転がる石を操るゲーム/『みんな大好き塊魂』

kodamatsukimi2005-07-19



・『みんな大好き塊魂』(ASIN:B0009NUP2G)は『塊魂2』ではなくver. 1.1とでもいうべきか。
 前作の不満点、遊べるステージの少なさ、対戦の不備の見直しから
 ステージ構成、操作性、タイム設定等々「ゲームバランス」を司る様々な点を
 細やかなところまでしっかりと修正した作品。もう前作は不要なほど。

・さすがナムコです。
 このゲームのどこが面白いのか、をしっかりと理解している仕事。
 古くは『ギャ』シリーズから近くは『ドリラー』までこの手の仕事をやらせれば隙はない。


・『塊魂』は「かたまり」を転がすゲーム。
 (関連;前作の感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040420
 時間制限の中で、決められたマップの中を転がしてどれだけ大きくできるか。

・そのアイデアをゲームとして形にする転換がまさにナムコの力。
 誰でも誰もが遊べば遊ぶほど、工夫をしなくとも、上手くなった実感を味わえる。


・この「ゲーム」の「難易度」を表すならば、とてもかんたん。
 攻略などは必要なく
 何も考えなくともごろごろ転がしているうちに、上手に転がせるようになる。
 気の向くまま転がしているうちにマップを覚え、上手く転がせるようになる。


・誰でも上手に転がせる。そうなる。
 上手くともころがしているだけで楽しい。そうできている。
 本当に良くできています。

 参考;みんな大好き塊魂@Wiki http://www3.atwiki.jp/love_katamari/pages/4.html




・感想としては以上、ではなかった。
 何も変わっていないようだから買う必要はないか、と逃がすところでした危なかった。


・バージョンアップ、何も変わらない中ひとつ、注目すべきステージがありました。
 ステージに名前が付いていないのが困りものですが
 「レースステージ」とでもいうべきものがあります。上のWikiのいうレーサーステージ。


・そこにはレース場があります。
 『バーンアウト』のテイクダウンが『塊魂』に。
 サーキットマップでそこをぐるぐる回るようになっています。
 他の車や車でないものやレーサー、観客をぐるぐるまわって巻き込みます。
 注目なのはこのステージでだけ「かたまり」が勝手に転がること。停止できない。

・それだけでまったく感覚が違います。
 何も操作しなくとも勝手に転がる「かたまり」、
 ここでは「かたまりを転がすゲーム」でなく「転がるかたまりを操るゲーム」。
 アクションゲームであったものがレースゲームになったような感覚の転換。



・このステージはレースゲームなのか。
 では、レースゲームはアクションゲームとどのように違うのか。

・それは自己投影キャラクターを操るゲームと、「のりもの運転ゲーム」との違い。


・バスも電車もタクシーも、バイク、飛行機、戦闘機、重機、戦車、船舶、戦艦、
 鉄人からSF未来のロボット、モビルスーツまで
 「のりもの運転ゲーム」とアクションゲームは違う。操るものが違う。
 『ソニックR』や『トマランナー』、いや『トマラルク』か、は
 アクションゲームであってレースゲームにはなりえない。


・『マリオカート』でなく『F-ZERO』でもなく『エキサイトバイク64』。
 このゲームでバイクを操作するとき、操るべきは
 ハンドルをどれだけ切るのかアクセルをどれだけ吹かすのかではなく
 載るライダーの姿勢です。

・自転車はハンドルを切って曲がるのではなく、スキーはストックで曲がるのではない。
 スノーボードゲームとレースゲームを並べて遊んだ操作感覚の違いは
 それがより忠実に現実を模倣するほど、違うものになります。
 操るもの、操作するものが違うのです。



・関連するものとしてもうひとつ。
 『塊魂』はご存知の通り、ふたつのスティックで「かたまり」を転がします。

・これだけで実に独創的で面白く、『モンキーボール』に差をつけているところですが
 そのセガツインスティックといえば『バーチャロン』。
 これに最近のゲームで探すと
 4月1日に、ほとんど1年分の注目を集めて忘れ去られるアイレム
 最新作『バンピートロット』(ASIN:B0007XQ46Y)。


・ではなく「ABA Games」(http://www.asahi-net.or.jp/~cs8k-cyu/)の最新作『Gunroar』。
 この『ガンロアー』、
 基本的には故、彩京の『ゼロガンナー』ターンマーカーシステムで
 とても難しゅうございますのですが
 ver. 0.11からツインスティックモードを追加。これが面白い。

・左スティックで自機移動、
 右スティックを倒す方向にショット発射、倒す角度で拡散弾、集中弾の打ち分け。
 なぜSTGでこれが広く使われなかったのかと訝しるほどに楽しく操れます。

・敵機主砲が近距離に打てないことを利用して弾幕の盾にしつつ張り付き撃破を次から次、
 その繰り返し、というゲームで
 『ソルディバイド』のように単調ではありますが面白い。
 『Shinobi』のようにもうひとネタつけて
 マップ構成を練り敵とボス弾幕にバリエーションをつけて展開のメリハリができれば
 非常によろしいと思いますです。


・『バーチャロン』、それを『怒』調に上から見下ろして『ガンロアー』、
 それらのツインスティックによる操作。ループレバーとの違い。
 これと『ガングリフォン』スイッチ式コントロールなどを並べてみると
 なるほど操作ゲームもそれぞれです。




・自分の体を自在に動かす。
 超人的運動能力をもって、例えばアニメ『ルバン三世』の石川五右ェ門よろしく
 疾風のように街を駆けあるゆるものを斬鉄剣で木端微塵に仏陀斬る。
 それが身体操作の夢ですが現実は瓦一枚割るのがやっと100m走ればもう一杯。
 

・ゲームではそれができます。
 ではどのようにそれを表現するのか。
 アーケードの大型筐体ならば様々手段もとれましょう。
 『ドラゴンボールZ V.R.V.S』というものもありました。
 けれど、家庭用で、手の上に載るコントローラーでは
 地を駆ける感覚、空を駆ける感覚、世界を支配する全知全能感をどのように表現するべきか。  


・「のりもの操作ゲーム」がその一歩。現実のすぐそばにある一例です。
 自分自身ではないけれど「のりもの」を駆ることで速く走れる。空を飛べる。

・どこまでもリアルを再現するほどにその価値は高まる。
 レースゲームはその遊び場のひとつで
 だからレールの上を決められたとおり動くだけでも
 自分より大きく強く優れているから気持ちよく楽しいです。


スポーツゲームが次に来ます。
 世界のトッププロとラリーが交わせる『パワースマッシュ』。
 もちろん『パワプロ』『ウイニングイレブン』。

・動かすのは指先だけ。ボタンを押した瞬間が
 バットのラケットのキックの振りはじめではなくインパクトの瞬間である、
 そのように、嘘をつくことで成り立っている、身体感覚の拡大を補助するのが
 スポーツゲームのしくみです。


スノーボードゲーム、そして『エキサイトバイク64』は
 コントローラーの上にあって、感覚は自転車の上にある自分の身体、
 空中に浮いたときの身体制御をコントロールできて競争できるゲーム。

・その隣にフィードバックがないけれども『ガングリフォン』があり
 そしてモビルスーツがあって、「のりもの操作ゲーム」に戻り
 逆側にラジコン客観操作ロボがある、とでもいえるでしょう。




・『塊魂』で自分はどこにいるのか。ここにいて塊を左右の手で押して転がしています。
 ところがレースステージでは勝手に転がっていく。

・新しいです。勝手に滑り降りるスノーボードゲームコースがエンドレスに続き
 そして何もかもを巻き込める、というもうひと捻りのアイデアがある。
 もうひとつ先に、『塊魂』のように新しいゲームが転がっている感覚です。


・押さなくとも操らなくとも転がるかたまり。
 道端の石を蹴って家まで運ぶ遊び。雪だるまを押して転がす遊び。
 勝手に転がる石を操る遊び。そこが新しい。新しいゲーム。
 

・Rolling Stone、
 転がる石という名の運命を操る人生ゲームはいつものこととはいえますけれども
 けれど毎日新しいものも転がっています。
 たぶん、そのあたりの道端にも。






・蛇足、いやフォローとして『バンピートロット』について。
 世界名作劇場世界のGTA。のんびり楽しむゲーム。
 フォローではなく良いゲームです。
 
・『どうぶつの森』『ぼくのなつやすみ』そして『シェンムー』。
 『GTA』がある限り、いやなくとも
 そこはもうそれとオンラインゲームに取られている場所のようにおもいますけれど
 ゲームデザインとしては楽しいのか企画が通りよいのか切れ目なく出るこの手のゲーム。
 
・のんびりまったり。地味です。牧歌的です。
 せまい日本、そんなに急いでどこに行く。
 狭いゲームの箱庭世界、そんなに急いでクリアしない。
 なるほどこういうのもありです。
 時間の流れない箱庭世界。いつまでもつづくなつやすみ。リアル過ぎないところにも自由はある。
 

・あとは合う合わないの問題。
 それがいちばん大事で
 買うまで遊ぶまで試すまで分らないのが嗜好品の難しいところでありますことよ。