『メタルギアソリッド ポータブルオプス』

kodamatsukimi2007-12-17


 公式サイト http://www.konami.jp/gs/game/mpo/index.html ASIN:B000VVLC4Q


・『メタルギア』シリーズは、実のところごく単純なアクションゲームなのである。
 とにかく先へ先へ、奥へ奥へと進んで最期のボス敵を倒すとステージクリア。
 はい次の面。
 ファミコンのころあったような、
 お話というのは説明書とステージ間デモシーンのみで説明されるたぐいの
 そういうゲームであるのだ。
 

・アクションゲームとして、面白いゲームである。
 銃をがんがん撃って敵をかたっぱしから倒して進むのではなく
 敵と自機の強さがあまり変わらないので、できるだけかくれつつ姑息に影から倒す。
 忍者とか暗殺者ゲーム、『天誅』とか『アサシンクリード』とかとは違う。
 倒せるなら正面から倒して良いのである。倒すのが目的なのはボス敵だけである。
 さけても良いから先に進むのを優先するゲームなのだ。
 ボス敵だけは倒さなければならない、という点では
 『マリオ』とかと違って中途半端なところである。


・しかしあまりそういうゲームに見えない。
 見た目もそうだし、作っているひとの見せ方もそうで
 何がしたいのかさっぱりわからん。というと違うけれども
 アクションゲームである部分と、作り手が見せたい部分が先に行くほど離れすぎて
 新作が出るほどアクションゲームではなく
 見せたいお話を体験する手段にアクションが使われているRPGになっているのが
 この『メタルギア』シリーズなのである。今のところは。



・この『METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS』は、本編のアクションゲーム部分だけ、
 取り出したような作りであります。
 1ステージクリアするごとシステム画面に戻り、次にどのステージを選ぶか選択可能。
 セーブも可能。同じステージを選ぶことも可能で
 つまり目的は、最終ステージを最短でクリアすることではない。

・出てくる敵兵士は、ボス敵を除いて
 全て気絶させてスタート地点まで引っ張ってくることで仲間にでき
 自分で操作することもできる。
 1ステージ中の、全ての敵を引っ張ってきてしまうことすらできて
 そうすると全然潜入ゲームではない。変なゲームである。良いゲームです。


・ひとつずつのマップはあまり広くない。ゆえに迷ったり覚えたりする必要がなくて
 敵の位置だけ確認してどのように出し抜いて奥に進むか、だけを判断すればよく
 そしてまたできることも一言で言うと
 後ろから忍び寄って気絶させて物陰に運び込む、
 だけであるから難しいことはない。
 機を見て正面突破も可能だけれども、それでは面白くない。
 そもそも、見えない敵はみえないから、どれだけどこにいるかわからないので
 それが可能であるかどうかがわかりづらいのです。
 欠点ではなく、見える範囲だけの敵を相手にすれば良いゲームとして作られていて
 その範囲でシリーズの例にもれず、さすがの良い作りであります。



・そういうアクションゲームとしての作り良さを見るにつけて
 それを活かせていない部分が実に邪魔であり、無駄に見えます。
 『スプリンターセル』シリーズのようなところ。
 フラグを押さえなければクリアできない、アドベンチャーゲームのようなところ。
 つまり、アクションゲームなのに、クリアできるようになっているところです。

・潜入し易いように、建物や遮蔽物が用意されていて、実用使える武器が落ちている。
 敵兵士のみなさんは、個々の実力は低くはないのに決められた集団行動しかできない。
 自分のように自由に動けない。必ず潜入できるようにしか動かない。
 隠れているのが見つかって、怒涛の如く迫り繰られたら確実に負ける筈。
 何しろ相手の弾薬数、敵であるうちでは無限なのである。
 敵の弾は必ず頭には当たらないようになってはいるものの
 前からも後ろからも撃ちまくられたら負けない筈はない筈なのだ。
 けれどもそうは行かないりくつ。


・それなのにアクションゲームである。
 ゲームとは実に理不尽である。現実と違う。
 現実のようにしたらゲームとして面白くない。
 どんなに自機を強くしても、弱い敵を賢くするだけでクリアできなくなるし
 それはゲームの中だけではなく、現実ではなお、そうなのである。
 だから上手く操作することを条件にして、クリアできるかどうかがゲームになるのに。

・見た目はそれっぽくできる。それっぽくとは何か。
 ゲームとして見分けがつきやすい記号化、とは逆方向。
 記号的でなく、自由にそれが解釈できること。
 記号が、人間に可能なほどではなくとも、より広い範囲に着地できるほうが優れている。
 記号着地範囲が的確であるほど質の良い技術であり
 けれどそれは、ゲームのわかりやすさとは同じものではない。
 だからこそ、選ぶ必要がないようにする必要があるのだ。



・『メタルギア』シリーズは遊べば遊ぶほど凄いゲームだと思います。
 高品質。とにかくどんな面でも良く出来ている。
 隠れて進むアクションゲームとしても、
 独特の奇をてらった話を進めるアドベンチャーゲームとしても、
 戦場を簡潔、魅力的に見せるシミュレーションゲームとしても、
 そこで活躍できるロールプレイングゲームとしても。


・しかし『メタルギア』はアクションゲームである。
 けれど他の要素が必要ないのに出来すぎなのだ。それでいて中途半端。
 4つに分割して、話だけを楽しめるもの、世界観を操れるようにしたもの、
 潜入ゲームだけにしたもの、そしてそれらをほどほどに楽しめるものに分けて欲しい。


・そういうのを作りたいのではなく、今までにないものを作りたいのだと思う。
 今はやはり出来損ないである。
 部分だけ取り出して、その素晴らしさを堪能するほど良くわかる。
 けれどいずれは、全てを統合して、今の概念にないRPGとして
 『メタルギア』は形作られるのだろうか。
 そうだとすれば見てみたいし、そうでないとしても
 このシリーズから見える未来から目を離すわけには行かないのである。