もうひとつのトレジャーSTG『爆裂無敵バンガイオー』

 DC ASIN:B00006LJI7N64 ASIN:B000069RVY
 トレジャー http://www.treasure-inc.co.jp/index01.html 


・『バンガイオー』はマニア指定メーカー、トレジャーの作品。
 ジャンルは得意の2Dアクションシューティング。
 全方位スクロールのロボットアクション、
 つまりはゲームアーツテグザー』。
 敵弾を避けて撃つ、というシューティングよりも
 迷宮調のステージ構成、自機の位置取りなどが重要なアクション要素が強いゲーム。


・特徴は2種類の「全方位弾」。
 普通に放つ分には周囲に20発ですが
 敵弾、敵機を引き付けて放つと弾数急増、
 最大400発、画面全体を999爆裂の渦が覆い尽くす。

・これが単純に楽しい。
 敵弾の引き付けるタイミングはそれほどシビアではなく
 また、全方位弾を放った後しばらく無敵状態になるため
 簡単に最大弾幕で、敵や地上モノを撃滅する爽快感が味わえます。

・時代はポリポリ3D。
 でありながら2DSTG。N64、DCの性能を無駄に活かした2D処理が本作の華。
 ホーミング弾と反射レーザーが
 一撃で画面中の敵群を破壊し尽くす爽快感。
 ためてためて、撃つ。
 単純明快爆裂無敵のアクションシューティング。


・地獄の44丁目まで全44ステージ。
 ひとつひとつは短く、次々に最奥部のボス敵を撃滅、
 一息に10面、20面とクリアできます。
 1ステージごとにクリアスコアが自動セーブ、
 通してクリアする必要はなく、残機やコンティニューといった概念はありません。
 何度も44のバリエーションを繰り返し
 ステージごとも自己最高スコアを更新していく形式。

・爆裂の爽快感、操作性も良し、
 ついでにキャラクターも良い感じに狂っていて最高。
 さすがはのトレジャー、良い作品でございます。



・さて、本作がもうひとつ話題にならないのは
 このような2Dアクション、シューティングを好む層からすれば
 やや簡単すぎる、がゆえ。


・難易度は低いです。
 初見でもすこしゲームに慣れたひとであれば
 20面位まではあっさりとクリアできます。
 後半に行くほど難易度が高まるかというとそうでもなく
 全体を見て難しい、といえるのは最終44面と他数面程度。

・テクニックも要は全方位弾を打つタイミングのみ。
 広いところでホーミング、狭いところで反射レーザー、
 突き詰めればマップのどこで打つか、というだけ。
 最終ステージとラストボスはさすがにややてこずりますが
 ゲームシステムのある点を理解すれば、以降容易に倒せるようになります。

・クリアするだけならすこぶる簡単。
 44面あっても似たような面ばかりですぐ飽きる。
 スコアアタックもそれほど深みがない、
 なにより短いステージを何度も繰り返す形なので容易に極められる。


・また、例えば「全方位弾禁止」などの条件を付けて遊べば、
 なかなかに難易度も高く、歯ごたえある展開と成り得ます。
 けれども『バンガイオー』のステージは
 基本的に「全方位弾をいかに使いこなすか」という観点から作られていて
 逆にストレスが溜まってしまう展開。
 遊びの自由度は低い構成。


・このジャンルに自信のある人にとっては、簡単すぎる中途半端なゲーム。
 一度一通り遊べば、何度も遊ぶ気になれない作品。
 それが『バンガイオー』の評価です。



・さて、では『バンガイオー』は
 どうすれば誰もが認める傑作に成り得るのでしょうか。 


STGの面白さとは何か。
 敵弾を避けて撃つ。原理的な面白さ。
 ステージをクリアする。構成を覚えてパターンを組む攻略の面白さ。
 スコアを稼ぐ。カスリ、チェインコンボ、アイテム育成、さらなる解析。
 知識と経験と、そして自分自身の腕。
 原則1人用であるがゆえに、どこまでも自分との戦い、自分の責任で自分の功績。
 それがSTGの面白さ。


・では、面白いSTGとは
 敵弾を避けて撃つ、その単純なことが、他の要素に邪魔されずに楽しめること。
 ギミックに富んだ今まで見たこともない新鮮で様々な構成のステージ、
 それと並列して、敵のパターン、ボス敵の能力、そして自機の性能の
 できるだけ多くの、それでいて各要素がきちんと結びついているバリエーション。
 それによる多彩で尽きることない攻略の楽しさ。
 全ての結果は運や偶然ではなく
 プレイヤー自身の実力に帰結するゲームバランス。 



・『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』(ASIN:B00068WKJ0)を遊んでいると
 欠点のなさ、完成度の高さに驚きます。
 練り込まれた操作性。単純化しながらも無駄のないユニット性能。
 生産システムを踏まえた絶妙のバランスを持つマップ構成。
 それがいつまでも続く圧倒的なボリューム。
 さらにマップコンストラクションもあってバリエーションは無限。
 そして対戦も可能。

・あと何を付け加えれば、改善すれば良いのか。
 無駄だから削るべき要素はあるか。
 何も思いつきません。完璧です。


・『バンガイオー』はどうか。

・『バンガイオー』は面白い。けれど飽きてしまう。
 ステージが数はあっても練り込み不足で
 全方位弾、爆裂無敵の楽しさを充分に味わえない。
 敵が弱い。最終ボスのようなレベルの高い攻略対象がない。
 何よりその斬新なシステムに頼りすぎ、いうなればそれだけで
 それを生かしきれていない中途半端なゲームである。


・けれども、『バンガイオー』は面白い。
 なぜなら、「敵弾を引き付けてカウンター全方位弾を撃つ」という
 1アクションにゲームの面白さが濃縮還元されているから。
 開発者がその特長を把握しており
 特長を削ぐ要素を排除して作られているから。

・何が面白いのか。そのゲームのどこが面白いのか。
 それがあるのかどうか、それが活かされているかどうか。


・確かに『バンガイオー』は完璧ではない。
 欠点はあります。
 けれどもSTGとはそれ自体が未だ完璧ではないはずです。

STGは20年前の『スペースインベーダー』から
 ある意味で何も変わっていないともいえるでしょう。
 レバーで避けてボタンで撃つ。目的はハイスコア。1プレイ1ゲーム。


・けれども20年前に完成していたから変わっていないのか。
 歴代のSTGは『インベーダー』のバリエーションでしかないのか。
 それは違う。
 常に進化を続けているのがSTGです。

STGにはあと何を加えて、何を変えて、何を削ればよいのか。
 いくらでも加える変えていく部分がある。
 『グラディウス5』にステージセーブをつければどうなるのか。
 『バンガイオー』が他のゲームで使えたらどうなるのか。
 どのSTGも、隣のSTGのシステムを組み込む余地があるし
 あらゆるシステム、構成要素はまだまだ磨き上げていけるはず。

STGは未完成。完璧なるSTGシステムは存在しない。
 完璧なSTGは未だ存在してはいないのです。


・『バンガイオー』はトレジャーにとって実験作。
 そしてSTGにとっても、縦弾幕、横パターンなどにとらわれない斬新な作品。

・斬新なシステムがあり、そしてそれを受け入れるプレイヤーもいる。
 『バンガイオー』のその面は評価されていないのか。
 決してそうではありません。
 それは市場価格をみればわかること。
 未完成でも、それゆえに優れたゲームはあり得るし
 面白いゲームは面白い。
 『バンガイオー』は面白いゲームです。




・蛇足。
 上記の通り、『バンガイオー』はDC版が既に定価近くまで値を戻し
 DC版のプロトタイプ、かなり中身の違うN64版は数自体が少ないレア商品。
 だから買っておかなければ駄目なのですよ。

・『シルバーガン』の高騰に懲りDC版『斑鳩』を買ってもGC版はワゴン行き。
 『罪と罰』が余っているからといって、いつまた値を戻すかわからない。
 現在ワゴンのGBA『アトム』も、いつまたプレミア入りすることやらわかりませんよ。
 同じワゴンでも『一歩』は大丈夫でしょうけど。もちろん『ひっぱリンダ』も。

・とりあえず『アトム』を買って保護しましょう。
 ついでに『バンガイオー』も一緒にかごに入れてみてください。
 値段分は充分に楽しめます。本当です。たぶん。


 参考;セガコミュニティ クリエイターズノート #25 http://sega.jp/community/creators/vol_25/1.html


 関連:シューティングゲームに求められるもの http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20041120