『GOD OF WAR II 終焉への序曲』

kodamatsukimi2007-11-02


 公式 http://www.capcom.co.jp/gow2/ ASIN:B000UL11V6

・国内発売はカプコンですが製作はSCEA、ソニーコンピュータエンタテイメントアメリカ。
 なるほどアメリカン。そういうそとみ。
 中身は他にこのごろあまり無い、1人用専用のアクションゲーム。
 いつのまにやらオンライン対戦が当たり前であるような中で残った
 昔懐かしむ向き向けの、アクションゲームでございます。


・同じくPS2で発売された前作。無名のところから突然で出てきてしかし
 随分良い出来で驚きでした。斬新であるとかは特にないけれど
 過去の作品を踏まえて、出来る限りの当たり前をしっかりそろえている。
 前作の感想を書いたとき(http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20051123
 何か妙にけちをつける形になっておりましたけれども
 良い出来であること、それだけはやはり繰り返しておきましょう。
 

・その続編。今回も特に目新しいところはない。どこまでも1人用アクションゲーム。
 しかし勘違いはよろしくない。
 PS2でこれ、というアクションゲームならば『ゴッドオブウォー』。
 定番の名作。AVGでいえば『逆転裁判』、RPGなら『ドラクエ』のようなそれである。
 

・ただPS2だからなのではなかろうか。
 新しいとは言えないゲームがこれからもあるのだろうか。
 何年かに一度、昔良く遊んだゲームを今のきれいな画面や携帯ゲーム機の上で
 作り変えたものをまた遊ぶのだろうか。

・ゲームはこれまでの作品を踏まえて、常に前より良くなり続けてきている、
 と思っています。
 一方で、昔懐かしのゲームもある。『ゴッドオブウォー』は、昔遊んだゲーム、
 今のところ、その見た目だけを変えたそれでしかないと思う。
 そういうものなのか、それで良いのか、それで終わりなのだろうか。
 しかしまだまだゲームは、良くなり続けるはずなのだ。
 



・このゲームは、武器を振り回して敵をなぎ倒しながら奥へ進み
 時々先へ進むため迷宮の仕掛けを解除したりし
 最期に待っているボス敵を倒せば勝利、というわかりやすいアクションゲームです。
 血しぶきどばどば舞って、お子様の教育によろしくなさげでございますけれども、
 ああいう見かけだから気にならないだけであって
 かのマリオ御大も、相手を足で踏みつけ潰したり
 消し炭になるまで焼き尽くしたりしてるのだからたいして変わらぬ。
 その種ある中、大きな特徴は、武器を振り回してでかい敵を倒すこと。
 これでございます。


・主に用いるのは、ハンマー投げのハンマーを巨大化したようなしろもの。
 ヨーヨーとか独眼鉄とか『アルゴスの戦士』に似ていますけれども少し違う。
 手斧みたいなものに鎖鎌よろしく鎖がついていて、それを腕に巻きつけ振り回す。
 こちらの主人公でなければ作用反作用、自分の腕が飛んでいく代物。 
 や、そういえばそもそも、ハンマー投げのハンマーはどういう形のものだったかしら。


・敵を倒そうと戦うゲームで、用いる獲物に良くあるものというと、素手と剣と銃です。
 接近戦用と遠距離用。敵との間合いが重要なのです。

・対戦格闘といえば素手、武器使ってよくてもでも素手。美学。
 絵を見て、素手の手足で打ったり蹴ったり極めたりするのは
 誰にもすぐ出来るので、余計に説明することなくわかってもらいやすい。
 ゆえに、見た目が地味になってしまっても現実的なので、解ってもらえる。
 それが利点。間合いの取り合いを演出で潰さずゲームにそのまま活かせるところ、
 それが素手という武器を使って良いところですが
 その間合いがあまり遠くないのは難しいところ。
 高速で動いたり何メートルもジャンプできる高機動で補ったりもするのですが
 やはり、同じ様な背いたけのもの同士でないとどうも噛合わない。
 そういうところがあります。ひとの手足は短いものよ。


・剣の場合。日本刀でのちゃんちゃんばらばらとか槍とか棒も同じ手合い。
 見た目が素手より格好良い、というのは各人好み主観次第ではありますが
 素手の打つ蹴る砕くに対して、ぐさーとかずばーとかできる分、
 画面の外からみている分には派手で結構。自分に向けられるのでなく鑑賞するなら
 やはり武器を振り回すのは良い、のはマンガや時代劇でもおわかりかと思われます。

・しかし剣とかは、普通に思えば鉄の板棒だから重いわけで
 時代劇は峰打ちゆえ安心致して見ることけれども、そうでなければ
 カミソリで紙を切るようにすぱっとなるものなのかしら、
 と疑問なわけですが、それはそこ。
 素手と違い、どんな感じか本当のところ知らないからこそ、というのであるのです。

・ゲームとして見た場合、素手より遠くは切れますけれど
 しかしやはり一対一用の武器なのではなかろうか。
 斬るである。『真・三国無双』などを見るまでもなく
 いちいち1人ずつ振りかぶって斬りおろしてを多人数相手にするのは
 素人目にも無理なのではないかと。峰打ちでないらしいし。
 ライトセーバーのようにどんどん貫通して、見た目刃長さよりさらに遠くを
 すばーっと切断するようでないと苦しくないか。とか思うわけです。


・銃。これもコスモガンがゲーム世界では一般に実用化されているらしく
 射程距離は画面端から端までかそれ以上、空気抵抗とかの小難しい干渉は受けず
 何より弾薬の、まあそれに限らないですが、場所をとらないというミラクル兵器。
 戦闘飛行機にもこの便利極まりない兵装はもちろん装備されているのですが
 弾速や殺傷能力には、かなり問題ありそうなものも多い気がいたします。
 弓矢も同類で、実物はへっぴり腰剣士より細腕でも余程か高威力なのに
 いくら当てても中々倒れてくれません。あと史実にのっとり有名人物は無効化します。

・この武器の利点は、届く距離に関しては悩まなくて良いところ。
 撃ち出せば自動でまっすぐ飛んでいき、見てからかわされたり撃ち落されない限り
 確実に命中いたします。ここが現実と一番違うところだ。
 素手や剣よりとてもあてやすい。というのがゲームでの場合、見た目わかりやすい。
 ゆえに当てられたとき、避けたり防いだり出来ないともいえるわけで、これは欠点。

・この、近くまでしか届かない長く伸びる手というような近接武器、剣とかと違い
 遠くに届くことに説明がいらないという特性はしかし
 ゲームとして表現すると、見せ方によってはなぜか同じものになったりします。
 ガンコントローラーで銃を撃つのと、リモコンコントローラーで剣を振るのと。
 その奥とこちら側は立体でも、その境は今のところどこまで行っても平面ゆえに。


・近く用と遠く用。現実にあるのを良いように表現しているゲーム内の武器、
 その一番重要な役目は強さの理由です。
 遊ぶひとは非力である。それを投影するゲームの中のひとも、敵に比べると弱い。
 その差を埋めるべくあるのが、選ばれた力、神の恩寵、奇跡の賜物、世界の選択、
 超能力とか、いくらでも何でも切れる武器、どこまでもいつまでも打てる武器。



・この『ゴッドオブウォー』は、自分が凄く強い。
 その心地よさを充分に味わえるゲーム。
 そしてそれがアクションゲームとして最大の求心力です。
 
・どんな方法にせよお亡くなりになっても生き返るのがゲームの当然であるなかで
 強さ、を表現するにはどうすれば良いか。
 ひとりで何千人もなぎ倒す。遠くから気付かれず一方的に狙撃する。
 隣でも回線越しにでも、実際の存在しているひとを相手にする。
 いろいろ方法はありますが、このゲームでは
 自身の何十倍もあるでかい相手を
 手に持った斧を振り回す武器によって打ち砕くことで、それを表現しています。

・その武器は、剣や鞭より遠く速い。槍突きと違い振り回して防ぎにも良し連打も良し。
 近くでも遠くでも同じ様な程度の切断打撃を相手に与えることに説得力があり
 対ひとりの間合いを見切る戦いにも、対複数をまとめてなぎ払うにも良い
 間合いが振り回す本体より適度に大きく、敵に対しては適度に短い。
 人間対人間では広すぎるけれど、人間対人外大との戦いに好適の間合いを持った、
 持っているよう画面上見えることに説得力がある武器。
 
・そしてそれを振り回す中心軸のキャラクターも、戦いの神に相応しく動き
 強いということを、そうある存在であることを、納得させてくれる。
 それがこのゲームのもっとも優れているところです。
 どんな敵をなぎ倒すゲームのそれより強い。そう見える。そこが素晴らしい。
 強い自分を操れる。そこが楽しい。



・敵との間合いが必ず見やすくなるよう作られたステージとカメラ位置。
 動きから動きにあるつなぎ動作に極力硬直がないことによる操作反応の体感短さ。
 いまどきボタンを、リズムにも乗らずただ連打させる、というこちら側の熱さ。
 爽快。見た目痛そうで非人道容赦なくぼこぼこぼろぼろである主人公が
 いくら眉間に縦皺寄っていようとも楽しそうにしかみえなくなってきます。


・進行上の謎解きアドベンチャーステージである場合、
 全景をカメラでまわって最期に出口見せて戻る『ゼルダ』演出は笑いどころですが
 詰まりがない、ステージ切り替えてギミックを初期配置にリセットする、
 というのがないため、
 高いところから落とせるブロックは落とせるなら躊躇なく落として正解。
 スイッチは迷わず押して正解、というこちらもまっすぐ過ぎて眩しい文法は
 『メトロイド』とかで、もしかすると進めないのはバグなのではなかろうか、
 いや任天堂に失策はない、という迷いとは別の境地で素晴らしい。


・これは前作も思ったのですが、狙ってのわざとなのか天然なのか、
 『インディペンデンスデイ』なのか『スターシップトゥルーパーズ』なのか。
 どちらにせよ、浮かび上がる楽しさに言葉の壁のこちら側では違いない。
 気持ち良く返り血を浴び、倒しても殺せない同士でいつまでも殺しあうゲームは
 ただそれを操っていて楽しいから、良く出来ているから、というだけで
 とても面白い。そういえる内容を持つゲームです。





・前作を引き継いで今作は、主として量的増加が変化となっております。
 枠組みはほとんどそのまま。そのなかにどれくらいのものを入れられるか。

・中盤のメリハリとしてのボス敵もいろいろでてきまして
 ヘルメス戦のバレットタイム演出など、ありがちだけれどやはりなかなか楽しい。
 高難度モードでの雑魚敵いやらしさも素晴らしい。
 間合いを見切ること。敵の動作を見切ること。
 さける。当てる。それをきちんと突き詰められる。
 アクションゲームとしてまったく一流です。


・不満点を挙げるならば、あまり前作と変わっていないこと。
 ほとんど出来上がっていたから変えようがなかったのであり
 続編である。同じものを使って良く、だからそれで出来ることをいろいろ試す、
 という作りであるのはわかるのだけれど
 もう少し変えても欲しかった。

・またいろいろ詰め込むことに、あまり躊躇が少なすぎるかもしれない。
 昔のような、1回遊んでその度エンディングを見れる完結感、
 満足感を繰り返すゲームはもはや求められていないから
 操作できることを使ってアクションアドベンチャーの方式で
 舞台と人物とを見せようという部分も入れて割り増すことも必要なのだけれども
 全体の流れを常に意識させる部分も大切ではないか。
 常にゴールがどこか見えていることはやはり必要だと思う。



・オンラインで誰かと競うことだけがゲームではない。
 自分が主人公であることが保障された世界で遊ぶことは
 その前提となるゲームであることがまず表現するものだ。
 武器を振り回せば、敵がどんなに上手く、いや強くとも倒せる。勝てる。
 それは与えられた楽しさであるけれど、それで良い悪いを言うものではない。
 ゲームの仕組みで遊ぶこと、ゲームの上で、ゲームで遊ぶことだけでなく
 ゲームの中で、遊ぶためにある仕組みを遊ぶこともまたゲームの楽しさである。
 

・『ゴッドオブウォー』はPS2で生まれ
 『2』がその終焉を飾ることになりました。
 それは目新しいゲームではない。
 PS2で出来る限り良く作られた昔からある1人用のアクションゲーム。
 そして今後どうなるのか。いろいろ思い浮かべてはみるものの
 素人一個人が想像するより広く深く大きく遠くまで
 それは変わっていくものである。