『メタルマックス3』

 メタルマックス3(通常版)(特典なし)

 公式サイト http://metalmax.info/

ファミコン時代から20年ほど続くシリーズらしいがまだ「3」らしい。
 らしいというのは、それだけ長いこと続いているのに遊ぶのが初めてだから。
 評判はむかしから聞いていたのではありますが
 なんとなしに折が合わないシリーズ作品というのはあるものである。
 逆に、格別好んでいるわけではないのに
 発売機会にたまたま会うので遊ぶものもある。
 袖振り合うも多生の縁。
 多生他生というより多少の縁。

・そういうわけで今回多少の縁感じて、
 というか例によってパッケージ絵につられたのですが、
 それも縁と買ったからには
 それなりに固定支持者が長いこといるゲームではあるしと遊んでみたのですが
 わりとふつうのRPGである。



・舞台背景は、荒廃して砂漠化した大地が広がる近未来。
 だが人類が死に絶えたわけでなく北斗神拳もなく重火器も残っているので、
 主人公は新たなる秩序回復に貢献したり生産力復活に寄与したりもせず、
 戦車を乗り回しヒロインと敵を追い掛け回し、無口な仲間とさすらうのだった。


・このゲームの特徴は戦車。バイクなども含む。
 手に入れた愛車は改造して大砲付け替えたりいろいろできる。
 特定のイベントで使用できるというのでなく
 いつでも連れ歩き、というか乗り回して雑魚敵との戦いでも使え
 圧倒的火力で敵を粉砕できるわけである。

・というのがシリーズ通しての売りらしいのだが
 20年前ならともかく20年後今はどうなのだろう。
 確かに、RPGで乗り物を終始戦闘時に役立てられるもの、というのは
 意外とあまり思いつかない。
 『ゼノギアス』とかあるけれど、あれは「乗り物」とはまた違って
 「ロボ」というアニメ由来ジャンルのひとつだし。
 つまり機動兵器まで行かずに
 バイクとかに重火器積んでそのまま戦闘するぜ、戦車に乗って戦うぜ、
 歩兵は占領だけが仕事ではなくロケットランチャーも撃つんだぜ、
 という軍事趣味、マシン趣味、機械いじり趣味のようなそれを
 RPGに取り込んだところが味であると。


・過去作品がどうだったのか知らないので、すくなくとも本作は、ですが
 そういう舞台の味付けいろどりとしては良いけれども
 RPGとして、ゲームとしては
 戦車に乗って敵と戦える楽しさというものがあまりない。
 RPGの仕組みとして了見狭いこというならば
 ゆう帝作『ドラクエ8』スカウトモンスターの「チームよび」みたいなものである。
 そこまで戦闘難度に影響を及ぼしていないのは良点なのかもしれないけれども。


・戦車は戦闘中、行動ターンを消費せず自分の手番なら何度でも乗り降りできる。
 戦車に乗って戦っている間は、戦車に積んである兵器での攻撃しかできず
 乗っているキャラクタ自身の能力が影響せず特技やアイテムも使えない。
 その代わり敵の攻撃は戦車が、改造で増減する耐久度ぶんだけ受けてくれる。
 というしくみ。
 つまり戦車は、
 『メガテン』のように並んで泥にまみれるのでなく
 『ポケモン』のように高みから眺めるだけでなく
 普段は面倒なので馬車の中だが
 ボス敵との戦いでは二軍として先攻し相手を削れるだけ削っておく存在。

・ルーラにあたるところの街から街への移動装置も
 手では持てず戦車につむしかないところなど、まさに二軍。なかばお荷物。
 システムの要請でしかたなく。


・つまり戦車に乗っているときと乗っていないときとで
 強さがたいして変わらない。
 乗らなくても敵と戦えるのである。
 では森やダンジョンなどお話上の理由ではないところで
 どこへでも連れていけない仲間というものは
 足手まといではなかろうか。
 経験値稼がなくとも改造するだけで成長する。強くなる。
 しかしそれは『サガ』シリーズの「メカ」種とおなじである。

・もっと強さにめりはりつけても良いのだろうけれども
 乗っても乗らなくとも活用してもしなくとも良い自由さ、というのも
 このゲームの売りなのだと思う。RPGだから究極のリアルでFREEというやつ。
 戦車が圧倒的に強いほうがそれは気持ち良いに決まっているが
 それだと戦車の性能だけで決まってしまい、ロボものと同じで、
 自身のちからも束ねて併せて戦うという、このRPGのしたいことと違うと。
 イベント時のみ大活躍する決戦兵器とも違う、愛車として常に傍らにあるメカ。
 それが表現したいことなのだ。
 仲間でなく、またただ武器でもなく、
 それでいて「ポケモン」とも「仲魔」とも違うもの。
 愛車、メカ、俺のマシン。を連れ込め共に戦えるRPG


RPGとして戦車を乗り回す楽しさがいまいち感じられないのは
 私にそういう愛車愛がないからかもしれませんが
 例えば、敵の強さとか数とか種類とか頻度とか
 戦車を乗り込ませることができるところ、ダンジョンの構造、
 乗り込んで戦えるボス敵、その強さに対する主人公一行の強さ。
 そしてそういうものが
 物語が進行していき、成長していき、変わっていく中で
 ヒロインや無口な仲間や街に暮らすひとたちとと違った、
 マシンが果たす役割、場面として
 戦車の、であるところに頼るところがあまりないゲームだと思いました。
 私は『ドラクエ8』の一周目で「チームよび」を使ったのは
 一回試しの一回だけでしたが
 このゲームの戦車も同じようなものだ。




・もうひとつ面白かったのが、
 面白かったのは良かった楽しかったでなく興味深かったの方ですが、
 今はこのみためのRPGでも通用するという2010年のDSという機会。


・本作を遊んでいて感じるのは、みためと音楽あいまって
 スーパーファミコンの『マザー2』とかあのあたりである。
 RPGとしてこれで良しという在りようの割り切りも
 『ドラクエ9』でも、確かに仲間はひとこともしゃべってくれなかったが
 本作の仲間よりは可変要素の分だけでも
 総合戦力を構成する部品のひとつ度が少なかったと思う。


・けれど同じような時期に、同じゲーム機で『ポケモン』の『白黒』が出ていて
 それとくらべると一見なんとなく許される気がしてくる。
 となりのPSPのほうが明らかに画面がきれいで
 同じゲームをPSPで出すならこの見た目では見てもらえないのだが
 DS発売ゲームのほうが売れるから正義。
 ゲームはみためでなくおもしろさなんだぼうよみ、
 ポケモンPS3や360でだしたってしかたないよねポケモンスタジアム
 ということでなく、『モンスターハンター』は
 テレビ画面でもPSPでもどちらでも良いのである。DSはだめだけど。


SFCなみのみためのゲームと、
 ものすごいお金すなわち手間と技術をそそいだものが、
 同じような値段で同じようなゲームで、同じような時間同じようなひとたちに
 遊ばれるというこの状況。
 わりとくらくら、まじぱない。



・『メタルマックス3』はふつうのRPGである。みためはSFCなみである。
 戦闘は難度たかくないがややめんどい。ほかは普通。
 わるいところはなく最後までだらだらあそべるが
 格別みるべき点もなし。
 それでも、20年前が20年後でも通用するのだ。
 DSのRPGだからこんなものである。
 いや一人用のRPG自体、
 『FF』みたいなきれいなみためや
 『ペルソナ』のような変わったみかけや
 『ドラクエ』のようなそつなきありようをながめて比べてみても
 こんなものなのではなかろうか。 
 
・『メタルマックス3』に比べれば
 『ポケモン白黒』のほうが出来が良いに決まっている。
 量も質も違う。戦闘一回ごとの少しの差とその積みあがった「遊んだ時間」、
 遊び手に遊ばれる時間の差はその出来の差を正しく示す。
 しかしゲームは、
 携帯で暇つぶしに『テトリス』を遊ぶだけでなく
 会話を共有するための『ポケモン』という学問だけでもなく
 アーケードでプロになるものだけでもなく
 優れているわけでもなく新しいところもなくみためもさえないものにも
 普通に時間を費やすものである。