経営統合記念『ナムコ クロス カプコン』

 PS2 SRPG 製作;ナムコ モノリスソフトhttp://www.monolithsoft.co.jp/
 2005/05/26発売 ASIN:B0009PLCMQ
 公式サイト http://namco-ch.net/namco_x_capcom/index.php
 製作者インタビュー http://www.monolithsoft.co.jp/left/special/nc-interview/index.html


・よ、う、やくと、クリアいたしました。長かった。
 途中『キラー7』に浮気した以外は
 ひたすらこつこつ1日1ステージごとクリアしていく繰り返し。
 引きが上手いのでついつい睡眠時間を削ってでも先を遊びたくなるのを堪えて耐えて。
 それだけ遊ばせる作品ではあります。


・「在るべき世界に戻りなさい」。
 何度いわれたかわかりませんが、これですっきり他の作品に手を出せます。
 積みゲー山から『トロンにコブン』(ASIN:B00005OULF)や
 『ストライダー飛竜1&2』(ASIN:B00005OULB)を発掘したり
 ナムコアンソロジー2(ASIN:B000069S9T)のアレンジ版『ワルキューレ』であるとか
 いやまずは『ヴァンパイア ダークストーカーズコレクション』(ASIN:B0007Z3OLA)を崩すべきかとか
 『魔界村』は流石に百万回やり直す時間はないのでクリア出来ませんとか
 邪神さまにはいくらお世話になっていても、それでも『ゼノサーガ』はやる気いたしませんとか。

・うむ。ここが私の「在るべき世界」でありますか。


ナムコカプコンの過去作品を総ざらい、
 かってのゲームを端から引張り出して遊びたくなる集大成。
 キャラクター資産を活かすゲーム、キャラクターゲームとはどうあるべきか。
 『スーパーロボット大戦』のゲームキャラクター版。
 なるほどこのやり方がありましたか。





・マンガやアニメなどの様々なキャラクター資産を持つバンダイ
 バンダイのゲームは、良くも悪くも子供だまし。
 ガンダムのように長期的に商売が成り立つ、大人まで巻き込めるものは例外で
 大概は一過性。1年経って学年変われば捨てられる。
 毎年新しい商品を開発しなければならないけれども、けれど使い回しが可能である。


バンダイがどのように考えているのかは分りませんが
 テレビゲームの面を、大人のゲーマーから見てみれば底が浅そうで興味の湧くものは少なく
 買ってみればやはり単純極まりない。これは駄目だ。


・けれど、やはりそう思うひとも
 昔はバンダイのゲームでおもちゃでキャラクターで楽しんでいたことがあるのです。

・子供にはバンダイという名前ではなく、好きなキャラクターであることだけがものの価値。
 そこをわかっているのがバンダイの優れたところです。

・子供だましの商品。それは騙されていることに気付かなければ楽しい価値あるもの。
 商品対象者でなく興味のないひとが、興味がないから価値なきものと断じることは
 対象の子供にとっては理解しかねる不思議。
 ゲームだってアニメだってパチンコだってタバコだって、何であっても
 興味のないひとには無価値であるどころか有限の人生を無駄にする毒にしか思えません。 



・では、そのバンダイが子供に比べて格段に趣味に使えるお金を握る、
 大人に手を出させるにはどうするか。

・その一例が、過去の記憶「懐かしさ」に訴えることでしょう。
 ゲームにおいては『スーパーロボット大戦』。
 内容にはいくらでも文句は出るものの、それでも売れ続けているゲームです。

・それはなぜか。どこに価値があるのか。何が面白いのか。
 それはユニットを指揮して戦争に勝利する戦略ゲームの楽しさよりも
 キャラクターの価値が載った駒を意のままに操る楽しさにこそあるといえるでしょう。



・A.B.「スーパーロボット大戦とは少年ジャンプだ」http://ab.txt-nifty.com/ab/2004/08/20040808gc.html
 にも、その価値はまとめられていますが
 ここではキャラクターゲームということに焦点を当てて、こちらのサイトをご覧ください。
 
 たかひろ的研究館「なぜRPGの敵はモンスターなのにシミュレーションRPGの敵は人間なのか真剣に考える」
 http://www.geocities.jp/takahiro_research/game1/simulationrpg.html


・以前こちら(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050516)で書きましたように
 「キャラクター」とは必ずしも人間である必要はない。
 ただそれは遊び手が人間だから感情移入しやすいというだけ。

・ロボットも人工知能を持って喋るものはもちろん、
 意のままに動くスーツでも個性が演出されるし
 自動的に生産されて消費される人間が乗っていない機械でも、やはりそれに興味のあるひと、
 例えば軍事マニアのかたがたにとってはカタログスペックだけでそのマシンはイノチを持って
 他人と同様の価値を持ち得るでしょう。


・であれば「モンスターでなく人間であること」が問題なのではなく、敵となる存在に
 性能数値と書き割りという見た目以上の「キャラクター」と成り得る価値があるかどうか。
 モンスター、あるいはロボットとの戦争でも
 彼らがひとである遊び手から人間でなくともひとであると認識されるかどうかの問題です。

・モンスターすなわち成敗する相手で戦争するほどの存在ではない、という共通認識があるからこそ。
 実際モンスターに襲われて生存を脅かされるファンタジー世界では毎日が戦争でしょうとも。
 RPGがどうかでなく、そのお話しがどのように演出されているかのおはなしです。


・ゲームとして構築することを考えたとき
 机上の模擬戦闘をコンピューターでシミュレートしたものが『大戦略』のような戦争シミュレーション。
 そこにキャラクターが乗り込む。例えば工画堂パワードール』。
 わかりにくい機械数値を取り払って英雄伝説に置き換えれば『ファイアーエムブレム』。
 人間がそこで戦争し傷ついていくことを想像させない任天堂『ウォーズ』シリーズ。
 
・けれどどれもがモンスターであってもかまわない内容でもあります。
 人間がユニットであるものが目立つのは
 人間であるほうが身近である。というだけでなく
 万能に職種を表現しやすく戦略の幅を取りやすいという仕様の要請からこそ
 結果として評価されるゲームとして生き残ったというほうがより近い。


・『パワードール』に見るように、戦場でも機械同士よりひとがいたほうが良いし
 見た目麗しい美女であるほうがなおよろしい。
 メカメカ美少女。それが宮崎駿監督も大好きなこの世界の商品価値なのです。
 
・それにしても14歳、10歳、6歳くらいの3姉妹ヒロインの内2人が求婚してくる
 「惑星カレスの魔女」(ISBN:4488708013)の書影を世界のミヤザキに依頼する創元編集者。
 見事な仕事振りでございます。感服しました。




・話を戻して。

・『スパロボ』は優れたキャラクターゲームです。
 購入するひとが求める価値は、コーエー三国志』のように細かい数値の上下にあるのではなく
 ましてや緻密な戦略シミューレーターであることにもない。
 性能の差を気合とか根性とか、主人公だから、正義だから、格好良いから、という価値で
 打ち砕く爽快感にこそ、キャラクターの価値は最も高まる。認識される。

・そのキャラクターが好きな人が買い、その活躍を楽しみ、
 さらに戦いを通しての連帯感から仲間にも興味を持ち、そこに新しい商品価値を創りだす。
 元となったものを尊重して再現演出するだけで、それを組み合わせなくとも並べるだけでも
 そのおもちゃ箱から遊び手は勝手に新しい価値を創りだしてくれるのです。


・まったく上手い。
 けれどバンダイが優れてウインキーソフトhttp://www.winky.co.jp/)に製作させたのではなく
 上手くいったから続いただけですよきっと。

・けれどしかし、それを愚直でも継続できるのが、バンダイのやはり優れているところでしょう。
 ガンダムにおいて、元の作品の出来不出来以上に
 20年間引っ張り続けることができてなお商品価値を保つことが出来ているのがその証左。
 
コナミがそのやりかたを修めれば、なお驚異的たるメーカーとなるでしょう。
 セガのような不器用なところには出来ません。
 いやでも『サクラ大戦』も気がつけば随分長持ちでございますことよ。広井王子さまさま。




・そしてそのバンダイとくっつく予定のナムコ
 そこから発売の本題『ナムコクロスカプコン』。

・無難に出来たゲームです。
 ボタンを連打しているだけでクリアできる。
 長いので時間をかけたくなければそれなりに工夫する余地もある。
 キャラクターは良く研究されていて過ぎ去って美化された「懐かしさ」を心地良く刺激します。

・同じくナムコRPG『テイルズ』シリーズも、同じように無難に良く出来ている作品。
 荒唐無稽で支離滅裂で意味不明、であることが商品価値持つ物語と
 ボタン連打で眠気を抑える単純な戦闘の繰り返し。
 それなりに工夫する余地もあるがクリアするだけなら時間さえかければ誰にも出来る。


・これが、今回のゲームキャラクターに懐かしさを感じるひとが
 その美化された思い出の中で信頼を置いていたナムコというブランドが考える商品なのでしょうか。
 良く出来たキャラクターゲーム。
 飽きさせない程度には丁寧に作られているが深みのないSRPG



ナムコは変わったメーカーです。
 『ファミスタ』で頂点にたつも『パワプロ』に抜かれて迷走。『リッジ』でも繰り返す。
 『マインドシーカー』『メルヘンメイズ』のような行かれた作品もお出しになる。
 『ギャラガ』『ゼビウス』ときて『スターラスター』で飛び出して戻ってこない。
 『レッスルボール』から『ゆめりあ』までゲーマーのゆりかごから墓場まで
 一体どこへ行くんだナムコ
 未来は『アイドルマスター』(http://www.idolmaster.jp/)ですか。
 何かどうも素人目にはあさって向きのような気がいたします。


・けれどやはり、そこから何かが生まれ、かっての名作のように
 そして『塊魂』のように新しいゲームを生み出してくれるメーカーでもある。
 『ナムコクロスカプコン』とそこから後ろ向きに広がるレトロゲームに時間をかけて
 今は、そしてこれからもナムコにゲーマーは期待するのです。