『シャイニング・フォース ネオ』

kodamatsukimi2005-04-10


 PS2 セガ '05年3月24日発売 ¥7,140 ASIN:B0007NDNIQ
 公式サイトhttp://shining-force.jp/home.html
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_05/rpg/shining-neo.html
 「SEGA VOICE」プロデューサーインタビュー
    http://www.sega.co.jp/community/segavoice/050317/home.html
 開発;ネバーランドカンパニー http://www.n-land.co.jp/
    ピラミッド http://www.pyramid-inc.net/top.html


セガ伝統のRPG『シャイニング』シリーズ最新作。

・けれどその中身は
 DCでネバーランドカンパニーがESP/角川から出した
 『ロードス島戦記 邪神降臨 』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040226
 もうほぼそのまま。

ネバーランドカンパニーが関わっていなければ
 『ティアリングサーガ』並に似すぎで訴えたくなる方向。
 もちろん角川がですけど。

・ちなみに開発会社として共に名が挙がっているピラミッドは
 ネバーランドカンパニーセガの開発者が独立して設立された会社です。


・違うところは、50時間にもかかる超大作であること。
 それでいてクリアまで、全体のバランスはだれずに見事。素晴らしい完成度。

・「なんだ!!
  あの「セガ
  「やればできる」子だったのじゃあないか」
 いや、ネバーランドカンパニーが偉いのか。どうなのでしょう。


・けれどAmazonの評価は散々。 
 また、マニアだけが絶賛の作品と実際に売れている商品とのズレ、
 として話題になりそうです。



・『シャイニング』は『オンライン』で大きく名を売った
 『ファンタシースター』と並ぶセガの看板RPG
 メガドライブ時代から続く伝統のシリーズで
 中身はRPGシミュレーションRPGアクションRPG。いろいろです。
 Shining World http://shining-world.jp/game/

・このなかで評価が高いのが
 『マリオテニス』の現キャメロットhttp://www.camelot.co.jp/)開発『フォース』関係。 
 中でも『1』(MD、GBAASIN:B0002BPJB2))と『3』(SS)。
 まっとうなSRPG
 『エムブレム』ほど難易度も高くなく、特に欠点もない良い作品です。

・昨年の『フォース1』GBAリメイクに続いて
 新作『ティアーズ』、そして本作と連続して発売。
 やはりせかいいちを目指すメーカーたるもの
 手堅いRPGシリーズのひとつやふたつ、というところでしょうか。
 『ティアーズ』は新しい試みに挑戦しているものの
 ロードなどの完成度の低さが残念。今後に是非期待です。

・一方、『オンライン』がそろそろジリ損の『ファンタシー』のほうも
 謎の新作『ユニバース』(http://www.ktplan.ne.jp/~Gheaven1/pso/topics/psu.html
 が今冬発売予定。どのようなゲームとなるのでしょうか。

・他にもRTS系の『ドラゴンフォース』『ハンドレッドソード』、
 いわゆるライトユーザー向けの『レイアース』『エターナルアルカディア』などは
 なかったことになるのでしょう。
 それがセガの伝統ですから。そして忘れられた頃に復活すると予想。


・開発のネバーランドカンパニー
 一時サイトがすっかり止まっていて潰れてしまったのかと不安になりましたが
 PSP『煉獄』など、しっかり働いていたようで感動。 
 とにかくネバーランドカンパニーを見捨てていなかったのは偉いぞセガ

・ついでにチャイム(http://www.chime.co.jp/)と一緒に
 『テラファンタスティカ』でも『ファンタシーオブアース』でも
 どちらでも良いので作ってくださいお願いします。
 スクウェア・エニックスに『ファンタジーアース』をとられたから駄目ですか。
 そうだよなあ。



・本題の方に参りましょう。
 本作の中身は『ロードス』。アクションRPG
 けれどアクション操作の難しさはなく
 『無双』のようにボタン連打のお手軽感覚。『テイルズ』よりなお簡単です。

・見かけは『無双』。だから敵陣に単騎突撃勢いでなんとか、
 というゲームでは実はなく
 マップや敵、状況に合わせたキャラクターの成長と、装備整備が必要。
 敵の強さのバランスは『ディスガイア』などのように
 すこし先に進むごとに明確に差があり
 しっかりと強くしておかなければ一撃でゲームオーバー。
 アクションのウデでなんとかなる類のゲームではまったくありません。

RPGの楽しみ、キャラクター成長における戦略性という骨格と
 深みのない、けれど単純に楽しい『無双』アクションという見かけが
 このゲームの姿です。


アクションRPG、『ゼルダ』『イース』『ハイドライド』。
 そしてアクションゲーム、『アーバンチャンピオン』『双戴龍』『天地を喰らう』。
 これらから、
 アタリ『ガントレット』、
 ブリザードディアブロ』、
 そしてコーエー『無双』シリーズが出来たわけです。

・惜しかったカプコン
 『くにお』から『ファイナルファイト』を経て『天地を喰らえ』まではたどり着いたのに
 『スト2』一辺倒で『無双』を逃がしてしまうとは。
 これこそカプコンから出るべきゲームといえるのに。

・真のつかない普通の良作対戦格闘、ソウルエッジフォロワー『三国無双』から
 1対多数、一騎当千万夫不倒を味わえる『真』への転換こそが
 マニア専用となってしまった対戦格闘からの脱出点、ターニングポイントでした。
 これがセガナムコでなく、コーエーから出てきたのが実に面白いです。

・もはや『戦国BASARA』は『戦国無双2』までの駆け込みにしか見えません。
 『カオスレギオン』はなかったことになりますか。
 この辺りのどこかで見たようなゲームの多作、ことごとくはずれが
 カプコン最近の元気のなさを印象付けるもの。


・話を戻して、まず『ガントレット』(GAUNTLET「ド」でなく「ト」)。
 アーケード用多人数アクションゲームとして作られた作品。
 最大4人からの協力プレイで、敵をいかに効率よく潰していくかが要点。
 画面を覆う多数の敵に飲み込まれないよう、敵出現地点を潰し、アイテムを回収し
 先に進みいかに長く奥深くまで生き残れるか。
 多人数用アーケードゲームという特異な形のために
 家庭用機には決定版と言える移植作がないのが残念。
 協力して、時に足を引っ張り合ってこその面白さのあるゲーム。名作です。

 参考;ほのん3 http://www.wshin.com/games/review/english/Gauntlet.htm

・他方、この多数を簡単に倒せる爽快感だけを磨き上げたのが『無双』。
 『ガントレット』、そしてオンラインRPGの嚆矢『ディアブロ』のように
 協力性、戦略性は薄く、攻略の楽しみは低い。
 けれど何も考えないゲームも、しっかりと作られていれば
 技を狙って出せない初心者による対戦格闘ゲームのように充分楽しい。
 当時最新ハードPS2の利点を活かす見た目わかりやすい見事な戦略。


・家庭用に『ガントレット』を作るならば
 1人で遊んでも楽しめるものでなくてはならない。
 そのひとつの答えがベルトスクロールアクションの延長にある『無双』。
 もうひとつが1人用『ディアブロ』。
 1人用ゲームとして膨大な蓄積を持つオフラインRPG手法。
 すなわち、キャラクターの成長から生まれる戦略。


・ここで『ロードス島戦記』を作るにあたり、
 ネバーランドカンパニーが間違えなかったのは
 『ガントット』の単純な楽しさ、簡単操作で多数の敵を倒す爽快感を捨てずに
 RPGとして成立させたところです。
 つまりは『無双』RPG

RPGでありながら、多数の敵を「容易に」倒すことができる。
 RPGの戦略性と、アクションの単純な敵を倒す楽しさ。
 その両立のためにとられた工夫、
 他の多数のように、戦闘数と能力成長を単純比例にはしなかった所が見事。

・戦闘時間に比例する経験値でのレベルアップという
 『ウィズ』から『ドラクエ』、RPG主流の伝統システムを
 見かけ上は残しながら
 『ガントレット』同様の、つまりアクションゲームの手法である
 マップ上に配置された成長アイテムの回収による能力アップが
 実は主たる成長決定要素。

・成長のためのポイントを探して稼いで、割り振って成長。
 時間を掛ければ良いのではなく
 群がる敵を何も考えず倒していてもゲームはなかなか進まず。
 単純に稼ぎの繰り返し、積み重ねの達成感による従来のRPGではなく
 またパターン構築、あるいはその場判断積み重ねのアクションでもなく。
 

SLGよりSRPGよりのアクションRPG
 『ウィズ』より『ローグ』。『ドラクエ』より『シレン』。
 でありながら『ガントレット』で『無双』でもあるアクションRPG

・それがネバーランドカンパニーの『ロードス島戦記 邪神降臨』というゲーム。
 見た目は確かにさびしいけれども、そして多人数での楽しみもないけれども
 理解するほどに面白い、手ごたえある傑作です。



・では『シャイニング・フォース ネオ』はどうか。

・実際どこまでもそっくりです。
 成長システムはそのまま。見た目微妙に地味。
 ロードや操作性、細かいシステム周りの欠点のなさ。
 ベースとなる部分はしっかりと作られている。とてもセガらしくない仕事。
 3Dの見た目にこだわらず見易さわかりやすさを優先した
 妙に手のかかっているマップ構成も、やはりセガらしくない。
 職人芸を感じます。

・薄いキャラクターとべたなストーリー。
 『ロードス』はそれなりの背景があったゆえに寡黙も許されましたが
 本作は苦しいところ。欠点といえるでしょう。
 個人的にはこれくらい意味なく下手なお話で充分ですが。

・今までの『シャイニング』シリーズがそれだけ世界を作り出してこなかった。
 そこがあるいは『テイルズ』や『幻想水滸伝』に劣るところでしょう。
 それもまたセガらしさか。


・最大の違いは、やはりその規模。
 前作、もとい『ロードス』からその規模は倍増。
 何も考えないはじめてで約25時間。慣れれば15時間。
 本作が50時間ほど。慣れれば35時間ほど。ざっと倍です。


・もう一度近年のヒット作の代表である『無双』に戻りましょう。
 『無双』は楽しいです。
 とにかく敵をひたすら倒していればクリアできる。

・上手いのは、1回ごとのクリアがキャラクターひとりごと、マップひとつごと、
 細かく区切られ短時間に簡単にあっさりクリアできること。
 そしてそれが何十キャラクター分用意されている。
 ひとつはあっさり、けれどボリュームたっぷり。

・何十人分を一度には味わえない。
 途中でセーブできたとしても、それがひとつながりならば
 その膨大な長さで満腹、おなかいっぱい。
 わけて、いつでも止められるからこそ
 ひとつごとはそこそこおいしく後引く味付けだからこそ
 いつまでも続けて遊んでしまう。
 中毒性。ボテトチップとコーラで乾杯。とてもよく出来ています。


・見方を変えれば、『無双』のようなアクションであっても
 今や量は重要ということ。
 同じものを繰り返してより上手く、とは遊んでくれない。

・わけて、RPGは長い。長くなければならない。
 「やりこみ」性は評価基準。
 『ロードス』をそのまま出したら間違いなく言われるでしょう。
 短すぎる。


・無限に流れる時間より、今目の前の新作ゲームを買うお金。
 
 そんなふうに考えていた時期が
 私にもありました。(AA略)


・けれど今や貴重なのはお金などより有限な時間。
 社会人ゲーマーには遠い想いでございます。




・では長くしよう。
 『ロードス』仕立て直し
 『シャイニング』というセガの看板にふさわしい大作にしよう。
 どうしよう。

・それこそ『ガントレット』『ディアブロ』、
 そして『ファンタシスター』のように、多人数にすれば簡単です。
 遊び場をつくれば大勢で遊べば、何度遊んでも飽きず面白い。 
 けれどそれこそ『ファンタシースター』の方法論。
 家庭用オフラインRPGではない。


・ではどうするか。
 単純に量を増やす。

・小メーカー、ネバーランドカンパニーだけではできない、
 一応大メーカー、セガだからこその力技。
 そしてそれをやり遂げたのが本作。
 
・本当にバランス調整が素晴らしい。中毒性を残してそして飽きない。
 敵を無視して先に進んでも、考えればクリアできるし
 何も考えなくても、長いからこそ、いつかは強くなってクリア可能。


・『ロードス』もその特性である仕組みをしっかり理解した良いものでした。

・少し物語の流れに反して先に進むと一気に敵が強くなりたちまちゲームオーバー。
 それは先に進むと一気にキャラクターを成長させられる、ということでもあります。

・成長にあえてインフレーションをつくり、アクションゲームでないことを示す。
 早い成長でRPGとしての楽しさも強調し
 また『ゼルダ』のように不自然なマップの柵を作るのではなく
 ストーリーラインをほどよく見失わせない工夫にもなる。


・けれどインフレで緩和してもまだなお入念な数値調整は必要です。
 全マップにおいて習得能力と敵の強さ個性を調整する。
 壁を高すぎず低すぎず、考えれば頑張れば超えられる難易度調整数十時間分。
 アクションの力押しでなく、攻略してこその面白さのゲーム。
 そこをないがしろにはできません。
 労力は想像するに膨大。
 
・例えば見ていてその駄目ぶりがわかるのが『グランディア』シリーズ。
 『1』はゲームアーツが自ら作ったESPシステムをも巻き込み社運を賭けた、
 掛け過ぎの時間を要した入念な調整。歴史的名作。

・『2』はもはやお金は掛けられず、全体の量も少なく緩めの展開。
 一見簡単すぎでボタン連打でクリア可能。
 けれど敵を極力かわして先に進めば結果として
 RPG最上に進化した戦術的戦闘システムを味わいつくせる絶妙のバランス。
 調整時間はなくともゲームアーツの意地が垣間見える内容。

・そしてカプコン経由エニックス販売となった『エクストリーム』。
 何も考えていない最低のバランス。
 成長の鍵、スキルの入手がランダム。これがエニックスクオリティ。
 ゲームとして崩壊しています。


RPGのバランス調整は、それこそ優れた監督が全てを管理するか
 膨大な手間、すなわちお金を掛けるより致仕方ないのでしょう。

・とてもネバーランドカンパニー単体でできるものではない。
 ゲームアーツの二の舞です。
 そこで『ロードス』において採られた手法は
 余計な要素はできるだけ削ること。

・成長はプレイヤーキャラクターだけで仲間はオプション扱い。
 自動で成長し、差があるほど経験値が多く入るレベル調整。
 バリエーションにはなるが、いてもいなくても問題ない存在。
 逆に成長させる楽しみを考えさせてはいけない存在。

・多人数で遊べないのもそのため。
 『聖剣伝説』のように操作出来るようにするのは容易です。
 しかしそうするとなぜ自由に成長させられないのか、当然疑問になる。

・『シャイニング・フォース ネオ』ではそれを成し遂げたのです。
 お金はともかく人は持っているセガの力を持って。
 ゲームアーツの時にそうしていれば、といっても仕方がないこと。
 それが時勢と言うもの。


・単純に長くし、量を増やして質を下げない。
 なにも新しいことはないけれど、そこがセガらしいところですが、
 もとあった上質ものにリソースをつぎ込んで薄めず増やす。
 マップを増やし、キャラクターを増やし、武器防具を増やし、
 量を、バリエーションを増やす。

・ただ、手間を掛ければ良いのではない。
 上の『エクストリーム』のように
 そのゲームがどのようにできているのか、
 理解していなければ無駄な労力。

セガの体力とネバーランドカンパニーのゲームへの理解。
 『外伝アスカ』のように、既存のものを
 より洗練、完成度高めてつくり直す力は素晴らしい。 


・『シャイニング・フォース ネオ』。
 新しくはない。大きな欠点もなくまた飛びぬけてアピールする長所もない。
 けれど丁寧に作られた、そして確実に面白い大作。良作です。