「エマ」「ハチミツとクローバー」「きせかえユカちゃん」

kodamatsukimi2004-05-29



・マンガは取り上げる時期が難しいものです。

・ゲームであれば発売日という大きな区切りがあるのですが
 マンガは連載分がある程度たまったら
 随時コミックスにして刊行、という形式が主です。
 書き下ろしで単行本1冊分を出す、
 ということはなかなか行われにくい。

・現在も連載中で完結していない作品については
 あれこれ言いにくいわけです。
 マンガ賞などもいまいち盛り上がらないのは
 その対象作がまだ未完成で、これからどうなるかわからない、
 という点もあるのでしょう。

・マンガの区切りは連載終了、単行本刊行時。
 今回はこの5月に発売されたマンガ3冊の感想です。



「エマ」4巻 
 著者;森薫   エンターブレイン 5/26発売 ¥620 ISBN:475771887X

「エマ」ファミ通エンターブレインが出版するマンガ雑誌
 コミックビームhttp://www.enterbrain.co.jp/comic/)の話題作。
 著者、森薫さんはこれが初連載作品。

  森薫公式サイト;伯爵夫人の昼食会 http://pine.zero.ad.jp/~zad98677/

 19世紀末英国、産業革命以後に全盛を極めた
 華やかなりしヴィクトリア朝ロンドンを舞台に、
 メイドのエマと貴族のウィリアムとの身分違いの恋を描くラブ・ロマンス漫画。
         公式サイト内「エマ」作品紹介より


コミックビームはかなり本気のマンガマニア向け雑誌。
 ファミ通エンターブレインだからゲームのマンガ版などがあるかというと
 まったく逆。
 硬派で読み手を選ぶマンガ雑誌です。

・その中で「エマ」は万人にお勧めできる作品。
 イギリスはビィクトリア時代、霧の都ロンドンが舞台。
 いわゆるシャーロック・ホームズの世界。

・貴族とメイドの身分違いのラブロマンス、というとっても直球の物語ですが
 辺にべたべたするのではなく、あっさりと話は進んでいきます。


・バックグラウンドとなる舞台世界とそこに並ぶ人々の描写が丁寧。
 人物の個性から来る魅力、いわゆる「キャラ立ち」でなく
 身分、環境、外見によって決まってしまう客観評価、
 「決められた役割」でキャラクターを演出しています。

・ストーリーも「枠組み」からはずれないもの。
 貴族の息子、伯爵家の娘、家庭教師、それに使えるメイド、
 各人の役割を丁寧になぞる形で話は展開。

・各エピソードの余白を開け
 語られた設定から、読者に行間を想像、補完させる手法は
 月刊誌ゆえのものではありますが、
 よく機能しており著者の非凡な演出力の表れといえます。


・連載分はいよいよ山場。次回がとても待ちどおしい、
 要注目のマンガです。


「エマ」3巻と同時に刊行された「エマ ヴィクトリアンガイド」(ISBN:4757716435)
 (公式サイト内紹介 http://pine.zero.ad.jp/~zad98677/book/vg-contents.htm)は
 手軽に当時の世界観をうかがい知ることが出来る
 優れたガイドブックとなっています。
 「エマ」ファンだけでなく、設定好きの方にもおすすめ。



・「ハチミツとクローバー」6巻

 著者;羽海野チカ  集英社 ヤングユークイーンズコミックス
           5/19発売 ¥420 ISBN:4088652037

 羽海野チカ 公式サイト http://www6.plala.or.jp/ssss/umino/
 集英社ヤングユーサイト http://youngyou.shueisha.co.jp/


・昨年話題になった、通称「ハチクロ」の最新刊。

・「トキメキ☆逆走ラブストーリー」というキャッチのしめす通り
 ただのラブストーリーではなく
 コメディ要素、ギャグマンガの側面を持つ本作。
 
美大生である主人公たちの恋愛を
 「NANA」とは違う青年誌的な切り口、
 家族や職場、大人にならざるをえないキャラクターの立ち位置をからめて演出。

 
・その描写は、長年にわたって精錬されてきたマンガ文法、
 マンガ好きならではのマンガ作法によって行われています。
 目に星が飛ぶ、ひとむかし前の「少女マンガ」の可笑しみを踏まえ
 照れることなくストレートに演出する作法。
 画面の細部にわたり、著者の演出意思が注がれています。

・「NANA」がその時代を写し取る「少女マンガ」であるならば
 「ハチクロ」は「少女マンガ」を読む読者を描くマンガといえます。


「エマ」森薫さん同様、羽海野チカさんもこの作品が初連載作。
 「ハチクロ」の連載はもちろん、
 今後どんな作品を書くのか楽しみです。



・「きせかえユカちゃん」6巻
 著者;東村アキコ  集英社 リボンマスコットコミックス
           5/14発売 ¥390 ISBN:4088565398

 集英社Cookieサイト http://cookie.shueisha.co.jp/top.html


・シンプルなギャグコメディ。
 小学6年のユカを主人公に友達、家族、担任教師などをレギュラーメンバー
 一話読みきり形式での、様々な日常の大騒動を描く内容。

・ありがちな設定ながら、個性的なキャラクターの
 ノリノリのボケ突っ込みな掛け合いが楽しい、まっとうなギャグマンガ

・技術でなく著者の個性で描かれる世界観であるだけに
 話の広がりは感じられませんが
 素直に楽しめるマンガらしいマンガです。



・というわけで簡単に3冊を紹介しましたが
 どれもが男性でも、もちろん女性にも楽しめる良く出来たマンガです。
 是非一度手にとってみてください。