BLADESTORM 百年戦争

ブレイドストーム 百年戦争 PLAYSTATION 3 the Best ブレイドストーム 百年戦争(通常版) - Xbox360 


最新作『三国志12』がご覧のありさまな出来ばえらしいですが
私も純真な頃は買っていたパワーアップキット商法含めて
いろいろ叩かれていてもなんだかんだあなどれないゲームを出している、
そんな感じがコーエーというブランドに対する印象です。
『国盗り頭脳バトル 信長の野望』は良いゲームでした。
今回は遊んだ『ブレイドストーム』は
「無双」シリーズの「百年戦争」版、なのですが
遊んでみるとみるべきところあって、変奏が上手い。良作。


百年戦争」といっても世界史は忘却のかなたで簡単に復習しますと
時は日本で言う室町時代始めから応仁の乱の前くらい、
つまり楠木正成千早城の戦いから戦国時代の100年くらい前まで。
イギリスならぬイングランドとフランスが
その名の通り百年くらい戦争していた、
魔法はない中世ヨーロッパの終わりごろ、
すなわちルネサンスとか宗教革命とか大航海時代のひとつまえごろのお話。
軍事的に言うと鉄砲はまだで大砲がそろそろ。長弓大活躍。
人物名では、とても有名なジャンヌ・ダルクさんでおなじみ。
彼女のおかげでゲーム素材になりえるというありがたい存在。
ジャンヌさんがフランス代表ならば、イングランド代表はエドワード黒太子。
知名度は落ちますが、黒がイメージカラーの有能なプリンスという存在は
「中二」的に、軍団の先頭で鎧着て旗振る乙女ほどではないにせよ重要。
ロマサガ1」のナイトハルトとかがもろにそれです。


百年戦争を扱うところはさすがであり長弓であり
「乙女が重装鎧騎士」という絵だけの作品より好感持てるのですが
というかコーエーさんも三国と戦国ばかり作っていないで
ランペルール」「青き狼」みたいなのも出して欲しいですが、
本作品おおまかには、しょせん変わりばえしない無双シリーズの亜流です。
北斗無双」とか「ガンダム無双」とか「トロイ無双」とか
そういうあれらのひとつと思い、実際そうなのですが
それでいままで私、手を出していなかったのです。
こちらの記事(http://d.hatena.ne.jp/ABA/20071231)を見て
ほほうと思って目をつけていながら4年半も放置。
できれば実績解除したいので360版の廉価版を待っていたけれど
いっこうに出ないので他に遊ぶものが特にないので仕方なく買った今回。
もっと早いところ遊んでおくべきだった。




みためは「無双」の背景を中世フランスに描き変えたもの。
地形縮尺は都合上お察しですが、市街にある建物とかは
足止めてしげしげと観光したくなる程度に良く出来ていてなかなか。
当時の状況反映して、主人公はどちらかの国の一軍を率いる武将ではなく
お金次第、というか1戦闘ごとに、どちらの国にもつく、
数十人の部隊率いる傭兵隊長
鷹の団みたいな。部下に名前はなく使い捨てなのですが。
今日フランスあしたイングランドと寝返りの日々。
でも傭兵はそういうものらしい。
当時のイングランドとフランス王家は親戚で
内戦ではないけれど、現在の国と国との対外戦争ともまた違うものらしい。
島国日本の心情根ざした常套句で言うなら「欧州事情は複雑怪奇」。


兵種はおおきく歩兵、騎兵、弓兵にわかれておりまして
騎兵は足を止めて乱戦せずに敵群に突撃通過、というか「轢き逃げ」して、
すかさず離脱を繰り返す、戦国三国無双の馬と同じような感じですが
弓はちょっと独特。
ボタン連打のいわゆる通常攻撃がなく、敵から離れたところで射撃。
一発撃ったらすかさず散会離脱して距離をとってからまた射撃。
敵が味方と乱戦中なら足止めてそこへ連打。
味方にはもちろんなぜか当たらない。
この卑怯さ具合がとてもよろしい。


この弓兵が三国戦国と違うところは
主人公の傭兵隊長が、他の兵士よりそれなりに強くはありますが
それなりに強いだけ。大人数に囲まれぼこられると無双できない。
そこで部下と一緒に協調して戦うのが必須であるところ。
結局は1人で戦っている「無双」と違い、
部下の残数が、残体力値というだけでなく、攻撃防御力に直結するのです。
だから弓兵が活きてくる。
ひとりの傑出した武人が敵軍を万夫不当になぎ倒すゲームも面白いですが
仲間と一緒に、といって全体のひとつとしてでなく
何十人程度の部下と一緒に、戦場自在と駆け回るというのも面白い。
遮二無二突っ込んでなんとかするのでなく
部下を有効に活躍して上手くごまかすのが楽しいゲーム。


地形凹凸に引っかかる頭わるい部下たちを率いるのは面倒そうですが
操作は部隊まとめてひとつ。
主人公を動かすと部下も同じように動いてくれて
みかけはともかく数値上の戦力としては働いてくれます。
リアルタイムストラテジーのような面倒な操作はなく
がんがん敵をなぎ倒す爽快感はありつつ
ちゃんと一部隊長の働きが全体戦局を変えることもできて
戦争シミュレーションとして塩梅とてもよろしい。


歩兵騎兵弓兵に分かれていますが、それぞれにもまた様々な兵種があって
騎兵の突撃に強い歩兵、弓に弱い騎兵と単純でない。
率いる部下集団は単一兵種なのですが
同じイングランドかフランスの味方勢力傭兵軍であれば
戦闘中でも随時率いる集団を変更できるので
敵兵種団に合わせて、こまめに当てる兵種を切り替えるのが基本にして奥義。
そのためコンピュータ操作する味方軍団と
足並み揃えて進軍しなければならないのではありますが
そのあたりのままならなさ匙加減も
手持ち資金使って直属部下を緊急召喚できる仕組などもあって、
面倒さを上手く工夫して最後の勝利につなげる折り合いがついています。
大局の勝敗はともかく、目下戦場で自身の命を救うのは金なのだ。
新谷かおる『砂の薔薇』のデビジョンAみたいな感じである。




オンラインを用いての対人対戦でなく、1人用だからこその戦争ゲーム。
戦場に多数ちらばる軍団を、それぞれがオンラインでひとが操作していたら
爽快感を生み出すのが難しい。
部隊同士の激突は、操作の上手い下手ではなく、
兵種相性と兵士数で決まります。
とはいえSRPGのように1部隊対1部隊がぶつかって戦うのではなく
複数の兵種からなる軍団同士が非ターン制で激突するから単純ではない。
主人公傭兵隊長はその乱戦下、適宜敵にあたる部隊切り替え奮戦するのですが
全体戦力差が大きすぎる場合はいかんともしがたかったりする。
会戦開始時の部隊配置で勝敗はある程度決しており
そしてそれはオンラインで多くの部隊をひとが操っても変わらないのです。
主人公だけが、計算機の規定指示に沿わない行動ができるからこそ
戦場にあって他の兵士と変わらない「武力」でありながら、活躍できる。


戦争シミュレーションゲームは、
全軍を予算内でどの程度どの順にどの戦場へ配置するかの「大戦略」から、
戦場を俯瞰し敵軍情報からどのように部下集団を操るかの「タクティクス」、
そして戦場の一兵士として、できることは誰とも変わらない能力でありながら
セーブとリセットを駆使しての未来既知と「指さばき」の違いで戦うもの、
いろいろありますが
この『ブレイドストーム』は
一兵士ながら段違いの武力で戦場の色を単騎塗り替える、
アクション型のはなただしいでなくはなはだしい強調でなく変種である、
「無双」と同じような骨格のゲームながら
主人公の「強さ」表現方法を、上手く載せ変えているゲームです。
操作自体は無双と変わらない。
他の戦争シミュレーションのように兵種差兵士数差が武将指揮力より重要で
遊ぶ方がある程度柔軟に、率いる部隊を変えられるようにしただけ。
それでまったく違う面白さがある。そこが面白い。


全軍団に随時指揮が出せるのでなく
見える範囲をどうこうするしかない、という制限も
きちんと割り切られていて良いです。
敵群に突っ込んで技連打から一気呵成に殲滅したり
弓をぴちぴちあてて逃げるのゲリラ活動で戦局を動かしたりと
対人戦でないゆえの、ゆるい単純な作業の楽しさも
しっかりしていて良い感じ。
「無双」は戦争シミュレーションでなく、
敵味方に有利不利のない対人対戦アクションゲームともまた違い、
有名武将、「英雄」となって戦場でただひとり大活躍する1人用ゲーム。
本作も、それほど大げさではないけれど
操るキャラクタ自体はそれほど強いわけではないのに
やはり見える範囲内では常に誰よりも大活躍でき、
それが戦場無名の無敵兵士でなく、
ある程度戦争全体に影響する立場の存在である。
戦場アクション、戦争シミュレーションなどの分類の
既存にない上手いところを突いた、そういう表現がとても面白い。


手を出すのが少々かなり遅かったですが
知らないで終わることなくて良かった作品です。