『セブン』と『ヴィーナス&ブレイブス』

kodamatsukimi2005-10-02


 『7(セブン)〜モールモースの騎兵隊〜』http://namco-ch.net/seven/ ASIN:B00006BXPQ
 『ヴィーナス&ブレイブス〜魔女と女神と滅びの予言〜』http://www.venus-web.net/ ASIN:B00006L42M

・今回は、前回引き合いに出した『セブン』とその発展的続編『ヴィーナス』について。


・『セブン』は2部構成。
 「モールモースの騎兵隊」編、「アルメセラ年代記」編から成ります。
 前者は独自戦闘システム「ローテーションバトル」のチュートリアル
 戦術的な戦闘入門としてきれいにまとまっており
 野宮真貴さんの朗読など雰囲気周りも良くできています。

・そして後者「年代記」編。
 プレイヤーが騎兵隊隊長となって隊を指揮、隊士を募り編成し
 各地を巡り魔物を倒して、王国に1000年の歴史を刻むウォークロニクル。
 発想はお馴染み『ロマサガ2』『俺の屍を越えてゆけ』のあれです。
 (http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050707
 その内容は未完成のひとこと。
 同じことの繰り返し。
 何百年立っても文明はまるで発展しない、王国はなにもしない、魔物も工夫をしてきません。
 醒めない悪夢。あまりにひどい代物です。


・それを100年に縮め、キャラクターを散らばせシナリオを配し
 不老長生の主人公に視点を執らせたのが『ヴィーナス』です。
 基本システム周りは同じであり、リメイクといえる意味合いを持つもの。
 今度は当たり前に最後の敵もいて目標も明確。
 戦力を成長し維持し、必ず訪れる100年後の災厄を回避する。
 受身で待っていないで攻め込めば良いのにと思わなければ、理解できるお話しです。

・王国興亡の歴史。それを作り上げるひとびとと悪しき魔物。女神と魔女と勇者たち。
 パーティーメンバーは任意にくっつけて子供に能力を受け継がせたりもできる。
 戦力育成SLG。魅力的な設定です。

・手堅く良いゲーム。けれどやはり荒削りで未完成。
 全体を見て、美点と同じくらい欠点が目に付きます。
 100年の王国に歴史を戦う世界観とそれを支える美術演出は魅力あふれる部分であり
 ローテーションバトルのわかりやすさ楽しさも充分です。
 けれど、繰り返し作業が冗長。お話が稚拙。システムが深みに欠ける。
 それら欠点が目立つのも事実。


・長所と短所がはっきりしている作品。リメイクしてもまだ未完成。
 さらなる改善と完成を期待したい作品。
 「遊びをクリエイト」しても、それをまとめたり発展させたり継げたりするのが苦手、
 セガとも違ってもうひとつ何かずれている、ナムコらしい仕事でございます。




・この作品の特徴が戦闘システム「ローテーションバトル」。
 公式サイト説明 http://www.venus-web.net/html/g_battle.htm
 「ギャザリング」や今なら『三国志大戦』などのカードゲームのように
 互いに能力を補い合うユニットの能力を考慮して場へ配置。
 プレイヤーが戦闘開始後可能なのはローテーション指示のみ。

・戦闘前に相手パラメーター、何ターン目にどう行動するのかは全て分りますから
 それを踏まえて自軍戦力から確実必勝となる配置を決める。
 敵を知り己を知れば百戦危うからず。戦いの前に勝敗は完全に決している。

・シンプルにまとまった面白い仕組みです。


・カードゲームの面白さは集める楽しさ。集める手段が対戦です。
 それをどのようにゲームとして表現するか。
 その成功例がACでは『WCCF』『ムシキング』などセガ一連のカードゲームであり
 家庭用機では『ギャザリング』でも『カルドセプト』でもなく『ポケモン』です。

・けれど『ポケモン』はカードゲームではありません。
 収集だけでなく育成要素もある、RPGカテゴリーに入るもの。
 「収集」「交換」「対戦」に「育成」を加えて絶妙にバランスをとったゲームです。


・『セブン』の発売が'00年12月21日。
 その10ヶ月前の'00年2月21日。任天堂から『カードヒーロー』が発売されています。
 http://www.nintendo.co.jp/n02/dmg/ahhj/ ASIN:B00005OVBG

・難しいゲームです。
 手札のレベルアップがあり「きあいだめ」がありストーンによる行動回数規制がある。
 『ポケモン』と違い5対5、多数ユニット同士の戦い。
 最適解は1つでなく、敵行動パターンの全てを読んで対処事前にできていなければ、
 100点満点の回答を用意できなければ敗北決定。
 あまりに良くできていて強いカードを持っているだけでも活用できなければ勝てない。
 そして育成要素はありません。


・『セブン』のローテーションバトルは良く出来ています。
 『大戦略』系SLGSRPGの面白くも煩雑長大な過程を
 その戦闘一度きりの戦術想定の楽しさに上手くまとめています。
 相手の攻撃をどうして誰でどのターンで耐え
 ターンごとの回復量防御補正攻撃補正等々を勘案して確実に仕留める。
 敵はこちらがどうしようとも行動を変えないから実に読みやすく気持ち良い。

・「モールモース」編では成長要素がなく、こちらも敵も固定されたパラメーターのため
 バランスも考えられており
 失敗しても何度でもやり直し可能で
 複雑ではなく、だから分りやすく、楽しく面白い。
 『カードヒーロー』の難しさに対するわかりやすさ。間口の広さ。
 簡単だからこその面白さ。
 「モールモースの騎兵隊」編は小品ですけれど良品です。


・しかし「アルメセラ年代記」編では大きく欠点が前に出ている。
 年代記であるだけにユニット能力が一定でない。
 けれど敵性能パターンは無限でもないし、それに合わされてもいない。
 固定パラメーター同士でバランスを取っていたからこその面白さがまったく欠けています。

・だから力押しになる。
 戦闘前に勝敗が決している、ということは
 つまり何をしてもしなくても結果は変わらないということ。
 カードゲームももちろんそうです。
 けれどだから、収集要素があるのだし育成要素がないのです。
 逆にRPGは戦闘を力押しとして、成長し確実に勝てることの面白さを楽しむゲームです。


・戦いに確実に勝つには事前に相手より強くなること。
 「ローテーションバトル」もカードバトルも
 戦闘中の最適解に必要数値量を満たしているかどうかで戦闘前から結果が判ります。
 ではなんのために戦うのか。
 戦闘戦術の答えを探す楽しさのため。
 戦いの前に戦術に関係なく勝てるほど成長できるとすればどうか。
 ではなんのために戦うのか。

・そしてそれではRPGにも劣る。
 『ポケモン』の戦闘はそこをわかって割り切って、
 手駒の交換要素がありながらストーリーバランスの破綻しないRPGとして作られています。
 「モールモースの騎兵隊」は良くできた戦術SLGです。
 けれど「アルメセラ年代記」は未完成。ゲームバランスが取れていない。
 そして『ヴィーナス』に到ってもそれは何も変わっていないのです。



・生産要素、成長要素がないカードゲーム。
 それはシステムとパラメーターの「ゲームバランス」に高度な完成度が求められる戦術SLG
 『カードヒーロー』はそれを完璧に満たした傑作です。
 考えなければ勝てはしない。
 回り道の努力は評価されない。
 テストで満点が取れるかどうか。それが全て。そういうゲーム。

・もちろん強いカードを収集する努力でそれを補うことができる。
 その両輪、収集と戦闘がカードゲームの面白さ。


・『ポケットモンスター』と『カードヒーロー』の需要のされかたは違います。
 SLGRPGの違い。成長と戦術の意味。それを任天堂は解っている。

・けれど『ヴィーナス&ブレイブス』は2作目にしてまだ判っていない。
 そのゲームを形作る基本システムの魅力が
 SLGでなくRPGである、お話を語る年代記である、というゲーム全体に見て
 後付けのように乗っていることは、間違いなく大きな欠点です。



・『ゼノ』はともかく『バテンカイトス』にしてもそう。ナムコは微妙に間違えています。
 面白くなるゲーム、魅力あるゲームであることは確かです。
 もう一度努力して欲しい。
 『ロマサガ2』や『俺屍』のどこが面白いのか、『ポケモン』と比べてどうなのか。


・けれどそういうことをするのは、ナムコではないのかもしれませんけれど。