ゲームの批評とは何か


・まず一般論。批評とは何か。
 字面の意味は上に挙げた通り。さらに関連項目を並べると

 感想  ;あることについて、感じたり思ったりしたこと
 批評  ;事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること
   評価;物の善悪・美醜などを考え、価値を定めること
 レビュー;評論 批評 書評 
 ガイド ;案内すること    
         (三省堂大辞林 第二版」「デイリー 新語辞典」より)

 つまり感想と批評は違うものであり
 ゲーム批評とゲームレビューは同じものであり
 バイヤーズガイドはどれとも違うものである。

・これは辞書に載っていることばの定義。
 実際にこのことばを使用している人たちがどのように考えているかはまた別です。


・ゲームの批評と言うと、格好の題材があります。
 その名も「ゲーム批評」(http://www.microgroup.co.jp/game/)。
 ゲーム雑誌です。
 「ゲーム批評」ではその名のもと独自性を出して売っていくために
 次のような編集方針を掲げていました。

 ・広告を入れないことで各メーカーとの距離を公正に保つ。
 ・「商品」としてよりも「作品」としての立場を重視する。
 ・批評は製作者の意図を読み取る努力を前提とする。

 というようなもの。
 ゲームに対する評論雑誌であることを風貌したわけです。


・「ゲーム批評」がこのような形で独自性を確保できると考えた反対には
 「普通の」ゲーム雑誌があります。
 普通の雑誌の編集方針とは何か。
 どこにも書いてありません。
 それが普通です。普通の雑誌は「独自」である必要はないのです。

・普通のゲームマスコミの方針は「ゲーム批評」とは違うのか。
 ちょっと考えて見ましょう。

・雑誌の目的は売れること。
 読者の最大公約数が求める情報の提供こそが、その目的のための方法です。
 ただ、売れる雑誌は読者に媚びて方向性を見失うことはありません。
 読者は常に入れ替わるのが「普通」であり
 そのために常に新しい読者を掴むだけでなく、作り出さなければなりません。
 それがその雑誌の扱う業界の発展であり、ひいては顧客層の拡大であるわけですから
 優れた「普通」の雑誌は、常に業界を正しく導くよう啓蒙するのです。

・つまり、売るために買ってくれる読者を維持し、育てること。


・次に読者の立場、普段私たちがあたりまえに取っている
 雑誌への態度を考えましょう。

・ゲーム雑誌に望むものはなにか。
 それは面白いゲーム、お金を出すに見合うゲームはどれかという情報。
 すなわちバイヤーズガイドです。

・ゲーム雑誌の点数付けられた「レビュー」記事、
 新作紹介の細かい仕様、
 さらには広告出稿量からのメーカーとの力関係、
 細かいコラム記事に隠されたライターの本音。
 どれが果たして本当に面白いゲームなのか、
 それを知るための物です。

・そしてそれはあらゆる雑誌にいえること。
 「ゲーム批評」にも例外ではありません。


・読者が「ゲーム批評」にもとめるのは
 イメージとしての「高尚な批評」ではなく
 メーカーにおもねることのないであろう、というよりも紙面を見るに
 嫌われているであろうこの雑誌なりの立場が
 注目している作品にどのような情報を与えてくれるか、
 という点です。


・で、ありながら、マイナーな雑誌である「ゲーム批評」を買うマニアは
 こうも考えます。
 「批評と高尚に謳う割りに内容が伴っていない」。


・批評とは何か。
 辞書にあるように「ゲームの価値を決めること」でしょうか。

・ゲームを批評しているのは誰か。
 「ゲーム批評」、それとも「ゲーム批評」を批評している読者でしょうか。

・考えましょう。ゲームの価値を決めているのはだれか。
 それはメーカーの販売価格でも雑誌のクロスレビューでもなく
 中古屋の値段でもない、
 私たちユーザーの評判です。
 価値を決めるのは、ソフトを買う側であり、メーカーでもマスコミでもないのです。
 

・では「ゲーム批評」が目的とする批評とは何か。
 それは啓蒙です。

・映画評論家、軍事評論家、NHKの論説委員、大学教授、
 様々な「評論家」の行う「批評」はつまりは解説です。
 ゲームもそれは同じ。
 ゲームの成り立ち、構成、背景、様々な情報を解説することで
 ユーザーとメーカーの質的向上を唱え
 ひいては業界全体の質の向上を図ること。


・ここで面白いのが、批評とは作品の解説であることです。
 例えば文学評論の大家に小林秀雄という方がいらっしゃいます。
 この方の文章は評論家でありながら、すでに文学。
 評論でなく文学になっています。
 これでは本末転倒。
 批評とは質の向上を図るのは当然ですが、高尚である必要はないのです。
 結果として、その業界の発展に寄与したかどうか。
 過程や方法など、どうでもよいのだ。
 失礼。


・「ゲーム批評」がその編集方針に掲げたことを実現できていたのかはともかく
 すくなくともその初期において果たした役割は大きいです。
 だからこそ、「ゲーム批評」は常にその質に疑問を抱かれながらも
 この10年の間、ゲーム業界にあり続けることが出来たのでしょう。
 


・ゲームの批評とは何か。
 ユーザーにとってはゲームの面白さを己の価値観のもと決めること。
 マスコミにとっては紹介し解説し啓蒙すること。
 メーカーにとっては、さて何でしょうか。

・ゲームはエンターテイメントであり、嗜好品。
 文化でありメディアであり、小説、映画と並び称されるもの。
 同時に暇つぶしであり麻雀、パチンコ同様興味のない人にとっては時間の無駄。
 そしてメーカーにとっては産業なのです。
 それこそ社会性という名のゲーム批評といえるでしょう。



・私にとっての「ゲームの批評とは何か」は
 また長くなりそうなので項を改めて。