『カドゥケウス NEW BLOOD』

kodamatsukimi2008-07-08


 シリーズ公式サイトhttp://www.atlus.co.jp/cs/game/ds/kad/ ASIN:B000X3UNNS

・ちなみに「カドゥケウス」とは、ギリシャ神話にあるヘルメスが持つ杖のこと。
 医療の神である「アスクレピオス」の杖と、「カドゥケウス」が
 ラテンの本場でも混同されて用いられている、
 というところからの命名である模様であります。らしいです。
 参照Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/ケリュケイオン
・それでゲームの方ですが、あんまり変わっていないので書くことがない。
 最初のDS版が出来上がっていたわけで『世界樹の迷宮』と同じであって
 このごろのアトラスは随分凄い革新である、発明である、新機軸、枯れた技術の以下略。
 それから題材にしている医療という分野は、中々軽い口調で書けるものでない。
 医者と教師と警察官の3職種だけは、いくらお金をもらえても勘弁願いたい。
 正しいことを信じるというのは難しい。

・しかしそれでも以下のごとく書いてみるのが
 誰かのためにと奉職していない身であるところのゆえなるゆえに。



・『カドゥケウス』は見た目通りの手術ゲームであります。
 Wiiリモコンで指すポインタを、DS版ならばペン先でふれている箇所を
 メスや縫い針、ピンセットなどの先端に見立てて
 きったりはったりぬったりするゲームである。
 実際手術するのにもっとも重要であろう、その症状この場面では
 どのような処置をするのがもっとも適切なのか、は教えてくれるので
 指示通り、一定以上正確に、かつなるべく速くペンやリモコンをふりふりする。
 うむ予想通り。見たままに出来ているゲーム、驚くべきところがない。
 けれども遊べば良く出来たゲームなのです。楽しいのです。
 そしてまたそれだけ、であるために難しくもあるのですが。


・ステージクリア型アクションゲームで、良くある形式の
 ステージ間、幕間デモシーンで背景となるお話を説明する構成と
 その内容が必要十分に良く出来ているのは当然として
 やはり眼目は手術アクションの部分。

・実際の手術は、なんだか知らないけれど大概やたらと長時間かかるもの。
 あれはなぜなのかといえば、ブラックジャック先生やこのゲーム内のように
 その「たいがい」は、緊急速攻に手当てを施さねばならないわけではないからで
 ならば間違いのないよう、慎重確実を期すことを優先するから、だそうである。
 けれどもちろん、1ゲームに何時間、その上ミスしたら即ゲームオーバーでは
 ゲームにならない。と思うと医療をお仕事にはしたくてもできませんが
 さらにいうとだからして遊ぶこちらは、ほとんどおおかたは医者でない上に
 ブラックジャックのように手先が器用でもない。
 弾幕を避ける程度にしか器用でなく、ゲームなど何の役にもたたないのである。

・そこで医術の神様はその杖で、ゲームでするための決まりを設けてくれている。
 するべき正しい答えは示されている。それを正確になぞるだけで良いのだ。
 コースは決めてあるから、そこをとにかく早く走り抜ければ合格とする。

・手先の器用さを競うゲームで、名医になってひとの命を救うゲームでもある。 
 過程は荒っぽいけれど結果は必ず成功していて、とにかく早い。だから名医。
 ならずしてなる。成してこそ成る。成るべくしてなる。
 医者でなくとも、手術ゲームを成功させれば、名医にはなれるのだ。

・つまりこのゲームを説明すると、こうであり
 そしてこの、無駄を排してただ、名医になった気に良くなれることが
 『カドゥケウス』の良く出来ているところであります。
 それだけであるところがです。
 アクションゲームでありながらすることに意味が合って
 けれどアクションゲームでしかないところが。


・さて、そういう医者になって外科手術というところを除いて見るならば
 画面上のポインタを正確に動かし続けるゲーム、と言えましょう。
 STGと同じです。ただひたすら避けるべくして避ける。撃つべきを撃つ。
 銃を撃つゲームのように
 射撃する瞬間に、的に照準が合っていれば良いのでなく
 手術中ずっと常にあるべきところにあり続ける時間が長いほど良いので
 クリアまでの短時間を競うところからも
 レースゲームのようなものである、とも捉えられますが
 ただ違うところは、競う相手が同じ競技場に存在しないところでありましょう。

・『カドゥケウス』は単純なゲームです。基準以上なら得点が高いほどえらい。
 タイムアタックゲームです。ミスを少なくできるだけ早く。
 どうするべきかは、ゲーム内といえ人間相手の手術、正解が決められている。
 突発的事故も、事前に常に正しい答えしか許されないことがわかっているので
 必ず同じ様にしかステージコースを作り得ない。
 よって答えを不確定にするものは存在が許されない。
 邪魔するもの。ひとが操作する対戦相手のみならず
 敵キャラクターという可動障害物も、コースの一部としてしか有り得ない。

・アクション要素ないパズルゲーム、正解が用意されている問題を正確にたどる、

 というゲームの要した時間に対して、得点算出を付けただけ。
 そして、レースゲームのタイムアタックモードで、過去最高の自分や
 ダウンロードした世界最高の誰かというゴーストと競うとは
 同じであるけれど、それ以外にはなりえないのである。
 その題材ゆえに。


・その部分は良く出来ています。
 単純にスコアを稼ぐのが目標である1人用アクションゲームとしては
 操作性、どのボタンを押すと何ができるか、という面も
 何ができて何をしなければならないかの課題提示、というコース設計も
 それだけで名作アクションゲームとして充分の出来。
 操作していて楽しい。上達して上手くなるのが楽しい。
 失敗に明確な原因がありそれを自身の工夫で解決し得るところが気持ち良い。

・しかしゲームとしては単純過ぎる。
 例えば難しすぎるところ。正確にリモコンをふるだけだから
 それができなければ、課題をこなすことも決してできない。
 できないひとには絶対できない。悪いのではない。難しいのです。単純だから。

・することだけなら幾つかまとめて一山いくらのミニゲーム、であるところを
 しかし面白くしているのは、名医になれるというRPG
 それに則して優れたアクションゲームの両輪、という全体の仕組みそのもの。
 リズムアクションゲームならば、音楽に合わせて操作をするからこそ
 ただそれだけだからこそ、ただボタンをタイミング良く押すことが楽しい。
 『カドゥケウス』はそういう、工夫とか攻略というようなことの少ない
 できるかできないかでしかない、見た目偽らない明確明瞭なゲームです。



・そこが『カドゥケウス』というゲームについて書くところのなさなのです。
 単純過ぎる。ゆえに出来上がり過ぎている。

Wii版の本作『NEWBLOOD』では、DSでタッチペンの仕様からして不可能な
 2人同時協力しての手術が可能となっていて
 超速執刀の快感が累乗であり大変素晴らしくて
 これだけで価値がある。これぞ最高の手術ゲーム。なのですが
 それ以外はいつもの『カドケ』である。
 STGにだって2人同時モードは昔から大概のゲームで遊べるし。
 まだ3作しか出ていないのに、いつものと言われてしまうその隙なき完成度、
 先の無さよ。


・リモコンコントローラの指差す先のポインタ操作は
 タッチペンほど思い通り精妙に操作出来ないものの
 操作可能な範囲は同じだけ、いや画面の広さ分だけより広く用意されていて
 操作技術習得向上の奥行きが深くある。
 感圧はボタンを押したか、あるいは傾きや画面距離との明確な移動などでの
 曖昧な情報でしか評価できないのは課題だが
 位置情報に付随する移動速度を、アナログスティックより細かく検出でき、
 また複数のポインタ移動を読み取る仕様も可能である。

・つまりで言うと
 Wiiのリモコンコントローラは、およそガンSTGガンコントローラと同じだが
 的に照準を合わせて撃ったあと
 次の標的を狙う間の移動にも意味を持たせられる。
 銃や剣を振り回す、点から点への移動が連続した動きでは意味がないけれど
 字を書くような、縫い物をするような、絵を描くような細かな複雑な動きが
 従来になくこれで再現できる。
 つまりそこに新しいゲームが作れる。

・のだけれど、それを活かしたゲームがどれだけあるかというと
 知らないところで沢山あるのかもしれないが、あんまりない。
 リモコンコントローラでポインタ指示を銃の照準以外で活用しているものが
 殆どない。
 あっても、アナログスティックでは操作ができない、
 精緻複雑な動きである必要のあるものが全然ない。

・なぜだか知らないのですが、『カドゥケウス』をするに
 ポインタ位置を常に正確に合わせ続けるという必要があり
 それがデジタル、アナログのキーまたはスティック入力ではならない、
 十分な理由のあるものが、ないからではなかろうか。


・『カドゥケウス』がタッチペンやリモコンコントローラでなければならないか、
 というと決してそうではない。全然そうではない。 
 従来のコントローラで充分である。『罪と罰』だって充分だ。
 ひとの手は『斑鳩』のダブルプレイまで可能なように出来ているのである。
 『カドゥケウス』のリモコン照準操作は大変難しくて楽しいが
 Wiiのリモコンコントローラに、でなければならない意味などあるのだろうか。
 ヌンチャクコントローラは持っていて楽である。
 けれど両手にヌンチャクコントローラでも『カドゥケウス』は出来ると思う。
 画面を指し示し続けていなければならない、という枷はなんのためにあるのか。



・360で出ていれば2人同時協力モードはオンラインで出来たのではなかろうか、
 コンティニューするたびに制限時間が30秒追加される代わり
 スコアが残らないとかすれば、より幅広い層にアピールできるのではないか、
 とか少し思うところもあるけれども
 『カドゥケウス』は文句なく良い手術アクションゲームであります。

・これはこれで良い。
 書いていて初めてDSの次回作が8月に出ることを知りましたが
 そのままでもステージが違うだけで充分楽しめる予定。
 けれど、アトラスに作れというのではなく
 Wiiリモコンは本当にこれで良かったのかと思わないでもない、
 端的に言って手が疲れまくるので何とかしたのを何とかしていただきたい。
 剣を振り回すゲームが、銃を撃つゲームの照準合わせの代わりにだけリモコンが
 あるのだとしたらWiiは駄目である。
 なんといっても無駄である。そうである意味がない。

・より新しい、違う面白さを実現するのには
 きったりはったりぬったりを
 別のもので表現したゲームを遊びたいところ。
 それくらいにしか感じられるくらいに『カドゥケウス』は出来上がっていて
 特に書くことがない一品である。と書く次第であります。