アクションゲームとしての『バイオハザード4』

kodamatsukimi2006-02-16



・昨年1月、1年以上前に出た『バイオハザード』シリーズ最新作『4』。
 改めて再度遊んでみても、つくづく面白い。

・その面白いといえる部分は、独自のガンアクションSTGという仕組みです。
 

・全体を通してはこちらに言い尽くされています。全段落全く持って同感。
 AB2『バイオハザード4http://ab2.blog6.fc2.com/blog-entry-17.html
 (http://web.archive.org/web/20050312231357/http://ab.txt-nifty.com/ab/
 シリーズとしての『バイオハザード』、AVGにアクションを付けたのではなく
 アクションゲームを解いていく過程にお話が演出される仕組みこそが『バイオ』である。


・『バイオ4』については以下の通り。

「敵との相対距離をある程度自由に調整できるガンシューティング

 と表現されるこの仕組み。
 これが実に素晴らしい。楽しい。
 これで他のゲームを遊びたくなる、アクションゲーム文法の偉大な発明です。




・『バイオハザード』自体、そういうゲームです。
 アクションAVG。『バイオ』で発明された仕組みは
 『鬼武者』『デビルメイクライ』『ディノクライシス』と
 カプコンの3Dアクションといえばこれだといわんばかりに様々に脚色されて展開。

・コマンド選択型アドベンチャーゲームを単に3Dに置き換えるだけでなく
 敵を倒すアクションゲームとして作る。
 3Dアクションゲームにこのバイオカプコン方式は確実にひとつの形を作りました。
 『キラー7』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050614#p1)などはその流れで見てこそでありましょう。



・タイトルに数字重ねる中で、『2』も『3』も独自の新しさを求め作り上げたシリーズですが
 『4』は従来になく、大きく変わって新しい。
 その「敵との相対距離をある程度自由に調整できるガンシューティング」は
 つまりガンSTGとアクションの面白さを兼て併せ持つ仕組みです。


・その仕掛けは単純。3Dアクションにおいて、攻撃動作に移ったとき、回避動作ができない。
 それだけです。銃を構えると照準は動かせるが、移動は出来ない。

・それだけで、ガンSTG
 投擲攻撃打ち落とし、足元を狙って転倒、ヘッドショットで一撃必殺、
 という狙い打つ楽しさと
 アクションゲームの軸合わせ位置取りの妙、
 遠方に逃げライフル狙撃、近距離から手榴弾で一気に殲滅、
 という両方をどちらも取り入れて楽しめる。

・あまりに当たり前にあるようで無かった仕組み。
 発想の転換カプコン的には「逆転」、新しいゲームの発明です。




・3Dアクションで敵との戦いをどうゲームにするか。
 奥行きは所詮平面のテレビ画面に映すものだから限界がある。
 近距離肉弾戦ならやはり横から見るのが正解だし
 横と縦に限れば、銃攻撃で中距離長距離戦闘を表現できる。
 それが対戦格闘とFPSです。


・そのどちらも欲しい。そのどちらでもない方法を見てみたい。

・対戦格闘は横から見て奥へ逃げれるはずだ。一対一なら無理ないように見えるが多数ならどうだ。
 長距離攻撃だと横から見たままではまるで3Dでない。
 多数対多数ではカメラ位置をどんなに工夫しても結局上空から見た2Dと変わらないのでは。

FPSは逆に接近戦が問題だ。主観視点で格闘は出来ない。
 そしてやはり真横が見えない視野の狭さこそ、現実の模倣を目的とする3D表現において致命的。
 特殊プロジェクターによる特定効果でしかその真価が発揮できない。

・ではそれを組み合わせたらどうだ。銃を撃つときだけ主観視点に。
 普段はカメラ位置を細かく制御することで3D空間を演出する。
 それが例えば『メタルギア』です。(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20060108


・けれど『バイオ4』はFPSなのではないか。
 射撃時に移動を止めて狙いをつける状態はFPSでも取れる。

・移動しながら射撃、静止して射撃を使い分けるFPS
 『メタルギア』も同じ。一部の狙いをつけるべき武器でのみ主観視点、他は客観。 
 『バイオ4』は移動しながらの攻撃が出来ない。主観視点がない。

・これらはどれが正しいわけではなく、表現方法の違いです。
 FPSは多数の敵を強い自分が蹴散らす先手必勝先制攻撃が全て。
 敵の攻撃は避けるのでなく、避けれないので、攻撃される前に攻撃。常に攻撃。
 『メタルギア』はかくれんぼゲームです。
 敵は多数で強い。出来るだけ見つからないように影から攻撃、見つかったら逃げる。
 影から狙いをつけるときだけ立ち止まって主観攻撃、逃げるときは撃ちながら。
 『バイオ4』はFPSの逆。多数の敵に囲まれこちらが圧倒的に強いのは同じですが
 敵の攻撃は鈍重で避けられる。敵の眼前に姿を現しても危険ではない。
 常にゆっくり狙い打つこと可能。そこがFPSでなくガンSTGたる所です。


・銃を捨てFPSでない3Dアクションを磨き上げたのが『God of War』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20051123)。
 『God of War』は素晴らしく良く出来ています。
 2Dアクションを3Dで表現したときこれ以上のものは中々ない。
 ただしかし、見た目だけ。3Dである意味は演出以上ではない。

・空中連続ダッシュ切りが出来ない3Dアクションなど意味がない、
 とは言えないですが
 『Kunoichi』(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20050417)のようなゲームも、
 3Dなのだから、あって欲しい。



・もうひとつはSTG。2DSTGと3DSTGの違い。
 例えばナツメ『ワイルドガンズ』、トレジャー『罪と罰』とガンSTGの違い。
 例えば『アフターバーナー』はどうか(http://d.hatena.ne.jp/ABA/20060214)。

・2DSTGは狙い撃ちである。FPSの照準合わせが全て。敵に照準を合わせつつ敵の照準から外れる。
 3DSTGは一方的である。敵の照準は可視化しようがない。見えない。
 こちらの攻撃は見える。縦軸横軸と動きのずれを考慮すれば当るのが見える。

・そのどちらも欲しい。どちらでもないものが見たい。
 だから敵の弾が見えたり打ち返せたりするほど遅かったり、
 ローリングすれば主人公特権で絶対に当らなかったり、
 当たり所が悪くなかったり、悪くても奇跡が起こせたりする。
 奇跡は起きるものではない。起こすものだ。
 STGは自機が後ろに進めたりゲームオーバーまで終わることのない奇跡で成立している、
 と見るしかないのがSTGの壁の高さ。『DSトレーニング』のように理解されません。


・ガンSTGSTGか。アクションとSTGとガンSTGを並べて『罪と罰』はどこにあるか。
 そうしてみると、アクションゲーム要素、自分が画面の中にいるかどうかは
 決定的な違いであり、またSTGは他ともまったく別物であることが見えます。
 『バイオ4』はガンSTGである。同時に位置取りを自由に取れるアクションゲームである。
 STGではない。FPSを取り入れたアクションゲームです。



・『メタルギア』はFPSとはまた違う方法で、
 また従来2Dアクション線上にある『God of War』とも違い、
 3Dであることに意味を持たせようとしている3Dアクションゲームです。
 そして『バイオ』もシリーズの持つアクションAVGという枷から離れ
 FPSでなく3Dアクションの枠内で、新しいゲームを作り上げた。


・多数の敵に絶対的強者でないプレイヤーキャラクターが工夫で繰返しで立ち向かうゲーム。
 アイテムを集め弱点を探り解法を見つけ出して弱いのに勝つゲーム。
 遠くからライフルで狙撃するだけで良い。
 物陰から手榴弾で破壊して進んでいくゲームでも良い。
 ロケットランチャーを無限に撃ててもカタカタカタとタイプしてなぎ倒せても面白くないことを
 自覚的に解って、教えてくれるゲーム。


・『バイオハザード4』は当たり前の仕組みの中から新しい仕組みをまたひとつ見つけ出し
 アクションゲームに新しいジャンルを切り開く歴史的傑作です。