新しい落ちものパズルのゲーム性


・「メテオス」は「テトリス」「ぷよぷよ」と同じ
 「落ちもの」パズルゲームに分類されるもの。


・パズルゲームはとてもルールが単純です。
 「テトリス」は上から落ちてくるブロックを隙間なく詰める。
 「ぷよぷよ」は同じ色のものを4つつなげる。
 それだけです。見た目すぐにどうすれば良いのかわかります。

・単純だから簡単に作れるけれども、新しいルールを思いつくのは大変で
 多数の作品があるけれども、多くは他のルールをまねたもの。


・「落ちもの」の最初、「テトリス」は
 始原でありながら操作性、グラフィック、音楽とも素晴らしい完成度でしたが
 何より、従来にない革新的なルールを持っていました。

・上からいろいろな形のブロックが落ちてきて
 それを回転させながら隙間なく詰めていく。

・とてもシンプル。後からみれば当たり前。
 けれど、世界で始めて今まで誰も考え付かなかったものを考え出し
 形にするのは本当に困難です。


・「テトリス」の次に来るのが「ぷよぷよ」。
 上から落ちてくるブロックを回転させて積み上げていくところまでは同じですが
 積み重なった下の「ぷよ」が消えると、落ちてくっつく。

・落としてくっついたのが消える条件を満たしていれば、ひとつを積むことで
 連鎖的に多数の「ぷよ」を消すことができる。
 この「連鎖」と、2作目「ぷよぷよ通」で導入された対戦用ルール「相殺」。
 どちらも「テトリス」にはなく
 その後のあらゆる「落ちもの」パズルに影響を与えた革新的ルールです。


・もうひとつ挙げておきたいのが「パネルでポン」。通称「パネポン」。
 任天堂のゲームですがやや知名度低め。
 (参考;「パネルでポン」公式サイト http://www.intsys.co.jp/game/panepon/
 「パネポン」の新しい点は、既にして積みあがっているものを入れ替えるところ。
 上2作では落ちてきたそのひとつについて
 どこにどのように落とすかを
 今まで積み上げた山、今動かしているこのブロック、予告されている次の一手
 その3要素からより効果的に、より連鎖がつながる位置に決定します。

・けれど本作は、下からせり上がるパネル全体を眺めて並べ直す仕組み。
 動かすのはひとつではなく、つながり合って影響しあう全体構成の一部分。
 直線棒ブロックのために1マス溝を空けてきれいに積み上げる「テトリス」、
 連鎖のために階段積みを折り重ねる「ぷよぷよ」。
 どちらも導火線を延ばして一時に爆発させるかたちであるのに対し
 「パネポン」は連鎖の仕込み配置をしておくのは同じですが、
 連鎖を開始したらそれがつながるよう連鎖中もさらに入れ替え続けるアクティブ連鎖
 「落ちもの」すなわち落ちてくるだけではないもの、であることを見せた作品。


・この3作は現在もその最新版が遊ばれているように、それ単体で完成されています。
 また、後に続く多数の作品に影響を与えています。
 けれどだから他が劣っている、真似だから駄目、ということではなく
 それぞれが似ていてもまったく同じルールでないことは
 パズルテレビゲームであることを幹として
 これら3つを結節点に多様に伸びる、「落ちもの」パズルゲーム世界の樹。
 どれもが独自に価値を持つ作品なのです。


・そして「メテオス」も、この「落ちもの」パズルゲームのひとつ。
 そして「テトリス」「ぷよぷよ」「パネルでポン」と並び連ねて
 名を残す作品といえます。



・「メテオス」は打ち上げパズルゲーム。落ちものだけれど打ち上げです。
 落ちてくる隕石、積みあがったメテオを
 上下に動かして、縦か横に直線で3つ以上つなげると上に打ちあがる。
 画面上まで打ち上げればメテオは消滅、対戦ならば相手の星に落ちていきます。

・つながったメテオは、上に詰まれていたメテオごと上に打ちあがる。
 だからできるだけ横に大きく、縦に長いブロックとして打ち上げた方が効率良い。
 ブロックが大きいほど打ちあがる速度は遅くなり
 その間にも落ちてくるメテオに押し戻されるけれども
 打ちあがったブロックの中でさらにつなげて2次点火。

・つなげてまとめてブロックごと消す、「連鎖」でない「テトリス」方式。
 それでいて消すまでの間にさらにくっつけたりつなげたりできる
 「アクティブ連鎖」の「パネポン」形式。
 上から来たものを上に押し返す点を
 限界に近い危ない状態ほど消すのが容易である、
 「リスク」「リターン」として活かす発想。

・これらだけでも充分に「パネポン」フォロワーから脱するオリジナルルール。
 面白そうです。


・けれどそれだけではありません。

・メテオは上下にしか動かせない。
 「メテオス」の新しい所はこの操作方法にあります。


・従来のものと操作について比較してみましょう。
 「パネルでポン」は左右のパネルを入れ替えます。
 「GUNPEY」ならば上下。
 (参考;「GUNPEY」公式サイト http://www.bandaigames.channel.or.jp/list/gunpey/index.html)  
 同様の例としてWeb上で遊べる「ZOOKEEPER」をご確認ください。
  shockwave.com : ZOO KEEPER  http://jp.shockwave.com/games/puzzles/zookeeper/zookeeper.html
 「ズーキーパー」は縦横。
 カーソルならば動かすパネルを選択、ボタンで決定。
 マウスならば入れ替える2パネルを選択。
 隣り合った2つを入れ替えるのが、「パネポン」系「落ちもの」の操作法。 


・この点について、さらにみてみます。
 なぜ、この操作方法が採られているのか。

・Web版「ズーキーパー」のマウスクリック方式であれば
 離れた2点を入れ替えられます。
 ちょうど「上海」系のゲーム「四川省」がまさにそのような感じ。
 けれど「落ちもの」がそうなっていないのは
 離れたパネルを入れ替えることができるのは
 自由度が大きすぎ、ルールに合わないからです。


・パズルゲームはルールでできていて、ルールはきまりで制限です。
 制限が少なく、無闇矢鱈に入れ替えていればクリアできてしまう。
 それではゲームになりません。
 「落ちもの」ならば、積みあがってゲームオーバーにならないように、
 対戦ならば相手より早く的確に積み上げる。
 より考えて積み上げるのがゲームの目的。それが楽しいのです。


・「ズーキーパー」から感じる、狙っていない偶然連鎖というものは
 3つつながらなければ入れ替えられない、という制限によって
 プレイヤーが「パネポン」のように連鎖のための下積みができず
 それゆえに連鎖を考えて自覚的に組みにくいから。
 その代わりに入れ替え方向の自由は大きい。
 逆からみれば、入れ替え自由のルールだから
 簡単過ぎないように制限を付けた。

・「ズーキーパー」ルールは、考えての連鎖向きではない。
 これは「パネポン」ルールのアレンジとして
 連鎖を考えなくても良い、
 気軽に目先の選択だけを追えるゲームを目指したからなのでしょう。
 つながらなくても入れ替えられる「ズーキーパー」は簡単すぎてしまいます。


・さらに離れたマス同士を入れ替えることが出来たらどうでしょうか。
 「四川省」では平面上2回曲がるまで移動できる、という制限がついています。
 そのような制限を「落ちもの」として成立させるのは困難。
 だから隣り合うパネルのみの移動、さらには横だけ、縦だけと制限を付けて
 初めてゲームとして成り立つ。

・このようにルールの匙加減はとても重要で
 制限の程度、自由度の高低、これがパズルゲームルールの根幹なのです。



・戻って「メテオス」。
 隣り合っていなくとも、上下両隣ではなく、上下ならどこまでも動かせます。
 移動したブロックは入れ替えでなく挿入され
 そこにあったメテオは上に押しのけられます。


・そしてこの新しいルールを成立させ得ているのが
 ニンテンドーDSのタッチパネル。
 従来の十字キーとボタン選択でも操作できるようになっていますが
 その操作快適性の違いは
 桜井さんが車のオートマチックとマニュアルの違い、と例える以上のもの。

・「A.B.」において「アナザーコード」の項でも指摘されていましたが
 まだ充分理解されていないタッチペンの利点。
 それは操作選択、その後の移動の3動作、マウスのドラッグ&ドロップが
 マウス以上に敏捷正確に行える点です。

・桜井さんは次のように書いています。

 画面内にあるものを「コレ!」と指摘する操作が一瞬で済む。
 つまり"やってほしいことをマシンがすぐに理解してくれる"というのは、
 ビデオゲームにおいては実に重要だと思う。常々願っていたことでさえある。
 
 操作するコントローラーは、人とコンピューターがつながっているところだ。
 ここにストレスを感じると、かわいげのないマシンに見えてしまう。
 DSは、そのへんがとても良い。
            (上記「ひそかにレポート」24回目より引用)

・これをもって「メテオス」は成立します。
 選択パネル大きく動かせるので視点は画面全体に広がりとても忙しい。
 「パネポン」のアクティブ連鎖が全体で高速稼動状態。
 しかも積みあがれば下積みなし、
 常時連鎖が発生しうるパネル構成。
 
・常にいつもどこかでアクティブ連鎖
 これが桜井政博の作り出した
 新しい落ちものパズルのゲーム性です。