ゲームの中の物語


・物語の面白さ。
 これはあります。
 神話、文学、音楽、演劇。
 ひとが人間である以上、
 人生を要約し、そこに知識と感情の揺らぎの両面を生み出す、
 物語の価値は普遍です。



・ではゲームにおいてはどうか。
 「スペースインベーダー」に物語の面白さはあるのか。
 「スーパーマリオブラザーズ」のストーリーは、その価値にどれだけのものを持つのか。



・「ゲーム性」という便利な言葉があって
 ゲームの面白さそのもの、本質である、という意味で使われます。
 それはどういうものなのか。

・もちろんそれはひとことで言えるものではなく、
 でも解りづらいものでもない。
 ゲームを遊べば誰もが感じる面白さ。けれどそれを表現することばがないから
 「ゲーム性」という言葉が便利に使われるのです。


・そこに、ゲームの中に物語の面白さはあるのだろうか。
 
・もちろんゲームにも物語はあります。
 「ゲーム性」の背景として、
 あるいはそれをガロニのように引き立てるものとして。

・そしてそれだけでなく、ゲームが作りだす物語もあります。


アドベンチャーゲーム、ノベルゲーム、これらのジャンルはその面白さを
 小説に画面と音を付けたものでなく
 どのようにゲーム性を持たせて成立させるか、と考えられたものです。

・お話の途中で、
 「もし、ここでこうしていれば」
 「わたしだったら、こうするのに」
 そういう読者の願いをかなえることが、ここでの「ゲーム性」。

・読む側、読まされる側、見せられる、ただ消費するだけの地位でしかなかった
 われわれが、
 自ら物語を作りだすことができる。
 そこが面白さです。

・ただ物語を楽しむだけでなく
 その中に介入し、あるいは演じて
 新しくそれを作りだすことができるという夢。
 それがゲームのつくる物語。
 あるいは物語の面白さを超える可能性を持ったもの。


・RPGでも同じです。
 その世界に役割を演じ、その世界に物語を作りだすゲーム。
 神話や表示される町や村や人々、世界のありさまを背景に
 成長、闘争、恋愛、悪徳、さまざまに用意された脚本を舞台に
 紡がれる言葉、奏でられる音楽、描かれる美術を演出として
 そこに踊ることが出来るのが、RPGの「ゲーム性」です。


・ゲームの中に物語の面白さはあり、そして物語を作りだす面白さも、またある。