「わたしの趣味は 読書です(それとゲーム)」

kodamatsukimi2008-01-30



・ゲームが趣味です。とは未だにいえない多分これからも。


・普段、仕事の他はゲームばかり遊んでいるようなこのサイトを書いているひとですが
 その実そうでもない。昨年読んだ本を数えてみたら300冊を越えておりました。
 ほぼ全てが文庫本とはいえ、1冊\600くらいだから十数万円を使っている計算。
 どこにそんなお金があるのやら。読む時間はなぜか割とあるのです。

・ここを読まれている皆様は、このサイトをどのようにして発見されたでしょうか。
 本屋に行って、面白そうな本はどれかと探すとき何を手掛かりにしたら良いか。
 ゲームと同じく小説も、遊んでみなければ読んでみなければわかりません。
 本当のところ自分の探しているものが、どこにあるか。
 面白さは自分の知らない新しさですから、何を探しているかがわからない。
 だから難しい。かって知ったるものばかり買っても発見はない。

・とりあえず私は探索の手掛かりとして、ゲームと同じ様に
 他のどなたかがそれに触れての紹介や感想をもとにとさせていただいております。
 新聞のブックガイドや雑誌の紹介記事などはハードカバーに偏っておりますゆえ
 宝島社の「このミステリがすごい」関連などが好適当。
 ハードカバーで出版社が出す気持ちもわかるのです。
 けれど本はゲーム以上に、最近の新しさが持つ価値が、薄いものでありますゆえ。

・本はゲームと違い、誰が作っているかが明確です。
 新作が出ても大体どのような感じであろうかが期待通り。
 それでいて、ただ文章を打つだけですから新しい名前も常に出てきて循環して
 また待つ期待の新作を増やすことができる。
 過去の膨大を読み漁りながらいつまでも待てる。果てしなく尽きなく楽しめます。
 ゲーム機のように技術に依存することがない。
 しかし表現技術が更新されなくなることもない。

・一冊\600。読むのに2〜3時間。1日1冊暇なら2冊。
 ゲームより高いか、というと実は意外に高いのですが
 はずれを掴んでも単価安い分だけ痛くないところは利点。
 それにゲームと違って、本当に面白くない小説というのは
 なかなか選んで買ってこれないものです。



・ところで、昨年読んだ冊数はこれまでになくたくさんなのですが
 その理由は、ライトノベルをようやく割と読み始めたことです。
 いままであまり手を出していなかっただけに
 自然定番の名作にあたっていくことになり平均点高い。どれを読んでも面白い。
 そうしてついつい数を過ごしたわけ。面白さに目覚めました。

ライトノベルは面白いのか。
 有名な『涼宮ハルヒの憂鬱』とか、どうせみなあんな感じなんではないか。
 実際、そんな感じなのですが
 しかし振り返ってライトノベルでない方が本当にそんな感じでなくあるのか、
 というと
 SFのオールタイムベストがハインラインの『夏への扉』である時点で
 何も言い返せません。ぐぎぎこのロリコンどもが。

・いや平均点はこっちの方が高いんだ。と申しましても
 しかし全ての9割は屑なのだからその平均点を採ったらば五十歩百歩。
 ライトノベルというジャンルも
 SFやミステリや週刊少年マンガや青年向けマンガに比べて劣らず
 優秀なものは優秀です。面白いものは面白いです。
 上のほうだけ掬えば良いものは良いのです。


・さて、本屋にいってその良いものをどうやって拾い出したらよいか、というのが
 なじみのないジャンルに対して陥る困難。
 ゲームを遊んだことがないひとがWiiとDSをとりあえずかってさてどうするかと同じこと。

・今回とった手段としては、上に挙げたに同じく
 宝島社『このライトノベルがすこい!』(http://tkj.jp/book/book_01614001.html)の
 人気ランキング上位30冊及び目利きが選ぶ注目作全部と
 本の雑誌社『おすすめ文庫王国』(http://www.webdokusho.com/kanko/index.html)の
 ライトノベル編で紹介されているのを全部買ってきて読みました。
 シリーズものは最初の一冊、おなじ著者のは有名なもの1冊にしてもそれだけで60冊くらい。
 その中で気に入ったのは続巻買ったり、どちらでも褒められてはいないけれど
 店頭で沢山売られているものは読んでみたり。で200冊くらい。

・過去読んできた有名どころを合わせれば、ゲームに例えると
 『ゲームサイド』には付いていけなくとも『ファミ通』には付いていけるくらいに
 読んだのではないか、というような頃合でございましょうか。  


ライトノベルがその他の小説とどう違うかというと、主要想定顧客の対象年齢です。 
 つまり少年マンガとそうでないマンガとの違いです。

・読んでみるとわかりますが、一口ライトノベルといっても中身は実に様々です。
 ジャンプとチャンピオンの違いではなく
 マガジンとコロコロコミックの違いくらいの隔たりが、
 ゲームでいうと『ペーパーマリオRPG』とPC18禁産SLGPS2移植が
 同じくゲームなので棚に隣して並んでいる以上の差異が、そこにはあります。驚異。
 文部科学省夏休み課題図書指定が付きそうな『クレイジーカンガルーの夏』の隣に
 性行為が露骨に描かれる『武林クロスロード』のような作品が並ぶ。カオス。
 『A君(17)の戦争』が面白かったので
 同じ著者、同じレーベルで隣に並ぶ『みなごろしの学園』を読む。トラウマです。

ライトノベルは「文学小説」ではなく中高生向けエンターテイメントなのですが
 それゆえにいろいろです。
 『ゼロの使い魔』のような気軽に読める作品の次に
 『灼眼のシャナ』を読んで『ムシウタ』に嵌る。ああセカイ系
 『悪魔のミカタ』から西尾維新にいって奈須きのこからPC18禁に手を出して
 『人類は衰退しました』に戻ってくる。
 ああすっかり覚めた褪めた冷めた醒めた目でセカイを見るようになってしまって。
 とかこういう表現を使いたくなってしまう。実に面白い。


・まともなのももちろんあります。
 一般文庫に進出している、というか
 出版社が輸出可能と判断するような著者の方々の作品は
 文章表現技術がどうこうでなく
 中高生向けではあるライトノベルではあるけれど
 その指定範囲外のひとたちが読んでも楽しめる、装丁変えれば、
 芥川賞直木賞も取れるし時代小説しか読まないような層のひとたちでも読める。
 そういう内容のものも沢山あります。

・その一般にも許容できるかどうかの違いは
 対象読者の限定という特徴に並ぶライトノベルの定義、
 キャラクター小説かどうか、であるといえます。


・マンガにおいて、小池一夫先生がまずキャラクターを立てろ、と指導されておりますが
 それはなぜかといえば、逆に言ってキャラクターが立っていないもの、
 キャラクターの魅力に頼るところの少ないものが多い、ということなのです。  

・キャラクターが立つとはどういうことか。
 お話が、そのキャラクターを登場人物としてこそ成り立つかどうか。
 名前の違う別人でも同じ状況なら同じ様に行動する場合、
 そこにキャラクター、すなわち性格俳優の魅力はない。
 設定背景の違いではなく、人物の性能ではなく性格が持つ魅力。
 『とらドラ!』は別人物間で同じイベントが起こったのを同じ著者が描写しても
 同じ面白さにはなりえないのです。
 『ミミズクと夜の王』のミミズクや夜の王に、性格はない。
 ロミオとジュリエットにもない。それを演じる役者にあるのであって
 そのパターンのひとつである小説にした場合、そこにはキャラクターはあっても
 立ったキャラクターはいない。


・立ったキャラクターによって演じられるキャラクター小説は
 その演技を読み取る必要がないわけです。素です。わかりやすい。疲れない。
 凡例となりえない。人間心理を普遍化できない。ブンガクになりえない。
 しかしだからといって駄目ではもちろんない。

セカイ系というのは、外側から見ると視野狭窄であり、嫌いなひとは嫌いです。
 自己陶酔。自己認識の肥大化。恥ずかしくって見ていられない近親憎悪。
 なぜかっていうと、そのセカイの中心にいる自分は、キャラクターが立っていないから。
 自分と同じ様に、その場に置かれたら正解を
 与えられた超常の能力でしか解くことができないから。
 無力な自分と自分に都合の良すぎる世界に包まれていることでしか意味を持てない。
 それを客観的に見させられる恥ずかしさ。
 そこが面白さです。対象年齢範囲が狭いからこそ、それを外れて構造を
 外側から見て楽しめる。

・表現技術の工夫という、人間という定型をモデルにひとが作りだせる文章技術の試行の粋、
 すなわち文学を見る楽しみだけでなく
 相手を馬鹿にして他者を見下している自分を見下す楽しさ。
 人間という定型換わり映えのない型が、同じであるからこその愚かしさ。
 文学よりも単純な楽しみ。低年齢向けの楽しみ。軽い文学。
 そういう楽しさ、面白さがあります。


・もちろん、ライトノベルとして売られている以外の小説にも、文学でなく
 キャラクター小説にすらなりえないものもたくさんあり
 またライトノベルもそういうようにして、同じものを飽きずに楽しめるわけでもない。
 基本はお話の面白さが作るエンターテイメントであり
 知らなかった技術を見せる知識増大の楽しみです。

・そういう意味で、つまりエンターテイメントとして
 昨年発売のライトノベルレーベルで一番楽しめたのは『彼女はクイーン』(ISBN:4840239401)。
 インディアンポーカー、大貧民ブラックジャックなどのギャンブルを題材とした小説。
 『マルドゥックスクランブル』のカジノシーンより余程好きです。良いと思います。
 文章も良くくどくなく可読性高く、名作でも傑作でも人気作でも
 読んで人生変わるような一作でないけれども、誰にでもお勧めできる佳い作品。


ライトノベルの看板は『ハルヒ』とか『キノの旅』とか『マリみて』で良いのです。
 それらもひとつの典型として良い作品です。
 しかし、ベストセラー小説や、マリオと『ドラクエ』『FF』だけがゲームでないように
 無名な中にももちろん良いもの、面白いものはある。

・『ライトノベルめった斬り!』(http://homepage3.nifty.com/alisato/lameta/)に
 「『我輩は猫である』がライトノベルレーベルで出たら」それはライトノベルか、
 という一文があります。
 夏目漱石ライトノベルなら。全体の9割が屑であるのと同程度の意味合いで
 全体の9割は、中高生が読んでも読める小説でありましょう。


・このサイトに書くときは、ゲームについてひねくれて書いています。
 そうでなければ書けないから。
 だから本の感想なんて書けないし、この話が良かった、このキャラが好きだということで
 感想を書くことは私にはできません。
 しかし趣味ではある。ゲームは面白い。読書も面白いのです。