戦争ゲームSLG『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』

 GBA 任天堂/インテリジェントシステムズhttp://www.intsys.co.jp/
 '04年11月25日発売 ASIN:B00068WKJ0
 公式サイト http://www.nintendo.co.jp/n08/bgwj/index.html

  ファミコンウォーズが出るぞ(ファミコンウォーズが出るぞ)
  こいつはどえらいシミュレーション(こいつはどえらいシミュレーション)
  のめりこめる!(のめりこめる!)
  のめりこめる!(のめりこめる!)
  母ちゃん達には内緒だぞ!」

・ある世代より上からは忘れられないフレーズ。
 前年'87年製作の『フルメタルジャケット』(ASIN:B00006585J)をみて
 思わずニヤニヤです。

・動画はこちらからどうぞ。
 樹の上の秘密基地。 CM製作者 倉恒良彰さんインタビュー 
 http://www.1101.com/nintendo/nin25/nin25_3.htm


・'88年『ファミコンウォーズ』'91年『ゲームボーイウォーズ
 '98年『スーパーファミコンウォーズ』(書き換え専用)。
 どのハードかわかりやすいタイトルのこれらに続くものが本作。
 やはり飾りけないタイトル。

・ちなみにゲームボーイウォーズの『ターボ』『2』『3』はハドソン開発。
 すなわち『ネクタリス』。『ネオネクタリス』は当時随分遊びましたよ。
 初代『ネクタリス』win版はフリーソフトとなっております。
 ベクターダウンロード;http://www.vector.co.jp/vpack/browse/pickup/pw3/pw003257.html
 ここ数日、遊んでいたのは実はこちらだったりなかったり。


・本作は北米のみで発売されていた'01年『Advance Wars』
 '03年『Advance Wars 2:Black Hole Rising』を
 あわせてひとつにしたもの。

・タイトルはまっすぐ直球ストレート。
 このゲームこそがこのジャンルにおいて代表作であるという宣言と受け取ります。
 実際そうです。 



・このゲームをひとことで言うと、欠点がない。

・シンプルでわかりやすく無駄のない操作性。
 携帯機でもユニット識別容易なグラフィックへの気配り。
 弱点と長所を明確にしながら破綻することのない各ユニット性能。
 ユニットの性能、生産制限、それを活かす地形構成、初期配置、
 質と量を兼ね備えるマップ構成。

・言うは容易ですけれども
 果たしてこれらの条件をひとつでも満たしているSLGがどれだけあるのか。
 当たり前にそれを成し遂げている素晴らしさ。


・この『ウォーズ』シリーズ、そして『エムブレム』シリーズ。
 インテリジェントシステムズが積み重ねてきた開発経験の蓄積は圧倒的です。

・マップコンストラクション、通信対戦、そしてボリュームに対するお値段。
 ありえない「完璧」の名を与えたくなるほどに
 欠点が思いつかない作品で商品です。



・『ウォーズ』シリーズはウォーシミュレーションゲーム

・システムソフトアルファの『大戦略』を初めとして
 上の『ネクタリス』や工画堂の『シュヴァルツシルト』『パワードール』。
 ボーステックの『銀英伝』。
 や、何か片寄っている。
 やはりこの手のゲームはPCよりのものが多い印象です。
 そのままだと難しすぎ、地味すぎるからでしょうか。

・そのような中、「ガンダム」を使って『大戦略』、
 『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』などは
 SLGの難しさ、取っ付きの悪さ、面倒さを感じさせず実に良くできています。
 ヒューマンは素晴らしい。ナムコは『スターフォックス』を何とかしてください。 


・ともかく、ビデオゲームができた最初からこのジャンルはありました。
 '85年から続く『大戦略』を例にとれば、その意図するところは明確。
 戦争をシミュレーションゲームにしよう。

・実在の軍隊を使っての戦争ゲーム。これは面白いぞ。
 さてどのようなゲームにしよう。


・『大戦略』が前提として存在しないときに
 戦争ゲームをつくろうとするとどのようなゲームになるでしょうか。
 指揮官の能力、兵站、戦力実数9割を超える歩兵の扱い。
 どれも『大戦略』ではあえて切り落としている要素。

コーエーの『信長』『三国志』などの歴史シミュレーションゲーム
 作品ごとに軍事パートの内容はまったく違います。
 なぜなら、戦争というものの実際を
 魅力的にかつゲームとして面白く、
 シミュレートするのは決して簡単ではないから。

・アクションやFPSのように戦場の一兵士としてあるのか。
 戦略戦術の指揮する楽しみはどのように再現すればよいのか。
 明確な答えはいまだないといえましょう。


・けれど『大戦略』は初代から今に至るまで変わらないシステム。
 その模範となっているのはテーブルゲーム
 「チェス」「軍人将棋」、そして「将棋」です。


・将棋はとてもよくできたゲームです。

・同じ状態から始まって
 運や偶然は一切絡まず
 互いがより効率よく勝負に勝とうとしているのに
 その軌跡が同じになることはない。

・その局面における最高のやりかたは何か、と考える。
 けれど正解はない。
 「より良く」はあっても「絶対」はない。


・それを作り出しているのは
 取った駒を再度盤上に指すことができる、というルール。
 互いに取った駒をいつまでも生き返らせることができるのならば
 勝負はつきそうにありません。
 生産力は無限。互いの初期戦力も同等。

・けれど千日手、待将棋といった行き詰まりもあるものの
 多くは決着がつきます。
 戦力拮抗の条件からの僅かな差が勝敗を決めるもの。


・そこが将棋の対戦ゲームデザインとして優れているところ。
 条件は平等、運は絡まない、
 生産可能という永久循環でありながら勝ち負けは明確。


・『大戦略』は将棋の駒を、現代軍事要素に置き換えたもの。
 それだけで対戦ゲームとして充分に面白く遊べます。

・けれど逆にいえばそれだけです。
 実際の、現実での戦争要素を再現することの方に
 ゲームとしての面白さよりも重きを置いているシミュレーションゲーム
 これは歴史シミュレーションも同様。
 実際あったもの、あるものを、よりリアルに再現することに価値がある。

・けれど現実を完全にプログラムの上でシミュレートするならば
 そこには現実と同じだけの情報、同じだけの時空間が必要です。
 それは不可能。
 ではどこで折り合いをつけるのか。
 あらゆるシミュレーションゲームにおける最重要命題です。
 (関連;http://d.hatena.ne.jp/kodamatsukimi/20041123#p1


・この『ウォーズ』シリーズは、現実の戦争シミュレーションではなく
 戦争ゲームシミュレーション。
 現実の戦争要素の再現を記号としてのみ押さえ
 ゲームとしての面白さを一番にしてつくられたシミュレーションゲーム
 『大戦略』よりもより「将棋」寄り。

・どの相手に強く、どの相手には弱いという駒能力の個性付けの明確化。
 戦車は歩兵に強く、爆撃に弱い。
 戦艦は地上ユニットに一方的に攻撃でき、他の船にも強いが、潜水艦に弱い。
 中途半端な種の駒は削り
 よりシンプル、戦術的に奥深く。


・「将棋」はなぜ、どこが面白いのか。
 『大戦略』のどこが多くのファンに求められる要素なのか。

・それをだれよりも深く掴む。
 ゲームとしてどうすれば面白くなるかを解っている。
 そして完璧にそれを現実世界にシミュレートする。


・『ウォーズ』シリーズもまた'88年の初代から同じシステム。
 最初からして既に完成している。
 あとはより完璧に磨き上げて行くだけ。
 どこが面白さなのかを忘れず倦まず弛まずひたすらに。

任天堂インテリジェントシステムズ
 あまりに出来すぎなゲームメーカーです。
 
・戦争ゲームSLGゲームボーイウォーズアドバンス1+2』。
 あまりに完成されたゲームです。