『A列車で行こうDS』

kodamatsukimi2009-06-23


 公式サイト http://www.artdink.co.jp/japanese/title/ads/index.html ASIN:B001TH8EGA

・このシリーズを遊ぶのはPC版『4』以来であり、やはり十数年ぶりである。
 十数年もへて当時、30万円くらいしたPCでカクカクだったゲームが
 いまやお手元の携帯ゲーム機でお手軽みやすく速く快適に。
 アートディンクすごいとうより技術の進歩すごい。

・それともあまり凄くないのだろうか。
 こういうゲームは、つくりようでどうとでも遊び心地が変わる。
 実際、本作を遊んでみて
 十数年かけてようやくの充実した導入の操作説明や整理されたしくみに感心しながら
 変わってのいなさにも、驚きつつ思うところであり。

・シリーズ3作目『A列車で行こう3』と、みため遊び心地とも変わっていないというのは
 変える所がないほど、
 斜め見下ろしの美しい街並景色であるとか
 鉄道を活かした都市経営SLGとしての出来がすでに良かったということなのであり
 変えられたのは
 何かを付け加えるということでなく、
 当時の技術段階でも可能であった操作作法の改良に尽きる、ということは
 今回良い出来と感心しただけに、当時の駄目さと今の変わっていなさに落胆の次第。

・とはいえ、今遊んでも楽しめる良いSLGではあります。
 ちまちまちまちまと手を入れて育成する我が庭眺める楽しさ。
 鉄道敷いて資材運んで、街に血液を通わせ発展していくのを眺める。
 ゲームとして代わりばえはしないけれども、楽しい。




・『A列車』シリーズが『シムシティ』とか等に異なるのは
 鉄道やバストラックによる運輸により、ひとと資材が移動可能である範囲のみで
 街が発展していくというところにあります。

・本シリーズの資材はドラえもんのポケットへ入庫許可されそうな万能材料であり
 あらゆる建物はもちろん、田畑までこの資材がないと作られないすごいなかみ。
 これをどうやってか工場で制作したり採掘したり、隣町から鉄道や船で運んできて
 こちらはなぜか、資材がなくとも作れる鉄道軌と道路を敷き、駅や停留所を置く。
 そこに輸送車両や運送トラックを走らせると
 駅停留所から一定の範囲内に資材を積み下ろしできる。
 資材は置かれた周囲一定の範囲内で利用できる。

・旅客は資材と違ってまったく目に見えないのですが
 同じように、駅や停留所を利用して、その範囲内かつ資材を利用できる範囲内に
 住居やお店や勤務先や学校や田畑をかってに作って生活をはじめ
 時間がたつと資材を消費しつつ街は少しずつ発展していく。


・資材を用意し、鉄道や道路でひとを移動させなければ発展しない。
 これは都市育成SLG、シミュレーションでなく、ゲームであるとこからくる制約です。
 資材がなく、線路を敷いてひとを循環させなくとも
 そこに街を設計して置いて、時間の経過により自然と発展していく様を眺めて楽しむ、
 というゲームにもできます。
 例えば日本のプロ野球でそれができるのが『ベストプレープロ野球』。
 最近では「任天堂の犬」というゲームも出ております。

・がしかし、パーツをお店で買ってこなくても作れるけれど手では触れないジオラマ
 『シムシティ』をつくったひとは作りたかったのでなく
 一定の条件になるよう操作工夫することで、想定通りに画面内の結果を導く、
 というゲームの楽しさを、ジオラマに組み合わせて
 自在に発展させていくこともできるという、都市を育成するゲームにしたのが
 SLGの面白さなのです。
 制約があるから面白い。条件を満たすため手段を工夫する余地で遊ぶのが楽しいのだ。


・『A列車で行こう』も、そこをきちんと踏まえているところがゲームとして良い。
 このシリーズでは基本的に、建物は自分でも好きな場所へ建てられますが
 田畑は指定時指定位置に置きたいようできず
 さらに目に美しい自然の木々にある緑は
 街の発展とともに伐り倒して更地にし、使い塗り潰していくことしかできない。
 どんなものも、まったくに過去のかたちへと戻らず戻れないように
 街も発展していくことしかない。

・都市を広く大きく高く高価な状態へ育成するゲームとしては簡単です。
 資材とひとを運輸する路は、一度作ればいつまでもある。
 数字の上で経過し拡大はしても、ひとも物も老いず、ゆえに成長もしない時間の中で
 永遠に正しく美しく機構は回り続ける。
 わずかな擾乱も、それよりは高くしかし有限範囲内の都市へ飲み込まれる。
 構築は最初の一瞬、確認はただ数日、あとは1年放置しても、正しくそれは稼働する。


・しかしそれでは、このゲームを十分に遊んでいないのです。
 制約の半分しか楽しんでいないのです。
 このゲームは、見た目の美しさに自己満足できるかが、ゲームとしての面白さなのだ。
 初期配置されている自然の木々、桜木の路、水辺の景色、社の杜。
 そういったものを活かしたままに
 かつ、ゲームとしての条件である街の発展をいかに成し遂げて
 そして、自身が満足できるだけ美しいと思える街を育て上げられるかどうか。
 それを成すゲームなのであります。

・技術の発展により、電車やバスの車窓、また自由な視点で
 条件付けをし育成した街を、斜め上視点からだけでなく
 立体的な構築物として見て回れるようになりました。
 そこからみても、美しくあるように。
 美しさとは何か。
 それはゲーム内で規定されている条件ではない。カラオケのように採点してくれない。
 ゆえに自由にこだわることができる。

・『A列車で行こう』は都市育成SLGであります。
 勝利条件は、出来あがった都市の見た目に自分が満足できるかどうか。
 まだ出来あがっていないのであれば、それまで育て続けられるゲームである。
 そこが良いところです。




・資材管理範囲表示が地下含めてわかりづらい、
 株式購入、車両開発などが充分活かされていない、
 何より変わらず、ゲームとして攻略幅の狭いところが本作の欠点。
 これらは技術の発展進捗を待つことで、ゲームの中と違っていずれ解決するのでなく
 ゲームの中でなければ待っていても解決しない
 工夫で解決する問題であるので
 今回の丁寧な導入のつくりを延線延長して、是非次に接続していただきたいところ。


アートディンクは昔からあまり信用していないのであります。
 『A列車』もたまたま『3』が受け入れられたけれども
 なぜ良かったと思われているのかが
 他のゲームをみるにわかっていないのではないかと思わずにいられない。
 せっかく素材の着想はとても面白くなりそうなものなのに
 後に続けて活かせていない。

・あるいはSLGというものは、そういうものであるのかもしれない。
 想像にはゲームが勝てないかもしれない。
 しかしだからゆえに、面白くなりえ、遊ぶ余地があると思うのです。