『悠久の車輪』の感想 第3回

kodamatsukimi2008-05-09


 前回の感想はこちら http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20080323

・ここのところ家で『スマブラX』、
 ゲームセンターに出かけて『悠久の車輪』と『三国志大戦』。
 オンライン全国対人対戦ゲームばかり遊んでおりました。
 顔も知らないどこかの誰かと戦って勝つ。半分くらい負ける。
 お金と時間をかけた真剣勝負。勝つときは勝ち、でも負けるときは負ける。
 することは同じなのにルールが違い、どれも実に面白いです。


・『三国志大戦』はこの4月末、『3』になってから早くも2回目の
 バージョンアップによるバランス調整がありまして
 ver.2.00以来初の槍撃大弱体化という、わりに大き目の変更があったりし
 可動開始から3周年、未だ試行錯誤が続けられております。
 というのは、それだけ遊びつくそうとするひとが大勢い続けているのです。
 それだけ奥深く、でありながら破綻していない対戦ルールを構築できているのです。

・アーケードの格ゲーでは、えらく長期間可動し続けているゲームも沢山あります。
 すぐ消えていくものとの違いはなんなのか。
 単に続編が駄目だから、というわけだけでもなく
 昔のゲーム、当時の内容、その対戦ルールでも
 今のものより楽しめる場合もあるからで
 キャラクターを動かして、蹴ったり投げたり撃ったり斬ったりするだけのゲームでも
 あるいは現実と違って、効率が求めるところの正解はひとつにならないのです。
 様々に状況や規則、設定を変えて競い合う。それぞれが違っていることで楽しめる。

・『三国志大戦』というある程度完成した器でも、中の広さはどこまでも拡張できる。
 バージョンが変わる。バランス調整されて今までの勝ちパターンが通用しなくなる。
 それでまた似た新しいゲーム、
 良く知っているけれど、まだ知らないところもある新しいゲームとして楽しめる。
 なぜならこのゲームは、対人対戦のための場であり道具でしかないから。
 そこが対戦アクションゲームの面白いところです。



・『悠久の車輪』はまもなく可動開始から2ヶ月。
 現状はまあまあそこそこで、それなりにお客も付いているし
 通信などの障害もあったものの改善されて
 当面バランス面などでも大きな欠点はない模様。
 中々の出だしと言えましょう。

・値段以外『車輪』に、目下衆目の一致する難点があるとするならば
 1戦ごと1枚排出されるカードの、レアリティ排出割合です。
 ちなみにレアリティごとの枚数/排出率に対し
 個人的に約200回の結果で得られたカードはこのような感じ。
 SR:R:UC:C 25:25:30:42/1:3:8:38 2:6(2):UC31(12):C174(132)
 排出率は攻略Wikiに寄せられていた情報。()内は重複数。
 母数が200ほどであることを思えば、ほぼ言われている通りの数値。
 しかしRはもう少し出ても良いかも。しかも6枚のうち早くも3枚が同じカード。
 我ながら流石。見事な引きの強さです。

・全国対戦で勝つためのデッキを組むのに、SRやRが必須ではない、
 むしろ入れるとバランスが悪くなることが多いという極端な仕様のため
 なんとかなっている面はあるのですが
 カード収集の楽しさもお高い料金の内。
 総枚数がまだ少ないのだからCがダブるのは仕方ないとして
 初心者参入のためにも、もう少しエサを大目にばら撒いていただきたい所存。
 対戦してこそのゲーム、
 遊んでいる総人口が大きくあり続けなけれ、存在できないゲーム。
 せっかくタイトーとは思えぬほど良く出来ているのだからして。


・現在ICカード2枚目、通算200回、つまり5万円分ほど遊びました。
 『車輪』を遊んでいるからといって『大戦』に割く量はさほど減っていないので
 お金がどんどん消えていきます。
 しかしわたくし既に悟りの境地。
 家庭用ゲーム機で遊ぶのに比べれば、目が回るほど高くとも
 大人の趣味としてみるなら月に数万、年にン十万円くらい安いものではないか。
 ではないか。でありませんか。ありません。高いです。

・ガイドブック(ISBN:4757741901)を見ながら
 手に入ったカードでどんどんデッキを組み換えて、色々試している段階。
 まだまだ初心者を脱しないとは言え、ようやくいろいろ見えてまいりました。

・ちなみにガイドブックは、正式可動開始後1週間後の発売予定だっただけに
 内容充実とは言えませんが、やはりコメント入り全カードリストは便利。
 公開できる情報限られた中で
 書いているかたの工夫もそれなりに窺える良心的な出来と思います。
 薄い割に値段が高いけれどゲーム代に比べれば安すぎる。
 けっしてゲーム代の方が高すぎるわけではないはずあーあーきこえない。




・さて中身。例えばカードバランスです。
 稼動したばかりで追加調整かかっていないのに、最初から随分仕上がり良いのは
 単純に、強すぎるカードはコストが重くてデッキに組み込み難い、
 という仕組みになっているがゆえ。

・このゲームは総コスト10以内でデッキを組むのですが
 各カードのコストは1から5までの1刻み5種類。
 『大戦』は計8の1から0.5刻み3まで5種類なので、上昇角度が急です。
 つまり『車輪』は1枚のデッキに占める割合が1/10から1/2。『大戦』は1/8から3/8。
 高コストカード1枚の重さが段違い。
 そして低コストと高コストとの重さ差も大きいです。

・5コストカードを入れるならば1コスト5枚分の働きをしなければならない。
 もちろんそういう場面を作れる強さは持っているのですが
 何しろ1枚で全体の半分を支えなければならない大きさ。当然扱いが難しい。
 1コストの5倍以上強いけれど
 1コストの5倍働かなければ総戦力はかえって低下してしまう。
 強い分だけ扱いも難しい。『大戦』の高コストよりもとんがりすぎなのです。

・どんな相手にも対応できるようにデッキを組むなら
 高コストを2枚に割った方が対応力が明らかに上がる。
 強いカードは中々入れ難い。しかもSRやRなどが多い。
 手に入ったからには使いたいけれど初心者には敷居が高い。
 だから今のところバランスデッキが多く
 結果、総じてバランスが取れているようである、ということになるわけなのです。


・1コストは2コストに、4コストは5コストに、単体同士でぶつかれば絶対に勝てない。
 だからといって5コスト2枚でデッキ制限の10を埋めてもやはり勝てない。
 これは陣取りゲームだからです。

・高コスト同士が戦っている脇を抜けて、低コストが敵陣深くに陣地構築。
 あるいは全体に少しずつ戦線を押し上げて、相手陣地を削って優位に立つ。
 そういう小細工が、ぶつかり合いなら無敵の高コストだけデッキにはできない。
 かといってバランスデッキ同士だと差が付かないので戦局膠着。
 高コストを扱うときとは別の意味のわずかなミスで、戦局一気に傾き一挙崩壊。
 さりとて低コストワラワラデッキでは高コスト1体すら倒せない。

・つまり、勝てれば戦い、負ければ逃げるしかなくて
 けれど勝敗決定は陣地の占有面積、時間両者の総積で有利だった方の勝ち。
 戦うだけでは勝てず、逃げるだけでも勝てない。
 なんだか良くわからない仕組みなのです。


・陣取りゲーム。
 いわゆるRTSと呼ばれるジャンルのような対人対戦SLGを遊ぶとわかりますけれども
 よほど敵方がうかつで本陣がら空き奇襲成功というようなことがない限り
 勝敗は序盤で戦力蓄え、中盤で総力挙げてぶつかり合い、
 わずかに生じた優位差活かして一気に畳み掛け
 息の根止める最期の最期まで攻め続けられるかどうか、
 というように戦いが続きます。
 必ずこうなります。

・なぜか。
 例えば対戦格闘ではこうはならない。『三国志大戦』も違います。
 最初から最期まで常に攻め続ける。攻撃を防御するのは相手の隙を作るため。
 途中まで圧倒的不利でも逆転の機会は終盤まであり得るし
 負けが確定するまでは負けではない。

・勝つための手段は何か。
 『大戦』ならば、目の前の敵を撤退させたり動けなくさせたりして排除することが
 勝利するための唯一の手段。
 『車輪』は、出来るだけ広い面積の陣地を、どれだけ長い期間保持していられるか、
 が目的で
 その手段は、邪魔者の排除だけでなく、陣地構築すなわち生産、その両者。

・生産、資産という概念があるかどうかで違うのです。
 体力ゲージは確かに資産ではある。けれどダメージを沢山受けているからといって
 たたかうためのちから、戦力が低下するわけではない。
 生産できるとは、体力ゲージ量を、回復させるのではなく増やすことができる、
 戦う強さを増やせるというこうとです。
 相手を攻撃すれば戦う強さを弱くもできる。
 そこが対戦アクションゲームと対戦シミュレーションゲーム
 字面だけでは窺えない慣習則とでも言うべき違い、特徴なのです。
 操作の巧遅を競うゲームと、戦略という良くわからないものを競うゲームの違い。


・自陣地を増やし、敵陣地を削る。
 それが陣取りゲームである『悠久の車輪』のすべきこと。
 邪魔する敵をどうやってどかすか。それかすべきことのためにするべきこと。
 相手の体力ゲージをゼロにするため、攻撃する。
 本命の攻撃を当てるために、別の攻撃を防御させて隙を作る。
 それが『三国志大戦』というゲームですることですが
 『車輪』では、相手に攻撃されたときのダメージを抑えるために
 攻撃して攻撃する力を削り、一方で防御して防御力を高める。
 迂遠なことをするわけです。

・というのは、対人対戦ゲームだからこそ。
 アクションゲームでは、本命の攻撃を当てるために隙を作るのですが
 相手も隙を作らずにこちらの隙を作ろうとしてきます。
 その結果は、互いの採る手段をより良く読んだ方が勝つ。
 シミュレーションゲームでは、本命でない攻撃も完全に防御はできず
 その後の攻防へ直接的に影響を与える。というところまで読み合って
 一連の攻防の総量を比較して
 その場面だけでなく試合全体を通してどちらが得かを、正しく判断した方が勝つのです。

・つまり、アクションゲームはその場ごとに正解があるけれど
 シミュレーションゲームは試合全部が終わってみても
 その場面でどうすれば正しかったかが、どちらにもわからない。
 なぜならその場面でどちらかが違うことをもししていたならば
 その後の局面全ての正しさに影響を及ぼすためです。
 はっきりわかるのは、最終的にどちらが勝ったか、全体としてどちらが正しかったか、
 その局面ではどうすれば後の展開から帰納して推定するしかない。

・正しさがあるとしたら常に正しい方を選ぶという唯一利益が真実と唯物的に仮定しても
 正しさ自体が最期の結果しかわからないのです。
 それが対人対戦シミュレーションゲームというもの。
 これは良くわからない。 


・なので『悠久の車輪』を遊んでいても、なぜ勝ったのか負けたのかが
 『三国志大戦』のようには、良くわからない。
 運の要素はどこにもないのです。二人零和有限確定完全情報ゲームというやつです。
 すべてはデッキを組んだカードの性能が作る相性差と
 ゲーム中の自分でもわかっていない戦略とかいうものに基づく
 カード位置がもたらした展開の積み重ねによる結果のみ。
 遠距離攻撃部隊が位置取り間違えて相手に攻撃が届いていなかった、という
 わかりやすいミスが思い出されるとして、ではそのミスが
 どれだけ勝敗をわけるものだったのか、を
 正しく推定することがとても困難なゲーム。

・それがリアルタイム対人対戦カード式陣取りゲームである『悠久の車輪』の
 長所であり短所。
 底が知れないので1人用ですら楽しい。
 自分の実力が直接的に跳ね返ってくるので勝てないものは徹底的に勝てない。
 デッキを組み替えても、それがどの程度勝ち負けに寄与したのか正しく判断できない。


・そういうゲームです。
 『三国志大戦』と違う。
 商売的にどうなるかとかは判断しても仕方ないことですが
 カードゲームであることで自駒組みを自由に組み替えられ、
 囲碁のように実利の積では読みきれない厚み要素濃厚な将棋であるとして
 発展できるか、というと
 面白いとは思っても付いて行かないのではないか、と危惧する次第と他人事のように。

・むしろターン制にして家庭用対戦SLGとした方が幸せだったかも。
 と思わないでもないですが、しかしもちろん未来はわかりません。
 今や世に数ある様々なオンラインゲームのうち
 どれが正しいと言えないに同じ様に。
 しかし『悠久の車輪』が良く出来ているゲームであることは間違いないです。

・以前、『三国志大戦』は5年は他に先を行くゲームだと思い、そう書きましたが
 このゲームを遊んで
 それはわずか3年に過ぎなかいものだったのだと認識を改めました。
 3年後ゲームはどうなっているのか。もちろん誰にもわかりません。
 わからないなりにすることだけでも、それが未来を変えて行くのだから。