ゆるいSRPG『半熟英雄4』

kodamatsukimi2006-02-26


 公式サイト http://www.square-enix.co.jp/hanjuku/
 ASIN:B0007W5DOO
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_05/srpg/hanjuku.html

・入り口狭く底は浅い、スクウェアエニックスSRPG
 『リアルタイム大戦略』、『伝説のオウガバトル』のようにマップ上へユニット配置して
 敵の拠点を攻め落とせばステージクリア。
 繰り返して能力値向上、アイテム収集、仲間増加で戦力上げて次のステージへ。
 その繰返し。それだけのゲーム。単調。
 繰返し同じこと繰返し。けれどそれでも面白いゲームです。



・'88年18年前、FCから続く『半熟』シリーズ。遊ぶのは初めてです。
 スクウェアエニックスは自製外注取り混ぜて、
 時間掛かるRPGばかり出すメーカーでありまして、中身の方も玉石混合。
 どれもメーカーブランドの上に宣伝費をかけ超大作看板と掲げているので
 どれが何だか『ドラクエ』『FF』以外は区別付かなかったりする。

・くっつく前の「スクウェア」「エニックス」はどちらも昔からあるメーカーで
 両者山と出しているRPG群を端から崩していけば、それだけで一生遊べます。
 もちろん飽きるし、それ以外にも目移りするので全部遊べない。
 有名な山の天辺しか手を出さない。
 よって、ふもとの方は無名メーカー以上に目がいかない。

・話題性を作り上げるメーカーであればゆえに、中身が伴わない例もまた大きく話題になる。
 宣伝効果で「好きなメーカー」と顧客が増えるだけ
 「嫌いなメーカー」と名指しする人も増える。
 しかし、全体通してみれば、お金をかけただけの内容を見せてくれるメーカーではあります。
 それがメーカーウォッチャーにとって、面白いかどうかはともかく話題の種に困らない。
 話題にもならないよりましである戦略。

・山のふもとに埋もれた『半熟』シリーズ。
 この最新作『4』は昨年5月発売。1年も経っていない。けれど無名。
 有名が当然である中に相応しくなく、スクウェアエニックスらしからぬゲームです。
 見た目も中身も「超大作」でない。



・規模が目に見えて小さいゲームです。
 クリアする手段に出来る事は少なく、イベントも自動進行。

・「エッグモンスター」という、
 『ドラクエ8』の「スカウトモンスター」と同じく戦闘中呼び出して代わり戦ってくれ、
 経験貯めて成長するユニットアイテムと
 戦闘中使用できる攻撃回復アイテム、これらによる個々ユニットの強さと個性を
 どう並べてマップを攻略するか、がゲームたるところの全て。

・味方ユニットの能力値は基本的に固定。
 「エッグモンスター」はユニットにくっつけていれば使わなくとも勝手に強くなるので
 育成を意識することは少ない。
 クセの強い戦闘コマンドからどれが使えるかを理解してモンスターたちをユニット編成。
 そこが底。底が浅い。単純明瞭簡単なゲームです。


・ボス敵でもいつでも撤退可能。ユニットが倒されても容易に挽回可能。
 凄く親切簡単。
 捻ったようでありきたりなキャラクターや
 パロディ中心、知らないのに言うなら関西ノリのコテコテ演出は好みの問題でありますが
 カットでなく、早送りして飛ばす味を残した致しかたといい、
 読み込みの短さや細部の手抜きない作り込みも含めて、土台は手堅く良い。

・見た目の単純さに劣らぬ中身の明瞭さは誰にも解り易く活用できる内容であり
 段階を踏んで理解させる過程も、入り口がやや説明不足ながら、順を追って丁寧な作り。
 良く出来ています。素晴らしい。


・『半熟英雄4』は底抜け超大作RPGではない。実に底堅良く出来た底が浅いSLGです。
 難しくない。解りやすい。
 なぜ負けたか判りやすく、どうすれば良いかの答えも
 育成によらず、その活用が主と、取るべき手段が限られた仕組みが示す答えはひとつ。
 強くしなければクリア出来ないのか、と分らなくなるところが一切ない。




・こういうのもありか、と驚きました。

SLGはリアル志向です。より現実に近く精緻に細かいことが進歩の方向として正しい。
 整地が上手くいかず意味のない数字ばかりになるような論外は置いても
 それによって数字比べの単純さが損なわれて分りがたくなることが
 これからも常にSLGの課題です。

SRPGとして『タクティクスオウガ』『ファイアーエムブレム』があって
 幅を広く取った『ディスガイア』のような作品もある。
 より扱う数字を大きく広くする。
 その上に転がる運をいかに遊び手が想定できる枠内に収めるか。それがSRPGの用法。
 幅を広く取れば雑になり、狭く取れば『ドラゴンクォーター』のように取っ付き悪い。


・しかしそうでなくとも良い、別に表現の仕方はある。
 強くしなくとも、数字を上げることなく楽しめるSLG
 ユニットを配置してその場のみに相応しい行動を取るだけ、
 それが答えとなるより上のないゲームもあって良い。

・それはSLGというよりRPGのようなものであり、
 そこに繰返しの蓄積を必要とするが一般的RPGの要件であって
 それを必要としない、目の前の敵を倒し、弾幕をかわし、最短ルートを構築する、
 取れる手段の限られた中で正解を積み重ねていくことが答えとなるSLGもあって良いのだ。。



SLGを、数値の上げ下げの面白さでないところ、育成や収集という過程でなく
 ユニットを上手く活用することだけにまとめたSLG
 もちろん他にもそういう単純なSLGは有ったのでしょうけれども
 それを今にも展開しているのが『半熟英雄4』。 


アリスソフトの『ママトト』を思い出します。
 以前、同メーカーの『大悪司』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050915#p2)について書きましたが
 『ママトト』はそれ以上に簡易的。
 マップクリア型よりSRPG寄り。『大悪司』以上にユニット価値を削り
 万人誰でも詰まらず解ける最も簡単なSRPG
 18禁要素さえなければ諸手を挙げて推奨したいゲームです。

・『ママトト』も数字を広く大きくする大作でなく
 多くを切り捨て簡潔明瞭であることに価値を置き、
 簡単である。けれどそれだけで楽しく、容易であるから詰まらなくなく楽しめるSRPG


・『半熟』は戦術SLGというよりもさらに狭く浅い。
 例えば『大悪司』のように『エムブレム』のようにユニットに価値を持たせる。
 それだけで解法の奥行きが違ってくる。
 『ディスガイア』のように数を増やす。
 それらすらしない底の浅さ、唯の単純数値比べ。
 しかし数字合わせの積み重ねだけにも浅くとも面白さはあるのだ。




・『無双』シリーズを遊んだり、レースゲームやSTGで同じステージを何度も繰り返す過程。
 ストーリーを読み進めて、前に進んでいくゲーム、終わりまで行くが目的のゲームに対し
 積み重ねて数字上強くなったり、自身の技術が上がるだけのゲーム。
 「抑圧」と「開放」という原理的な面白さに対し
 「抑圧」なく詰まる所なく難しくなく、取るべき手段が少ないゆえに定型的でありながら
 それを積み重ねていくだけが面白いゲーム。


・そういう遊び場たるゲームは、良くできているだけで良い。
 難しくなく、底が浅く、新しくなくとも良い出来、当たり前に出来ていれば
 単調だが、だからこそ安心して当たり前に楽しめる。
 ゲームに新しさを求める一方で、変わらないことにも安住する。

・『半熟英雄4』は良く出来ていて、新しくなく、けれど当たり前に面白い。
 それだけに価値を置くゲームです。
 あまりに底が浅い。
 ボタンを連打するだけのゲームで、それでもそれなりであることを示すゲーム。
 それで良いのか、それでも良いのだ。