『ベヨネッタ』

 BAYONETTA(ベヨネッタ) Xbox 360 プラチナコレクション
 公式サイト http://bayonetta.jp/
  PS3版 ASIN:B003ULN9JK

PS3版と同時に1年前、2009年10月に発売された作品で
 「BAYONETTA」と書いて「ベヨネッタ」と読む。
 パッケージで後姿見せている手足伸びきった魔女さんのお名前である。
 1人用のアクションゲーム。ベヨネッタさんの大活劇。
 かなりみための格好良さにこだわったつくり。

ベヨネッタさんは銃を構えてはいるけれど
 最近のこういうみためにこだわったアクションに良くある
 主観視点で照準合せをするSTGではなく、
 攻撃動作はパンチとキック。画面中央に立ち、長い手足で敵を打つ。
 そしてまた彼女は魔女である。
 魔法だから、みため届いていない攻撃も届くし、
 魔法なので、すごく遠ければ銃が攻撃するし、
 足にも銃が装備されていて蹴ると弾出る。引き金は魔法で引く。
 それでも間に合わなければその黒髪が敵を討つ。

・銃で撃っても剣で斬っても倒した敵はなぜか爆砕。
 これぞ魔女力。魔法ってすごい。
 同輩のジャンヌさんもやたら格好良くて魔女最高。


・発売はセガなのですが、
 カプコンで『デビルメイクライ』『ビューティフルジョー』『大神』などの
 様々なアクションゲームを作ってきた方々による製作らしい。
 この系譜へ『ベヨネッタ』をその次と並べれば
 なるほどと、わかったふうな気になるような、個性ある作品らであります。

・もっとも正直、私はこれらをあまり面白がれていないのである。
 カプコンの『バイオハザード』系、3Dで描かれたアクションゲーム群とは
 どうも相性悪い感じであるのである。
 『デビルメイクライ』は、『バイオ3』までとか『鬼武者』とか
 最近では『デッドライジング』など同じく
 操作の硬さや意味不明な先に進むためのパズル要素が受け付けない。
 『大神』は最後まで遊ぶ面白さはあった、
 みためも戦い方におけるルールの新しさも良かったけれど
 もう一度最初から遊び返したくなるような作品ではなかった。

・アクションゲームとして出来は良いと思うのです。
 みためも一癖あって良いし、従来のものを踏まえ新しさもある。
 けれど、好きになれる作品ではない。
 そして『ベヨネッタ』も、やはりそういう感じであります。
 けれど最後まで遊んだ甲斐はある作品。
 どのゲームも好きになるわけではないが、といってだから駄目でもない。





・本作『ベヨネッタ』は、
 対人対戦という遊び方を持たない1人用アクションゲーム。
 コーエーの『無双』シリーズと同じく、
 群がる敵を圧倒的強さで叩き潰す、という種類のもの。
 1人用アクションで主人公が画面中央で武器振り回しているゲームといえば
 いまや『無双』のようなゲームばかりのおもむきですが
 対照的に、主人公に対して敵が同じくらい強くて
 何度も失敗を繰り返しながら少しづつ先に進めるようになっていくという
 昔ながらの『ロックマン』のようなゲームがあまり見られないのは
 みため表現が、うまくゲーム内容とそぐわないところがあるのでありましょう。


・3Dで描写された戦場は、こちらと敵双方の当たり判定は大きめ。
 ガードという概念はなく、移動して間合いを外すでもなく
 しばらく無敵状態になる回避が主な防御手段。

・3Dだと大きさの対比や体の動きの表現にめりはり付けやすく、
 みため的にはよろしいのですが
 距離感が画面のこちら側からではわかりづらいので、
 あたり判定をぎりぎりで避けるということを表現しにくい。
 よって避けるため後方に身を引く行動に、短時間無敵判定状態をつけて、
 野球ゲームで球が手元に来たときにボタンを押すと
 瞬時にバットが球にあたるのに違和感ないのと同じ理屈で、
 避けようと行動するという行動判定を、敵の攻撃と同時以上前に起こすことで
 敵の行動をさけるのが、3Dアクション定番の流儀。

・本作はこれに、タイミング良く回避をすることで
 弾や敵の行動が遅く見える「バレットタイム」ならぬ
 遅くなった時間で自分だけ変わらず動く「ウィッチタイム」なる要素があるものの
 およそ定番をきっちり守るつくり。
 当たり判定が互いに大きめであるけれど
 敵の攻撃身振りで当たり判定がいつ発生するかは掴みやすい。
 理不尽なところは少ない。


・攻撃の面では、敵にもガードの概念はなくゆえに崩し技との2択もなく
 連続技の当たり判定先へ敵を置いていく形式で、
 技は出る速さと出しやすさと射程と削り性能と次へのつながりで出来ている。
 防御の時と同様、画面の中の主人公と同じ場所に立って
 周囲を感覚しているわけではない操作するひとにとっては、
 あるていどの自動照準合わせ補正と技のつながりにおける間合い距離補正は
 主人公さん自身にしていただくより他ない。

ベヨネッタさんは、銃という当てにくい武器が主兵装でありながら
 魔女力補正のためか、この点極めて優秀。
 操作しているひとは、敵に位置や大きさを気にすることなく
 攻撃を順次選んで指示するだけで、適切に判定を置いてくれる。


・ステージ後の評価点にタイムボーナスはなく
 敵の攻撃はわかりやすくノーダメージは容易で
 出しやすく判定が強くダメージの大きい技でなくて
 手数を当てていく回数が稼ぎの主要得点源。
 というような構成のアクションゲームであります。

・ざっくり言って、回避にだけ気をつければ
 適当にボタン連打でクリアできる、自機性能が高い種類のゲーム。
 低難度設定では自動で技がつながり、爽快に敵を撃破できます。
 進行は一本道。コンティニュー制限もなく復活地点も多く
 よほどゲームに苦手意識あるひとでなければ
 このゲームをクリアできない、という状況は想像しがたいほど。
 自機の攻撃方法とその射程と照準追尾性能、
 そして巨大な敵や高低差ある戦場と、
 さまざまな1人用3Dアクションゲームをよく踏まえて
 見栄え良くかつ近年において受け入れやすい、
 間口とても広い、出来良いアクションゲームであります。


・また、単に1人用アクションゲームとして良くできているだけでなく
 みためへのこだわりも見応えある。  
 手足か細い魔女が、次々襲い来る巨大な敵の攻撃を優雅に避け、
 踊るように銃や魔術で敵をなぎ倒していく。
 大人の女性であるベヨネッタさんの魅力の画と動きでの表現、
 ムービー場面をつなげれば映画になる贅沢な画の量、
 舞台は狭いけれど活劇の舞台として整えられた背景画の連なりと合わせ、
 魔法使いの女性が自身の力で、群がる敵を華麗に倒すという
 空想かくあるべきたる絵面を、贅沢に終始見事表現している。


・この絵をアクションゲームにのせて
 『ゴッドオブウォー』の戦神が力で、男性が筋肉の重さで叩き潰すのような
 ひとふた昔以上前のアクションゲームの絵とは違った、
 大人の女性的な細長い手足に銃をのせ、かろやかなで優雅な、
 独特のアクションゲームができる。
 本作『ベヨネッタ』の眼目は
 女性アクションスターが華麗に大活劇という絵を
 アクションゲームで演じてつくるところにあって
 それは高く達成されている。

・なるほど、1人用アクションゲームの、1年前におけるではあるけれど
 到達点のひとつとして相応しい作品であります。
 アクションゲームは苦手というひとでも
 公式サイトでみられる活劇の絵に魅力を感じたならば
 ぜひお試しいただきたい一品。
 発売から1年も経って書いても説得力なし。ではありますけれど。





・しかしけれども。
 ここまで書いてしかし感想としては、
 どこが面白かったのかと問われたならば、じつはまことに答えがたい。
 Rトリガーの引き過ぎで腕が上がらなくなるほど痛くなり歳を感じるほど
 熱心に遊んだけれど
 出来が良かった、とは書けても
 ここが面白かった、と書くところがない。


・なぜ面白がらない、がれないのだろうか。
 ひとつ例えるなら、DS版『Newスーパーマリオブラザーズ』を
 遊んだときのような気分。
 というと明らかに違うのだけれど、一面においては近い。
 出来は大変よろしい。が、遊んでいて楽しいけれど楽しくない。
 楽しいけれど、面白くない。
 文句なしにひとには薦められるが、自分でさらにと遊ぶ気にはなれない。
 遊べば楽しいのだが、しいて遊ぶ気にはなれない。
 このあたりの面白がり様は、自分でも良くわからないところである。

・ふたつ例えば、この『ベヨネッタ』と似たようなゲームとして
 『ゴッドオブウォー』は好きである。
 『ワンダと巨像』も好きである。
 『どろろ』も好きである。
 『大神』は、もう一度遊びたいとは思えない。
 そして『ベヨネッタ』も、シリーズ次回作を楽しみに待てるかというと否定的。


・ひとつ思いつく理屈の理由は
 ベヨネッタさんのつくる舞台世界をあまり好きになれない、
 というものがあります。
 カプコン風のアクションゲームはなんとなく好きになれない。
 なんとなく。


・例えば、上で挙げた『どろろ』は、アクションゲームとして比較するなら
 『ベヨネッタ』の方がさまざまな面で上等かもしれない。
 けれども好みによる主観視点からすれば
 手塚治虫の原作、パッケージ画、
 そしてゲーム中にみられる様々な画が作り出すひとつの絵が、
 どれも作品をより良くしてあろうとするように見える。魅力的に映る。

・この、あばたもえくぼに解釈する「好んでいる状態」の視点は
 何が作り出しているのだろう。
 未完というか中途半端で終わっている原作は
 中途半端だからこそ話としては良いとは評価するけれど
 和物中世舞台における妖怪退治ものという絵を
 この作品から想像広げられるというところはさほどなかったという印象。
 しかし、ゲームで描かれたそれは好きなのである。好ましいのである。
 良いところも駄目なところもセガなところも、なんでもかんでも好ましい。
 ゲーム版『どろろ』大好き。
 いまからPS2引っ張り出して遊び返せばまた違う感想になるだろうけれど
 いま、好きなゲームは『ベヨネッタ』より『どろろ』である。


・『ワンダと巨像』も、同じような絵の前作『ICO』は
 あまり面白くなかった、絵として物語としてゲームとして、
 それほど好きになれなかったけれど
 『ワンダ』の、馬に乗って巨大な敵にへばりついて足から背中へ這い登って
 青白くおいしそうに光るところを針でちくちく刺すのは、まことに楽しい。
 アクションゲームとして良い出来だ、というより
 そのゲームを遊んだ結果として作られている想像の中の絵が楽しい。
 思い返して美味しい。

・『ゴッドオブウォー』も美味しい作品である。
 ハゲでマッチョで肉体派の戦神クレイトスさんとギリシャ神話の愉快な神々が
 「ねるねるねるね」のかたによるナレーション下で破天荒に大活躍、
 という絵が楽しいのである。美味なのである。
 あのノリが良いのである。ナレーションの声が良いのである。素敵なのだ。


・もちろんそれぞれ、アクションゲームとしても楽しい。良く出来ている。
 その上で、それを遊んだ結果、
 いや、遊ぶ過程を表現している様子が
 みていて、遊んでいて、想像してみて楽しい。
 そこにアクションゲームの面白さのひとつがある。
 アクションゲームは絵である。
 そういうところが好きなのだ。楽しいのだ。面白いところなのだ。


・『ベヨネッタ』は大変良い出来のゲームだと思う。
 それを好きに美味しくいただけないのは残念なことだけれど
 けれどそういうものでもあろう。
 さらなる素敵な、美味しい、楽しいゲームが
 この優れたゲームをもとに、より良くなって欲しいというのも
 わがまま勝手な思いである。
 けれどそういうものなのだ。