ゲームバランスは神の手が作る


・『ドラゴンクォーター』は難しいのか簡単なのか。

・システムが理解できないうちは、敵が強く制限がきつく、難しい。
 けれど、普通のRPGとは違うことを理解し
 闇雲に敵と戦うのではなく、決まりの文法に従って丁寧に解法すれば
 むしろ必要以上の経験値稼ぎを必要としない
 簡単なゲームということができます。


・またSOLを利用し、経験値を無限に稼ぐことで
 難易度はいくらでも操作できます。

・難易度が操作できるならば、それは簡単であるということか。
 けれどもシステムが許しても自分で自分を縛る条件プレイをすれば
 またやはり、難易度はいくらでも上がります。

・そして、経験値がいくらでも稼げる、難易度を上げるのは自由である、
 ということは、多くのRPGでいえること。
 ではRPGは難しいのか簡単なのか、
 RPGの難易度はどこからくるものか。



・「ゲームバランス」。便利な言葉。つい私も多用してしまいますが
 その正体はどんなものでしょうか。

・それは
 ゲームシステムに規定される世界のルールとそれを構成する要素の関係。
 この敵はどのようなパラメーターを持っていて
 対する主人公の能力はこの程度で、
 この2つの要素が、あらかじめ決められたルールのもとで計算され整理され
 結果を導きます。

・ルールも要素も製作者の手に成るもの。
 数値の大きい小さい、計算式の変数幅が、多様で広がりのある、
 そして神の手の介在をうかがわせる「バランス」を作りだすのでしょうか。


・普通のRPGは戦闘と成長のシステムによりストーリーを語るもの。
 キャラクターは様々な表現で成長し、強くなります。

・では強くなった能力値でもって、先ほどの敵と、同じルールで戦うならば
 結果はどうなるでしょうか。
 当然強くなれば容易に勝てるようになるでしょう。
 逆に弱ければ勝つのは困難、だからこそ強くなり、そしていずれ勝つことに
 ストーリー上の意義が見出せます。

・優れた「バランス」をとるならば
 最初は苦戦し、成長すれば容易に勝てる結果を導き出す要素とルールが
 シナリオ演出上優れたものにあたります。


・最初と次のタイミング、間隔、その間とそこまでの距離はどうすれば良いのか。
 これも「バランス」の内。
 成長を折り込むシステムであれば、ひとつの要素間の関係でなく
 それらの関係が作りだす全体の関係の「バランス」もまた、
 調整しなければなりません。

・これが難しい。
 なぜなら、成長の要素はプレイヤーの自由裁量の内にゆだねられていることが
 戦闘と成長からなる普通のRPGシステムが獲得した
 ゲーム要素そのものであるからです。



STGに最適解が存在するならばそれは製作者の作り出したものなのか。
 そうであるものも、ないものもあるでしょうけれども、それに関係なく
 その解ができるだけ難しく、けれど可能で
 そして理論で到達可能な位置にある美しいものであることが
 優れたSTGのゲームバランスのひとつといえるでしょう。

・アクションもシミュレーションもアドベンチャー
 優れたバランスを実現するものは
 より良い入力条件に高い評価を与える、要素とルールの関係を持つもの。


RPGにおいての優れたバランスとはどのようなものか。
 難易度は難しいのか簡単なのか。

・最適解はどこにあるのか。
 極限低レベル、短時間クリアのような条件縛りプレイにあるのか
 何も考えずに「普通に」遊んだ結果がそれなのか
 限界まで強くし、ボスを雑魚同然に蹴散らすのが正しいのか
 それともどこにも存在しないのか。

・どれもが正しい。
 難易度は難しくも簡単にもなる。
 なぜならそれをプレイヤーが自由にできるのがRPGだからで
 ゆえに複雑で奥深く面白い。


・絶妙のバランスを構成する『ドラクォ』にあっても
 SOLを使うことで簡単になりすぎ緊張感がなくなり、そして面白くなくなる。

・『ドラクォ』の絶妙のバランス、とは
 製作者の設定したシナリオ演出に適するバランスのこと。

・それを高いレベルで実現しているのが『ドラゴンクエスト』で
 「わかっていないひと」が遊んでも充分に楽しめ、かつ
 「わかっているひと」もまた楽しめる。
 誰もがそこに自分の解をみつけることができる「バランス」を持っている。

・『ドラクエ』らしさとは
 製作者の決めた至高のルールによって成立しているバランスであり
 ゆえに堀井雄二さんなくして「ドラクエ」は成立しえないのです。


RPGにおいて
 ゲームバランスを作りだす神の手とは
 製作者の決めたルールという世界で
 プレイヤー自身が自由というルールのなかで、自らの手で作りだすもの。
 ゲームの難易度はプレイヤー次第であり
 それがゲームの面白さに直結するRPGは、自由であるからこそ面白い。