『三国志大戦』をまだまだ褒める

・本作は何万円払っても足りぬほど、私にとって面白いものであります。
 払ったお金分元取るため、がしがし感想書く。このサイトはそういう所なのです。


・先月末、全国大会が行われ、Web上でも期間限定ながらその様子を見ることが出来ます。
 どういうゲームであるかご存じない方もご覧あれ。必見です。

 『三国志大戦』全国大会 覇業への道 〜雄飛の刻〜 http://am.sega.jp/utop/news/hagyo_2/index.html
 感想と解説「砂上のバラック」 http://d.hatena.ne.jp/number29/20060324

・どの勝負も第一級の質ですが、「砂上のバラック」に解説されているように
 全国大会一回戦、「伏犠 vs オズマソウジ」戦は実に素晴らしい。
 終盤のそれは一流剣士同士一瞬の斬り結びを見るかのよう。
 あの動きの中から正確に計略放つ操作。有り得ない真似できない素晴らしい。

・ちなみに「セガチャン」で上位ランキング同士の対戦映像が見られます。
 見ているだけでも楽しい。毎週金曜更新。
 http://sega.jp/location/segachan2.html

リアルタイム合戦シミュレーションとしての新しさ

・以前にも書きましたけれども(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20051225
 『三国志大戦』は他に類を見ない、ながらも実に良く出来た合戦SLGです。
 既存のゲームジャンルで言えばRTSリアルタイムストラテジー)。
 けれどそのジャンルに括るは躊躇する独自形式。
 新しい、見たことがないゲーム。


・ムービーでは何をしているのか分り難いかも知れませんが、合戦SLGです。
 将棋やチェスをターン制、交互順番に駒を動かすのでなく
 開始と同時に、手が追いつく早さならば自由に
 いくつもいくらでも動かして良い、という
 リアルタイム制に変えたようなゲーム。

・それを倒せば勝敗決まる「王」にあたる駒はおらず
 相手の陣地端へ攻め込み、格闘ゲームの体力値のような敵城ゲージを削り切るが勝ち。
 時間内に削り切れなければ、より多く削った方が勝ちです。
 駒は兵数つまり体力あって、ぶつかり合い体力尽きたら自城に撤退。
 復活まで時間かかります。撤退する前に自城内に戻れば兵数回復。

・駒の強さはいろいろ。武力知力で表現されて
 武力高いほど敵とぶつかった時強い。知力高いほど計略攻撃力防御力高い。
 駒を真ん中からこっちの自陣に自由に配置。
 戦闘開始とともにぶつかり合って相手の駒体力削って撤退させ
 相手の城前に攻め込んで城ゲージを削る勝負。


・リアルタイム合戦シミュレーションゲーム。ありそうで中々ない種のゲームです。
 と、いうのはリアルタイムというところに問題あるからでしょう。
 戦場を多数の部隊が行き交う。敵に攻撃、正面だけでなく脇から隙見て攻める。
 自陣に戻って兵力回復、相手攻めてきた所を計略で返り討ち。
 最大8部隊まで駒配置できるのですが
 さてそれをリアルタイムで自由自在に操作するにはどうすれば良いのか。

・既存のアクションもSRPGも、操作するのは一度にひとつの部隊が限度。
 複数同時バラバラに動かすのは
 大体こんな感じでよろしく、と事前指示するか
 複数人で分担して操作するとか
 こういう場合はこうする、と細かく対応マニュアル決めておくとか
 もしくは余り賢く見えないコンピューター操作に任せるとか。


RTSというジャンルでは、マウスを使い
 動かす部隊を選択、その部隊の移動先を選択、を繰り返して操作します。
 SRPGのように戦場を細かくマス目に区切って指示するのと結局同じ。
 リアルタイムですから操作がより早く的確であるほど強い、という要素が
 シミュレーションゲーム要素に加えられ、アクションSLGとでも言うべきものであります。

・しかしその操作方法では、上の映像のように騎馬部隊が戦場を駆け巡る動きは出来ない。
 部隊同士が迅速激しくぶつかりある合戦SLGとしてまったく不足。
 だから今までにそういうゲームはまったくなかった。
 カード種類と方向位置を光学的に読み取る技術をアクション操作に用いることで
 『三国志大戦』はそれを始めて実現した、RTSという既存の形式にない面白さを持つ
 初めてのリアルタイム合戦SLGであるのです。  

勝つための三要素

・本作は勝敗に絡み、幾つかの要素から成っています。
 その1。優秀なカードを所持、組み合わせることが出来ること。
 その2。複数のカードを的確に操る技術のあること。
 その3。1戦全体の流れを上手く操作できること。

・これら全てを兼ね備えて相手を上回ることが勝利の条件。
 コンピューターとの対戦ならば育成していればそのうち勝てるようになる、
 というゲームにどうしてもなるのですが、対戦格闘ゲームのように
 対人対戦こそが主であるゲームでは違います。


・まず1。カード資産。
 トレーディングカードゲームのように
 1戦ごと払いだされるカードを自由に組み合わせて遊ぶことが出来る。
 使う駒を自由に選べる。

・これは大きな「引き」となる要素です。
 対戦に負けたとき、自分のせいでなく、カード種類や組み合わせが不味かったのだ、と
 思うことができ
 かつ、新しいカードが常に敗戦時貰えるわけですからこれを使えば次は勝てる、と
 常に継続意欲を促す。
 良く出来ています。


・カードは現バージョン全230種、内SR(スーパーレア)38種、R(レア)59種。
 私の所持カードから推測ですが
 SRは払い出されるカードの内1%以上5%以下、Rは10%前後の入手率でしょうか。
 公式サイトの使用カードランキング(http://www.sangokushi-taisen.com/rank_card01_main.html)から
 見て取れるように
 入手困難であるほど必ずしも優秀「使える」カードである、とは言えません。

・これは「使い方難しいが優秀」「初心者でも使いやすい」は違うものだから。
 もちろん重なる所は多いのですが
 レアでないカードでも以下2.3が上手なら勝てますし
 初心者でも優秀なカード持っていれば形が付きます。


・優秀カードを集めて有能デッキをまず組むのに、どれくらい投資が必要かというと
 \10,000分カードゲームショップで買うこと。
 それが一番安上がり。
 プレイヤーから重複などでいらないカードを買い取っているお店があるのです。
 例えばこことか。http://www.ys-j.com/game/game_shop_card_main.htm
 ・・・・・・。売って軍資金作ろうかしら。

・もとい、そんなことはありません。
 普通に遊び、順次払い出されるカードを揃えていけば充分勝てるデッキを組めます。
 あまりに操作上手いと揃わない内に勝ち上がり過ぎる、
 ということが起こり得るのかも知れませんが、私はその対極なのでなんとも。

・ただ、カードショップやトレードを利用せず、払い出されるカードだけで
 全国大会入賞者が使うデッキを、どれかひとつでも揃えようとするならば
 数万円では足りないのでは、とはそこまでかけていないひとの推測ですが。


・この仕組みは、優秀なカードを持っていないから勝てないのか
 それとも下手だから勝てないのか、初心者では判断できない。
 つまり常勝デッキというものが確立されておらず幅がある、ということ。
 カードゲームとして優れています。

・カードは育成できず収集するだけで、強さは種類と組み合わせのみによる仕組み。
 何度も遊んでもらうには育成要素強めた方が良いのですが
 一方で勝敗が遊んだ時間総数で付いてしまうのを
 操作技術の巧遅で均すのに充分な調整が必要になります。
 そこの匙加減も結果誤っていなかった、と言えましょう。


・余談、というかこの駄文自体全部予断による余談のようなものですが
 実際にカードショップで現金交換が成り立つ、ということは
 家庭用ゲームが真似できない特徴といえましょう。
 それは『カードヒーロー』や『カルドセプト』のように
 カードを題材にしたゲームに限らず
 収集要素がある全てのゲームに言えます。

・ゲームデータそのものに現金代替価値があるか。という問題。
 レアアイテムを持っているデータに価値があるか。
 有りそうな気がします。
 『ポケモン』のレアモンスターデータがあればお金を出して交換してもらう、とか
 RPGの短時間クリアデータを譲ってもらい自分の物として自慢する、とか。
 けれどそうならないのは唯、ゲームデーターを改造できるツールが
 普通にゲーム店で購入できるから。 
 
STGのスーパープレイ映像にお金を出すのは、データに現金価値があるのではない。
 いつでも自由に見ることが出来る権利を買っているのです。
 容易に複製可能なデジタルデータであるがゆえの特徴。
 データを容易に交換でき改変できない時、そのデータは市場価値を持つことがある。 

・プレイデータに自己満足以外の価値がある。面白い。
 けれど、であるがゆえにメーカーに搾取され踊らされている、とも言える。
 『遊戯王』『ムシキング』『おしゃれ魔女』。子供だましだと。
 まったくそう。
 カードを集めることに価値を持たせる方法は、どれも実に巧み見事なものです。
 そして『三国志大戦』もそう。
 騙される大人。そして自分。面白いです。



・その2。操作技術。
 操作方法はカードを盤面で動かすだけ、でありながらとても技術が必要。
 もっとも勝敗に重くつながる点です。

・けれども先の映像見ると、全国上位でありながら
 それほど難しいことをしているように見えないものもあります。
 カードを移動先に置いて指定するだけの簡単操作に見える。
 自分でも真似できるようにも見えます。

・しかし、これこそ実際に遊んで見なければ判り難いのですが
 もっとも露骨に上手い下手が明瞭になる、自分の下手振りが分る点。
 上手いひとと同じ構成のデッキで戦うと良く判ります。
 本当に2本の手で5枚程度のカードを常に無駄なく操ることは難しい。
 どうしても遊ぶカード、動かさないカードが数枚出る。相手はそこを攻めてくる。
 負ける。難しい。
 しかしこの、今までにない操作方法、いままでにない負ける理由という新しさもまた
 面白さのひとつ。



・その3。戦略性、というとあいまいですが
 リアルタイム将棋であると見ていただくと
 対戦格闘ゲームのように一瞬ごとの操作正否積み重ねでなく
 1戦全体見ての足し引きで相手を上回るか、という違いがあります。
 優れたカードでデッキを組めば、後は操作技術と読み合いだ、と
 判断するところ、そしてそれ間違いではないですが
 局地戦の勝敗に拘るだけでは勝てないことも、あるのです。

・時間経過で「士気」が溜まり、それを消費して各カード持つ計略を使えます。
 どれをどの機に使うか、で勝ち負けはまったく変わってくる。
 1戦1回だけ兵力回復や武力上昇、全員復活などの種類ある特殊効果、
 「兵法」を使えます。戦闘開始前にしか選べない。どれを選びいつ使うか。

・駒のぶつかり勝ち負けでなく
 結果最終的にどちらが相手の城ゲージを削れるかの勝負。
 相手駒を撤退させることは勝ち負けと関係ない。
 強い駒には正面切って相手せず、多数で潰したり放って置いて攻城したり。
 勝てば良いのだ勝てば。

・そして、相手も全く同じ手段が取れる。
 相手も同じ人間。同じ様にルールが許す範囲で
 出来るだけ上手くこちらを潰そうとする。
 

・カード質だけでなく、操作技術だけでなく、その手段の広がり。
 以上揃えて、このゲームの勝つ手段であり、面白さです。


上手いか下手か分りにくいゲーム

STGのスーパープレイ映像。
 その多くは頂点の境地へ到れないだろうと一目悟らされる。
 実際遊んで、その百分の一も自分が上手くないことを見せ付けられます。
 けれど『三国志大戦』は、映像みて
 自分でも同じデッキを用意すれば同じ様に戦えるのではないか、と
 見えるものがあります。
 自分も全国ランキング上位者に並べるのではないか、と。 


・このゲームのもっとも優れているのがそこです。
 自分の上手下手が判り難い。
 実際には上記1から3の総合力、全てがないと勝てないけれども
 どれかひとつはなくとも勝てるようにも見える。

・カードが揃っていないから勝てなかった。
 操作を誤ったから勝てなかった。
 全体の戦略を間違えたから勝てなかった。
 それが解った次は修正されて勝つことが出来る、と。
 次こそは勝てる。だからコインを入れ続ける。引きが素晴らしく強い。見事。


・パターンSTG、例えば『グラディウス』のノーミスクリアを見て
 それは弾幕STGほど絶望でなく、下手には見えます。
 その違いは、自機操作に要求される精密さが、分らない見えていないひとには
 見えていないから。

・速い弾を避けているほうが凄いように見える。
 撃ってくるのを見て敵弾射線上から自機をずらしているのと
 撃たれた後、弾が当らないように避けていることの区別がつかない。
 速い弾の方が避けやすくパターンにしやすい。
 低速の方が「気合避け」必要であるを見て取れない。

・パターン化は誰にでも出来る。
 けれど弾を見て避けることは知っているだけでは出来ない。
 弾が見えているのに避けられない、または弾が見えていなくて避けられない。
 いずれもなぜ自分がミスしたか明瞭。要は自分が下手であるのだと。


・対人対戦も同じです。
 対戦格闘。こちらとあちらの戦力差はできるだけ同じくなるよう調整されている。
 であれば、より多く操作を誤った方が負け。
 
・将棋も一見同じ。能力値は対等。
 その結果が勝敗にわかれるのは、どちらがが最期まで最善尽くせなかったということ。
 誰もが誤ります。どこで誤ったか明確に解る。
 けれど、それを全体として相手に負けないよう帳尻合わせたほうが勝つ、ということが
 素人にはわかり難い。

・ましてSLGや多くのRTS、そして本作では戦力差がある。
 自分の操作誤り負けたのか、戦力差で勝ったのか、
 その区別は本当には付難いのです。


・そこが独自の操作手段とカードバランスを兼ね備えた、本作の優れている点。
 トレーディングカードゲームとしての収集の魅力と
 対戦格闘ゲームで10数年前からゲームにおいても当然であるように、対人対戦の魅力。
 付随してその出来の良さ、
 デッキバリエーションバランス調整による遊び手能力差の均しによる間口の広さ。
 下手でも勘違いできる。勝てるのではないかと夢見れる。


・斬新な入力操作機構、それ自体の質高さ。その新しさだけでなく
 完成度もまた素晴らしい。
 『三国志大戦』。
 数万円つぎ込んで、メーカーに踊らされ貢いでも惜しくない
 ここ数年来無い、一番の傑作です。