『ユーゲー No.20』

 発行:マイクロマガジン社 7月3日発売 ¥860
 公式サイト http://www.microgroup.co.jp/ug/

・「ユーゲー」も今号で20冊。
 旧「ユーズドゲームズ」「ナイスゲーズム」も合わせると50冊。
 おめでとうございます。過去の記事を読み返すのも一興かな。



・1特集「語り継がれるゲームがある 〜ファルコムの世界」。
 ファルコム公式サイト http://www.falcom.co.jp/

・懐かしい。
 初めてファルコムのサイトを見たほどに「懐かしの」ゲームブランド。
 『イース』はPCエンジン版『4』、『英雄伝説』98版『3』まで。
 『イース3』がもっとも好きです。
 『ドラゴンスレイヤー』シリーズはいま遊ぶには辛く、他は単純すぎる。
 『イース3』も簡単でしたけれど。


・いろいろサイトを眺めてみると
 売上年間ほぼ5億。
 ライセンシー、移植作品の売上割合4から5割。
 『イース6』12万本、シリーズ累計9本で66万本、移植含めて270万本。

・総じて手堅い商売。
 『イース』本数、『6』だけで12万なのに9本で66万という所が
 PC98当時のコピー氾濫を思い出ださせます。
 木屋善夫さんは今何をされているのでしょうか。
 (追記;サイト発見 http://www.kiya.org/


・今回の内容、良くまとまっていて遊びたくなる効果覿面、
 久しぶりにアダルトの隅、洋ゲーのさらに角の国産PCゲームコーナーを眺めたのですが
 なんというか、買う気が削がれる。
 5インチFDから変わらぬ意味のないパッケージの大きさも然りながら
 いまだ10年前のゲーム、例えば『英雄伝説3』などが新品で並んでいる現状。
 大丈夫なのかPCゲーム。



・むかし、家庭用ゲーム機、すなわち「ファミコン」よりも
 何十倍も値段の高いパソコンのほうが「えらい」時代がありました。
 それは凄いとか高性能だとか、ゲームとして面白いかどうかではなく
 「えらい」かどうか、としか表現できない差。

・何十倍高くても何十倍も面白いわけではないのであり
 それは、極一部に大成した「パソコン少年」を除いて
 ファミコンはだめでもパソコンなら勉強になるから、という
 大義名分が自分に付いた嘘であったでしょう。


・システムソフト『大戦略』。T&E『ハイドライド』。
 光栄、工画堂アートディンクらのSLG。理不尽に難しいAVGRPG
 そしてファルコム
 ファミコンからスーパーファミコンに切り替わる'90年過ぎまでが
 これらゲームの全盛期。
 '96年のSS、PS登場以降、PCゲームは完全に時代遅れになりました。
 ウインドウズ登場、パソコン自体も安くなり、普及拡大したにもかかわらず。

・それはなぜか。
 私の世代にとっては、高い値段、巨大パッケージと専門雑誌、売り場の情報囲い込み、
 それらの壁が作っていた「大人のゲーム」というメッキが剥がれたからです。
 誰にでも買える、どの家にもあるゲーム機はもはや「えらく」ない。
 そしてそれだけにしか結局、パソコンゲームには価値がなかったから。

18禁ゲームばかりになるのは当然。
 唯一の違い、表示画面の解像度がHDで解消されるならば
 その意義はさらに薄くなるのかもしれません。


・『ザナドゥ』『ソーサリアン』『イース』。
 どれも独自の魅力を持っています。焼直し続けて今に続く魅力を持っています。
 それがファルコムのゲーム。ファルコムにしか作れないゲーム。

・けれど、それらに後継作はなく、今に続く主流ではない。
 そのように評価する一因に思うのは
 なぜファルコムはPCでゲームを出し続けるのか、ということです。
 PCで、マニア相手でなければ売れない程度のゲームなのではないか、
 だから主戦場である家庭用ゲームに自ら打って出ようとしないのではないか。
 自ら枠外に留まろうとするメーカー。その印象が
 ファルコム、ひいては国産PCゲームを手に取ることが少なくなった理由です。


ファルコムのゲームは面白いのか。
 例えば『イース6』のPS2版。
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_05/arpg/ys-na.html
 他にもだいたいの市場評価を眺めてみれば
 悪くはないけれど古く、単純で量が少ない、というような総評のようです。
 昔のファルコムゲームを思い出してみるに
 良くも悪くも変わっていないように感じます。


・『ドラゴンスレイヤー』シリーズ5作は、どれも独特のゲームでした。
 その魅力を書き連ねるとキリがありませんが
 当時のパソコンAVGRPGの魅力といえるもの、良い点を集めたといえる作品群です。
 『ザナドゥ』はゲーム全体を通してパズルのように頭を使い、
 『ソーサリアン』はTRPGのように広がりのある世界を持つゲーム。
 ただ足踏みさせるための謎を置くのではなく
 それまでの過程全てがパズルの解となっているゲーム。
 とても独特。実にオリジナルでオンリーワン、そして類似作がありません。

パソコンゲームは連日連夜その前に座り込んで画面を見つめ
 雑誌の記事を読み漁っては解法のヒントを探し、あるいは友人と情報を交換し
 そして答えを見つけていくゲームばかりでした。なぜかどれもがそうでした。

・1つのゲームを解くのには時間がかかる。
 けれど答えを探す試行錯誤の苦痛と作業を、忘れさせるだけの新しさがその先にあって
 そしてその謎も独自独特で新しかった『ドラスレ』は
 解く過程に、新しく新しい方法を見つけ出すところこそ、面白かったのです。


・新しさははじめだけ。
 その方法も答えも無限に提示できるSLGであれば、味付けを変えて繰り返し楽しめる。
 けれど、AVGもパズルゲームもはじめの1度には2度目は容易に太刀打ちできない。

パソコンゲームのいきづまりは、古かったからといえるでしょう。
 圧倒的多数のファミコンゲーム、そこから生まれる新しいゲームは
 パソコンゲーム初期にあったゲームが持っている新しさの発見を量で押し流し
 また、その膨大な量は
 ゲームひとつを何ヶ月も遊び続けることを許す時代ではなくしてしまった。

・それが『ドラスレ』が『イース』と『英雄伝説』になった理由ともいえます。
 結果としてみれば『ドラスレ』は、どれもが独自であったけれどアレンジが効かず
 広がり難いものであったのかもしれません。
 けれど『ソーサリアン』のありかたなどは
 思い出してみれば、あるいはオンラインRPGに新しさを与えるものなのかもしれません。


・『イース』と『英雄伝説』シリーズは、「優しい」易しい、単純なゲームです。
 クリアするのも簡単です。
 謎解きも簡単。適度なお使い要素。味付けのアクションも『テイルズ』以上に単純。
 緻密に書き込まれた背景と「優しい」物語世界。

・『ゼルダ』ほどでもなく『ドラクエ』ほどでもないゲーム。
 けれど名もなく消えていく駄作と違うのは、欠点を丁寧に潰してある点。
 新しくなく、凄くもなく、頭も使わないけれど駄目ではない。

・ようはやりかた。
 ファルコムは一流の、時代を作るメーカー、ブランドとはなっていないけれども
 浮き沈み激しいゲーム業界で20年、
 その名前を保持することには成功してきた。
 手堅い商売。自社の実力を見極めた仕方。
 新しさを求めずより良くすることだけを心がけるやりかた。

・それが今も、パソコンでだけ自社オリジナルゲームを出し続ける方法で
 ブランドという資産を力にする中小メーカーの手本となるファルコムの姿。
 お見事でございます。


工画堂http://www.kogado.com/)とファルコム
 ついでにシステムソフトアルファ(http://www.ss-alpha.co.jp/)に
 ボーステック(http://www.bothtec.co.jp/game/)も。
 ハード普及台数にかけては並みの家庭用機は目ではないのだから
 より頑張っていただきたいものです。次の時代を作れるほどに。
 同人ゲームに負けないでくさいませ。2ch東方スレッドに勝つのは困難やもしれぬけど。

・とりあえず、まずあの時代錯誤なパッケージを止めてくれないと買う気致しません。
 店頭で初回限定版のほうが安くなっている理由を考えてみよう。 

・ユーザーにも問題はあります。
 コピー。論外に駄目です。
 18禁ゲームにしてもクリア、フルコンプリートしたという結果のために
 データを埋めていて空しくないのか。
 ないのか。話が通じないひとに何をいっても無駄ですか。


・などと、したり顔で知ったかを振ってばかりいるのも足元寒いので
 文句ばかり言わず最新ゲームも買ってみるべきでございましょう。
 これからについて書くのはそれからにすべきことですことよ。

・とりあえず「Extendead」「罰記。」推奨の『ぐるみん』など。
 4Gamer.ne「ぐるみん」レビュー http://www.4gamer.net/news.php?url=/DataContents/game/1827.html
 GAME Watchレビュー「ぐるみん」 http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20041222/guru.htm
 「ぐるみん」動作検証用ベンチマークhttp://www.4gamer.net/jump.php?http://download.bbgames.jp/4gamer/other/grmbench.zip
 なんというか微妙そうな予断。いやいやいやいやよくないよ決め付けは。




・第2特集は「忍びを極める秘伝の書〜忍者ゲーム特集」。
 ニンジャゲーム特集。この切り口が「ユーゲー」らしくて良いです。


・UPL『忍者くん』、タイトー影の伝説』。ハドソンまぐれ当り『忍者ハットリくん』。
 どれも懐かしゲーム。もうずっと遊んでいませんが良いゲームでした。
 格闘ゲームの3Dカゲ、2D半蔵系が、これら初期アクションの後継。

・アクション以外でニンジャといえば、やはり『タクティクスオウガ』。
 『FF4』のエッジから『FF5』の「両手持ち」は忍者よりソードマスター消化の方が納得。
 実際は「ペトロクラウド」マスターですけれど。
 SLGの諜報索敵方から、『オウガ』で焦点が当てられた
 素早さパラメーター特化型という特徴は
 『ウィズ』のクリティカル一撃に変わる
 非アクションでの忍者の新しい活しかたとして影響が大きいです。

・最近のところでは
 『天誅』系、忍者アクションの表現と
 『Shinobi』系、ニンジャアクションの違いも面白いところ。
 どちらも3Dの恩恵を受けてこそという本文の指摘に同意であります。

・『影の伝説』を今作ると『Shinobi』のようになるのでしょう。
 一方で格ゲー忍者の後継者が『NINJA GAIDEN』。
 また『NARUTO』系ゲームがなんといっても最新最先端の忍者アクションゲーム。
 『NARUTO』は動きの表現が旧来とまた違うリアルな忍者らしさがあって良いです。


・忍者は何しろ、本物を誰も見たことがないだけに、いかようにも限界に挑戦できる。
 講談調に山田風太郎風に横山光輝系に。
 しかもそれがわれわれ日本人のご先祖様。そこが痺れる憧れるでございます。

・まだまだ活かせる素材といえましょう。
 日本映画に忍者ものの駄目加減を反面教師に、さらに活躍を期待したい所存也。
 カムイ伝2部再開はまだですか白土先生。



・他に注目として、今回から読者の最近買って面白かったゲームを紹介する新コーナーが。
 さすが「ユーゲー」読者、極端で面白いです。
 もうちょっと長文でいろいろ読みたいところ、むずかゆい。

・巻末マンガも横綱大社長(http://www.yk.rim.or.jp/~okano/graphic/yokozuna.html)と
 セットでの単行本化が決まって祝。相変わらずの暴走振りで素敵です。
 飯野さんは『ドラクエ』リスペクト、ワープをレベル5のようにしたかったのでしょう。
 時の運もありますが、あそこでセガに付くべきではなかったのかも。
 『エネミーゼロ』がもうすこしましであれば
 「ゲーム批評」をもっとだまくらかせたかもかも。
 とブックオフ¥100で買った「飯野賢治の本」を見ながら思う夏の夜のでした。






・全く関係ないですが「ゲーム批評」編集長は恐ろしい。
 『弾銃フィーバロン』を知っているのは良い。
 『ドラクエ3』未プレイなのも許しましょう。
 けれど『カラスの仮面』を読んだことがないなんて……。
 恐ろしい子……!!(顔に縦線目は白目)