「ユーゲーNo.16」

 発行:マイクロマガジン社 11月20日発売 ¥860
 公式サイト http://www.microgroup.co.jp/ug/

・一ヶ月以上前に発売された雑誌の感想を
 いまさら載せるのがこのサイトでございます。


・今回の特集は「みんなのゲーム評議会」「僕たちの好きなもえるゲーム」。
 どちらもタイトルにある意味偽りない内容で実に結構。

・「ユーゲー」はマニア向けマイナーゲーム雑誌。
 例えば、3月26日のところに書いたように
 ’03年のベストゲームが「ボーダーダウン」であるとか
 今号掲載の最近の面白かったゲーム7位が「ジャッジメントシルバーソード」。
 ここまで来ると驚くと言うより飽きれます。

・一見さんお断り。下手に初心者に媚びない。
 原田勝彦さんのゲームレジスタンスなど
 特集以外の各記事も皆マニア向け読みものに徹していて素薔薇らしい。
 そして巻末のゾルゲさんのマンガがこの雑誌の全てを語っています。
 想定読者層をしっかりとつかむマイナー雑誌として文句ない内容。



・「みんなのゲーム評議会」は、読者のお勧めソフト紹介企画。
 「ユーゲー」にわざわざハガキを送るほどの方々が挙げるものですから
 それはもう片寄り過ぎのセレクト。
 紹介されているゲームは公式サイトをご覧くださいですが
 私が遊んだことのあるものは「チェインダイブ」と「グラディウス5」のみ。
 マイナー過ぎ。

・「ユーゲー」の特徴として
 ファミ通クロスレビューで7点と6点が並ぶような中から
 「全体的には粗もあり欠点も多いが、この一点みるべきところがある」
 という作品を紹介する、というところがあります。

・毎週次々と棚に並ばないほど新作が発売されていくゲームソフトの中で
 埋もれてしまったもの、
 駄目なところもあるけれど良いところもある、俺は好きだ。
 という作品。
 だからして、誰にでも進められる作品ではないわけです。


・作品の価値は人それぞれで、どこまでも全部が全部駄目である、
 というソフトでなければ(そういうソフトも珍重されますが)
 その長所を好きになるユーザーもいるわけです。
 商売としては失敗でも、ユーザーに評価されることもある。

・もったいないことです。
 多くの埋もれるソフトの欠点はみな同じ。
 ロード時間、操作性、そして全体のバランス。
 アイデアはあっても、それを表現する技術とデザインセンスと時間とお金が足りない。
 時代に合わせたグラフィックでなくとも基本的な点をしっかりとつくれば
 マニアには認められる作品になりうるのです。

・もっとも、新品で売れなければそれすなわち失敗作。
 マニア相手に金を稼ぐは中古ショップのプレミア価格なのですが。



・「僕たちの好きなもえるゲーム」。
 「ユーゲー」もついに日和見でそちら方面にいってしまうのか、
 と思いきや「萌え」でなく「燃え」。
 「燃えプロ」でもなく、「桜坂消防隊」などの火事消防、
 「燃える」ゲームでありました。また変化球を。面白い。

・「バーニングレンジャー」「消防士」(両方セガ)などが入っていないですが
 古今の火事ゲームが紹介されております。
 この中で無難に遊べるのがヒューマンの「ザ・ファイヤーメン」(SFC ASIN:B000068HAN
 シンプルなアクションゲーム。
 火事という状況を上手くゲーム内容に生かしていて、地味ながら良い作品です。


・火事ゲームについては「A.B.」(http://ab.txt-nifty.com/ab/)の
 考察が面白いのでご覧ください。

 消防ゲームと「桜坂消防隊」 http://ab.txt-nifty.com/ab/2004/06/post_3.html
  関連 災害ゲームがあまり作られない理由 http://ab.txt-nifty.com/ab/2004/04/memo20040418.html 
  上記事内の関連 ラヴフール「FIRE FIGHTER F.D.18」 http://d.hatena.ne.jp/takanabe/20040419#p2

・「ユーゲー」は面白いゲームを紹介する雑誌ですから
 記事としてはもちろん問題ないのですが
 ゲーマーとしては
 コナミは何を狙って「FIREFIGHTER F.D.18」を作ったのか、
 などと考えるのも楽しいものです。


・災害ゲームの難しいところは、競争相手が時間のみになり
 駆引きの面白さが表現し難いところにあるのでしょう。
 アクションとしては攻略ルートが決まりきって単調になりすぎる、
 一度クリアすれば終わり、となりがち。

・「レミングス」のようにパズルゲームとして表現し
 より単純化、バリエーションを増やす方向に向かうのも一つのやり方。

・けれどそれでは、災害を題材にする意味づけが違ってきます。
 取り上げる目的は、「救助」によるヒーロー感覚、現実性リアリティとの相乗効果。
 アクションゲームに合わないところは、「救助」する対象が多数であること。
 囚われのお姫様とか、さらわれたヒロイン等を救出、というと明確で表現も容易。
 大統領救出だと思ったらいつの間にか演説されながら戦っている……とこれは違う、
 とにかく、ストーリー仕立てにするのに合わない。
 「エイブ・ア・ゴーゴー」のように。いやこれも違う。

・その辺りをうまく表現したのが「セプテントリオン」(SFC ASIN:B000068HAB)。
 「ポセイドンアドベンチャー」( ASIN:B00009QI0S)、
 (地味ながら良い映画。かなりわざとらしい、
  というより予算の関係を思わせるラストの脱出シーンなど
  全体に漂うB級感で個人的には「タイタニック」より好きです)
 これに習う内容で、転覆し沈み往く船からできるだけ多数の乗客とともに
 脱出するパズルアクション。
 よくまとまっていて実に面白いです。
 またヒューマン。すごいぞヒューマン。倒産してしまったけど。

・現状の3Dによるデザインで災害ゲームを作ろうと思うと
 PS版「セプテントリオン」がその失敗例、こうしたら駄目ですよ、
 ということを、表現してくれているのかもしれません。

・「エスピオネージェンツ」のようにアクション要素を廃し
 「攻殻機動隊」の荒巻部長よろしくRTSに徹して
 災害ゲームを作ってみると面白いのではないでしょうか。
 セガ辺りがひとつ。



・シリーズ特集は桃鉄こと「桃太郎電鉄」。
 「ボンバーマン」「マリオパーティ」と並ぶハドソンのパーティ向けソフト。
 先日22日に最新作「ファイナルファンタジーinいただきストリートSpecial」が発売された
 「いたスト」シリーズと並ぶボードゲームの定番。

・「いたスト」は初代から完成されていましたが
 「桃鉄」は順次発展してきた感があります。
 モノポリーに株を絡め、資産を一定以上にしてゴールすること、
 とシンプルにまとめた「いたスト」。
 日本各地を回るという設定を生かし、目的地と目標物件との位置関係が重要で
 所持アイテムによるサイコロ出目操作に要点をまとめた「桃鉄」。

・初心者に解りやすいのは「桃鉄」。
 とにかく常に目的位置への3位以内を保つことに注意するだけで
 それなりに勝負できる設定。
 「いたスト」は堀井雄二さん製作であるだけにバランス完成度は申し分ないですが
 やや対戦相手との戦いにパターンが感じられてしまうところ。

・同じボードゲームでも、サイコロの出目に干渉できるかどうかが違いで
 その「遊び」が広い、つまり運に頼る要素が少ない「桃鉄」のほうが
 より戦略、勝負競争駆引きのバリエーションに富んでいるといえます。

・とはいえどちらも、もう十分に完成されている作品。
 新しいルールを取り入れた両作もみてみたいものです。



・以上このような感じで。
 年内あと何度更新できるでしょうか。
 ああゲームをするのに忙しい。