任天堂がつくる世界のRPG


・「ペーパーマリオRPG」は「子供向け」です。
 
・いま、任天堂の多くのゲームについて、そのように感じられます。
 ファミコンミニを遊んでいて思うのは
 昔から任天堂ゲームは子供向けだったのか、
 子供であったから気付かなかったのか、
 それとも
 もう子供とはいえないであろう自分が楽しんでいるこのゲームは
 子供向けではないのか。


任天堂のゲームは「特定の年齢を対象として、幅を狭めるようなことはしない」、
 つまり、あらゆる層のプレイヤーに楽しんでもらえるソフトを開発する、
 が理念。
 「大人も子供もおねーさんも」。
 糸井重里さんによる「MOTHER2」のコピーです。

・実際のところはどうなのか。
 

・「ぺーパーマリオ」がRPGとして
 他と差別化する点は、マリオゆえの「アクションRPG」という点。 
 「スーパーマリオブラザーズ」程ではないにせよ、
 フィールドを様々なアクションで行動し
 戦闘ではアクションボタンをタイミングよく押して有利に展開を運ぶ。

・しかし、これらのことだけで「マリオRPG」を定義することはできません。
 フイールドでアクションするRPG。
 戦闘中タイミングよくボタンをおすRPG。
 どちらもいくつも思い浮かびます。
 「ベイグランドストーリー」とか。しつこい。

・では「マリオRPG」シリーズとは何なのか。
 それは、任天堂のゲームであること、「子供向け」であることです。



・このシリーズには戦闘が単調である、という批判があります。
 RPGにこだわらず、さらにアクションよりにすべき。
 例えば「SDガンダム」のように、戦闘ごと簡単なアクションになり
 腕次第でレベルに関係なくクリアできるようにすれば
 よりマリオらしいし、もっと面白くなる。

任天堂が、ゲームシステムに対し
 この程度のことを考えないはずがありません。
 そのような信頼には必ず答えるメーカーです。

・なぜ3作つづけて同じシステムなのか。
 それはこのシステムが、任天堂の考えるRPGに対して最もあっている、
 と考えるからでしょう。


・戦闘の攻撃ごと同じタイミングを要求されるアクションの繰り返し。
 戦闘時間の成果の積み重ねであるステータスの成長要素よりも
 その戦闘ごとの判断の方が重要である。
 そうではありません。
 誰もが同じタイミングで入力できる難度のアクションであれば
 それはないも同じこと。  

・「カエルの為に鐘は鳴る」(http://www.nintendo.co.jp/n02/dmg/okj/index.html
 というモノクロGBのRPGを、むかし任天堂は製作しています。
 このゲームは戦闘がありません。
 プレイヤーキャラクターのステータスによって
 戦う前から、結果は決まっているのです。

・「ペーパーマリオ」の誰でもクリアできる単調で簡単な戦闘は
 すでに結果がでているもの。
 任天堂というゲームメーカーによって管理されているRPGなのです。


・RPGはロール(=role、役割)プレイングゲーム、あてられた役を演じるゲーム。
 ゲームマスターにより決められたシステムの中で
 プレイヤーのキャラクターが役を演じ、物語を作り出すゲーム。
 それがテレビゲームRPGの元の姿、
 テーブルトークRPGの時点でのRPGのかたち。


任天堂というゲームメーカー、ゲームマスターは世界をつくり、つくりこんで、
 そのなかで上質な冒険を体験させてくれます。
 
・マリオは意思をもったキャラクターではなく
 脚本にしたがって演ずる役者。
 プレイヤーはマリオの活躍にあわせ、タイミングよく手をたたく観客。

・それは任天堂という大人によって管理された上質の世界に遊ぶ子供の世界。
 もともとのRPGとは違う、任天堂のつくりだした世界のRPG。
 


サガシリーズなど実験的なRPGを製作し続ける河津秋敏さんや
 あえて王道でないRPGを狙う桝田省治さん。
 共通するのは、システムが物語を作り出すRPGであること。
 ゲームシステムが作る、プレイヤーの数だけある世界。


テーブルトークRPGはプレイヤー同士の会話によって世界が作り出されます。
 一人でも作り出せるよう、コンピューターに協力させたものが
 コンピューターゲーム、テレビゲームRPG。
 
・テレビゲームという可能性を得てRPGは拡大し
 別ジャンルであったアドベンチャー、アクションと結びつき
 さまざまな姿を見せています。
 その中心、スタンダードが「ドラゴンクエスト」であるならば
 「ウィザードリー」のようにシステムが物語を作るRPGの、その対極、
 「ゼルダの伝説」「メトロイド」などの
 アクションアドベンチャーのとなりにあるのが
 任天堂のRPG「マリオRPG」なのです。




・「真に優れた子供向け作品は、大人の鑑賞にも堪えうる。」
 任天堂自身が掲げる命題は、確かに真実です。

・しかし、いまの任天堂ゲームにつく「子供向け」のレッテルは
 その見た目からくる決め付けではないはず。  
 いかに上質でも
 管理された世界のRPG、任天堂のゲームは子供向けと感じられる。

・子供向けだが楽しめる。それが評価です。


・多人数でなく、一人で遊ぶRPGにおいて
 ゲームの面白さは、
 プレイヤーがコントローラーを操作するというアクションで
 自身の手で世界を作り出せること。
 「ゼルダ」「メトロイド」はリンクやサムスを操作し、一体化して
 その世界で自身の世界、冒険を作り出すことができる。
 「スーパーマリオブラザーズ」はそうだった。
 では「マリオRPG」は何を操作しているのか。

・大人のつくる上質の劇。
 任天堂のつくる世界で遊べるのは子供だけであり
 大人はそれを眺めて楽しむことしかできません。
 それが一流のゲームメーカーである任天堂の理想とするRPGなのか。



・その答えは、任天堂を体現する宮本茂さんのGCでの新作「ピクミン」にある、
 といえそうです。

・というところで次回へつづく。