現時点RPGの究極『ファイナルファンタジー12』

kodamatsukimi2006-04-04


 公式サイト http://www.ff12.com/
 ASIN:B000EOVS08
 PlayStation mk2 http://kyoichi.mods.jp/ps2/soft_06/rpg/ff12.html


・『ファイナルファンタジー』は12個も出していつまでファイナルなのだ、
 といいますと作っている方曰く、
 「ファイナル」とは「最期」でなく「決定的」、
 すなわち「究極」という意だそうです。「究極の幻想」。
 多分後から思いつきましたよね。


・シリーズ最新作『ファイナルファンタジー12(以下FF12)』は
 大変良く出来たRPGです。現時点で究極。
 掛かった手間もお金も時間も最高であり、
 それを無駄なく活かしているという意味でも間違いなく最高の作品です。


・私の期待は、少し前に書いた文(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20060312)のように
 過剰に大きかったのですが
 それに答えた得うる作品です。10点満点中10点。40点満点なら40点。

・満点以上ではありません。かといって満点に満たない訳ではない。
 昔からあるRPGという形式で、現時点では最高究極。
 それが『FF12』です。



・クリア直後の感想メモとして2点、まとめます。

戦闘と成長の仕組み

RPGとは、主人公たちプレイヤーが操る一行が
 冒険探索探検旅して心身ともに成長するお話を味わうもの。
 成長。戦闘。勝利。努力。友情。
 最近では魅力ある女性キャラクターとの恋愛も欠かせず。
 人間ドラマなのですよ。男が成長するには女性が不可欠ですよう、
 とかはどうだか存じませんが
 作るほうとしても売れるにこしたことはございません。


・キャラクターは成長する。強くなる。
 最初の頃苦戦していた敵にあっさり勝てるようになる。これが楽しい。
 また、強い敵に様々に手段尽くして勝つ喜びと共に
 そうしたくない人は成長させて苦労なく勝つ喜びという相反するふたつを
 アクションやSTGと違い成り立たせることが出来る。

・下手でもその内クリアできる。これは嬉しいですが
 一方でそれは、成長させなければ戦いに勝てない、ゲームが上手くともクリアできない、
 という場合も作ります。嫌です。
 わかっているのに、答えが解っているのに回り道してこなければ先に進めない苦痛。
 そこが嫌。自分の工夫だけでは絶対どうにもならないところが嫌。


・そこのバランス、強くなることの幅の取り方が
 RPGの「良し悪し」のひとつとして評価されるところ。重要です。
 
・つまりです。
 成長する。時間をかければ強くなる。時間さえ掛ければ最強になる。これは良し。
 そこに到るまでの過程、強くなるにしても
 工夫することで手間を書けず強くなる方法も置いておくこと。
 強くなるための道筋はひとつでない方が、より幅広い需要に答えられる。
 より幅広いゲームである方が間口広がる。


・例えば、RPGの戦闘モードで一度に戦うパーティメンバーは何人が良いか。
 全員で戦えばいいのに集団攻撃でまとめて一掃されるのが怖いのか、
 それとも悪の魔王とはいえ集団でボコボコにするのは正義の味方として体面悪いからか
 なぜか我らが勇者御一行は数人だけ戦闘に参加して後のひとたちは後ろでみている、
 という戦闘様式が良くあります。

・1人より2人の方が良い。役割分担取りうる方法の幅が広がる。
 2人より3人、3人より4人と増えていって、では何十人と並ぶとどうか。
 『幻想水滸伝』は108人。なかなか戦闘1回に時間が掛かりそうです。

・けれど『大戦略』など、戦争SLGでは多数ユニット並べて戦うゲームもあり。
 ゴチャキャラ戦闘として一団に扱う法もあるし
 『無双』の敵は、総計で何千人とプレイヤーに襲い掛かってきます。 
 それぞれが、そのゲームジャンルに対して適当でありましょう。
 ならばどの程度がRPGの戦闘には適当か。

・例えばそれが、戦闘における強さ表し方の幅。
 10人其々が様々各ジャンル専門家で、一致協力何十倍の働きを上げるゲーム、 
 人数は5人でもそれぞれ各人を万能能力者に育てることができるゲーム。
 戦闘に参加できる人数は何人までという「枠」に対し
 これこれこういう成長のさせ方の種類があり
 それを組み合わせて、どのような強さを作り上げるか。


・これは『FF』シリーズでも『ドラクエ』でも各作品ごとに違います。バラバラです。
 つまり決定的な正解、唯一の答えはない。あってはいけない。
 重要なのは、正しいことは
 「正解」はひとつではなく、いくつかあった方が望ましいということ。
 ひとつでは駄目。またどうでも良くても良くない。
 時間をかけるか、ある程度工夫するかのどちらかで強くなり先に進めるバランス。
 その取り得る手段の幅。その匙加減が
 キャラクターが成長する、させられることが出来ることで
 唯一の正解から故意でなく外れることが殆ど全ての場合となってしまう、
 RPGの戦闘バランスです。



・『FF12』で戦闘に出せるのは3人。
 ターゲット選択されていない限りは戦闘中メンバーを自由に何度も交代出来る。
 参加していないメンバーに魔法をかけたりアイテムを使うことも可能。
 ボス敵や特定雑魚敵以外は逃亡可能。ボス敵は基本的に経験値なし。 

・成長はレベルと装備とライセンス制。
 レベルは敵を倒したときに戦っていたメンバーにのみ入る経験値により上がる。
 装備はほぼ全て店頭購入。お金は敵を倒して落とすアイテムを売ることで大部分を稼ぐ。
 装備や魔法や特殊能力を使えるようになるライセンスは
 敵を倒した時のみ、生存しているパーティメンバー全員が得られる。


・本作の成長幅の取り方は、かなり単純。わかりやすく、悪く言うと古典的。
 レベルによる体力値、装備品による攻撃防御回避値、魔法や付加能力のライセンス。
 その3つとも、じっくり時間をかければ確実に強くなる仕組みで
 逆に言えば敵を数、倒さないと強くなれない仕組み。あまり早解き向きでない。


・これは『FF』シリーズとしてはかなり珍しい。
 ごく普通に、街で情報を集め、言われた目的地へ向かい、遭遇する敵を順に倒していく、
 当たり前に遊ぶひとにとって合わせたような調整になっています。

・工夫しなくとも時間かけレベル上げ、お金稼いで装備を買い換えていく方が安定する。
 無理して先に進み強い敵倒して大量経験値と強いアイテムを拾う、という方向きでない。
 成長勾配は大きく、今いる場所の雑魚敵と互角に戦えるようになったほどで
 ひとつ前に戻ると楽に勝てる。
 広くて眺めの良いところが多い道すがらをうろうろしている内に
 自然と楽に倒せるようになり、それでボス敵にはそこそこ苦戦する程度、のバランス調整。

・一方で初期レベルクリアは可能。未装備クリアも可能。
 アイテム魔法で充分補える仕組みはある。
 そういう向き向けにも配置されているのは見て取れます。 



・感想としては、実にRPGらしい。『FF』らしくない。最近の『FF』らしくない。
 昔のRPGのようだ、です。
 入り口幅広く中も広い。かつ取る方法も充分幅あって深い。 

・良いです。
 成長勾配と全体の長さ、これは好み他の要素も絡みますが、破綻しない程度に良い。
 誰でもエンディングが見れるようにしてあり
 クリア後の世界はなく、行かなくても良いところに手ごたえある敵も配置されている。


・実に真っ当。
 以前『ドラクエ』の「王道」に対し、『FF』は変化球的「邪道」だと書いた際
 A.B.に「王道」の逆は「覇道」で、それこそ『FF』称するに相応しい、
 とご意見いただきまして、実にもっともまったくそうだと得心したのですが
 『FF12』はどうでしょう。『FF』らしくない。


・私はすっかりすれていて、それ想像するしかないのですが
 普段ゲームをあまり遊ばない、『ドラクエ』『FF』は有名だから遊んでみる、
 という方にとって、『FF』中で一番取り付きやすいように見えます。
 少なくとも私がひとに薦めるなら間違いなく『FF12』。
 そういう位置。

・次が、えーと、『FF5』、いや『6』、いや『7』。うーん『FF7AC』か。
 見ていないけれど。


見かけ表現演出手法


RPGは戦闘と成長と物語。その物語の演出周りもまこと重要でございます。
 ここで躓くゲームの多いこと。

・見た目はきれいな方が良い。
 音は耳に心地よい方が良い。
 お話は明瞭で心動かすものである方が良い。
 当たり前ですが、当たり前を世間の水準並み、目立ち抜けるにそれ以上へ仕上げるは
 当たり前に難しい。


・『FF』シリーズはこの点こそまさに優れいているところ。
 平均300万本台、1本\8,000としても200億以上の売上、というと少なく聞こえますが
 ゲームソフトは製造費安い。その分開発費にかけられるので
 70億とかけても元取れる場合も有り得るのです。
 本作何億かけたか存じませんが、『FF11』から4年、『10-2』からでも3年。
 『10』からとすると5年。時間もお金もさぞやかかっておりましょう。
 そして掛けて良い許されるブランドタイトル。唯一最上に金かかったRPG。それが『FF』。

・『FF12』もここまでやるかとばかり惜しげなく手間かけた映像流れ去っていきます。
 凄い。無駄。もったいない。地球に優しくない。エコロジー
 こんなものが\8,000で買えるとはデジタル万歳。ムービーだけで良い。映画で良い。
 とかとか。

・『FF』の優れているところ、単に金を使っているだけでないところは
 それだけのお金かけた素材をしっかりと売れる方向、
 この際個々人の好みによる「良し悪し」は置いて、良い方向に上手く使っている点。
 「王道」『ドラクエ』に対しひねったシステムがどうこうでなく
 この点とってこそ『FF』がRPGの大看板として立っている最大の理由です。



・見た目重要。その仕上がり程度重要ですが、ただきれいであるにも色々です。
 世界観。素晴らしく万能便利なことばですが、それをどのように表現しているか。

・『FF12』はオンラインRPGFF11』風の見た目戦闘システム。
 合わせて街中旅先いろいろも、そういうに合わせた形となっています。
 いうなれば完全完璧3D。リアルなるべく本物志向。

・というのは、お金をかけて究極時代の最先端を行くことこそが『FF』ですから
 そういうであるのは必然。
 と、するなら次の『FF』こそ次のRPG表現最先端であろう。
 そここそ注目。
 どのように世界観を表現するか。 
 

・街中の処理はどうなっているのだろう。
 出来るだけリアルにあろうとするほど現実に近く街は大きく
 またそこを行き来する人は増えるわけであり
 それをRPGという仕組みの上でどのように処理するか。
 情報入手手段、お話進行の手順への誘導、装備品やいろいろ彩り道具類の売買。
 移動時間。手間効率。技術制約からの手法。
 どういった方法が最上として採られているか、次世代のそれは見られるか。

・設定はどうだろう。時代はいつか。魔法文明をどのように描くか。
 倒すべき「悪」の概念をどこに置くか。宗教概念をどうするか。
 大人と子供の世界、男と女の世界、富者と貧者、強者と弱者、権力の表現はどうか。
 戦闘で戦う相手はだれか。お金の入手手段はどうするか。装備したら姿は変わるか。
 食事はするのか。所持品重量制限は。昼夜季節時間周りは。
 魔法と機械、弓と銃、チョコボ飛行艇と「テレポ」、英雄と凡人。
 脚本どおりに動かないプレイヤー操る主人公、その折り合い。

・そういった、どうでも良いようなところこそ興味。 



・『FF12』はどうだったか、というと、ここもやはり同じく。
 現時点で最上究極。PS2で出来得る限りの技術限界。
 現にあるもの。それを思いつく限りに洗練させた形。


・それがもっとも良く現れているのが、オンラインRPGのような戦闘における処理。
 敵と出会い襲い掛かってきて戦闘シーン、モードに切り替わるのでなく
 いわゆるシームレス、そのままその場で敵と戦う。
 アクション要素なく、事前事中に細かく指示設定できるオート戦闘であり
 かつ適宜各人への指示と、切り替えできる戦闘員1人の位置移動が可能な仕組み。 
 敵の次に狙う相手と手段は予告されるが
 予防手段で間に合い得るのはメンバー入れ替えのみ。

・いうなれば、シリーズ従来のアクティブタイムバトル
 順番回ってきたならばいつでも行動可能状態で待機、という仕組みを
 よりリアルな3D世界らしく置き換えたもの。
 アクション要素ないコマンド選択戦闘の表現としてまず最上。
 成長要素との兼ね合いは、成長傾斜を強くつけることで切り捨てている。
 ターンごとのコマンド選択でなく相手の後出し可能なこの仕組みを
 そのまま使い、若干幅を広げる形。基本ほぼそのまま。
 成長するために必要な雑魚敵との繰返し戦闘をストレス最小にし
 かつ、適宜適したコマンドバトルの味も残す。首尾一貫。見事。素晴らしい。


・他もそうです。
 世界を救うと諸悪の根源撃つべく宇宙まで飛んでいく従来の枠外れはなく
 程良く適度に見事。
 理想以上ではないけれども決して欠けるわけでもない。
 何につけても時間とお金を使っただけの仕事。
 無駄なく無理なく不足なく、分不相応に飛び出すこともない。
 最上究極良く出来ています。





・総じて、『FF12』は、素晴らしく良い。
 おおよそ欠点ない。値段分は買ったひと殆ど全てが楽しめる作品であり
 その数倍出してまったく後悔ない多数に答えられる作品。


・なるほど、こうしてきたのか、と思います。
 現在唯一、お金と時間を惜しみなく使うことが許される機会。
 そこでどうするのか、何を作るのか、としたとき
 作り上げられたのは『ファイナルファンタジー』最新作。

・「究極の幻想」、現時点最上のRPGであることを求められる作品において
 それを過去のどれよりも忠実に果たされたのが
 『ファイナルファンタジー12』であるのだ、と。