ゲームのクリア時間

・『時間の砂』のクリア時間は初プレイでおよそ10時間。
 短い。
 という反応を目にします。
 本当にそうか。


・『スーパーマリオブラザーズ』。
 ゲーム好きなら誰もが遊んだことがあるアクションゲーム。
 その「クリア時間」は何時間か。

・ワープを使わず8ワールド4ステージ全32面をクリアしようと思えば
 かなりの時間が掛かるでしょう。
 多くは、1-2、4-2でのワープを使ってのクリア時間を
 想い起こすのではないかと思います。

・1ステージの制限時間が最大300秒。
 最短8ステージクリアして、およそ30分。
 これが「クリア時間」。
 (ちなみに世界最短は5分17秒だそうです。
  参考;Nintendo iNSIDE http://www.nintendo-inside.jp/news/130/13035.html


・30分は短いか。
 そうではありません。

・短い、簡単にクリアできる、ボリュームのないゲームだ、とは思わない。
 ワープを使ってクリアしても、もちろん使わないでクリアしようとしても
 「クリア時間」の、その何十倍、何十時間と遊んだはず。


・ゲームのクリア時間。
 この場合のクリア時間とは、ゲームスタートからエンディングまでにかかる時間。
 『時間の砂』なら初プレイで10時間。慣れれば3時間。
 『スーパーマリオ』をはじめてやって
 はじめてエンディングを見るまでの時間のことです。
 10時間は短いですよね。ええそうですとも。


・1度クリアすればこのゲームはわかった、もういいと棚に並べてしまう。
 売ってしまう。
 私も同じ事をします。
 売りはしなくとも、いつかやろうと大事にしまいこみ
 何年も再プレイしていないソフトが多数あります。

・ゲームは消費物。1度クリアして消費すれば充分でしょう。
 しかし、けれど
 面白いゲームを、1度クリアして、そのままにしてはおけない。


・初代『ペルシャ』は全ステージクリアに1時間という制限があります。
 セーブはできますが、経過時間も記録されるため
 最終的には各ステージをしっかりと短時間で
 クリアできるようにならなくてはなりません。

・クリア時間は1時間以内。
 けれども、クリアするためには、何十時間もプレイすることになるでしょう。
 そして、その何十時間、ゲームをクリアする楽しさを味わえます。

・1時間以内でクリアできるようになると
 スタートからエンディングまで一切無駄なく駆け抜けることができるようになる。
 それは、操るだけで楽しい。
 このゲームをわがものにしたという達成感。
 何十時間が1時間に還元される瞬間。

・初代『ペルシャ』はアクションアドベンチャーの先駆という
 歴史的意義だけでなく
 アクションゲームの面白さの根源である
 操る楽しさ、そして上手くなる楽しさが
 しっかりとつながりあっている。
 この素晴らしいゲームシステムによって
 初代にして完璧。
 今遊んでも抜群に楽しく、そしていつまでも古びることない「歴史的名作」。


・『時間の砂』の欠点を挙げるとすればそこです。

・初プレイで、下手であっても10時間程度でクリアできてしまう。
 短いです。
 最短で3時間。長いです。 
 上手くなる喜びが3分の1でしかない。
 せめてそのストーリーに合わせ、ハリウッド映画のように2時間弱、
 1回の集中したプレイで一時に最期までプレイできるようになっていれば。



・『時間の砂』は短いことが欠点である。
 その通りです。
 しかし、意味が違います。
 ゲームを楽しむのに、ボリュームが少ないというのではない。
 むしろ多過ぎます。

・『グラディウス5』がクリア時間10時間と書かれていたら
 短い、と言うのでしょうか。


・『プリンス・オブ・ペルシャ 〜時間の砂〜』はアクションアドベンチャーゲーム
 『64ゼルダ』のようにアクションRPGではないし
 『ICO』よりも、『ペルシャ』である以上ずっとアクション寄りです。

・そのバランスにおいて、ただ単純にボリュームを求めてしまう風潮にあわせてか
 初代や『スーパーマリオ』が持っていた
 自在に操れるようになった後のアクションの楽しみ、
 上手くなる楽しさが重視されていない残念です。

・しかし、1度クリアすれば消費した気になってしまう薄い作品ではない。
 間違いなく『ペルシャ』の名に恥じない傑作です。



・ゲームのクリア時間。
 クリアとはどの時点を言うのでしょうか。
 はじめてエンディングを見るまでに掛かる時間なのか。
 スタートからエンディングまでの到達時間なのか。
 エンディングがないゲームはどうなのか。


・『スーパーマリオ』がそうであるように
 面白いゲームのクリア時間は無限に長いのです。


・ゲームにはやりこみ要素、ボリューム感が必要。
 それが間違っているのではありません。

・ゲームの面白さとは、製作者が作った仕掛けを全て確認することではなく
 遊んでいて、面白いと感じているかどうか。

・クリア時間が面白いと感じる量に比例しているといえるのでしょうか。