『ゲーム批評 Vol.56』

kodamatsukimi2004-04-25


 発行:マイクロマガジン社 04/4/3発売 \780
 goo紹介ページ http://magnavi.goo.ne.jp/caption/10007317.html


・発売から大分時間が経ってしまいましたが
 ある程度間をあけたほうが
 ネタバレ問題に関してもいいかもしれない、
 などといいわけ。


・今回の特集は「ゲームが売れない!客が来ない!?」と題した
 販売店、流通側の事情と
 アーケードゲーム関連の問題について。
 そして「リアルすぎて困っちゃう!―3Dのお悩み解決します―」、
 FPSなどでよく起こる「3D酔い」についての2題。

・例によって1特集を主として
 その他については適当に書いてみたいと思います。


・まず1特集。
 コンシューマ機(家庭用ハード)の販売店事情と
 アーケード(ゲームセンター)の問題が並べて論じられているので
 少々わかりにくいですが
 ようは販売側のゲーム業界内輪ねた。

・数年前からいわれている「ゲーム不況」、
 ハード(PS2本体)はそれなりに売れているのに
 ソフトの方がなかなか売れない、といわれています。

・音楽CDなども同様なのですが
 年に数本のミリオンヒット、そして10本程度のハーフミリオン、
 以下10万本以上で上位50位。
 しかし売れないソフトはさっぱり売れない、という市場形態。


・結構売れている気もしますが。

・しかし開発側としては年々制作費は高騰する一方で
 実験的なソフトが作れず、どうしても続編中心になってしまう
 という話。

・流通側は値段競争を常に強いられており
 10本売ってやっと1本分の利益。
 つまり10本仕入れ、1本売り残すと利益ゼロ。
 本のように返品はできません。
 大手家電販売店などのように
 売り上げ総量で利益を上げることができる一部を除き
 中古販売で利益を上げています。
 中古販売が裁判で合法的に認められたため
 販売店の多くはゲームの中古を扱っています。
 レンタルで利益を上げている音楽CDと同じような形。

・ゲームのレンタルも
 「TSITAYA」の一部店舗で実験的に行われたこともあったのですが
 利益を上げるようには働かない、と判断されたよう。
 アメリカなどではゲームレンタルは当たり前に行われているのですが
 好みのゲームジャンルが異なるから、というのが理由のようです。

  
・というわけで、どうしたらゲームが売れるのか。
 オンライン販売にするのか、
 初回特典などを充実させるのか、
 中古販売店の値段付けのしくみ、その市場形態は、
 デジキューブ倒産後のコンビニ流通はどうなるのか、
 などについてレポートされています。


・次にアーケード市場について。

・ゲームセンターに最近入ってみたことがあるでしょうか。
 昔ながらの狭く汚い感じの(失礼)ゲームセンターにかわり
 郊外型のアミューズメントパーク、
 という形態のゲームセンターが増えています。
 もっともパチンコと同じようにうるさく
 暗くて狭苦しいのは変わらないのですが。
 外界の情報を遮断して
 目の前のものに注意を向けさせる効果を狙っているのかもしれません。
   
・入ってみるとまず並んでいるのは
 相も変らぬ「プリクラ」関連。
 そして「UFOキャッチャー」ことクレーンゲーム。

・ちょっと奥に入ると大型の稼動筐体。
 一時期に比べると下火になったものの、根強い人気のリズムゲーム
 スノーボードドライブゲームガンシューティングなど。

・そして暗い方にいってみるとメダルゲーム関連。
 スロットや競馬を模したものなども
 やはりいつまでも人気が高いようです。

・すみっこのほうにビデオゲームが。
 バーチャファイターなどの対戦格闘ゲーム
 マニアにしか手を出せないシューティング、アクション、
 そして麻雀ゲームなど。


・あまり昔と変わっていないようです。
 ゲームセンターはパチンコ程ではないにしても
 それなりの数の固定客を確保しており
 今日明日にも市場が駄目になってしまう、ということはないでしょう。

・大きく発展するのはやはり難しい。
 大人は実利がある、と思われる、パチンコなどのギャンブルを好むでしょうし
 ギャンブルをやらない層は
 そもそもゲームを外に出てまでやろうとしない。


・そのような中でも注目すべき点が2つ。
 通信対戦とカードを利用したシステムです。

・「クイズマジックアカデミー」をご存知でしょうか。

 コナミ紹介ページ http://www.web-konami.com/products/ac/magic_academy/
 公式サイト    http://www.konami.co.jp/am/qma/

・通信対戦を利用したクイズゲーム
 全国のプレイヤーとクイズで勝負。
 また自分の成績を記録することができ、好成績をあげることで昇級、
 より強いプレイヤーと対戦できます。

・システムはセガが「バーチャファイター4」で
 作り上げたものの発展系なのですが
 誰にでも参加できるクイズゲームであるという点が重要。
 従来のクイズゲームの弱点である「クイズ問題」の劣化も
 通信という特徴を生かし、毎月更新することで解決。
 問題も偏らず様々な知識が必要となる内容で
 幅広い層が楽しめます。

・通信対戦の特長を見事に活用したゲーム。
 筐体が大型なのでどこにでもある、というわけにはいかないのが残念。


・上記のゲームでもカードを使用していますが
 他にもカード、通信を組み合わせたゲームが多数稼動しています。

・例えば麻雀。
 「麻雀格闘倶楽部」(http://www.konami.co.jp/am/mfc/mfc3/top.html
 麻雀で通信対戦。段位を記録。
 ネットで遊べば無料でできることを
 わざわざゲームセンターで有料で遊ぶ人がいるのだろうか、
 と思われたのですが
 セガの「四人打ち麻雀MJ」(http://www.sega-am2.co.jp/mj/
 ともどもヒット商品に。
 そういうものなのでしょうか。
 ちなみに無料ネット麻雀はこちら。
 「東風荘」 http://mj.giganet.net/

セガでは馬を育てる「ダービーオーナーズクラブ」をはじめ
 サッカー選手を収集する「ワールドクラブチャンピオンフットボール
 トレーディングカード性を前面に出した「アヴァロンの鍵
 メダルゲームながらRPGの「ドラゴントレジャー」など多数を製作。

 詳しくはこちらを。 http://www.sega.co.jp/arcade/


・さてそんな感じでゲームセンターに新しい市場を作った
 通信・カード式ゲームですが
 欠点が2つ。
 先にあげた筐体の大型化と、初心者の入りつらさです。

・筐体の大型化は場所の問題はもちろん、導入費も高額に。
 これらカード式ゲームはインベーダーゲーム以来の
 1プレイ¥100という枠を打ち破ったという点でも
 革新的で評価されたのですが
 それでも筐体の導入費用の元を取るのはなかなか大変。
 高額ゆえにリスクも高いのです。
 数百から1000万を超えるものもあるとか。

・もうひとつの初心者の入りつらさ。
 1プレイ¥100で完結せず、継続して遊ぶシステムのため
 当然お金がかかる、という点もそうなのですが
 もっと根本的に、初期費用=カード購入、が必要であるということ。
 ふらりとゲームセンターに入って面白そうだから¥100入れてみる、
 ということができないのです。
 いちげんさんおことわり、ならぬ、おためし1プレイさんお断りなこのシステム、
 最初から複数回のプレイを
 プレイヤーに「強要」してしまっているわけです。
 
・お金とある程度の時間、複数回のプレイが必須であるため
 固定客は多額のお金と時間をさいてくれるわけですが
 初心者は手をだせない。
 コンシューマーのネットゲームも同様の問題があります。


・そんな感じの1特集。なかなかゲーム専門誌、むしろ業界誌ですね、
 らしくて良かったのではないでしょうか。
 もともとゲーム批評の読者もそのような感じなのでしょうし
 ニーズを汲んだよい記事と思います。



・2特集の3D酔い。
 これは医学的にも脳の問題であるために原因が良くわかっておらず
 個人によっても差異があるもの。
 できるだけわかりやすい操作性、みやすい画面つくりが大切でしょう。
 
・ちなみに私はあまり酔わないのですが
 セルダの「ムジュラの仮面」で酔いました。ウサギ仮面が酔えます。
 

・新連載記事「“現場”は燃えているか」。
 このタイトルはなんとかならないのでしょうか。
 コーエー無双シリーズを開発する「ω−Force」チームの
 友池隆純氏、鈴木亮浩氏へのインタビュー。
 内容は悪くはないのですが、ファミ通などに載っているものと
 あまり変わらないかも。
 ゲーム批評ならではのこだわりがほしいところ。
 もっと情報量を濃く編集したほうが良いのでは。
 コンティニューやユーゲーのものは読み応えがありますし。


・ゲームソフト批評。
 前号も触れていなかったので、まとめて取り上げます。
 当然ながら、すべてについて取り上げるときりがないので
 目に付いたものを。
 

・「武刃街」 PS2 ’03/12/25 タイトー

 公式サイト http://www.bujingai.com/

 ・昨年年末のタイトー勝負タイトルと思われる一本。
  開発がゲーマー的に最近目に付くタイトルのないタイトー
  共同開発が中身の怪しいレッドエンターテイメント、
  とどめに芸能人の採用。こりゃだめだ。
  ということで広井王子さんが何を言おうともスルーされた本作ですが
  意外に出来が良いようです。

 ・さまざまなレビューサイトでも
  やや単調なもののなかなか良い、
  という評価。タイトーの意地をみせたタイトルでしょうか。
  Gacktさんもなかなか熱心に協力しているようです。
  これはチェックしてみよう。


・「新世紀エヴァンゲリオン2」 PS2 ’03/11/20 バンダイ

 公式サイト http://www.bandaigames.channel.or.jp/list/eva2/

 ・開発はアルファシステムhttp://www.alfasystem.net/)。
  前作「ガンパレード・マーチ」がかなりの評価を受け
  そのシステムを使った続編の題材がエヴァンゲリオンということで
  大変話題になった本作。
  評価は賛否両論。
  エヴァンゲリオンのファンでなければ楽しめないゲームのようです。
  多くのプレイヤーの感想は
  このシステムを発展させた次回作に期待、というところでしょうか。

 ・「ガンパレード・マーチ」の時も同じようなことをいわれていましたが。
  

・「1080°シルバーストーム」 GC ’04/1/22 任天堂

 公式サイト http://www.nintendo.co.jp/ngc/gtej/

 ・前作「1080°(テン・エイティ)スノーボーディング」は
  ニンテンドー64で発売され
  スノーボードゲームの最高傑作と評価された作品。
  本作も任天堂ならではの完成度で良い仕上がりのようです。

 ・スノーボードゲームは他に
  エレクトロニック・アーツhttp://www.japan.ea.com/
  のSSXシリーズがあり、
  最新作「SSX3」も高い評価を受けています。

  「SSX3」紹介ページ http://www.japan.ea.com/easports/teaser.phtml?ProductCode=ENGC-7012
  紹介ムービーが必見。

 ・SSXシリーズとの違いは、まず難易度。
  「SSX3」はサイトを見ていただくとわかるかと思いますが
  コースがすさまじい世界。ゴルフでいうとプロゴルファー猿
  その分転倒しにくい仕様で、コースを駆け巡る爽快感が味わえます。
  それに比べ、「エキサイトバイク64」などもそうだったのですが
  任天堂のゲームは難しい。
  うまくコントロールしないとすぐに減速、転倒しタイムに響きます。
  しかしその難しさの調整が実にうまいのです。
  やればやるほど上手になる、
  難しいからといって途中で投げ出してしまわない絶妙の難易度上昇曲線。

 ・本作シルバーストームはやや簡単になっているようですが
  その本質は変わらず。
  SSXはスノーボードを自在に操るのを楽しむのならば
  「1080°」はレースゲームのように走りを追及する、という違い。
  どちらも優れたソフト。良いです。


・そんなところで。
 少なすぎですか。
 
・まあネタバレの問題もありますし、
 良作についてはおいおい取り上げていきたいと思いますので
 このあたりでご勘弁ください。