アーケード戦争SLG『三国志大戦』

 公式サイト http://www.sangokushi-taisen.com/
 紹介ページ http://sega.jp/arcade/3gokushi/home.html

セガの大型筐体アーケードゲーム
 今年の3月に稼動開始、現在も連日絶賛長蛇の列。
 順番待ちしているのもなんであるからと
 他のゲームに手を出し、ますますお金無くなる。ゲームセンターは怖いところだ。

トレーディングカードを使い、三国志を舞台にした戦争ゲーム。
 既存ゲームジャンルで説明するならば
 RTS(Real Time Strategy)と呼ばれるものがもっとも近いのですが
 あえてその風に付けてみると
 Real Time Tactics War Simulation。
 「リアルタイム」ターン制でなく対戦相手との当意即妙駆引き
 「タクティクス」戦略よりも戦術が重要である
 「ウォーシミュレーション」戦争ゲーム。

・けれどアーケードゲーム。操作はアクションであるのです。
 カードを集める『マジック:ザ・ギャザリング』(http://mtg.takaratoys.co.jp/)、
 アーケードゲームで言えば『アヴァロンの鍵』(http://sega.jp/arcade/a-key2wk/home.html
 のような、トレーディングゲームでありながら
 カードを集めて組み合わせることだけでなく
 カード操作も同等以上に重要であることが面白い。

・アクション要素、操作の上手い下手が戦績につながる点、
 他に比して特に人気を集めている点といえます。




・まずは内容の説明から。もちろん実際に遊んでみるのが一番分り良いのですが。
 GAME Watch紹介記事 http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050419/san.htm

・最初にプレイヤーデータを記録するICカード
 武将カード4枚入りのスターターパックを\500で購入。
 1ゲーム\300。
 1ゲームごと終了時任意の武将カードが1枚払い出されます。

・練習用CPU対戦は\300で2戦。1戦目で負ければそこで終了、カード払い出しはどちらでも1枚。
 オンライン対戦では全国のゲームセンターと接続された対人戦が楽しめ
 1戦目が\300、勝てば2戦目\200、続けて勝てば3戦目\100。
 こちらは1戦ごと1枚。対人戦で2勝すれば武将カード3枚\600という計算。
 大会用などに店内対戦モードもあります。基本は全国対戦。

・1戦大体3分強、前後の準備等含めて1ゲーム5分というところ。
 それで\200から\300、貰えるのは紙のカード1枚ですから
 従来の\50STGで何十分も粘られるのに比べて圧倒見事な商売でございます。


・武将カードはそれぞれ1から0.5刻み3までの使用コスト、
 所属勢力、兵種、そして武力、知力の各能力値と
 「伏兵」「勇猛」などの特技、「強化」「落雷」などの計略をひとつずつ持っており
 最大8のコスト制限の中でカードを組み合わせ、デッキを組み戦います。

・自分なりに工夫したデッキ組みこそがトレーディングカードゲームの醍醐味。
 このあたりの基本といえるバランス取りは
 アーケードだからこそver.を変えることで対処できる、という面はあるにしても
 流石長期人気可動作。しっかりできております。

・集めたカードを並べて、どうして組み合わせれば良く勝てるか。
 それを延々悩むのは、枚数が最大でも8枚という簡易さゆえに分りやすく
 ゲームセンターに行かなくとも
 常に頭の中でああしたらこうしたらと組み合わせるだけで実に楽しい。

・また画面では常に全国ランク上位者同士の対戦リプレイが映されておりまして
 それを見ているだけで勉強になる。うむうむ良く出来ておるかな。


・各カードは用途を考え使用することで、まったく使えないということはないように
 バランスを取って数値設定されていますが、 
 そうでなければ集めてもらえませんから当然ですけれども
 金ぴか銀ぴかのレアカードは強い。

・といってもそれ1枚あれば勝てるという万能カードはなく
 その性能に合わせてデッキ全体で強さのバランスを取るには
 それなりのカードバリエーション在庫が必要。

・当然ながら始めの中途半端なカードでは、対人戦にさっぱり勝てません。
 戦績によってランク分けはされていて
 対人戦マッチングはそれに従い選んでくれるのですが
 カードが欲しい方は、あえて新しいICカード\300を買って低いランクに成りすまし
 格下狩りをするわけです。こんぴーたーには見分けがつきません。

・上記のように、勝てばよりお安くカードが集められるわけですから
 ICカード1枚は1回分で元が取れる。
 それはそうするでしょう。誰でもそうすると思います。


・よって正真正銘初心者は中々勝てない。
 見習いランクの半数ほどは初心者狩りの方達のよう。
 戦績が20戦ほどなのに金ぴか銀ぴかで埋まっている方大勢いらっしゃいます。

・けれど、逆に言えば稼動開始から9ヶ月たっても
 まだこれから始めようという初心者がそれなりにいるのだ、
 と考えればそれもまた驚きです。

・そうした初心者にも、強いカードが集まり、所属軍別にデッキが組めるようになり
 操作に慣れ、ようと歴戦プレイヤーと互角に勝負ができるまで
 現状では速くとも50戦程度、\15,000位の投資は必要。
 そこいらのゲーム2、3本分でございます。高い。アーケードゲーム恐ろしい。


・なぜそんなものを遊ぶのか。
 それはもう一言、面白いからです。面白いは正義。

・原価は同じようなものであろうビックリマンチョコ。ただしチョコなし値段10倍。
 チョコはどうでも良いですか。私はチョコのおこぼれに預かる派でしたので。
 当時の子供と今のプレイヤーのどちらが賢いか。
 たぶん中身は同じです。
 子供の小遣いを大人が騙し取るか、大人の小遣いを大人が騙し取るかの違い。
 もちろんどちらにせよ、騙される方が楽しんでいるのだから正義です。




・筐体は『WCCF』(http://sega.jp/arcade/wccf0405/home.html)、
 長く言うと『ワールドクラブ チャンピオンフットボール』と同様の
 フラットカードリーダーシステム。
 盤面にカードを配置すると、そのカードの位置だけでなく種類も判別する仕組み。

・紙のカードであるのにどのような仕組みなのだろう。
 「カードの認識は光学方式なんです。完全に、セガのオリジナル技術なんですよ。」http://www.cri-mw.co.jp/interview/int_hitmaker/page6_j.htm
 参考;タッチパネルの方式とその特徴 http://www.san-ei-tech.co.jp/webmagazine/backnumber/yomoyama/006/
 『アヴァロンの鍵』『クエスト オブ ディー』の「束カードリーダーシステム」は
 印刷されたコードを読み取る、という仕組みらしい。
 それと同じとは限らないが、裏表逆にすると反応しない点みて
 盤面裏から表面印刷パターンを認識しているのだろうか。
 あえてそれと判るバーコード状のものを入れないところがこだわりであるとか。 


・『WCCF』はサッカー選手カードを盤面に配置、
 微妙なフォーメーション指定をリアルタイムに操作できる仕組み。
 従来の種類枚数組み合わせをいつ使うかというカードゲームに対する新しい形。
 サッカーというゲームシミュレートに合っています。

・カードを集めてチームを作り、練習と試合を通して
 選手能力ではなく、連携などでチームとしての能力を育成するゲーム。
 カードごとの選手能力は固定不変。ながら育成シミュレーションでもある。
 そこが従来のアーケード育成シミュレーション『ダービーオーナーズクラブ』と
 異なるところで面白い。


・試合中できることは、選手交代とカード毎のポジショニング攻守指示。
 各選手がその局面で攻勢に出るか守勢に回るかの選択。
 そして5種の大雑把な戦術指示とシュートを撃つ指示。

・サッカーはボールのあるところに皆が集まるのではなく
 フィールド全体に穴のないチーム連携戦術が重要である仕組みですから
 基本的にボールを持つ個々の選手操作しかできない『ウイニングイレブン』以下、
 従来のサッカーゲームと異なり
 戦況に合わせイレブン全体を同時に操作できるこの仕組みは
 実に新しい「フットボール」ゲームを楽しむことができます。


・カードを集め、チーム力を育成し、試合中戦術指示を出す。
 それが『WCCF』というゲーム。
 それを戦争シミュレーションゲームに置き換えたのが『三国志大戦』。

・カードごとに設定された能力値は同様に不変。組み合わせこそが命。
 また違う点は、育成部分、何度も遊ぶことで蓄積され高まっていく能力の重要性が薄い点。
 無いわけでなく、戦績経験値に応じて使用カードに関係なく「兵法」を覚えていきます。
 ただその重要性は『DOC』は勿論、『WCCF』に比べて低い。

・何度も繰り返してゲーム内のデータに経験を積ませて育成することでなく
 遊び手の経験値、知識、カード組みの頭、カード操作の手さばきの重要さ。
 これら比率の違いが『WCCF』と『三国志大戦』分けるところ。



・戦術SLG
 戦略でなく戦術である、というところは
 相手に合わせて、こちらのカード構成を変えられない点にあります。

・オンライン対戦を選択した後、次に行うのはそのゲームにおけるカード選定。
 途中で交代交換出来ない。勝利して2戦目、3戦目と進む際も変えられません。
 その後に対戦相手が決まる。
 ここで相手の選んだカードの種類と戦場地形は見えますが、配置は見えない。

・デッキを組む前に戦う相手の能力が全くわからない。戦場地形も不明。
 であれば、こちらは相手に合わせて戦法を変えるのでなく
 どんな相手が出てきても勝てるデッキを組まなければならない。
 そこが戦略でなく戦術が重要であるというところ。


・対人戦が主となる対戦ゲームにおいてこの仕組みは
 強いカード、使えるカードの組み合わせ、つまり必勝法が誰かに見つけられてしまえば
 ver.を換えること絵ある程度は対処できても
 そこでゲームの寿命が尽きてしまいます。

・戦争シミュレーションゲームで対人戦をするのは難しい。
 これはより現実に近くシミュレートしようとするほどに
 世界の再現ルールと戦争の勝ち負けルールが乖離してしまうからでしょう。


・例えばジャンケンの3すくみは、人間同士であれは必勝法はあります(http://oteu.net/)が
 そうでなければ完璧なゲームバランスの戦争ゲームです。
 しかしそれで満足できるかといえば勿論違う。
 3すくみだけでなく現実は、もっとこう、奥深いものなんだ。と言いたくなるであります。

・もっと兵の種類を増やすとか、して将棋になり
 陣取り要素こそ戦争だ、で囲碁になり
 限られた資源の組み合わせこそ現実の戦争だ、と麻雀になる。
 いやこの世界は神の手の上にあるものだ、とボードゲームになる。
 それらをいろいろ組み合わせてみたりする。
 より複雑に。なぜならその方が面白いからだ。


・有利不利の完全に無いゲーム、というものはありません。
 ただ必ず勝てる方法はあってはいけない。
 対戦格闘ゲームにはキャラクター間に性能差は有っても良い。
 ただそうすれば必ず勝てる方法は有ってはいけない、ということです。

・このカード組み合わせでなら相手に関わらず必ず勝てるというものはあってはいけない。
 できるだけ多くの組み合わせ間に性能差が無いように。
 それに対処するのが、戦闘開始まで相手の手札と配置が見えない仕組みと
 戦闘中のカード操作が重要である仕組み。


・『三国志大戦』では臨機応変戦闘中のカード操作が何より重要。
 世界一の三国志大戦プレイヤーは恐らく手が8本あるひとでしょう。
 もしくはスタンド使いのひととか。
 同時に最大8枚のカードを動かせる。動かすことができる方が優位であるゲームです。

・騎馬兵ならば常に突撃状態を維持、弓兵を蹴散らし槍兵に突撃しないよう、
 他の兵の壁となり、自城攻撃の妨害をしつつ、攻城を狙い
 槍兵は騎馬突撃迎撃狙いを基本に、無敵部分を相手に上手く当てるよう小刻みに動く。
 弓兵は如何に相手に近づかれないかの場所取りが勝負。
 全ての部隊を戦況にあわせて常に移動させ、また頃合を見て計略を用い、
 時間内に自城損害以上の攻城損害を相手に与える。

・敵兵を倒すのが目的でない。倒しても捕獲できません。
 自城に帰還、兵力を回復してまた出撃してくる。
 それはこちらも同じ。つまり、時間内にどんな手を用いても
 全軍突撃だろうが火攻め水攻め落雷何でも良いから
 とにかく自分の城より多く、相手の城に損害を与えた方の勝ち。というルール。

・武将カードは最大8枚。普通でも5枚くらい。けれど手は2本しかない。
 常に移り変わって行く戦場に合わせて、ユニットをいかに上手く操作するか。
 そこがこのゲームでもっとも重要。
 そして特徴にして特長であり、新しく面白いところです。


・リアルタイムのタクティカルアクションゲームです。
 良く出来ています。
 『WCCF』のチーム全員を同時に操作できる仕組みを
 サッカーよりより自由、戦場内であればどこでも完全に自由に動き回ることができ
 相手との戦いもリアルタイムにカードアクションが勝敗を分ける。
 もちろんトレーディングカードゲームとしての面白さも充分にあります。

・このようなゲームは確かに今までなかった。
 まったく新しい。
 そして良く出来ている。
 何より実に面白い。素晴らしいゲーム。傑作です。
 まず今年のベストゲームはこれに間違いございません。
 




・『三国志大戦』の欠点は、トレードカードゲームでもあるがゆえの
 お金の掛かる所でしょう。
 社会人にとってもとても高いです。学生には存分に楽しむことなど出来ません。


・高くとも1万も出せばそれでフルコンプリート、何十時間も何百時間も
 何年でも遊び続けられる家庭用ゲーム。

・その度ごとに\300必要。総計何十万。
 手元にカードが残り、それを眺めて組み合わせを考える何十何百時間という楽しみと
 全国相手の対人選との無限に奥深い戦術アクションが楽しめる
 アーケードゲーム


・どちらがどうということでなく、そういうゲームもまたあって
 そうでなければ成り立たない、面白いゲームという形もまたある。ということ。
 ただ、お金が掛かる。つまり現実世界での時間負荷がそれだけ高いゆえに
 遊ぶひとを選んでしまう、誰もが楽しめないゲームである。そこが欠点。
 仕方のないことではありますが、やはり残念です。


・『三国志大戦』を家庭用に移植できるか、というと難しい。
 カード収集過程は既存のカードゲーム、
 『カードヒーロー』『カルドセプト』のように処理できますが
 フラットカードリーダーであるからこそのリアルタイムアクション、
 戦場の複数部隊を同時に操作できる、
 すくなくとも2本ある手の分に反応できる操作装置が必要。  
 かなり無理ありますがツインスティックを応用すればあるいは何とかなるかも。
 もしくはマウスを2つ使うとか。
 左手でマウスを使うのは慣れればそれほど難しくないですし。
 けれどやはりカードを動かす分りやすさには欠けるところ。
 NDSの画面がもう少し大きければ。


・全国を結ぶリアルタイムオンライン対戦。
 安価な紙カードの種類位置を精度高く検出するカードリード筐体。
 技術の進歩が可能とし、その上で作り出されたまったく新しいゲーム。
 新しい戦争SLG。それが『三国志大戦』。
 いや21世紀。さすがです。