太閤立志伝5

コーエーテクモ the Best 太閤立志伝V - PSP


『新・やる夫の関が原戦線異常アリ』(http://yaruo.wikia.com/wiki/新・やる夫の関が原戦線異常アリ)を読んで
ときは今、私は戦国時代脳。


戦国大戦』は『三国志大戦』の値段倍が難。安くなったら本気出す。
戦国無双』は今のところの最新作「3」を遊んでしまったし
信長の野望』も同様。
ということで目をつけたのがこの9月にPSP版の廉価版が丁度良くでた
太閤立志伝』シリーズ最新作の「5」。
前作「4」を遊んだのは随分前だし、これは期待できそうである。


移植元「5」PC版の発売されたのが
8年半前の2004年3月である事実には目をつぶる。
あーあーきこえない。





このシリーズは1992年に発売された1作目も遊んだことあるのですが
最初からわりと良く出来たゲームでした。
題名通り、日本一の出世頭「太閤」豊臣秀吉の立身出世物語を
とてもうまく表現しております。


上司から2ヶ月に一度、戦国時代ゲームでお馴染みの命令を受けます。
「新田開発」「兵糧売却」「破壊工作」「徴兵練兵」とかとか。
これらはたいてい20日くらいしか実行するのにかからない。
のこり40日くらいは修行して能力技能高めたり
各国を周ってお金稼いだり交友関係深めたりと
わりと自由に行動できる。
上司の戦国大名は自身の領土拡張全国制覇にいそしんでおりまして
それに積極協力して社内で身分高めれば
地方支社の支社長にしてもらうこともできる。
自身子飼いの部下をそろえて社長に反乱独立したりもできる。


ここまでちゃんと一作目から揃っています。
ウイニングポスト』なども最初から良く出来ていましたが
こういうところコーエー作品は馬鹿に出来ないあなどれない。
現代で企業戦士を主人公にして「じこけーはつ」して
「テッペン取ったる」みたいな男性用人生ゲームの社会出世編部分を
上手いこと戦国時代舞台で既に出来合いの『信長の野望』を材料に
そして「太閤秀吉」という実在で陽性のキャラクタを主題に据えて
工夫次第での容易な成功体験が楽しいゲームに仕上げております。
良く出来ている。
以前以降の様々な欠点や失敗作をみるに
偶然たまたまのような気もしますが
良い点や成功作がまったくないより遥か素晴らしいことである。


また、別の表現をするなら、『太閤立志伝』は
今で言う「オープンワールドRPG」、
『グランドセフトオート』とか『エルダースクロール』シリーズなどの
その戦国時代版でもある。
見た目とか情報量とかはともかく、ゲームの仕組みは同じもの。
歴史小説NHK大河ドラマ、『信長の野望』のようなゲーム等、
それらによってクトゥルフ神話なんぞ目でない規模でつくりあげられた
「日本の戦国時代もの」というシェアードワールド
魅力的な登場人物による物語を載せた設定舞台の上で遊べるRPG
1992年で既に、当時の「テレビゲームでのRPG」という枠から自由に
違う意味で「RPG」らしいゲームとして出来上がっていたと言えます。


ドラクエ』も『太閤立志伝』もRPGである、というと
どちらが「本来のRPG」なのか、みたいな感じですが
「ロールプレイ」の意味合いからし
マンチキンとかの4分類とか「キャラクターロールプレイ」とかで
本場発祥TRPGのそれと日本製TRPGでのそれが別物であるように、
ウィザードリィ』も『ウルティマ』も『ローグ』も
みなそれぞれ別にRPGということで良いのでないか。
いろいろあるほうが良いではないか。
面白いゲームならなんでも良いのである。
良いものはたくさんあるほうが結構である。


オープンワールドRPG」も「オンラインRPG」も結構だけれど
ドラクエ調の和風RPG」だって面白いものは面白いのはご存知の通り。
ドラクエみたいな」がRPGだと思っていたら
「オンラインRPG」がすごい、
オフラインでも「オープンワールドRPG」がすごい、と
いろいろ新しく面白いものが発見されて
RPGとはなんだったのか、と思われることが
より新しい区切りでゲームを見ていくことにつながると良いことです。




で、1作目からわりと出来上がっていた『太閤立志伝』ですが
その後の追加要素としては
操作する主人公として「豊臣秀吉」以外も
選べるようになったところが挙げられます。
「5」ではほぼ全員主人公として遊べます。
最初から「織田信長」「伊達政宗」とかの組織所持者で始めて
信長の野望』のような国取り戦記ものとしても遊べるし
忍者とか海賊とか商人とか新規作成武将とかでも遊べます。
どの立場の主人公を選んでも、ゲームとしての仕組みは同じで、
組織に属して命令をこなしながら王佐の才を気取っても良いし
藤堂高虎のごとく己が実力頼みに様々な人物の下を渡り歩いても良し。
剣豪や医者など職の業を極めても専用の展開があったりする。
上泉信綱先生強過ぎ。


欠点もたくさんあります。
どの主人公を選んでも職種が同じなら効率良い方法は同じだし
「国取りSLG」としてなら『信長の野望』のほうが当然楽しい。
野戦合戦意味不明。戦争ゲームとしてまったく面白くない。
担当勢力なしで天から眺めているだけで楽しい『信長の野望 天道』の
戦国シミュレーションな箱庭世界感は無い。
操作主人公が戦国時代で望みのまま大活躍できるのが楽しいゲーム。
そして戦国時代でだからこそ楽しいのである。
架空舞台で同じことをしてもおそらくたぶんさっぱりである。


ゲームとしては単調。戦国時代に興味がなければ面白がれない。
戦国大名家経営SLGとしては劣るし
選んだ操作主人公によっては
物語を喚起する展開の起伏も、その埋伏要因も用意されていない、
出来損ないのRPGである。


けれど、架空の人物でなく、戦国を生きた実在の様々な立場の人物を、
主人公として選んで遊べるというのは
ドラクエのような」RPGでは実現できない
オープンワールドRPG」において、魅力ある仕組みです。
「オンラインRPG」でなくオフライン1人用RPGであるけれど、
膨大な設定と既存物語の集積がある舞台設定下でこそ味わえる
二次創作を体感するようなRPGの楽しさ、とでもいうようなものがある。
筋書き通りに世界を救うのでなく、
救わないのでも、どちらも自由なのでもなく、
この世界に在る登場人物が織り成す膨大な物語を既知であり
そこへ介入したり見守ったり演じたりして世界に物語を付け加える。


あなたは名声を求めて集まってきた様々な冒険者たちのひとりではなく
後世の現在にこのような存在と名を残す人物である。
既に名の有る人物で演じて遊べる、というのは
海の向こう製RPGと和製RPGの性格のちがい、
「ロールプレイ」の「役割を演ずる」ということの最初の意味合いと、
キャラクタの存在、行動や掛け合いを寸劇として想像できるほど
「設定」して遊ぶ違い、
そういう遊び方の差異である。


太閤立志伝』はそういう意味で
とてもせんしんてきな思想で未来を行ったすごいゲームだったなのだ、
というようなことは多分なく
意識して「和風オープンワールドRPG的なもの」を目指さず
日本でゲームの遊ばれ方に沿って
戦国時代を題材にゲームを作ってみた先の必然に
そういうものへと出来上がったのでありましょう。
面白いことです。


登場人物のおおかた誰でもを主人公にできること、
そうできることで味わえる楽しさ、面白さというのは
このような意味ある凄いことなのである、
ということではなく
そんなふうにも見ると
ゲームも新しく目に見えてすごくなくとも、またすごいものでも、
なかなか色々様々に、おもむきぶかくおもしろいものであることよ。
こちらがこうだから凄くて偉い、のではなく
その違いの在ることに価値があるのです。