『天外魔境Ⅱ 卍丸』にみる望ましいリメイクとは

kodamatsukimi2004-05-08



・2003年、個人的ベストRPGは3月31日(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040331
 に書いたように『天外魔境2 卍丸』(GC版 ASIN:B0000AZRNM)。
 ’92年3月26日、PCエンジンSUPER CD−ROM^2(スーパーシーディーロムロム)
 で発売された作品のリメイク。
 

・けれど本作、あまり評判は良くないです。
 ロード時間、中途半端な3D化、古臭いグラフィック、戦闘バランスの悪さ、などなど。

・実にごもっとも。
 同じ感想です。
 
・ではなぜベストRPGなのか。
 確かにあまり良くない出来。PCエンジン版がとても良かっただけに許せない内容。
 しかし、昨年に私がプレイしたRPGの中では間違いなく1番に面白かった。



PCエンジン版『天外魔境2 卍丸』、
 これをやらずしてRPGを語るべからず、などと私は思っていました。
 実に良く出来た傑作大作和風RPG

・発売された92年。
 『ドラゴンクエスト5』『ファイナルファンタジー5』『ロマンシングサガ』『真・女神転生』。
 多数の名だたる大作RPGが発売された年ですが
 間違いなくこれらと比べて優れた作品です。


・開発はハドソンとアルファシステムhttp://www.alfasystem.net/awork/)。
 企画・監修 広井王子、監督・脚本 桝田省治、演出 岩崎啓眞
 音楽 久石譲福田裕彦


・あらゆる面で優れた本作ですが
 中でもシンプルかつ短時間で決する戦闘システムが秀逸。

・コントローラーの操作反応が非常に早く
 戦闘前後のロード時間も皆無、余計な演出もない。
 PCエンジン標準の連射パッドを使うと
 和風RPGのチャンバラ世界にふさわしく、まさに瞬殺で戦闘終了、
 ザコ戦闘のほとんど全てが、たちまちの内に終わります。
 およそ15秒から30秒。戦闘のBGMがループするのを聞くことがないほど。
 各下の相手なら1秒かかりません。
 もちろん戦闘前後の演出も含めて。
 これだけ早いのは他には『MOTHER2』くらいでしょうか。あれは違うか。

・かといって、ボタンを押しているだけで全滅しないような底の浅い内容ではなく
 レベル、本作では「段」の値が強さに大きく影響する成長システムもあって
 むしろ難しいバランスになっています。

・レベルさえ上げれば力押しでもよいですが
 普通にプレイするなら各種奥義や術を使いこなす必要がある。
 これらも例えば属性の要素などはなく、シンプルにまとまっていますが
 擬似アクティブタイムバトルで流れるように展開する戦闘のリズムとよくあっています。



・そんな素晴らしい作品であったものの今回のリメイク、なぜ評判が良くないのか。


・ロード時間。
 PS2版では戦闘の前後に1秒程度の読み込みが入ります。
 GC版はそのまま移行しますが、ややもたつきあり。
 イベントシーン前後の読み込みはオリジナルとほぼ同じ。
 
・ボタン反応はPCエンジンが連射パッドであったこともありますが
 GCPS2版とも普通のものになっており
 それを補うためか戦闘中のメッセージやエフェクトを早回しする
 「早送りモード」なるものが搭載されています。

・最高です。
 ’87年、16年前発売のPCエンジンというハードではなかった読み込みのストレスを
 最新ハードで感じることが出来るとは。
 厳密には違いますが同じCD−ROM媒体であるのに。
 早送りってのは何ですか。飛ばしてもすむようなものなら最初から入れなさんな。


・中途半端な3D化、古臭いグラフィック。
 画面が回転できますか。そうですか。
 2D用に作られたマップをそのまま持ってきて回転できても
 かえって見づらいだけですが。
 GCPS2だと2Dで作るほうが手間がかかるのでしょうか。
 特にフィールドマップがかなり改悪な出来。


・戦闘バランスの悪さ。
 一番大きな変更点。
 成長内容、武器性能、敵のパラメーターなど
 多くのデータがそのまま使われているのですが
 敵からの習得金額がおよそ1.5倍、
 レベルアップ必要経験値が1.5〜2倍に少なくなっています。
 
PCエンジン版ではファーストプレイで
 普通に町をめぐり、ダンジョンで迷っているうちに
 適正レベル、ボス戦でやや苦戦するが回復に徹していれば勝てる程度になるよう
 調整されていました。これがまた良く出来ていました。
 今回、ファーストプレイでもレベルが上がりすぎ
 ボス戦でもボタン連打で容易に勝てるようになってしまっています。

・元がシンプルなシステムだけに、バランスが悪く奥義や術も使えない、工夫のしようがない
 底の浅い戦闘システムととられても仕方ないかもしれません。 


・評判が悪いのごもっとも。
 今回の開発はスティング(http://www.sting.co.jp/game/index.htm)。
 代表作は『バロック』と『リヴィエラ』。
 ハドソンとスティング。10年以上前のゲームの再現も碌に出来ない。
 なさけないメーカーです。




・望ましいリメイクとは、どのようなものでしょうか。
 ゲーム機の性能は常に向上しています。
 最新最高の性能で昔のゲームをより良い環境で遊びたい、
 それがリメイクに求められるもの。


・元となるゲームは既に完成しており、
 その良い点も悪い点も充分にわかっている。
 リメイクすればより望ましいものを作ることができる。

・にもかかわらず、例えば「セガエイジス」シリーズなどをみても
 下手に手をいれるよりそのままを移植してくれた方が良い、
 データをそのまま入れてエミュレートしてくれればそれで良い、
 などといわれてしまう例もあります。


・本作も明らかに旧作に劣っています。 
 それはメーカーが最新のゲーム機で昔のゲーム機と同等以上のものを作れない、
 という技術力のなさの現れであり
 そのソフトのどこが評価されていたのか、どこが良くてどこが悪かったのか
 ユーザーは思っているほどにもメーカー自身がわかっていない、としか思えないのです。
 
・そのようなメーカーの次回作に期待できるでしょうか。


・『ドラゴンクエスト』シリーズのように、リメイクするならば
 新作同様に力をいれなければならないのかもしれません。
 名作のリメイクであっても現在、他の新作と並べて遊んでどうなのか。
 ユーザーとしては名前に関係なく、より面白いものを遊びたいだけなのです。



・『天外2』は元が非常に良く出来たゲームだけに、それでも十分楽しむことができました。
 さらにいわせていただくと
 バランスの変化で2週目以降のプレイヤーであれば従来より短い時間でクリアでき
 時間のない社会人へたれゲーマーにはありがたかったり。
 旧作が25時間程度だったものが今回は15時間ほどでクリアできます。
 ナイスアレンジ移植。
 ちなみに七福の効果は2倍になっています。
 さすがにそこは押さえたか。
 

・プレイしたことのない方は是非GC版を。
 ¥2000程度で買えるのではないでしょうか。 
 『天外2』をやらずしてRPGを語るべからず。
 口には出しませんが
 こうして書いてしまう程度には、私は今でも思っています。



 関連リンク 桝田省治さんコラム  http://www.linda3.co.jp/column/index.html
       天外魔境FUN     http://www.fun-space.jp/tengai/
       PCエンジン狂の詩 http://www2u.biglobe.ne.jp/~pce/01.htm
       
  クリア済の方向け(ネタバレ注意)     
       天外魔境 無国籍食堂〜であいのちゃや〜 http://www5e.biglobe.ne.jp/~tengai/top.html




・余談ですが、『天外』シリーズはSFC、SS、GBAなどさまざまに発売されていますが
 評価されているのはPCエンジン版『天外魔境2 卍丸』のみ。
 他のソフトは別物です。忘れてください。
 「SFCとサターンのやったけど天外ってつまらなかった」
 とか言わないでください。それは別物です。どうでもいいものです。
 お願いします。
 
・例外はMVS、ネオジオの『天外魔境 真伝』。
 『2』をベースにした対戦格闘の良作です。
 といってもなかなかお目にかかれないものではありますが。
 
・言うまでもないですが、ネオジオCD版はロードが長い。
 同じCDなのに。CDだからか。 同じCDなのに。CDだからか。