「ドラゴンクエストⅧ」の位置づけ


・「ポケットモンスター」と並び
 売上において国内ゲームを代表する大作「ドラゴンクエスト」シリーズ。
 昨年11月末発売の最新作「8」も350万本、PS2で最高のヒット作品。
 この1作品に、350万通りの感想があって
 またあえて、買わない遊ばないひとにも様々な思いがあります。


・「ドラクエ8」はどうだったのか。
 周囲のひとや、雑誌、ネットでの評判。
 普段ゲームをあまりやらなくとも、「ドラクエ」だけは買う。
 そういう人たちの感想を聴くのは、とても興味深いです。

・そして「ドラクエ」が
 決して話題、流行の作品にとどまるものではなく
 多くのひとに評価されているのをみて、安心します。
 優れたゲームが正しく評価される。
 それは良いことです。ゲーム好きとして嬉しいです。


・「8」はどのような作品だったのか。
 いろいろな見方があります。それをまとめてみましょう。

 関連;「ドラクエ8」感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20041211



・売上、影響力、歴史的な面からもそうせざるを得ない作品なのですが
 「ドラクエ」はひとつの単体作品評価ではなく
 RPGのなかで、テレビゲームのなかで、
 どのような位置づけをすべきなのかを問われる作品です。
 それだけの影響を与えている作品。
 「ドラクエ」シリーズはどうか、「8」はシリーズのなかでどうなのか。

・シリーズの位置づけ。
 前回書いた「ゲーム批評」で本作は3人のライターによりレビューされています。
 これを元に見てみます。


・付記として独り言。
 よく言われることですが
 「ゲーム批評」のソフト批評は
 どこが批評だ、それは紹介だ、感想だ、それ以前に文章を推敲しろ、
 「批評」の冠がつくに頭にくるものが多く
 これは感想だ紹介だライターの呟きだお金を払った自分が悪い、と
 ひとりごちながら我慢して読むものなのですが、と言い切りますが
 もちろん中にはよいものもあります。たまにはね。
 お金を払っているから厳しいのです。当然です。



・まずは卯月鮎さんのレビューから。

・論点は2つ。
 「8」はシリーズの新たな出発、それはらしさの自覚的な再確認。
 シナリオには迷いが残る。童話的深みか、マンガ的エンターテイメントか。
 「ドラクエ」は誰もが楽しめるゲームを志向し、それが「ドラクエ」の価値である。
 と結んでいます。

・「ドラクエ」らしさとは丁寧さ。
 地道な努力が報われる、ありがちで遊びがなく作業的で過保護だが安心感のあるシステム。
 フィールドの可移動範囲を用いて成長を意識させるしくみ。
 その基本が押さえられている。

・「ドラクエ」の体現するRPGとは、他のRPGを考えて基本的といえるもの。
 凝りすぎず、丁寧に基本を押さえること。それが「ドラクエ」の本質。らしさ。

・シナリオについてはひとまず置いて、
 「ドラクエ」らしさとは何か、という見方でまとめています。
 その価値は基本を丁寧につくり、大作の期待に応えること。


・次に藤原修二さん。

・「8」はディスクメディアに則した表現方法を取る新しい「ドラクエ」。
 変わらぬワンパターンの展開こそが職人的な王道である。

・RPGの基本快感は「成長と物語」、「ドラクエ」はその理想的回答である。


・最期に多根清史さん。

・「8」は「7」でみられた「作家性のワナ」をリセットし
 物語がなくとも「ドラクエ」たることを示した以降の出発点である。

堀井雄二のシナリオ、物語がつくるマクロな快感は弱く
 堀井フレーズとコマンドシステム、操作性のよさのミクロな体感が快感。



・「ドラクエ」シリーズは、もちろん単体でそれぞれが名作です。
 積みゲームの山を横目に「8」の2周目を途中で投げ出した私は
 SFCの「1」「2」、PS「4」、
 そして「7」を途中まで、あらためて遊んでみました。

・本当に「ドラクエ」は面白い。
 当時の、過去の美化されてしまった思いは置いて、
 そのなかでも優れていると感じたのがPS「4」。
 時代を下るごとにシステムはより洗練され続け
 さらなるバランスの見直しが図られているのを感じます。

 関連;PS2「5」感想 http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20040421



・「7」はシリーズのなかで、その前作「6」と並び、あまり評価を得ていない作品。
 それはなぜか。

・「ドラクエ」のシステムは変わっていない。
 どんなに見た目が変わっても、
 ああ、間違いなくこれは「ドラクエ」だ、
 と感じられるのは、そのシステムによるもの。
 RPGの王道、基本を押さえた、ミクロな体感。


・では何が変わっているのか。
 それは堀井雄二さんによるシナリオと
 そしてみため。表現方法。

・FC「4」からSFC「5」、SFC「6」からPS「7」、
 そして2Dから3Dへの「7」から「8」。
 前者は実に代わり映えしないものでした。
 「FF」に比べハード性能を使い切っていないグラフィック。
 それが「ドラクエ」なのだ、というのもあったのでしょうけれども
 「8」への堀井さんのコメントを見るに
 やはり本来の志向は、システムを阻害しない範囲で時代に即したものだったのでしょう。
 それが実現しなかったのは
 時代、タイミングの問題であったか、開発メーカーの技術力にあったかはわかりませんが。


多根清史さんは「ドラクエらしさ」について次のように書いています

 「ドラクエ」を作るのではない、堀井雄二の作ったゲームが「ドラクエ」と呼ばれたのだ。
 ゲームの開発が巨大化して個人クリエイターから取り上げられ、
 世間の顔色をうかがうマーケティングに縛られる中で、
 たった1人の作家性が色濃く反映される奇跡的な存在。
 そのナンバーワン”かつ”オンリーワン=「ドラクエ」だったわけだ。
           「ゲーム批評 Vol.61」P30より引用


・シリーズの人気作は完成度の「3」、シナリオの「4」「5」。
 転職、それによる特技と、「FF」のジョブ、アビリティのように
 システムバリエーションを追求した「6」、「7」は
 その図鑑を埋める楽しさ、「やりこみ」の楽しさは評価されていますが
 シナリオは印象が薄い。長すぎる。目的が良く分からない。そういわれます。


・システムについて、ここで「FF」と比較すると
 「FF」シリーズの一貫性とは何かというより難解な問題に直面してしまうので
 置きますけれども
 「Vジャンプ」で「6」の当時連載されていた堀井さんのコラムからは
 「FF6」を「やりこんでいる」様子がうかがわれました。
 「ドラクエ6」「7」のシステムの遊びは
 堀井さんの好みとするところだったのでしょうし
 であれば「ドラクエらしさ」と反するものではないのです。

・「8」のシステムは3名とも特筆しておらず、旧来と変わらないもの、
 ありがちなもの、としています。
 「8」では「6」「7」の職業を廃してスキルシステムを配し
 またアイテム合成、錬金釜システムを導入しています。
 なるほどどこかでみたようなもので、それをうまくまとめただけ。
 目新しさはない。

・何より、どのような遊び方をしようとも、回り道をしても
 楽しめて遊べて、クリアの達成感を得ることができる。
 その当たり前のことをしっかりと作り上げているのが
 「ドラクエ」の王道たるところである。
 
・「8」はシステム面からみれば旧来の延長上にある。
 そういえるでしょう。



・ではシナリオか。 
 卯月さんの指摘するシナリオの迷い、
 多根さんの言うシナリオの弱さ、「7」からの転換、作家性のリセット。
 「8」はシリーズの中で特にその点が特異なのか。


・RPGは戦闘と成長の物語。以前そう書きましたけれども
 RPGにとってシナリオ、物語とはなんなのか。
 ゲームにとってそれはどのようなものなのか。
 「ドラクエ8」のシナリオからそれをみてみましょう。



・というところで次回に続く。