kodamatsukimi2005-08-12

新城カズマサマー/タイム/トラベラー』上下巻(ISBN:4150307458ISBN:4150308039)を
 読んでみました。早川書房地元産。

夏への扉、未来に希望を象徴する純真さがSF。
 後は「設定;天才、頭が良い」は逆にしか取れない、
 携帯電話が象徴するこの新世紀初頭にも普遍の青春物語。
 空も山も川もとても青いでございます。

・言葉のこだわり、全体の構成そつなく
 けれど、話を転がすに値する人物造形をこの現代といういまに着地させるのは
 鶴田謙二さんに赤リボンと縦巻きロールを描かせるくらいに難しいのかもしれない。

・広がりはないけれど、出涸らし「星界」よりこちら方向を持って期待意向なのかしら早川。
 ハインラインよりもブラッドベリにリリカルで
 かつ、青々しいまぶしくさにサングラスを掛ける余裕のあるオトナにはおすすめでございます。

ゲームアーツとスクウェア・エニックスと『グランディア3』


 公式サイト http://www.gamearts.jp/grandia3/ ASIN:B0009MZ1VW

・『グランディア』はゲームアーツhttp://www.gamearts.co.jp/)製作のRPG
 ゲームアーツは古くから活躍するメーカーで
 特にメガCDの3DSTG『シルフィード』、RPG『ルナ』、
 サターンでロボットアクション『ガングリフォン』、
 AM2と組んで戦略SLG『ギレン』等々を出した絶頂期には
 トレジャーと並びセガハードを支える第一級のメーカーでありました。マニアにとっては。

・けれどおそらくESP関連まで巻きこんで社運を賭けたであろう、
 サターンでの大作RPGグランディア』がその評価ほどにも売れず
 以降衰退の一途。今や駄目メーカーの一員というほかありません。マニアにとっては、ですが。



・『グランディア』シリーズはその、かってマニアに支持されたゲームアーツ、看板RPG
 メガCD版『ルナ』も多分に懐古趣味混じりながらファンが多いですが
 なんといっても初代『グランディア』。さすがはゲームアーツというべき作品でした。

・『ルナ』もそうですが、前向きなだけがとりえの主人公がヒロインを救い、
 それがついでに世界をも救う。というまっとうまともに王道こてこてのお話。
 『ドラクエ』文法に沿ってよくあるゲームシステム。
 独自要素は戦闘時の先読み、魔法属性に括られた成長システムなど。
 どれもが良くまとまっており、特に話の見せ方の上手さは見事。
 RPGに印象の大を占める要素をしっかりと押さえています。


・けれどもちろん最大の特徴は、万年2位のセガハードにおいて
 それを代表させて恥ずかしくない、
 『ドラクエ』と比べても胸を張れる大作RPGであることです。
 PCエンジンにおける『天外2』、XBOXにおける『トゥルーファンタジー ライブオンライン』。
 日本でもっとも人気あるゲームジャンル、RPG。そのハードの看板となるゲームであること。

・初代『グランディア』はその期待に恥じない作品でした。
 戦闘後の読み込み短縮、後半のお話のだれといった瑕疵をすこし直せば
 完璧といって良いできばえ。
 まさに名作。時代の期待を担った名を残す作品です。



・そして3年後、ハードをDCに移して『2』が発売されます。
 この作品は賛否両論。
 おはなしは間違いなく駄目になっています。ボリュームも大作といえるほどなし。
 けれど戦闘、成長システムは『1』を踏まえて明確に進歩。
 アクション要素のないRPGバトルシステムにおいて屈指のもの。


・『タクティクスオウガ』のWTのように、各ユニットごとの行動力にあわせ
 行動順が決まり、それが視覚化して確認できます。
 次行動決定時から行動開始時までにタイムラグがあり、
 行動決定時、敵ユニットが次に何をしてくるかがある程度わかる仕掛けが肝。

・されてこまる手である場合、行動決定から開始までの間であれば
 通常攻撃よりも威力が低いけれども確実に決まる行動キャンセルをかけることができます。
 これはボス敵にも等しく有効。

・また防御コマンド効果が際立って高いのも特徴。
 敵の次手に合わせ
 コマンドごとに異なるあちらとこちらの決定から開始までのタイムラグを図りながら
 通常武器攻撃か武器攻撃キャンセルか術攻撃か術回復かアイテム攻撃かアイテム回復か
 防御か回避か通常必殺技かキャンセル必殺技かを
 敵ユニットそれぞれの次とその次とその次の次を読んで判断する。

・一瞬の判断が積もって戦局全体の帰趨を左右するこの仕組みは
 タクティカルSLGよりアクティブで
 戦闘の積み重ねがそれより遥かに重層的である、
 すなわち個々の影響が少ないことが求められるRPGというゲームに
 これ以上なく合って優れた戦術的戦闘システムと思います。

・そしてそれを補う要素。
 ボス戦手前に必ず回復、セーブポイントがあって
 その1戦闘の工夫だけに専念させる割り切り。
 これは、ここからなら何度でも戻りやり直せる、
 敵と違い無限に味方ユニットは成長できるという、RPG文法を解った丁寧な仕方です。


・『2』は、今から見ればゲームアーツ最期の意地を感じる作品です。
 バランスは調整されていない。普通に進めると何も考えなくともクリアできる。
 おはなしは稚拙。キャラクターたちはヒロインを除いて薄っぺらという他ない。
 けれどこれは工数の都合からか、明らかに当初規模より削られた容量の問題の故である、
 と思い込み、いやフォローを、できなくもない程度には収まっていると言い得ます。

・低レベルで進んでいけば工夫の余地と甲斐が存分に感じられるボス戦闘。
 成長要素も『1』から不可欠で無駄な稼ぎと必然に伴うレベルアップの形から
 上手く転換を図り、最上とはいえなくも良くまとまっています。


・『1』が名作。『2』はその名を継いで冠するに決して恥ずかしい作品ではない。
 中途半端ではあるものの、今遊んで面白いのは間違いなく『1』よりも『2』であり
 名作でなく傑作ではなくとも、秀作佳作として次におおく期待できる作品といえるでしょう。




・1年半後、早くも沈没したDCから移りPS2で『エクストリーム』が発売されました。
 エニックス(当時)から。
 駄作です。
 ますます退化したおはなし。
 戦闘システムはそのままながら成長要素が簡略、ランダム化。

・駄目なゲームに多くは書きません。
 『2』と比べ、どこが良くなったといえるところがない。

・サターン時代からは信じられぬ、魂の抜けた作品。
 ゲームの面白さ、『グランディア』の持つ価値を
 解っていないひとがつくったとしか思えない。
 製作者は、過去の作品と比べて少しでもましであるか
 せめて同等のものができたと思えているのでしょうか。


・『グランディア』は『1』のPSへの忠実移植が受け入れられなかったことからもわかるように
 ハードの看板を背負って、その時、その場所だからこそ大作RPGとして存在し得た作品。
 『2』もまた同様。DCででたからこそであり
 はじめからPS2ででていれば、多くの埋もれた良作のひとつでしかありません。
 そしてハードの看板を背負わず、またナンバーすら背負わぬ『エクストリーム』。
 期待するほうがおかしいのか。


・それともこれがゲームアーツの、そして「古き良き」RPGの末路なのか。
 エニックスの「新しい」RPGとはどういうものなのか。
 スクウェア・エニックスはその過去の実績から日本のRPGを代表するメーカー。
 これからのRPGを作っていくメーカーです。
 果たして次のRPGとはどういうものなのか。そう不安にならずは居れません。



・『キングダムハーツ』『FF11』『トルネコ3』『アンリミテッドサガ
 『スターオーシャン3』『FF10-2』『半熟英雄対3D』『ドラッグオンドラグーン
 『フロントミッションフォース』『ドラゴンクエスト8』『ラジアータストーリーズ』。
 スクウェアはかつてほど作品数を出さなくなりました。
 オンラインにも深く注力。
 そして生まれていくRPGたち。
 果たして面白いのか。続編は昔と比べて面白いのか。
 これからのRPGとはどのようなものなのか。




・『2』から丁度5年。『エクストリーム』から3年半。
 ゲームアーツの動向を見ても、もはや続編は作られないだろうと思われていましたが
 今年、『グランディア3』が発売されました。
 スクウェア・エニックスより。
 開発はゲームアーツ
 クリアしました。


・まったくもって駄目なゲームです。
 ますます、ますます退化したおはなし。『FF8』と良い勝負です。
 すばらしく上滑りな演出。『FF10』同様思わず自らを抱きしめたくなるほど背筋が寒くなる。
 ストーリーが流れていくたびに
 これはゲームなのだ、テレビ画面を見つめてコントローラーのボタンを押しているのだ、
 と現実を再認識させてくれる出来栄えです。

・戦闘システム。
 なぜ退化する。
 成長システム。
 なぜ簡略化しようとする。
 武器攻撃は弱く魔法エフェクトは長くレベル基準で絶対強さが決まり工夫のしようがない。
 視界が悪い視点変更が遅いダンジョンが通過点でしかないアイテムのバリエーションが少ない。
・そして短い。
 もはや大作RPGですらない。


ゲームアーツに期待するのは金輪際無駄なことはよくわかりました。
 しかしこれではスクウェア・エニックスの能力も疑います。
 なぜこれで良しとする。
 なぜ以前に比べて悪くなっているものを発売するのか。
 悪くなっているのが判らないのか。

・戦闘は面白い。
 けれどRPGにおいての、すくなくとも『ドラクエ』型のRPGにおいては
 時間にして大多数を占める雑魚戦闘を飽きさせない、価値を持たせるため
 個々の戦術性の高さ、つまり戦闘ごと頭を使わなければ勝てない煩雑さ、よりも
 キャラクター個性に結びついた成長システムの組み合わせによる快感の積み重ねこそが
 第1に優先されるくらいのことが分らないのか。
 すくなくとも『ドラクエ』がそうして作られていることが判らないのか。

・20年もRPGを看板としてきてそれくらいのことも解っていないのか。
 日本を代表するRPGメーカーなのに、このゲームが面白いと、
 『グランディア』という名前を背負うに値すると言い得るのか。

・いえるのでしょう。これは『ドラクエ』でも『FF』でもないのだから。



ゲームアーツが悪いのではない。
 『グランディア1』より『センチメンタルグラフティ』を客は選んだのです。
 スクウェア・エニックスが悪いのではない。
 ゲームアーツにはもう期待に応える力がなかっただけなのです。
 そして『グランディア』は看板となる作品ではない。
 ブランドにぶら下がるいくつかのひとつでしかないのだから。


・かくてゲームアーツにかつて描いた夢は潰えたのです。
 『ドラゴンクエスト』と『FF』。残っていくのはそのふたつだけ。
 そして10年後も果たして、そうで在り続けることが出来るのか。




・駄目なゲームには絶望します。陰々滅々。

・けれど、シオドア・スタージョンが正しく、あらゆるものの90%がクズであるならば 
 つまり残り10%はそうではない。
 そう、だけれども、頂点に立つものが常にそうであるとも言えないのです。
 それほどに、世界は、単純ではない。
 ただ、当たり前に面白いゲームを遊ぶということの前にも、壁があるのが現実なのです。 
 
・けれど未来に希望を見るならば、純真に未来をただ夢見るのではなく
 現実を見なければならない。
 面白いものを良いとする。駄目なものを駄目とする。
 そして新しいものに期待する。
 次の『FF』と、次の『ドラクエ』は果たしてどのような作品でしょうか。楽しみです。