対戦ゲームバランスについていろいろ


・『三国志大戦2』は現在全国大会が行われておりまして
 ネットで試合動画を見ることができます。
 三国志大戦全国大会 覇業への道 〜龍虎の咆哮〜 http://am.sega.jp/utop/news/hagyo_3/
 トーナメント方式、一度負けたら終わりの真剣勝負。
 上位者の動きは前回にも増して極まった感じであって
 わずかのミスが命取りになるさま見ているほうも胃が痛くなるほど。

・全国決勝大会出場者のデッキをみると
 まとめ攻略サイトであるWIKIhttp://www.wikihouse.com/sangokushi/)で
 定番として推されている形にこだわらないものも多数あり
 このゲームの幅を示しています。
 負けるのをとかくデッキのせいしてしまいがちなひとに反省を促すこと仕切り。
 いわゆるバランスデッキでなくとも充分勝負できる。
 とてもとても、とっっても、真似できません。



・そこで今回はこちらの記事から、これぞゲームバランスの妙、といったあたりを
 勉強してみたいと思います。
 
 「砂上のバラック」(http://d.hatena.ne.jp/number29/20061011#1160507014)より

 それはさておき、今バージョンの評判がけっこう悪いんだけど、
 正直、下方修正のしすぎが原因だろうなという感じ。
 昔は全体的に計略範囲も広くて妨害計略もどれも強かったから
 裏の選択肢もわりと豊富にできたけど、
 今は弱体化がひどすぎて、選択肢が狭まって、
 最適解を出しやすくなってしまっている。
 そのせいで元々の相性差がひっくり返りにくい。
 さらに、移動速度が速くて瞬間的なダメージ効率も高い騎馬の強さや、
 一騎討ちのウェイトの大きさもそのせいで高まってしまっている。
 今はデッキの種類が豊富だからバランスがいいと言ってる人もいるけど、
 バランスがいいと言うよりは平均化に向かっているだけという気がする。
 平均化しつつある中で、覆せない相性だけが残ってそこが大きくなってしまう状態。
 ジャンケンゲー化。
 どうしようもなくコケて評判の悪いバーチャ5と
 同じ状況に向かってしまっているのでかなり心配。

・現行の『三国志大戦ver.2.01』では『ver.2.00』からのバランス調整で
 大雑把に、強いカードは弱く、弱いカードは強くする形で修正されています。
 例としては、「反計(効果範囲内で使用された相手の計略を無効化する計略)」の
 効果範囲が過去ver.最大時の半分くらいに縮小されている、など。

・カードを複数枚組み合わせてデッキを組むところは
 トレーディングカードゲームと同じなのですが
 違う点として、それぞれのカードを機会に応じて使用するのでなく
 常に全てのカードを操作し続けることで対戦を行うこのゲームにおいて
 デッキを組む際のバランス、カード一枚あたりにかかる比重は大きくなります。
 ここで、個々のカード性能が弱められ平均化された結果、カード性能で勝つのでなく
 デッキ全体のバランスで勝つ方向に重点置かれるよう調整されているといえましょう。

・開発者はゲーム雑誌などの様々なインタビューで
 できるだけ使えないカードがないようにしたい、という趣旨の答えをしています。
 使えないカードは強くして使えるようにし、人気がある強いカードは弱くする。
 その結果の平均化が現状。らしい。
 らしい、というのは私が下手であるゆえに
 カード性能を充分出し切るよう操作する段階でつまづいているので
 その境地に達しえていないからなのですけれども。

・確かに使えないカードは減っている。
 強すぎるカードもできるだけないようにされている。
 現行の『ver.2.01』はそれがかなり上手く働いているように見える。
 平均化されているので色々なカードの組み合わせ、様々なデッキ構成それぞれで
 それなりに勝てるため、あいかわらず負けたのをデッキ構築のせいにするために
 日替わりでカードを使い変えているひとからすれば、そういうように見えるのです。

・しかしそうではなく
 「平均化しつつある中で、覆せない相性だけが残ってそこが大きくなってしまう状態」
 「ジャンケンゲー化」という見方もある。
 正しい良いゲームバランスとはどこにあるか。 




・対戦ゲームといって、記憶の太古から例をあげれば『マリオブラザーズ』であります。
 スーパーでないほう。『スーパーマリオアドバンス』におまけで入っているやつ。
 他に『バルーンファイト』。『SDガンダムガチャポンガシャポン戦記』。
 ゲームボーイの『テトリス』。
 そこから一気に『スト2』からの対戦格闘へと飛ぶ感じ。
 こうしてみると『SDガンダム』は革新性といい出来の良さといい
 凄いゲームであることです。

・ジャンル分類からみても、『ストリートファイター2』で初めて
 対人対戦ゲームがその遊び方だけ単体で商品として成り立ち
 広がり、深みをみせていったようにみえる。
 『スト2』では同じ画面の中でしか戦えない点、それまでと変わらないけれども
 テレビモニタとゲーム機本体を2台用意できれば
 違う画面で戦うことは技術的に最初からできた。
 それが現実的にできるようになったのはオンライン通信、Wifi通信からですか。
 機械の画面表示能力もあって、対戦ゲームのつくりは技術向上と無縁でないです。

・同じコース、同じステージの違いの位置情報だけでなく
 衝突した場合の影響を不満なく反映させるのは物理的に不可能のようだけれど
 満足できる程度にはつくれる。
 だからこそ仕組みとしてFPSRTSこそがそれに相応しい。
 あとは入力装置の問題。高速正確精密なアクション操作を実現できる操作装置。
 また『戦場の絆』(http://www.gundam-kizuna.jp/)の
 ドームスクリーンほどであれば、ひとへの入力情報にも新しいものがあるかもしれない。


・他のジャンル、アクション以外で、テレビゲームにおいて対人対戦は
 『いたスト』『マジックアカデミー』『麻雀格闘倶楽部』など
 非電源ゲームをゲーム化したものしか成り立たない。
 これはテレビゲームの他にない特性は対象を操作できるということに対して
 実にそのまま。ゲームとは何か問題。

SLGは時間がかかりすぎる。単純化した囲碁将棋でもあれだけかかるのだから。
 その意味で『アヴァロンの鍵』やアーケード『アクエリアンエイジ』は注目。
 STGで対人対戦がアクションと違い成り立たないのは
 対人対戦できるSTGSTGと呼ばれないから、STGに見えないから。
 RPGで対戦。『ポケモン』や『ドラゴンクエストモンスターズ』。
 すなわちターン制カードバトル。MTGのテレビゲーム化。
 集めた育てた結果の確認でありその過程が楽しさであるRPG
 目標であるけれどおまけでもある。 



・『スト2』から対人対戦ゲームが様々に作られて以降約15年、
 ゲームバランスが常にそれがどうあるべきかは
 そのゲームを初めて遊ぶひとが面白さを感じてくれるまで投げ出させず、
 かつある程度の期間は商品として価値を保ってくれるための難しさの調整と同じく
 工夫されてきています。
 なぜなら、対等なバランス、工夫しだいでどのような条件でも勝てる前提こそ
 『スト2』が確立した対人対戦ゲーム最大の価値であるから。

・このゲームの面白さは、次に相手が出す技を予想し、それに勝つ手を出す、
 高速ジャンケンあっちむいてほい、であると比喩できます。
 技ごとの勝ち負けは明確に決まっている。そのかわり個々のデッキ、いや
 個々の操作キャラクターには必ず相手の出すどの手にも勝つ手が用意されている、
 というジャンケン的平均化によるバランス取り。

・キャラクターの見た目を変えているだけではない。
 技の長所短所を強めた個性化。幾つかの技を組み合わせたセット化。
 体力ゲージ以外に溜められるゲージを用意する形。
 移動範囲、軸を増やす空間を広げる。
 取れる手段をとにかく増やす。
 そうして拡張し、外郭の尖ったところを削り取るようにして作られたのが
 現在の対戦格闘ゲーム
 技術的に見た目あまり変化が付けられない時は
 調整を細かくつけ過ぎて自縄自縛に陥る繰返し。そうして一進一退。


・『三国志大戦』のバランス調整は
 デッキの組み合わせ、すなわち操作するキャラクターの持つ技リストの組み合わせを
 自分で変更できるトレーディングカードゲーム方式。
 対戦格闘のように相手がどんな手段をとっても必ず勝てる組み合わせは持ちきれない。  
 デッキの組み合わせで圧倒的不利が生じる場合もあるけれど
 そのデッキ同士がかならずどのデッキにも勝てるデッキはない、という仕組みです。

・さらに細かく見れば、万能に強いカードはなく
 ある種にはとても強いが、別の相手には一方的に弱いという
 ジャンケンにおける3すくみをカードごと
 対戦格闘の技ごとに持たせている、ともいえます。
 そしてその3すくみ自体が弱められるよう、「平均化」するように調整されている。
 強いカードに対し、それに対抗できる強いカードを用意する、のではなく
 強いカードに対し、その弱点を突く種のカードを用意する、のでもなく
 強いカードを、強くなくして弱いカードを強くした調整。


・これが正しい調整であるのか、その結果は良いゲームバランスを実現しているのか。
 自分でデッキを組むトレーディングカードゲームであり
 アクションゲームでもあるこのゲームにとって
 どういう形のバランスが正しいか。

・極端に言えば、デッキの構築と操作の巧遅、その両方が必要であるけれど
 現状のバランス調整はその両方が上手であるほど強い、といえます。
 定番デッキ、バランスデッキ、強いといわれているデッキを
 上手いひとが使うと強い。
 そうではない、下手なひとが思いつかない使いこなせないようなデッキでも
 上手いひとが使うと強い。
 「選択肢が狭まって、最適解を出しやすくなってしまってい」て
 「元々の相性差がひっくり返りにくい」ので、上手い方が強いバランス調整だ。
 技術と経験と運のバランス。運ではひっくり返せないことが多い。



・それでそれは正しいのか、というのは
 遊ぶひとの出来るだけ多くが長く何度も遊んでくれるバランスが
 良いバランスと定義するならば
 上手いひとほど強いというのは、とても良いとはいえないが間違ってもいない。


・対人対戦ゲームのバランス調整が難度調整のそれと同じく
 結論がひとつではない、決まった解法がないのは
 対人であるゆえに定式化できないから。
 特定個人ならそれに合わせれば良い。
 計算機ならその処理速度処理方式に合わせれば良い。
 しかしできるだけ多くの不特定多数をできるだけ満足させることに
 唯一の答えはない。


・傍目八目。
 傍からは良くみえるのは、ひとは平均的に、短時間では最善を尽くせないから。
 相手よりも多く考えたものが勝つ。
 ひとつの決まったルール下にある対人対戦ゲームとは、微視的には単純化されて
 たったそれだけのことである、のだけれども。