『BORDER BREAK』

kodamatsukimi2009-10-14


 公式サイト http://borderbreak.com/
 攻略Wiki http://www12.atwiki.jp/borderbreak/

・アーケードすなわちゲームセンターで遊べるオンライン対戦ゲーム。
 「領域突破」、つまり既存のゲームとは違うんだよ的意味合いと思われる作品名ですが
 中身はわりと良くあるロボット操作アクションゲーム。

・すこし前にながなか書いた通りオンラインの協力型ゲームは苦手です。
 そしてロボット操作も、銃を撃つのにもさほどときめきあまり感じない。
 なのでこのジャンルについては良くご存じないのですが、
 アーケードでも既に、今の不況下では有り得ないドームスクリーンの『戦場の絆』や
 ロボでないけど『カウンターストライクネオ』『ハーフライフ2サバイバー』とあり
 360やPCで海の向こうを眺めればこの手、いくらでもあるものと思われます。


・そんな中登場した本作『ボーダーブレイク』は
 やはり既存のそれらに比べて、それほど目新しい要素があるわけではないのですが
 中々に取捨選択バランス良いつくりであります。
 ブレイクというほどではないけれど、それなりに目を引く内容と評価しよう。

・先月稼働開始したばかりで対人対戦ゲームとしてはまだこれから次第ですが
 とりあえず現時点、360で銃を撃つゲームを買う金額の倍くらいは
 遊んでみた感想をひとつ。




・本作の特徴はまず、料金システムにあります。
 先払いの時間制。
 先にお金を払っておいて、払ってある時間分だけ遊べる仕組み。

・お値段は1コイン、つまり\100で260GP。GPすなわちゲームポイント。
 1回最大\500で1300GP、クレジットボーナス設定されているお店なら1550GP。
 このポイントをゲーム開始時ごとに購入します。
 GPは対戦中、1秒1ポイントとして消費されます。
 1戦最大600秒。つまり10分。\500で2戦と少々、20分と少し。
 そしてGPが残っている限り、何度撃破され撤退しても復帰できる。
 勝負が決してもGPが残っていれば、すぐに次の戦いへ挑めます。


・細かく言うと、選べるモードは全国対戦、1人用練習、カスタマイズとありまして
 GP消費はこれらのいずれでも同じく1秒1ポイント。
 カスタマイズモードは、自機の装備アイテム購入や装備、
 操作キャラクターのみかけ変更などを行います。
 ちなみに装備品購入にはGPを取られます。リアルマネー。
 そして購入に迷っている間も、変更している間もGP減ります。せかされます。
 自機のペイントやキャラクターの外観変更パーツなどは
 いまのところ時間経過入手のみのようですが、
 変更するにはやはり100GP取られます。あ、こ、ぎ。

・もちろん対戦前後のモード選択や結果表示などではGP消費しないし
 全国対戦でも人数が半数に満たなければ模擬戦扱いとなり
 GP消費が2秒1ポイントになります。
 おお是非これを全戦、とはいわないまでも
 始めてすぐくらいは適用して欲しいところですが
 これは後述の初心者でない初心者のひと対策上致し方なしか。 

・またGPはゲーム中いつでも追加購入可、なのですが
 可動開始して間もない現在、お客を回転させるためか
 大概店側が設定で不可にしている模様。
 これは良いとしても、クレジットボーナスも大概のお店で付けていない。さ、す、が。


・細かいところはぶいて結論をまとめますと
 \500で必ず20分強程度遊べます。勝っても負けても上手くとも下手でも関係なく。
 試合前後のもろもろ含めて、\500で25分、\2,000で1時間半強くらい。

・でこれは、高いことで既に定評ある『三国志大戦』と、実は同じくらいです。
 装備揃え代分、お金が対戦すること以外でかからない『大戦』よりもある意味高い。
 戦績を記録する1枚\300で100回使えるカードは
 細かくいうと『ボーダーブレイク』の方がお安い仕組みなのですが
 あるからには買いたくなる装備を揃えるという当然を含めて通して見るなら
 やはり『ボーダーブレイク』の方が高くなる。
 ただ始めやすさでいうと逆になります。


・『大戦』の場合、1戦ごとにお金を徴収する仕組み。
 1戦目\300、2戦目\200。2連勝したときのみ3戦目\100。
 勝率5割で1戦\240弱くらいの計算ですが、1戦の長さが常に同じではない点が違う。
 1戦は100カウントで1カウント2.4秒、フルカウントで240秒すなわち4分ですが、
 対戦格闘と同じく必殺技などのエフェクト時などにカウントが止まったりするので
 実際はおおよそ1戦8分、500秒弱くらいになります。
 途中で勝負が決まる場合を含めても、平均6分よりは確実に長い。
 2戦目以降は連続でコインをいれないとボーナスがつかないので普通当然続けて遊び
 これを1セットとし勝率5割で2.5戦、同じく対戦前後のもろもろ加えても
 やはり\500弱で長くとも30分はかからない計算。


・要するに両者は同じ時間遊ぶなら、同じくらいお金がかかるのです。
 ただ『大戦』の場合は勝率5割、同じくらいの強さと戦う場合の平均であって、
 大差で負けると1戦8分が半分の4分で終わり、それが続くと遊べる時間が少なくなる。
 つまり、『大戦』は勝つほど得し、負けるほど損する仕組み。
 そこが両者の違いです。

・『ボーダーブレイク』は最初から最後まで、全員が平均的に同じだけ遊べます。
 上手いひとにとっては勝ってもタイムボーナスなどがつかないため
 嬉しい仕組みではないものの
 ゲームを遊ぶひとで、常に5割を大きく超えていられるのは全体の少数ですから
 多数にとっては嬉しい。
 何より新しく始めるひとにとって優しい。



・『三国志大戦』に限らず、対人対戦ゲームの全ては
 経験を積んだ遊び手に初心者が勝つのは難しい。
 これは当然仕方がないことなのですが、アクションゲームの場合は問題が大きい。
 なぜなら、例えばRPGと違い、上級者が初心者になりすますのが容易だからです。


・多くの対人対戦ゲームは多くの競技者が楽しめるよう、実力に合わせて級を分けます。
 将棋でも競馬でもアーケードでもオンラインゲームでも対戦するならそうなる。
 この級分けは、明らかに実力があっても最初は一番下から始まって順次上がる仕組み。
 もちろん圧倒的な勝率を残すようなら一気に昇格できるようにもなっていますが
 しかし多くの対戦ゲームが、多くのひと、つまり勝率が5割を大きく超えないひとに、
 長く遊んでもらうよう作られているので
 そこには、長く遊ぶほどより多く蓄積されていく要素、というものがある。
 そしてそれが勝敗に関わる要素になっています。

・しかしアクションゲームとは、ゲーム内データでなく操作技術で勝敗が決まるもの。
 そうであるべきものなのです。
 知識と経験が圧倒的であるけれどそれを十分に操れないものが、勝ててはいけない。
 勝つのは常に操作が上手い方でなければならない。

・けれどそうであれば、既にそのゲームを操作することに習熟しているものに
 初心者はその差を埋める技術か経験を積むまで、勝つことは許されない。
 ゆえに、中級者、勝率5割を大きく超えられないが、大きく下回るほどでもないという
 そのゲームを遊ぶなかの多くのひとが、初心者に負けることは少ない。
 だから、初心者狩りがアクションゲームでは特に問題となるのです。


・これは対人対戦アクションゲームの全て、
 1人用でないアクションゲームというジャンル自体が逃れ得ない仕組み。
 カードで部隊を操作するゲームも、銃を撃つロボを操るゲームも同じです。
 初心者だけが大きく損をし、だから新しく始めるひとが長く遊ばれるほど少なくなり、
 中級者という大多数が皆等しく一番下になり、
 そして誰もいなくる。 
 2度と遊ばないゲームはいずれ2度と遊べなくなる。

・5割を大きく超えられない多くのひとは、負の螺旋に巻き込まれないために、
 未だ差が大きくない新しいゲームにより早く飛びこみ
 差がつきつつある古くなりつつあるゲームをより早く捨て
 誰より早く次のゲームに飛び付く。
 とはいえそれで、ゲームは回っているのかもしれません。


・話を戻すと、だから『ボーダーブレイク』の時間制が良い、とは言えません。
 初心者が皆と同じだけ遊ぶにはより多く費用がかかる、という仕組みの改善だけれど
 勝負の結果が変わるわけではない。
 そして勝利することでより良い結果が得られない。
 何より家庭用ゲーム機では、同じだけの費用を払えば同じだけ皆遊べるのは当然です。

・しかしアーケードの1人用でないアクションゲームにとって
 1回遊ぶごとでなく、普通の、つまり多くのひとが、
 ゲームセンターに一度きて遊ぶ時間単位ごとにお金をとる仕組みを、
 ゲーム単位で導入したことは新しい。
 そして試しに、これから、ここから遊ぼうとするひとにとって
 これは優しい仕組みです。





・ゲーム中身のほうに行きますと、先に書いた通り
 10対10でチームを組んでの協力型、ロボ操作して銃撃つ対人対戦ゲーム、
 という良くあるもの。

・視点はいわゆるTPS。自機の背後からみる形で狙撃の時のみ主観視点になるもの。
 操作は左スティックが移動とジャンプとダッシュとしゃがみ。
 右スティックことマウスが銃の照準と射撃と武器切り替えとリロードと
 いわゆるZ注目である、一体の敵に照準固定する近距離ロック。
 これらはいずれも360やPS3のコントローラへ容易に置き換えられます。

・またタッチパネルで出撃位置を指定したり購入アイテムを選択したり
 定文選択でのチャットを行うようになっています。
 戦闘中は弾避けと弾当てに忙しいのでチャットをする余裕はほとんどないのですが
 それも合わせて、ボイスチャットが苦手なひとにはありがたい。
 苦手でないひとにはありがたくない。 
 もとへ、総じて家庭用ゲーム機にいますぐ移植可能な操作の仕組みといえましょう。


・アクションとしてはロボなので、装備によって性能が変わるものの
 基本は地上での前後左右ダッシュで射線を避け、ジャンプで目先を変え
 敵との距離に合わせて武器を使い分け
 多数の敵に囲まれないよう素早く立ち回りつつ目の前の敵一体の撃破を狙う感じ。
 ダッシュジャンプの回数制限と高さ移動量、攻撃手段の種類や移動速度、
 といった動き回りで出来ることの制限や、カスタマイズの仕組みからも
 同じセガの『バーチャロン』より『アーマードコア』に近い風。

・自機カスタマイズは、稼働して間もないからゆえからかはまだ判断しかねますが
 どのパーツも一長一短あるもので
 機動力上げると防御力が下がり、弾数増えると威力が下がる。
 いまのところ初期装備パーツでも十分に戦える仕様。
 今後様々なパーツか追加されるのは確実なので
 将来360やPS3に、その次かもしれませんが、移植された時、
 『アーマードコア』には敵わなくとも劣化とは言われないよう頑張っていただきたい。



・遊んでみた感触としては、
 撃破され撤退しても、復帰時間はかかるものの余計にお金はかからないところを活かし
 相手を撃破しやすく撃破されやすい。テンポの速い展開です。
 また撤退すると兵装を変えられるので、戻ってきたら活躍の場所も役割変わって
 同じチームでも時間内に誰が誰だか把握するのは困難。
 自分の面倒見るので精一杯。

・特に面白いのは、撤退のデメリットが少なく回復手段が限られるので
 捨て身の特攻が生きて帰還するより活きることが多いこと。
 基本命は使い捨て。使い捨てて初めて兵装交換もできる。
 命短し刹那主義。前のめりなゲームです。


・兵装とは操るロボットの機体種類で
 今のところ、機動力型、重火力型、狙撃型、支援型の4つ。
 防具や銃撃反動吸収、機動性能、リロード速さなどとしての機能を持つ機体装備は
 自機に対してどの兵装でも共通。
 兵装変えると基本機体性能は同じで、攻撃手段のみ変わります。


・このゲームの勝敗は、戦場の両端にあるそれぞれの本陣を攻撃することで
 互いの体力ゲージならぬチームごとゲージを時間内で削りあう仕組み。
 個々の敵撃破でも敵チームゲージは減らせますが、1体撃破で減るのは1/160。
 160体倒せばそれだけで勝てますが、1戦最大10分なので1分16体。敵チーム10人。
 いくらいくらでも敵は復活するとはいえ、敵の中身も同じひと。無理。
 よってより効率良く、戦場中央でのぶつかり合いから抜け出して
 捨て身で敵陣特攻するのが有効だったりします。
 もちろんいくらでも復活するから数の差つくことはないからといって、
 戦線押し上げ切られたら大差付けられどうにもならなくもなる。
 何しろ向こうもいくらでも湧くのだからして。

・そういう状況下、脇を抜けての本陣突撃を得意とするのが機動力型。
 特殊ダッシュで遠くへ素早く動けるだけでなく
 周りに気付かれにくいまま対象が対処できる間に撃破できる武器が、
 その用途に向いています。
 逆に戦線支え、脇から抜けるまでもなく中央突破されるのを防ぎ目指すのが重火力型。
 このゲームは重火力だからといって、堅くて重いと決まったわけではない。
 ミサイル型の中遠距離範囲を高台から狙撃するよう使っても強力です。

・戦線後方にあって敵後方の狙撃を狙いつつ、抜けて侵入する敵も落とすのが狙撃型。
 なんといってもしゃがみ撃ちから主観視点でヘッドショット決めて一撃必殺、
 とはいかないまでも一方的攻撃が楽しい。一方ですぐ後ろに立たれても気づけない。
 支援型は、狙撃された本陣の敵迎撃砲台や感知レーダーを修理する雑用だけでなく、
 自身も含む味方部隊を回復し、さらに敵位置を感知し、
 そして味方の武器補給も兼ねつつ、近距離から散弾銃ぶっぱでしぶとく活きる。 


・10対10の対戦ですが、20人揃うまで待っていては
 時間単位でお金を頂くアーケードゲームとして失格。
 そのためゲームを開始しても1戦の最初から参加できるとは限らない。
 チームは事前に決められるのでなくランダムで決められます。
 友達同士でチームを組むことは今のところできない仕様。
 もちろん1戦最初の参加待ち状態、
 そして開始からの時間経過が少ない戦場が優先して選ばれますが、
 勝負の途中で放り込まれることも多いです。

・ところがその時、残り時間や戦場占領地色分けなどのおおまかな戦況はわかるものの
 敵軍だけでなく自軍とも、現在誰がどの兵装を選択しているか確認できない。
 その代わり、撤退してまた参戦する時に一切制限なく、兵装を自由に変えられる。
 1勝負10分の間に、戦況に合わせて様々な兵装を使い分けるのが楽しい。
 そして兵装は不自由なことに、撤退したときにしか変えられない。
 このあたりの制限が独特で面白い。

・戦場は機体機動性能からも、撤退復帰サイクルからも展開が早いため
 目の前の敵を倒しつづけるだけで常に十分忙しがれる。
 逆に言うとチームとして戦うことをあまり意識すること少ないのですが
 その程度、勝利へ貢献しなければならない責任重さのさじ加減が良い感じです。
 戦い終わって、誰がどこでいつどれくらい活躍したかしなかったかが良くわからない。
 活躍できたひとは、それをあまり周りに見てもらえないのが残念ながら
 そうでないひとはそもそも、勝利に貢献したのかしなかったかすら自分でわからない。

・仕組み上、ゲームの途中から参戦することがあるならば
 時間切れで、ゲーム途中に中のひとがひとでなくなることもあるわけです。
 さらに戦況に合わせて撤退するたび兵装も変えられる。
 偉いひとも駄目なひとも誰が誰だかわからない、このゆるさ。
 これぞこのゲームの特徴であると言えましょう。 




・先月稼働開始したばかりであることを差し引いても
 戦場が配置違いを含めても3種類しかないのは大きな減点。
 チュートリアルも十分とは言えない。
 データ記録カードを使用しているならそれこそ無料でも良いはずです。
 戦後処理の評価ポイントも、あと何か工夫が欲しいところ。

・今のところはそれでも十分に楽しめます。
 アーケードゲームの新作として、中身にさほど目新しさはなく
 お値段も安いとは言えないものの、満足できる出来。
 今後、装備パーツや兵装種類なども含めた様々な要素の追加、調整などのそれぞれで
 対人対戦をする場として常に試されていき
 その時々と最後の印象で、このゲームの評価が決まることになると思われます。


・ただ、このゲームの中身は、アーケードでなければならない理由がない。
 すぐにでも家庭用ゲーム機に移植できるよう見受けられる程度のものでしかない。
 けれどだからアーケードゲームであることが失敗である、ということでもありません。

・ゲームセンターでなければ成り立たないゲームなどわずかしかない。
 それでもゲームセンターが未だに在り続け
 『ボーダーブレイク』のような家庭用でもありそうなゲームにもお客がつくのは
 それはアーケードでなければ、ゲームセンターに今行かなければ遊べないからです。

・ゲームセンターまで行かなければ遊べないのは欠点です。
 誰の家からもそこは等距離にあるわけではないことで、お客を選んでいる。
 けれど今ゲームセンターに行くことで、
 面白いゲームを遊ぶことができ、
 そこに同じゲームを同じように楽しむひとと場所がある。

・ゲームセンターに落とすお金とはそれなのだ。
 そしてそのゲームが面白いかどうか。遊んで楽しいかどうか。
 ゲームが好きなひとにとって、そのゲームを遊ぶかどうかはそれなのです。