私的マンガ論


・’90年代以降の読者である私の
 白土三平というマンガ家への興味は
 マンガ家の系譜上の立位置です。


白土三平は、主流である手塚治虫系列、トキワ荘グループに入らず
 手塚マンガの影響を直接受けていない、
 さいとうたかお等と同じ括りの特異な存在である、という認識。

・反(アンチ)ではないものの、手塚マンガに対する劇画マンガ、と
 乱暴に括れるかもしれません。


・この非手塚マンガ層は、池上遼一らの劇画作画手法のみが
 手塚マンガ層に取り入れられて
 その表現していたマンガ手法は
 現在は非主流。

・キャラを立ててストーリーを転がすのが手塚流、
 ひたすらキャラ立てをし、上に上に上っていくのが小池一夫流、
 かつ、少年マンガ王道のジャンプを体現する本宮ひろし。


・この小池流の特徴は、原作者と作画者を分け
 グループ、プロダクション形式でマンガを描くこと。
 有名な所でさいとうたかおプロダクションがありますが
 白土三平の赤目プロも近い形。
 自身で作画をするのではなく、分業体制を取る。

・またもう一つの特徴が、長大なストーリー。
 主人公の長い生き様を通し、いい意味で高尚な思想を語る、
 というスタイル。

・上へ上へという小池スタイルに形は近いがより洗練されているのが
 マンガマニア層に名作として評価される
 星野之宣諸星大二郎などの一部のマイナーなマンガ。


・マンガの主流は週刊誌。
 週ごとの盛り上がり、山場をを重視せざるを得ず
 全体の構成、完成度が悪くなってしまう。
 というのは、商売の形として効率を重視すれば当然で
 仕方ない形なのかなとも思いますが
 白土マンガの作風は、割と行き当たりばったりでもあるので
 簡単に括れないところ。
 貸本時代や少年誌に連載していた経緯も影響しているのか。

・当初から完結までの緻密な構成を立てて書き始めるというスタイルは
 こぢんまりとまとまった佳作に終わってしまうのかもしれません。


・「マンガ原稿料はなぜ安いのか?」という本の中で著者 竹熊健太郎さんは
 ストーリーマンガは4、5巻程度の形が理想なのではないか、
 と提言しています。

・以前取り上げた「G戦場ヘブンズドア」などがこの例。
 IKKIというマイナー、マニア向けの月刊誌、最初は隔月でしたが、に
 掲載されているというのは
 ストーリー性の高い作品には月刊刊行形式が適している
 といえるのではないでしょうか。
 マニア層に高く評価されているコミックビームや、
 「少女マンガ」が月刊を基本とすることからも、そう思われます。

・だからといって週刊形式のマンガが月刊形式のマンガに
 劣るわけではないですが。
 そのあり方の違いですね。

・上記本の中で刊行形式の理想として提言されている書き下しスタイルは
 その利益性、選別の土台となる、分業での週刊連載、
 というプロダクションスタイルが作家的に可、とするかが問題で
 難しいのでは。


・何か、かなり泥沼に踏み込んでしまったので
 この「マンガ原稿料はなぜ安いのか?」をその内あらためて取り上げ
 その際に続きを書いてみたいと思います。

 ISBN:4872574206


・以上文中敬称略。