セガ的3DRPG『龍が如く』

kodamatsukimi2005-12-11


 公式サイト(音注意)http://ryu-ga-gotoku.com/
 ASIN:B000BDEJBW
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_05/arpg/ryu.html

セガによる今年末期待の大作ゲーム。
 大作というのは
 クリアまでに掛かる時間の長さとか、サブイベント周りのやり込み要素とかでなく
 お金と手間をかけて、「どうでも良い所」まで作りこんであるかどうか。
 どこが「どうでも良い所」であるかは各々其々。
 そのあたりの見極めが出来ていないゲームもいまだに沢山ございます。
 それが「ゲームの面白さ」にどの程度関係するのか、
 これもまたそれぞれ違いますが
 だからといって見た目へぼくては売れないのも現実。

・そこはセガですから安心。
 いつものように微妙に外して無駄なお金が掛かっております。
 舞台は新宿歌舞伎町、監修『不夜城馳星周
 ヤクザ屋さんと殺し屋さんが大喧嘩、毎日火事と死人の山の無法地帯。
 12月でもキャバクラおねーさまは薄着で街を行き
 監視カメラと乞食屋さんの目がそこかしこに光る。そして警察は無能。
 18禁。「あだると」おとなのせかい。
 を、再現すべく手間とお金を掛ける掛ける。 

・それで売れるのかセガ。大丈夫かセガ
 今日もソフマップのワゴンで先達が泣いているぞ。
 まあこれはゲーム内容に関係ないですが。
 いつものように、頑張って頑張って作られており
 数寄ものマニアの心を捉えて離しません。


・アクションゲームとしては無難に良く出来ています。
 武器も使えますが基本的に素手の殴り合い。
 ヤクザ屋さんですから。
 卑怯ものであることを存分に許される敵さんは、銃もばんばん撃ってきます。
 けれどこちらは2、3発喰らって倒れるほどやわでない。お約束。
 難易度は低めで、丁寧に遊べば誰でもエンディングが見れましょう。

・お話演出周りのツッコミ所はまあおいて、いやはや良くぞ出来たもの。
 『シェンムー』に70億掛けた先行投資が生きてきたか
 それともそれを活かす前に、世間の技術に追いつかれたかは存じませんが
 3Dアクションアドベンチャーゲームがようやくまともに仕上がった形。
 『FF』が『7』で初めて『9』で納まったRPGの3D化が
 さらに次世代機のめでたき発売の頃に到りてやっと成熟してきたといえましょう。

・不満点はそのあたりで、ロード時間とか、同時に出てくる敵の数とか
 更なる高性能ましんで動かして見たいというところ。
 現状機では最上に良くできているといえますと思います。




・ジャンルはアクションアドベンチャー
 けれど遊んでみた感じ、アクションRPGのようであり。

・お使いイベントの途中で敵がエンカウントして襲ってくるし
 その皆様から報酬として経験値とお金を頂きますし
 そしてそれで成長して強くなる。

RPGアドベンチャーゲームの違いはなんだったかしらん。良く判りません。
 要は、映画のようにお話を、ゲームの中で語ろうとしたときに、
 採る方法のそのひとつ。
 「映画のようなゲーム」。
 小説と違って絵と音が付いている。ゲームもそうだ。
 映画のようなゲームをひとつ、作ってみようではありませんか皆さん。


・『ドラクエ堀井雄二さんがおっしゃっていた、ひとつの街で完結するRPG
 その筋として『女神転生』の『デビルサマナー』『ペルソナ』系が
 現代日本が舞台、という以上にその魅力を活かしているというべきものですが
 それを新宿歌舞伎町で、基本的にファンタジーなしで作ろうではありませんか。

・そこが魅惑のセールスポイント。18禁でオトナの世界。
 これならゲームを遊ばない大人も買ってくれますよね、
 というセガマーケティング的論理的帰結。的が沢山付く的。
 ゲームを遊ばないひとは面白くないから遊ばないのでなく
 興味がないから遊ばないのだ。
 興味のあるゲームを作れば遊んでいただけるのではないか的。

・遊ばないひとは、どうしたって遊ばない気もいたしますが。 


・『シェンムー』は最初、『バーチャファイターRPG』でした。
 『バーチャ』のキャラクターとか世界観が必要だったのではなく、
 3Dでレースゲームを作ったら『バーチャレーシング』、
 3Dで対戦格闘を作ったら『バーチャファイター』になったのと同様に
 3DでRPGを作ろう、としたものでありました。

・結果として一言で言うと、セガRPG向きでなかった。ということですが
 3D格闘のトップブランドとしては経験蓄積、その他それこそ様々紆余曲折を経て
 ようやくまともに出来たセガ印3DRPGが、
 『シェンムー』から完成度を高めた、
 本作『龍が如く』でございます。

・2作の違うところは戦闘の格闘。
 『バーチャ』は一対一ゆえに横から見た画面だけで良い3D格闘ゲーム
 として成り立っているのに
 そのあたり未整理のまま多人数と戦う『シェンムー』に持ち込んでしまったものを
 当世風、『ビートダウン』『アーバンレイン』その他もろもろ
 当たり前ふう3Dアクションに、と見せかけて
 セガ風『スパイクアウト』ならぬ『ダイナマイト刑事』方面に、
 作り直した所です。

・雰囲気合わせて割に当たり前の出来。
 セガも変に奇をてらわずこらず、ようやく少しは冷静になってくれて喜ばしい。
 『Shinobi』『どろろ』ほどアクションとしては楽しくありませんが
 まず前述のように、無難な出来でございましょう。




・3DRPGたるところ。
 従来の『ドラクエ』型RPGを、3Dに仕立て上げて
 ビジュアルインパクサウンドショックでトップブランドにのし上がった
 『FF』はつまり、ただいままでのを見た目変えただけ。

・その一方でいつのまにかでてきて日本以外で大売れしたのが『GTA』。
 RPGではないけれど、『マリオ』のようにアクションでない3Dゲームとして
 『FF』がしていないことをしているゲームです。


・ゲームをなぜに、3Dにする必要がありますか。
 それはもう、我々にんげんさまが知覚できる世界が3次元だからです。
 究極のリアルは3Dにある。3Dにこそ新しい自由がある。奥行きがある。
 なんでもできる。
 何でもできる自由。それこそ作るひとにとって夢の世界。たぶん。

・そういう、3Dだからこそできるという未来志向ゲームが
 PS以降、いろいろに作られました。
 『ガンパレードマーチ』のように。
 人工無能、もとい、AIで適当な行動を返してくるゲームならば
 文章だけの方が粗がない。
 けれどそれでは計算機で、本当に「生きている」ように見えない。

・それが未来志向たるところ。
 よりリアルであることは写真のようにあることでなく
 まるでひとがゲームの中にあるようであることを目的とするあたりです。
 『ときメモ3』とか『ゆめりあ』『アイドルマスター』とかとか。
 そういうところも価値を持つ。奥行きをゲームに与えるもの。



・『GTA』は車泥棒ゲーム。車を奪って街中を自由に走り回るゲームでありますが
 『GTA』が『GTA3』になって初めて大きく売上として認められたというのは
 もちろんその飛びぬけた技術的完成度が殆どですが
 3Dになったことによる何でもできる自由、というアピールがその基本にあるものです。

・何でもできる自由なゲーム。
 けれどやはり何でもできるゲームはもちろん作れません。
 写真やテレビが幾らリアルになっても現実ほどではないように
 いくら自由であろうとしても、テレビの外には出られない。
 ひとの手で全てを作らなければならない。

・対戦ゲーム、オンラインゲームはその手を増やすことで現実世界により深くつないで
 よりリアルにして価値を持たせているともいえます。


・何でもできるようで何も出来ないのが、遊び手単体を想定して成立するゲームの限界。
 車をコースに沿うだけでなく街中自由に乗り回すことができる、
 というだけでなく車から降りて他人の車を奪ったりも出来る。
 さらにいろいろできる。
 けれど何でもできるわけではない。

・コースを走るだけのレースゲーム、
 街中を走れる『クレイジータクシー』、
 それ以上のことができる『GTA』。
 けれど、だから『GTA』が優れていて面白い、わけではない。


・ゲームとしてどこかで何が出来て出来ないのかを
 そこでその世界で遊ぶときに不自由を感じさせないよう、
 割り切らなければならないのだ。


・しかし、これはゲームがずっとしてきたことです。
 技術的にゲーム世界は何でも出来る世界でなく
 何が出来るか、から創り上げてきたのがこれまでのゲームであったから。

・そして物語を語るゲーム、小説のように映画のようなゲームを作ろうと
 その何かしか出来ない世界のなかで苦心惨憺作られてきたのが
 アドベンチャーゲーム。そしてRPG

・テキストで表現すればアドベンチャー
 ゲームでコントローラーが付いているのだからそれにアクションを盛り込む。
 ボードゲームや戦争シミュレーション。そしてTRPGからRPG
 多種多様。ゲームは常にそのための方法を探してきました。
 しまいにはSTGもそうなりますか的新世紀。
 参考;AB2「シナリオ成果方式とシューティングゲームに関する妄想」http://ab2.blog6.fc2.com/blog-entry-22.html


・『シェンムー』もそうだったのでしょう。
 そして『龍が如く』もそうなのです。
 3Dで世界を作り、そこで語られる物語。
 この世界でできることは何でもできる現実という素材を使える映画と違い
 何でもできるわけではないゲーム世界で「映画のようなゲーム」をどう作るか。


・新しい発想というでなく
 技術的な進歩により、より現実に近いリアルな世界「3D」が使えるようになって
 そこで使う新しいゲーム作法が
 ようやくになってゲーム全体に成熟してきたのだな、
 というのが2005年12月、新しいゲーム機XBOX360が発売される今日この頃に
 セガの3DRPGたる『龍が如く』に見る感想です。


・『シェンムー』よ、安らかに眠りたまえ。
 というか、眠ってくださいお願いします。