『GAME LEVEL1』の感想とか

kodamatsukimi2008-10-22



・今回はひさしぶりにゲーム本の話などをしてみたい意向であります。

・『ペルソナ4 公式設定画集』(ISBN:4757745087)を買ったのですが
 設定資料集ではなく画集であることに買ってから気付きました。
 しっかりそう書いてありますとも。お金持ちですね自分よ。
 まあそれはそれで良いとして、ということは、また別に設定資料集も出るわけか。
 いろいろ関連本集めたらゲームソフト本体より高いですな。
 いつものこととはいえ何か違う気が。ゲームがそれだけ安いということかしら。


・ところで、同じアトラス製『世界樹の迷宮 公式設定資料集』(ISBN:475774305X)は
 名前「資料集」であるのに、中身は絵しか載っていない。
 一方で今週次回作が出る、長い題名
 「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団 超公式ふぁんぶっく」(ISBN:4757728476)、
 こちらは絵素材がほとんどなくて、端から端までぎちっちり字。
 『ペルソナ倶楽部』のように、イラスト募集して掲載しているわけでもなく
 どこが「ふぁんぶっく」なのかさっぱりわかりません。

・同メーカー、同じ大丈夫なファミ通の攻略本だよ、であるのにずいぶん違うものです。
 『世界樹』資料集は、以前書きました『グリムグリモア』本のように
 2作分まとめても、出すに出せる細かい設定そのものが
 そもそもあんまりないんだろうなと思ってみたり。
 他にはそれこそ攻略本に載っているようなデータとか
 薄いイベント脚本くらいしかないとみた。お金かかってなさそうだ。
 それでもスタッフインタビューとかが欲しかったところではありますが。

・逆に『ライドウ』本は、それこそ次回作を控えて
 使いまわす用データは出すにも出せなかったのでありましょう。
 此の期に及んでPS2で出すとは思わなかったのですが
 作る方にしてみればひとつのゲーム機で1作品は余りに無体。
 すくなくとも2回は使わないとという気も、わからないでもないところです。
 でもスタッフインタビューは欲しいぞ。
 ゲーム内容ではなくて、どうしてこのような設定にしたかについてを
 根掘り葉掘りお聞きするのがゲームするひとの楽しみ。


・話戻って『ペルソナ4』画集。
 ゲーム発売からまだ3か月くらいなので、ネタばれ解禁ではないらしく
 その辺り中途半端さがなんだかなではありますが
 デザイナー副島成記さんによる各キャラクターの造形ポイント、
 黒眼の大きさや髪の毛の量などで性格を表現する、というような
 絵としての仕上がりではなく、キャラクターデザインそのものに
 焦点を当てたお話は、なかなか興味深いところであります。

・ところで個別の感想で書いたように、『ペルソナ4』より『3』の方が好きなのですが
 そうすると、キャラクターや舞台に対する思い入れも違ってくるわけです。
 同じデザインでも受ける印象が違ってくる。
 デザインが先か、それで表現されたものが先か。
 対戦格闘ゲームにおいて、操作キャラクター選択画面で見ることができる「絵」と
 「操作対象」としてある画面上キャラクターの
 どちらが主体なのか、本体なのか、どちらが影か。というようなところですな。
 マンガの登場人物とか映画の俳優とはまた違う、ゲームならではの違いであります。




・本題。いまのところ隔月刊行新ゲーム雑誌『GAME LEVEL1』について。
 公式サイト http://www.gameside.jp/lv1/index.htm
 中古ゲーム専門誌として始まった『ユーズドゲームズ』、が『ユーゲー』になり
 現在『ゲームサイド』になっているのですが、その増刊です。
 『ゲームサイド』も隔月刊なので『レベル1』と交互に毎月出す体制なんであります。
 現在都合4冊目なのですが、何か売れ行き悪そうでやや心配なり。


・『ゲームサイド』が『ファミ通』などのゲーム雑誌と異なる点は
 その刊行サイクルだけではなく、取り上げるゲームの選択範囲にあります。
 ふつう取り上げるのは、まだ発売されていない作品と
 発売されたばかりの新作が主なのでありますが
 こちら『ゲームサイド』では、注目作のシリーズ過去作品をまとめて紹介したり
 取り上げたジャンル毎の、過去に知られた名作などををさかのぼって取り上げたりと
 新作ラベル賞味期限が切れ、埋もれてしまった良いゲームへ再度光をあてる、
 という役割を果たしているのが特徴。

・記事を作る方も、最新記事を横並びに追いかければ良いわけではなく
 そうとうゲームに詳しくなければならない。大変です。
 何より、読者と同様以上にそのゲームを遊んでいる必要がある。
 記事作成にかかる時間がすごいことになりそうです。
 定番名作を新規ユーザーに紹介し、古いひとたちは過去を懐かしみつつ、
 見逃されていた作品を、今だからこその視点で再評価するという内容は
 ゲーム好きのための読み物として楽しく読める雑誌、
 と高く評価している次第であります。


・さて、その増刊として準備号を2冊出し『GAME LEVEL1』として2冊だした現在ですが
 こちらは対してどのような中身かと手にとってみますと
 まず、でかくて重い。

・準備号は『ゲームサイド』と同じの大きさ、
 普通の攻略本と同じサイズで、文庫本2冊分大ほどでしたが
 こちらはA4サイズ。さらにその約2倍、文庫本4冊分弱の面積です。
 設定資料集で使われるサイズよりさらに大きく本棚に入りません。
 紙も上質なものを使っているからか、持つと重い。
 とてもペラペラとめくって好きなところを流し読む、というわけにはいかず
 机上に置いて、隅から隅へ見渡して、一枚ずつめくっていくような感じが必要。

・お値段は\860と割に高めな『ゲームサイド』より、さらにお高い\950。
 フルでないものの大方カラー印刷で画面写真も大きめを多用しており
 目で見て楽しみ、文章をじっくり読んでほしい、という意図がうかがえるつくりです。
 他のゲーム雑誌とは、あえて大きさから読み方を制限して
 差別化していく方向なのでありましょう。


・都合3冊目、ですがvol.1に当たる巻頭特集は『メタルギアソリッド4』42ページ特集。
 同時期店頭に、まったく同じ絵素材の『メタルギア』本が並んでおりまして
 せっかくの新雑誌が埋没すること頻り。まあこれはコナミが悪いよなコナミが。
 ライター水野隆志さんがおひとりで、製作者小島監督インタビューを含め
 この特集記事全部を書いておられます。よくもこれだけ。
 内容は、ゲームの進めかた、すなわち攻略記事とか
 ストーリーやキャラクターの紹介記事ではなく
 『メタルギア4』というゲームの何が面白いのか、について書かれております。

・そこで取り上げている題材について、シリーズの歴史について、
 登場するキャラクターをもとに、どのように『メタルギア』シリーズが作られてきた、
 ゲームとして表現されてきたかについて。
 映画の紹介記事、シリーズ最新作を観る遊ぶにあたってのガイドブック、
 という作りといえば近いかもしれません。


・以下、この『メタルギア』特集記事より引用。

 ゲームの面白さを伝えるための方法はさまざまあるだろう。
 だが、成功したかどうかを図る基準はひとつしかない。
 記事を読んだ人がゲームをやりたくなるか否かだ。
 
 すでに買った人ならまたプレイしたくなり、まだ買っていない人は買いたくなり、
 そこまで関心のない人でも、なるほど好きなヤツが何でハマるかわかった、と感じる。
 そうなればいい。そうすれば本特集の目的は果たされる。

 上引用の通り、この記事の意図は
 他のゲーム雑誌の新作紹介とはまた違った方法で、ゲームの魅力を紹介しよう、
 というところにあると思われます。
 またひいては、これが『GAME LEVEL1』全体の目指すところでもあるのでしょう。

・そして本誌が『ゲームサイド』と違うところは
 まだ発売されていないもの、発売されたばかりの新作を
 主に取り上げているところ。
 特に、発売されていない作品をこれは良い、と紹介するのは
 もちろんライターのかたはある程度メーカー協力のもと遊んだのち書いているにせよ
 『ユーズドゲームズ』以来これまでの方法からすれば、なかなかに冒険です。
 他誌と同じことをすることになってみて
 では『ゲームサイド』のように『LEVEL1』も差別化できるのだろうか。
 そこが注目すべきところ。であるのであります。



・そういうことで、一通り目を通した感想ですが
 士郎正宗大先生はイラスト描きなどいくらでもいる後進にゆずって
 さっさとマンガを描くべきだ。だいたいたのむ方もたのむほうだぞ任天堂。とか
 廣岡政樹さん(http://backfire.jp/)の絵がつく以上は
 『悪魔城』『幻想水滸伝』共に絵買いせざるをえない。コナミだけど。とか
 そういうどうでも良いことを省きますと
 やはり重いし読みにくいので体裁を準備号のものに戻すか
 せめてもう一回り小さくしてほしい。
 『ゲームサイド』以上に取り上げるゲームの基準が良く分からない。
 そして、ひとつのゲームあたりの紹介文分量が少なすぎて
 果たして面白そうなのか判断に困る。
 つまりまだ雑誌の選定を全然信用できない、というような所が挙がります。


・ところでです。
 なぜゲーム雑誌はふつう新作情報ばかりで
 すでに発売されたゲームを評価し、紹介する記事が少ないのだろうか。
 それはそういう記事に需要がないからだと思われます。
 雑誌で見かけなかったのに大きな売上を残した、というようなゲームはほとんどない。
 遊ぶひとたちが発売前から注目していたから売れるのであり
 注目されていたことは、雑誌で取り上げる分量とどちらが先か不可分です。

・新規作品が発売前から評判をとり、雑誌に取り上げてもらうにはどうすれば良いのか。
 というのは作っているひとたちが悩むことなのでわきに除けて
 本当に自分が遊んで面白いと思えるゲームは、どう探したら良いのか。
 多くのひとが面白いと言っているゲームは、面白いことが多いです。
 けれど自分の好みに常に合うとも限らない。
 そのゲームを探し当てるきっかけというのは
 見た目が気に入ったから、題材が好きだから、シリーズの前作が良かったから、
 そういう話をどこかで誰かに聞いたから。
 雑誌の紹介記事をみて何か面白そうだと思ったから。

・そのゲームが自分にとって面白いかは
 遊んでみなければ、試してみなければ結局のところわからない。
 その、試してみようと興味を持たせるところまで紹介記事があと押ししてくれれば
 その記事を信頼して、その雑誌を次に用いるようになる。
 同じ制作会社のシリーズ作品だからといって中のひとが同じとは限らない、
 ゲームと同じです。


・「ペルソナ4 公式設定画集」の副島成記さんのインタビュー記事に
 次のような話があります。

 いや、本当のところを言いますと、みなさんの『P4』の評価というのも、
 まだ定まっていないのではないかと思います。
 (中略)
 人の評価に正解も不正解もないのですが、まだ感情的な評価だろうと。
 
 でももう少し経った頃、実際に出るかどうかはわかりませんが、
 たとえば『P5』が出た頃……『P4』が思い出になった頃にようやく、
 本当の評価が決まるのではないかと思います。


・『ユーズドゲームズ』そして『ゲームサイド』は
 このゲームが面白いと評価、批評をしたわけではなく
 既にこれが面白いと定まったものを紹介してきたからこそ
 過去作品を扱いながら、読者が求める記事と成り得た。
 ゲーム雑誌が普通、新作ゲームしか扱わないのは
 それが面白いかどうかは、雑誌が決めることではないという正しさに則っている。

・そのゲームが面白いかどうか。
 それは他人の責ではなくて、自分で決められること、自分で決めることなのです。
 単純当たり前ですが、だからこそ、それから逸れずにいることは難しい。