『ポケットモンスター黒と白』

 
 ポケットモンスター ブラック ポケットモンスター ホワイト
 
 公式サイト 総合  http://www.pokemon.co.jp/
       白黒用 http://www.pokemon-sp.jp/series/bw/


・水は低きに、ひとは易きに流れる。
 ここのところいろいろぐだぐだしていたので
 『信長の野望 天道』で軍団委任またはデモモードをぼけっと眺めて
 ゲームをしていることにしていたのですが
 全実績解除してしまったことだし、そろそろ次のゲームをはじめることに。

・さて次は、時間をかければかけた分だけちゃくちゃく着実と強くなる、
 という種のゲームが遊びたくなった。
 こういう感じの要望みたいなものというのは、
 ゲームをよく遊ぶひとに同意していただけるのでなかろうかでないでしょうか。
 こう、特に頭を捻らなくとも、ボタン連打して眺めているだけで
 きっちり物事片付いていくというのは、わりとそう、そんな理想である。
 遊びという暇つぶしにもとめるひとつの願いである。
 もちろん対戦したり協力したりして遊ぶのも楽しいのです。
 例えば『桃鉄』をひとりで遊んでも面白くないのに決まっているのです。
 しかし時には、ぼけっとゲームの上でなんとなく意識ただよわせること、
 けれどゲーム内の数字は増えて、強くなった良くしたと、
 評価される種のゲームもまた、ゲームに求めるものなんであります。


・ということで選んでみたのが
 世界一有名なゲームかもしれないこの『ポケモン』である。
 有名かはともかく、とても売れているゲームであるのは間違いない。
 また、何しろ長いこと多くのひとが遊び売れ続けている作品であるから
 出来の良さにはかなり信用できるというもの。
 今回のは店頭デモで「ポケモン一新、大人にもおすすめ」とか言っていたし、
 (前者は半分ほんとうで、後者は漢字使用表記を選択できることから)
 私が前回遊んだのもGBA版以来で、このサイトでも感想書いていないし、
 というようなこともあったりして買ってきたわけである。

・しかし忘れていた。
 『ポケモン』は、確かにテンポ良くレベルが上がって強くなるけれど
 行き着くところは「時間をかければかけただけ強くなるゲーム」、
 ではないのである。
 友達と交換したり対戦したりして比べ競い、共に遊ぶゲームなのである。
 データ数値量増大を評価しほめてくれるひとはゲーム内にいないのだ。
 『桃鉄』とはまた違って、1人で遊んでも面白がりがたいゲームなのである。
 かつて「金と銀」で本体2つ用意してひとりで通信し合いながら遊ぶという
 豪で業な方もいらっしゃいましたが私には無理。

・初めて遊んだわけでなく、昔と変わっているわけでもないのにご覧の有様。
 いましめにここに今更ながら『ポケモン』がどういうゲームか書いておきたい。
 もっともここに書いた端から忘れていくし
 年末に一度読み返しても、寝て起きればすっきりさっぱり過去とは決別程度の
 記憶容量と要領の良さを誇る私ではございますわけでありますが。





・1996年に最初の「赤と緑」が白黒のころのゲームボーイで発売され
 そのとき小学生であったかたがたより下の年代であれば当然であっても、
 それよりわずかでも上だと、アニメなどの印象から子供向けのゲームと
 遊んでいないひともおられるであろうからし
 根本的にどういうゲームかについて改めて説明。
 えーと1996年に12歳とすると現在27歳か。それより上か。そうか……。

・いつものように、何々みたいな、でいうと
 敵のHPをぎりぎりまで削るほど捕まえやすくなるのが
 『リンダキューブ』とか『大悪司』みたいだとか、
 敵を仲魔にできるのは『ウィザードリィ4』より
 初代『女神転生』の方が先なんだぜとか、
 結局はトレーディングカードゲームであって子供騙しの商売であり
 対戦カードゲームでは『カードヒーロー』の方が良く出来てるのではとか、
 要は小学生男子向けの昆虫採集して友達の間で戦わせるののゲーム化であり
 『ムシキング』は犠牲になったのだ。SSQという犠牲の犠牲にな……
 とかそういうふうなでなくて。
 そのほうがわかりやすいかもしれませんが。


・戦う敵の「モンスター」を「モンスターボール」で捕まえることで
 仲間として使えるRPGのようなふんいきのゲーム。
 RPGのようだが主人公は戦わず、戦うのは捕まえた「モンスター」だけ。
 よって武器とか防具とかないのである。
 そして主人公は小学生くらいでも大丈夫なのである。
 RPGのような、というのはお話じたいが、
 正義のポケモンを操る悪いやつらをやっつけろ、とかそういうのでなく
 なんで大人でなくて主人公が戦うんだとかそういうのでなく
 つまり対戦のためのチュートリアルと収集と育成の場である、というところ。
 戦闘では仲間になる種類のモンスター、すなわち「ポケモン」の力が全て。


・「ポケモン」はレベルがあって、戦って経験値稼いで成長する。
 レベルが上がると能力値が上がり
 規定のレベルに達すると新しく「わざ」を覚える。
 攻撃方法とか防御方法とか、いわゆる「魔法」の位置づけ。
 覚えられる「わざ」の数は決まっていて、新しく覚えたらどれかを忘れる。
 どれを忘れるか、それとも新しいわざを覚えないかは任意。
 また規定のレベルで別種のポケモンに変化する種のものもいる。
 変化するかしないかはこれまた任意。

・「ポケモン」の能力、攻撃力とかどの属性に強いとかは種類ごと固定で
 覚えられる「わざ」も、成長しやすい能力の傾向もおよそ種類で決まっている。
 多少の個体差はあり、こだわるともちろんきりなくありますが、
 どの「わざ」をどのポケモンに覚えさせるか、
 そしてどれとどのポケモンを組ませてパーティを組むか、がまず重要。
 もちろんレベルが高ければ適当な組み合わせでも勝てるのですが
 対人戦では、とても重要。 


・「ポケモン」は種類がたくさんいる。
 いわゆるRPGでいうところの、ボス敵戦を除く雑魚敵戦ではみな仲間にできる。
 規定の値までレベルが上がると別種のポケモンになるものもいるし
 特定の場所や、ゲーム内時間などのの条件で
 なかなか出現しないレアなポケモンもいる。

・またこのシリーズは、初代から「赤と緑」「金と銀」「サファイアとルビー」、
 そして今回の「黒と白」のように2バージョンが同時発売されているのですが
 そのどちらかにしか登場しないものもいる。
 両方のバージョンを買ってください、ということでなく
 通信してポケモンを交換することを推奨する仕組み。
 交換したポケモンは、自分で捕まえたものより
 レベルを上げるための必要経験値が低くなるのもその一要素。
 そしてもちろん通信しての対戦も可能。
 DS版からはWi-Fiで全国、全世界と交換、対戦が可能。


・種類がたくさんいて、レベルはどんどん上がるけれども
 一度に持って歩けるポケモンの数には限りがある。
 合体などという非悪魔道的なことはままにはできないので
 お気に入りの愛着あるポケモンを残すか、
 でも新しく仲間にしたのも試してみたいかで悩んだり
 機械的に忘れ去ったりする。

・ゲーム的にいうと、
 新しく捕まえるポケモンは、これまで連れて鍛えてきたポケモンたちと戦い
 寡兵で浅い戦術ながらそれなりに戦える戦力であるから
 自戦力平均値とほぼ同等ではある。
 が、同質であるならば入れ替える要請に欠け欲求に訴えかねるので
 傾向を常に折り変えて配置されている。
 数が増えるほど、これまでに見られなかった特性であることを
 主張しなければならないようだが
 じつのところこれは一度控えにまわされた側のほうが
 再度戦闘で表明できない分切実である。

・個々にレベルという強さの段階がある以上、
 色違いの上位互換でごまかすことも許されるはずなのだが
 対人対戦を内包するゲームの調整に「良心的」であろうとしてか、
 種類が多様であるほど対戦が深く面白くなり得るはず、とこれを否定するか、
 または単に数が多い方が偉いとするか。
 そういうようではなくあろう、としているようにみえる。
 実際何百万人の遊び手に応えるためには
 ゲーム的には意味がないと思われるほどうすくとも
 個々に他とは違う個性特性ゆいいつせいを持たせる要はあるのだろう。


・簡単にまとめ。やはり他との比較でわかりやすく。
 『ポケモン』といわゆる1人用RPGの違いは何か。
 『ポケモン』と「トレーディングカードゲーム」との違いは何か。

・後者で明確なのは、ポケモンがレベルを持っていること。
 収集するだけでなく、育成もする必要がある。
 しかしこれは本当だろうか。育成とはなんだろうか。
 1人用RPGで育成という言葉を使うだろうか。

・前者で明確なのは、1人用オフラインRPGでなく、1人用オンラインRPGである点。
 通信して交換も対戦もしなければ、『ポケモン』もふつうのRPGと区別できない。
 逆に、そうしてふつうのRPGと比べてみれば
 お話が簡素単調で、戦闘なども盛り上がりにかけ、
 強くなっていく感じも上手く表現されていないようなRPGである。

・例えば同じく出現する敵を自戦力として使える『メガテン』と比較しても
 ふつうの1人用オフラインRPGと比べた時と同じ感想。
 『ポケモン』は戦闘とお話のつながりがうすい。
 このボス敵には、このくらいのレベルで、こういう状況下で、
 こういう戦力で戦術で挑むはず。という方法論が
 「トレーディングカードゲーム」のような『ポケモン』では通用しないのだ。


・つまり『ポケモン』は
 1人用オフラインRPGと、オンライン対人対戦トレーディングカードゲーム
 中間である。
 双方のいいとこどりであり、どっちつかずである。
 カードゲームのように収集だけでなく楽しめて
 いわゆるRPGと違って簡単にみんなで楽しめるが、
 1人で遊ぶのだともうひとつつまらない。


・『ポケモン』が長きに渡り、多くのひとに楽しまれたのは
 ここにあるといえるでしょう。
 すなわち、『ドラクエ』『FF』のようなRPGでなく携帯アプリに近い遊ばれ方。
 テレビの前に腰を据えて遊ぶものではなく
 手のひらに収まる暇つぶしの道具。特に小学生などを中心として。
 常にだれかと遊ばなければならないわけではなく、
 その間にしておいてもしておかなくても良いことをしておけるゲームである。

・育成、というのは
 このごろのお話を前面に押し出したRPGでは嫌われる要素である。
 すなわちそれまではレベル上げという作業として存在していたわけである。
 『ファイアーエムブレム』のようなSRPGでは今も色濃く残っている。
 個々のキャラクタに魅力を表現する手段の変容であり分化といえるが
 「時間をかければかけただけ強くなる」、ゲーム内で評価される、
 この育成という要素は
 ただそれだけでもそれなりに楽しいのだ。
 ただし、それを遊びたくないひとや時には邪魔であり無駄である。

・そうしなければならない、ではいけない。したくない。したがらない。
 そうすることも出来、出来ることは評価もされる、でなければならない。
 1人用オフラインRPG
 お話の本筋に関わらない「しなければならない」を削ることが洗練であり、
 トレーディングカードゲーム
 多様な種類の使い分けという遊び手技能の高密度専門多極化である。

・育成という無駄な作業は楽しいから必要なのである。 
 無駄で関係なく別にどうでもいいことだから気楽で楽しいのだ。
 しのぎを削る対人対戦や気を使う協力モードでは楽しめないのだ。  
 そして対人対戦には不要なものである。
 『ポケモン』にも不要である。
 対人対戦、『ポケモン』で勝つために必要なのは
 レベルを上げておくという無駄な作業でなく
 どの種類のどの特性とわざが、どの相手に局面でどのように活用できるかを
 知り並べ引き出し活かして用いる技術。
 
 
 
・『ポケモン』はSRPGより時間がかからない。
 ごく浅くには、トレーディングカードゲームと違い負けても良い言い訳がある。
 ふつうのRPGのように緩急ないけれど、一本道でない広がりがある。

・対人対戦もできるオンラインゲームであるけれど
 一人用RPGでもあるようであり
 また、それらどちらの「専用」よりも
 「勝つための難しさ」、「評価を得る困難さ」が低いけれど
 それが良いところである。
 
・なにより軽さがある。
 倒すべき魔王がいないからでなく、対戦しなければならないということでなく
 一回の電源入れて「続きから」を選らんで「セーブ」をして電源切るまでの
 要する、いやそれなりに納得して満足できる時間のかるさ。


・まったく今更なのですが
 『ポケモン』はそういうゲームなのである。
 しかし私はそういうことをわりと忘れるわけである。
 確かにレベルはどんどん上がって、時間かけただけ強くなるようだけど
 その強さが評価される測りが、一人用オフラインRPGのそれではないのだ。
 といってトレーディングカードゲームと違い、
 レベルがあってRPGのようでもある。
 けれどSRPGのように乗り越える困難が用意されていなく、
 達成感を得た気になるのが難しい。
 何より、大人には一緒に遊ぶトモダチコレクションする手段がない。
 当たり前である。
 あとなはおとなしくおとなむけのゲームを遊ぶことといたします。
 われながらどう言い繕いようもなく
 自分がおとなになってしまった。