 SFCからは、「弟切草」「かまいたちの夜」などのサウンドノベル
 「トルネコの大冒険」「風来のシレン」の「不思議のダンジョン」で知られています。

・ひとつひとつのソフトをしっかりとつくりこむメーカー。
 どれもが安定した面白さを持っています。
 特にこだわりあるのが操作性。
 キーコンフィングをオプションに付けないのは
 常にベストな操作方法を吟味しているからだそうです。
 GB版シレンはちょっとつらかったですが。


・最近では前回挙げたPS2「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」、
 GBA「シレン・モンスターズ NETSAL」、
 GC「HOMELAND」、
 3本の新機軸ゲームを製作。

・「HOMELAND」は2004年発売予定ながら、どのようなゲームなのか不明。
 RPGということで、なかなか大変なのでしょうか。
 「ドラクエ」のノウハウが生かせるのか。
 そもそもGC自体が危険水域。心配です。


・ゲーマー的チュンソフト注目ソフトは「街」と「不思議のダンジョン」シリーズ。

・前回も触れました「街 運命の交差点」。

 公式サイト http://www.chunsoft.co.jp/game/machi/index.html

 実写サウンドノベル
 サウンドノベルとは画面写真を見るとわかるように
 グラフィックの上に文章が表示されるアドベンチャーゲーム
 PCのゲームによく見られます。
 基本的に静止画でテキストでストーリーが展開するもの。

「街」が高い評価を受けるのは、その斬新なザッピングシステム。
 公式サイトの説明がわかりやすいです。

 
・そして「不思議のダンジョン」シリーズ。
 「ドラクエ4」のキャラクター、トルネコが主人公の「トルネコの大冒険」。
 チュンソフトオリジナルキャラの「風来のシレン」。

・ローグ系ゲームです。
 「ローグ」とは何か。
 ゲームのシステムを言葉で説明するのは難しい。
 「rogue」はもとはUNIXというワークステーション(業務用コンピュータ)で
 作成されたゲーム。
 著作権放棄されているため、パブリックドメインとして
 様々なクローンソフト(コピーではない)が作成され
 PC使用者によって広がったもの。
 それをチュンソフトが家庭用ゲーム機にアレンジしたのが「不思議のダンジョン」。

 参照サイト ローグへの招待     http://www.izu.co.jp/~at-sushi/rogue/
       ウィキペディア;ローグ http://ja.wikipedia.org/wiki/ローグ

・ローグ系ゲームはデータ量が軽くアレンジによって作成が容易なためか
 様々な種類が作られています。
 フリーウェアのものも多いです。

 アングバンド(日本語版) http://plaza16.mbn.or.jp/~irisroom/index.html
  ;「指輪物語」で知られるJ・R・R・トールキンの世界観をモチーフにしたもの
 変愚蛮怒         http://hengband.sourceforge.jp/
  ;アングバンド系。
 XAngband     http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~iks/xangband/
  ;アングバンドの簡易系。易しい。
 ダンジョンエターナル   http://www.s-star.dal.sh/~dungeon/index.html
  ;見た目をそれなりにしたローグ系作品。通称「だんえた」。


不思議のダンジョンシリーズは以下の通り。

 「トルネコの大冒険」 SFC ’93/9/19
 「風来のシレン」   SFC ’95/12/1
 「シレンGB」     GB ’96/11/22
 「トルネコの大冒険2」 PS ’99/9/15
           (GBA ’01/12/20)
 「風来のシレン2」  N64 ’00/9/27
 「風来のシレンGB2」GBC ’01/7/27
 「女剣士アスカ見参!」 DC ’02/2/7
            (WIN’02/12/20)
 「トルネコの大冒険3」 PS ’02/10/31
           (GBA ’04/6/24)
 「風来のシレン月影村の怪物〜」WIN(シレンGB1のPC移植)
                ’02/12/20
 「トルネコ2」「3」開発はPS2版「ドラクエ5」のマトリックスhttp://www.matrixsoft.co.jp/)、
 「アスカ」開発はネバーランドカンパニーhttp://www.n-land.co.jp/)。

・ほかにもスクウェアが「チョコボの不思議なダンジョン」を出したりしています。
 もっともこれは、不思議「な」ダンジョンであって「の」ではないのですが。

 「チョコボの不思議なダンジョン」サイト http://www.square-enix.co.jp/games/ps/choco/choco.html


・主要ハード(SFC、PS、PS2)は「トルネコ」、どさ回りは「シレン」。
 両者は対象顧客層を見越してかシステム、難易度に差があるようです。

・もっともゲーマーの支持が高いのが「アスカ」。
 このサイトでもこちらに書きました。http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040218#p1
 なぜなら、「アスカ」は完成されているからです。



・「ローグ」、あるいは「不思議のダンジョン」は
 RPGとされていますが、シミュレーションゲーム寄り。
 成長はダンジョンから出るたびにリセットされるため
 RPGの基本的要素、「成長のための戦闘」「戦闘をするための成長」が
 連続していない、という独特のシステムをもっています。
 この点こそが否主流RPG「ローグ」系たるところ。

・常に前回の繰越が無い始めからのスタートで
 どれだけの結果を挙げることができるか。
 「ローグ」の目標はスコアという客観的評価。
 ダンジョンに潜り、また1フロア毎昇って戻り、どれだけの成果を挙げているか。


・「不思議のダンジョン」は
 そのシンプルさにより色をつけたアレンジ。
 アイテムの使用方法を増やす、敵キャラクター個性のバリエーション、
 ダンジョン自体、システム自体のバリエーション。 

・もちろんアレンジはそれだけではありません。
 ダンジョン内に店を置くことでのスコア利用化、
 仲間キャラクターというアクセント、
 装備の性能向上、アビリティの付与、
 などなど。

・続編になるごとに、より洗練され複雑にならずに磨かれるシステム。
 前作の反省点を生かし、常にかくあるべしという改善の積み重ね。
 「アスカ」でやれることはやりつくし
 ついに「トルネコ3」ではレベルの継続という道を選ぶに至りました。
 それもまたシステムバリエーションのひとつ。

・「ローグ」をいかに家庭ゲーム機に移植するか。
 チュンソフトが考える「不思議のダンジョン」というRPGは
 ゲームシステム自体にバリエーションを持たせる手法。
 ダンジョンごとにきまりが違う、その数だけある「ローグ」。



・今年7月に発売されたアリカ(http://www.arika.co.jp/)の
 「ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ 不思議のダンジョン」。
 アリカらしからぬ基本的な部分、
 操作性、ロード時間、画面の見づらさなどが欠けた
 残念な作品でしたが
 中でも根本的な欠点は、目指すゲームの面白さが見えないこと。


・「ドルアーガの塔」を作り直したら「不思議のダンジョン」になった、
 と説明されていました。
 確かに、ひたすらダンジョンにただ一人潜っていく「ドルアーガ」の姿は
 見た目「不思議のダンジョン」との類似を感じさせます。
 しかし「ドルアーガ」は謎解きが大きく話題になることが多いものの
 アクションゲーム、あるいはアクションアドベンチャーゲーム
 RPGではありません。
 ましてやシミュレーション寄りでもない。

・敵に囲まれたとき、虎の子のアイテムを失ったとき、危急の危機に際して
 積み上げた経験値というスコアによるキャラクターの性能ではなく
 過去の経験からプレイヤーに蓄積されたアイデア、技術によって
 道を切り開くのが「ローグ」であり「不思議のダンジョン」。

・「ナイトメア」はどのようなゲームシステムを考えられて作られたのか。
 敵に囲まれた時の選択肢の少なさ、
 駄目ならその場でダンジョンから離脱、というのは
 徐々に積み上げていく「ウィザードリー」のようなシステム。

・かといって合成で武器防具の鍛え上げがいがあるわけでもない。


・現在の「ドルアーガ」というコンセプトありきで
 明確なゲームの形がみえていないまま完成してしまったソフト。
 失敗作です。



・「アスカ」は完成された完璧なゲーム。
 あらゆる点で不満がありません。
 「ローグ」という明確な方向性のあるシステムに
 能力のバリエーション、それに合わせたダンジョン、
 というアレンジ。
 何を表現すべきか。「ローグ」RPGの面白さは何か。
 実に明快です。


・しかし、完成されて不満がないだけに
 これ以上のものは作り得ない。

・システムが完成すれば、いくらバリエーションを持たせても
 計算機であるコンピューターは人間の経験学習の前には
 いつか古臭く朽ちてしまいます。

・1000回遊べるRPG、けれど1000回遊べば
 次にどうなるか、こうなればどうするか。
 イッテツ戦車を封じるにはどうするか、アークドラゴンをいかに抑えるか。
 わかってしまうということ。
 長く、深く、遊ぶことができます。
 しかし、コンピュターがゲームマスターのルールはいつか作業となってしまう。


・古くからある遊び、例えばトランプ、麻雀、囲碁将棋。
 それらゲームはひととひと、対人のゲーム。
 計算機がなかったからではなく
 そのほうが同じシステムでも飽きないからです。
 ルールは磨かれ完成されても、思考の試行錯誤は限りない。


・一人でプレイする種のコンピュターゲームにおいて
 硬直し、完璧に完成されたゲームシステムは
 変化する必要がなく、よって進歩もしない。
 「不思議のダンジョン」はチュンソフトという優れたゲームメーカーに
 生み出され、完成され、
 現在、その歩みを止めています。

・「トルネコ3」のようにRPGよりのシステムを模索するのか
 「ブレスオブファイア5」のようにシミュレーションよりの
 新しいゲームを構築するのか。


チュンソフト次の一手に期待です。


(以下追記)
・この記事にはご意見を頂きました。そちらもご参照くださいませ。
 「クリアしても楽しめるゲーム」http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040929#p1